日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
23 巻, 12 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 力武 浩, 山名 秀明, 藤田 博正, 白水 玄山, 南 泰三, 掛川 暉夫
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2709-2715
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部食道扁平上皮癌55例を対象とし, 酵素法にて尿中ポリアミンの測定を行い, その有用性について検討した.さらに, 増殖期細胞の核抗原に対するモノ, クローナル抗体Ki-67の陽性細胞率とともに癌細胞核DNA量の測定を行い, 増殖能および悪性度と尿中ポリアミンとの関係についても検討を加えた.尿中ポリアミンの陽性率は, 38.3%とcarcinoembryonic antigen (CEA), squamous cell carcinomarelated antigen (SCC) と比較し若干高値でありCEA, SCCとのcombination assayにより診断率は54.5%と向上し, 特に再発時には83.3%と高値を示した.尿中ポリアミンは, 組織学的深達度の増大とともに平均値および陽性率が増加したがKi-67陽性細胞率との間には特に相関を認めなかった.また, DNAploidyではaneuploid症例がdiploidより尿中ポリアミンは術後のfollow upにおいて有用なモニタリングマーカーとなることが示唆された.
  • 後藤 正幸, 島 伸吾, 米川 甫, 森崎 善久, 脇山 博之, 吉住 豊, 田中 勧
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2716-2722
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道癌の手術に際して臓器保護を目的としてウリナスタチンを予防的に投与して検討した.対象は当科で切除した食道癌37例について無作為にコントロール群, ウリナスタチン群に分け, ウリナスタチン群には術直前10万単位, 術直後20万単位, 以後1日30万単位を4日間投与し, 1.顆粒球エラスターゼ, 2.末梢白血球数, 3.血清過酸化脂質, 4.フィブロネクチン, 5.補体, 6.肝機能, 7, 腎機能, 8.呼吸機能について経日的に観察した.両群間で術後1日目の尿量 (p<0.05) と呼吸指数 (p<0.01) で有意差を認めたが, 顆粒球エラスターゼ, フィブロネクチン, 過酸化脂質, 補体, 肝機能では有意差は認められなかった.食道癌手術の侵襲では白血球を介した過剰な生体防御反応は起きず, ウリナスタチンは蛋白融解酵素阻害作用以外の機序で術後早期の尿量増加と呼吸機能改善作用のある可能性が示唆された.
  • 山本 雅一, 吉田 操, 村田 洋子, 室井 正彦, 小川 利久, 門馬 久美子, 榊 信廣
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2723-2727
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1975年から1989年7月までに経験した421例の食道癌を対象とし, 食道癌症例における重複癌について検討を加えた.重複癌は51例 (12.1%) で, 同時性26例 (6.2%), 異時性25例 (5.9%) であった.重複部位の検討では胃癌が25例 (全体の5.9%;重複癌の49%) と多く, 同時性15例, 異時性10例であった.また, 早期胃癌は19例 (76%) であった.次に多い重複部位は, 口腔, 咽頭, 喉頭などの頭頸部領域の16例 (同時性5例, 異時性11例) (全体の3.8%;重複癌の31%) であり, うち10例 (62.5%) は食道癌診断以前にそれらの癌が診断されていた.3重複以上の多重複癌は5例 (重複癌の9.8%) であり, いずれも初癌から5年以上の生存例であった.食道癌切除後の経過年数との検討では, 術後5年以上7年未満経過症例の重複癌発生率 (23.1%) は, 3年以内の症例の発生率 (1.1%) と比較すると有意に高かった.近年, 食道癌における重複癌症例は増加しており, 現況を踏まえた日常診療が重要と考えられた.
  • 米川 甫, 島 伸吾, 後藤 正幸, 森崎 善久, 吉住 豊, 杉浦 芳章, 田中 勧
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2728-2734
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌患者を対象に手術前後の血中endotoxin (Et) を測定し, OK432による術前免疫療法が術後の高Et血症を抑制することを明らかにした.
    1) 術前に免疫療法を行わなかった10例のEtは術前13.9pg/mlであり, 術直後から第1病日の37.0pg/mlをピークとして第5病日まで有意な増加がみられた.
    2) 術前にOK432を5KEずつ4~6回皮内投与した7例では手術前後のEtには有意な変化が認められなかった.
    3) 両群を比較すると第1・3病日のEtは免疫群において有意に低値であった.
    4) しかし術前後の血小板数, 補体 (CH50), 顆粒球エラスターゼ, 血液ガス (RI) は術前免疫療法の有無で差がなかった.
    5) この理由として,(1) 食道癌術後のEtの増加の程度は臨床経過に影響するほど大きくない,(2) 現在のEtの測定法に問題があるという2つの可能性が考えられた.
  • 鈴木 修一郎, 桐山 誠一, 山田 明, 島崎 邦彦, 野村 直樹, 山岸 文範, 霜田 光義, 白崎 功, 櫛渕 統一, 坂本 隆, 山下 ...
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2735-2740
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当科における胃静脈瘤65例を内視鏡的に3型 (Lg-c: 噴門部周囲静脈瘤.Lg-cf: 噴門部周囲から窮隆部に及ぶ静脈瘤.Lg-f: 窮隆部孤立性静脈瘤) に分類し, その局在, 内視鏡的性状からみた治療法の選択および成績について検討した.(1) 胃静脈瘤の内Lg-cは53例, Lg-cf7例, Lg-f5例であった.(2) Lg-cでは食道静脈瘤を全例に併存し, かつ連珠状の高度食道静脈瘤であった.Lg-cf, Lg-fになるほど併存食道静脈瘤の程度は軽度かつ低頻度であった.(3) 胃賢短絡路は胃静脈瘤が高度になるほどその頻度は増え, Lg-fでは4例中4例に認めた.(4) Lg-cでは手術, 硬化療法とも高率 (85%以上) に治療効果を認めた.Lg-cfでは, 食道, 胃静脈瘤ともに効果のある治療法の選択が必要であり, 併用療法 (Hassab手術+硬化療法) の3例ではいずれも胃静脈瘤の消失をみた.Lg-fは胃静脈瘤直接の治療が必要であり, その治療法は現状ではHassab手術が適当であるが, 硬化療法は今後の課題である.
  • Coxの比例ハザードモデルによるOK-432腹腔内投与の評価
    加藤 道男, 河村 史朗, 森下 透, 多田 康之, 船坂 真里, 島田 悦司, 吉川 恵造, 中村 毅, 斉藤 洋一
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2741-2746
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    昭和52年から昭和58年の7年間にOK-432の腹腔内大量投与の38例と同期間の非投与159例とを対象に術後生存期間に影響を与える因子を分析するため, 性別, 年齢, 癌の肉眼型, 肉眼的肝転移の程度, 腹膜播種性転移の程度, 組織学的リンパ節転移の程度, 組織学的分類, 深達度, 組織学的進行度, 郭清度, 根治度, OK-432投与の右無の12項目を検討した.層別化による分析では背景因子に偏りが大きいために, 重回帰分析であるCoxの比例ハザードモデルを用いて分析した.その結果, 寄与率からみて, 癌の肉眼型, 腹膜播種性転移の程度, 組織学的リンパ節転移の程度, 郭清度, 根治度などが主要な予後因子であった.しかしながら, OK-432腹腔内投与の影響は検出されなかった.したがって, 進行胃癌や腹膜播種性転移を有する症例では, 癌巣の完全な摘除と十分なリンパ節郭清による根治手術を行うことが重要と考えられた.
  • 米村 豊, 大山 繁和, 二宮 致, 木下 一夫, 伏田 幸夫, 木村 寛伸, 小坂 健夫, 山口 明夫, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2747-2750
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌150例のパラフィン包埋ブロックを用い, c-erbB-2蛋白に対するポリクローナル抗体によりlabeled streptoavidin biotin法で蛋白の発現を検討した.c-erbB-2蛋白は胃癌細胞膜上にみられ, 陽性例は26例 (16.7%) であった.c-erbB-2蛋白陽性例は腫瘍径6cm以上・漿膜浸潤, リンパ節転移陽性例で, それ以下または陰性例に較べ有意に多くみられた.しかし, 組織型・肉眼型とc-erbB-2蛋白発現との関連はなかった.予後をみるとerbB-2蛋白陽性例の5年生存率8%, 陰性例では47%と有意に陽性例の予後は不良であった.以上よりc-erbB-2蛋白を免疫組織学的に染色することは胃癌の悪性度を検討する良いパラメータになると考えられた.
  • 子野日 政昭, 熱田 友義, 伊藤 紀之, 菱山 豊平, 平 康二, 西山 徹, 越湖 進, 加藤 紘之, 田辺 達三
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2751-2756
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1974年1月から1984年10月までに十二指腸潰瘍に選択的近位迷走神経切離術を行った67例のうち術死1例を除く66例の遠隔成績を検討した.再発は8例12.1%で再発部位は胃内, 十二指腸内それぞれ4例, 再発時期は1年から10年で平均5年8か月であった.再発時の治療としては保存的治療を6例に行い, 5例が有効であった.再手術は3例4.5%でいずれも小範囲幽門側胃切除を行い良好な結果を得た.術前後の胃液検査を再発群と非再発群で比較してみると非再発群と比較して再発群で術後gastrin刺激によるMAOが高く, その減酸率は低かった.血清gastrin値は術後再発群で高値となる傾向にあった.幽門形成術付加の有無では幽門形成術を付加しない例にやや再発率が高かった.遠隔時のVisick gradeはIとIIで90%をしめ, 術後障害は少なかった.また体重も平均4kgの増加を得た.
  • 井沢 邦英, 瀬川 徹, 門原 留男, 岩田 亨, 山本 正幸, 佐々木 誠, 矢次 孝, 松元 定次, 江藤 敏文, 元島 幸一, 角田 ...
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2757-2763
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌自然破裂18例について病態, 治療法, 予後を検討した.教室で経験した肝細胞癌の7.1%を占め, このうち11例 (61%) が出血性のショック状態を呈していた.治療法は, 1期的根治的肝切除が5例で, 1例が術死の外は, 4例が1年以上生存し, そのうちの1例は7年3か月の現在生存中である.姑息的治療は6例で, 破裂部肝部分切除あるいは破裂部縫縮が3例, 肝動脈塞栓術 (以下TAE) 2例, 肝動脈枝結紮1例で, すべてが両葉多発であった.術死が2例, 最長生存期間は5か月18日であった.全身管理のみで, 破裂に対し処置が出来なかったものは7例で, 自然止血後の2か月目肝不全死が最長生存であった.検査値ではコリンエステラーゼ, 血小板数, プロトロンビンタイムで肝切除群と姑息的治療群, 無治療群の間に有意差がみられた.切除可能であるならば可及的に切除することにより長期生存が期待されえると考えられた.
  • 藪下 和久
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2764-2771
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    血流遮断下における肝切除時の虚血障害の病態を, 血中thromboxane A2 (TXA2), prostaglandin I2産生量の推移から検討した.雑種成犬にて25%肝切除群 (contro1群), 60分肝血流遮断後25%肝切除群 (clamp群), OKY.046投与+60分肝血流遮断後25%肝切除群 (OKY群) を作成し, 術後, 血中prostaglandins値, 肝機能, 血液凝固機能および肝組織について検索した.術後thromboxane B2値はclamp群で, control群, OKY群に比べ有意に高値をとり, 一方6-keto-prostaglandin F値には差を認めなかった.肝機能, 血液凝固機能では, clamp群で肝細胞障害に一致する異常値をとり, control群, OKY群との間で有意差を認めた.術後7日目の肝組織像では, clamp群で小葉中心性凝固壊死を認めたが, control群, OKY群では異常所見を認めなかった.以上の成績より, 肝虚血障害時におけるTXA2の重要性, ならびに肝虚血障害防止を目的としたTXA2合成酵素阻害剤の有用性が示された.
  • 宮崎 勝, 宇田川 郁夫, 越川 尚男, 飯沼 克博, 伊藤 博, 神野 弥生, 海保 隆, 木村 文夫, 松本 潤, 磯野 敏夫, 鈴木 ...
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2772-2776
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌切除26例につき肝門部大血管合併切除再建を行った9例 (合切群) と血管非合併切除群17例 (非合切群) を比較検討した.治癒切除は2例 (7.7%), 相対非治癒切除14例 (53.8%), 絶対非治癒切除10例 (38.5%) であり合切群, 非合切群間に治癒切除率の差異をみなかった.非治癒因子は切除断端 (ew) が全切除例で88%を占め, 肝側断端 (hw) は合切群22%に比べ非合切群47%である.術死は合切群にのみ2例みられ非合切群には術死はない.生存率は非合切群で1年67.3%, 3年34.6%, 5年34.0%に比べ合切群は1年20.0%である.肝門部胆管癌の肝門部大血管浸潤例に対し血管合併切除再建を行った場合, 組織学的治癒度は向上するが予後の向上には結びついていないことが示された.肝門部大血管浸潤は予後を大きく左右する因子と考えられ, 血管合併切除再建を伴う積極的切除のみではすべての症例に十分な予後向上は望めないと考えられた.
  • 山田 一隆, 丹羽 清志, 鮫島 隆志, 春山 勝郎, 桂 禎紀, 長谷 茂也, 石沢 隆, 島津 久明
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2777-2782
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    直腸癌の術後排尿・性機能障害とストーマ障害についてアンケート調査を行い, 回答を得られた73例の成績を分析した.排尿困難と残尿感は肛門括約筋温存術式より直腸切断術後に多く発生し, 腸骨動脈領域郭清例での発生率はそれぞれ38%, 34%であり, 非郭清例の8%, 8%に比べ高頻度にみられたが, 自律神経温存手術では認められなかった.また, 男性に比べ女性で排尿障害の出現率が低い傾向が認められた.性機能障害は前方切除術よりも直腸切断術および貫通・重積術式で多く認められた.男性の人工肛門造設例での性生活障害の出現率は87%であり, 非造設例の44%に比べ多く, また女性の症例でも同様の結果が得られ, 心因性の障害の関与が推測された.年齢層別では高齢者ほど性機能障害の出現が高頻度に認められた.ストーマ障害では, 位置異常の訴えは3%と少なく, 周囲皮膚障害は24%と比較的高率に認められた.
  • 山口 明夫, 伊井 徹, 北川 裕久, 竹川 茂, 石田 哲也, 西村 元一, 神野 正博, 小坂 健夫, 米村 豊, 三輪 晃一, 宮崎 ...
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2783-2786
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    固有筋層深達直腸癌 (以下pm直腸癌) についてリンパ節転移状況を検討し, 機能温存術式選択の上で参考となる術前の所見を検索した.pm直腸癌32例の占居部位は直腸s状部 (Rs) 8例, 上部直腸 (Ra) 4例, 下部直腸 (Rb) 20例で, そのリンパ節転移率には差がみられなかったが, 側方向転移はRbの1例にみられたにすぎなかった.また腫瘍径では3cm以下の症例には転移はみられなかった.肉眼型, 組織型とリンパ節転移率には差はみられなかった.DNA ploidy patternをみると, diploid症例ではリンパ節転移率が8.3%と低率であったのに対して, aneuploidでは31.3%と高率であり, 転移程度をみてもn2の2例はすべてaneuploidであった.
    以上よりpm直腸癌は原則として, 機能温存術式の適応となるが, 占居部位Rbで, 3cm以上のaneuploid症例では拡大郭清が必要であると考えられた.
  • 清木 孝祐, 沢井 清司, 萩原 明於, 佃 信博, 米山 千尋, 谷口 弘毅, 高橋 俊雄
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2787-2792
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    マウス腹水肝癌 (MH134) をC3Hマウス左後肢足背に移植して, 左膝窩リンパ節および腰部リンパ節の転移モデルを作製し, マイトマイシンC吸着活性炭 (MMC-CH40) のリンパ節内直接注入によるリンパ節転移の化学療法について検討した.移植後9日目に左膝窩リンパ節よりMMC-CH40を0.05ml (MMC量: 25μg/mouse) 注入し, MMC-CH群とした.注入1時間後のMMCHCH群の腰部リンパ節内MMC濃度は, 0.26μg/gとなり, MMC水溶液リンパ節内注入群, MMC水溶液腹腔内注入群に比べ著明に高濃度であった.MMC-CH40注入後4日目に摘出した腰部リンパ節の平均重量は, 対照群に比べて有意に低値を示し, 組織学的転移面積も, 対照群に比べ有意に小さかった.以上よりマイトマイシンC吸着活性炭のリンパ節内直接注入法は, リンパ節転移の治療法として有用であると思われた.
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 宮下 薫, 岩崎 善毅
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2793-2797
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    無痛性の腹部腫瘤を主訴とする64歳の女性に対し諸検査を施行したところ, 胃壁外に発育する胃平滑筋肉腫であるという組織診を得た.開腹所見では胃体部大彎より壁外に発育した有茎性の, 13.5×12.5×10.5cmの大きさの腫瘍であった.リンパ節転移のないことを確認し, 胃の楔状切除を行った.術後6年目に左季肋部の腫瘤に気付き来院した.今回も同様に諸検査を行ったところ, 大網あるいは結腸間膜に再発した胃平滑筋肉腫と診断し開腹した.腫瘍は結腸間膜に接して発育した径7cmの大きさであり, 結腸問膜前葉を含め腫瘍摘出術を行った.病理組織学的には前回と同様の胃平滑筋肉腫の像であった.再発の原因は腫瘍の局所切除や剥離面における腫瘍細胞の残存ではなく, 腹腔鏡検査時の穿刺吸引による腫瘍細胞の撒布が主たる原因と考えられた.
  • 佐藤 徹, 茂木 好則, 東 弘志, 津嶋 秀史, 河村 正敏, 小池 正
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2798-2802
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃脂肪腫は比較的まれな疾患であるが, 今回, その直上粘膜にIIa型早期胃癌を併発した1例を経験したので報告する.
    症例は77歳, 女性.健診の胃内視鏡検査にて異常を指摘され, 精査目的にて入院.胃角上部小弯側前壁寄りに胃粘膜下腫瘍を認め, その直上粘膜にIIa型早期胃癌を併発しており, 胃亜全摘手術を施行した.
    病理組織学的には粘膜下層の脂肪腫およびその直上の粘膜内にとどまる中分化型腺癌と診断された.胃脂肪腫に胃癌を併発した症例は, 本邦では17例が報告されているにすぎない.しかも直上の粘膜に胃癌が発生した報告はなく, きわめてまれな症例と思われた.
  • 勝山 新弥, 坂本 隆, 勝木 茂美, 斉藤 文良, 広川 慎一郎, 魚谷 英之, 山下 巌, 藤巻 雅夫
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2803-2807
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    71歳の女性で軸捻転症を伴った胃をヘルニア内容としたまれなLarrey孔ヘルニアの1手術例を経験した.術前の上部消化管造影X線検査で胃は逆α上を呈しており短軸性の胃軸捻症を起こしていたが, 経腹的に手術を施行し経過は順調であった.胸骨後ヘルニアは全横隔膜ヘルニアの約2~3%といわれ, 本邦報告例は本症例をくわえ1989年2月までに171例を認めた.男女比は112で女性に多く, 左右別頻度では右側が76.0%, 左側が9.9%, 他の14.1%は, 中央, 両側, 不明であり右側が多かった.ヘルニア内容として横行結腸・大腸, 大網, 肝, 小腸, 胃, の順におおいことから注腸造影X線検査は本症の診断に重要と思われた. 経胸, 経腹手術の頻度は経胸的47.5%, 経腹的44.0%であるが, 開胸後開腹となった症例はあるが開腹後開胸となった症例を認めないことから術前診断がつけば開腹手術が望ましいと思われた.
  • 陳 孟鳳, 弘中 武, 林 隆志, 小野 眞, 堀 勝文, 荻野 賢二, 長尾 泰考, 奥村 悟
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2808-2812
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性.左胸部痛と発熱を主訴として本院内科を受診し膿胸の診断にて入院した.膿胸は胸腔ドレーン留置による洗浄療法で寛解したが, 各種画像診断にて肝外側区域の肝内結石症による胆道感染から左膿胸に発展したものであると診断した.自験例における肝内結石症を病型分類で示すと [IE・L・S2l-m・D2lm], Sp0となりさらに外側区域の萎縮を認めたので治療として肝外側区域切除を選択した.自験例は胆道感染としては興味ある経過をとった症例でありまた治療については肝切除のよい適応であった.
  • 森山 茂, 森 孝郎, 梅枝 覚, 増田 亨, 下野 一子, 池田 哲也
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2813-2817
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    私どもは腹部超音波検査にて門脈左枝臍部を欠き, 右前区域枝に臍部と類似した盲端を持ち, 同部に肝円索の進入を認める肝内門脈走行異常を4例経験した.この内2例は開腹術が行われ, 肝内索より左側にて肝床を形成している左側胆嚢であった.本邦では自験例を含め29例の左側胆嚢の報告を認め, 門脈走行について記載のある7例中4例に自験例の様な肝内門脈走行異常を認める.このような門脈走行異常は, 門脈発生過程で通常は消褪する右臍静脈が消褪せず残存し, 肝円索になったために起こると考えられ, この時は胆道発生過程が正常でも胆嚢は肝円索より左側に位置しうる可能性がある.門脈走行の記載のある左側胆嚢7例中4例に門脈右枝に臍部を認める肝内門脈走行異常を認めたことより, 左側胆嚢の発生機序にはGrossの説のほかに門脈発生異常が関与するのではないかと考える.
  • 道伝 研司, 大村 健二, 疋島 寛, 広瀬 宏一, 中村 寿彦, 渡辺 透, 岩 喬
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2818-2822
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    局所性門脈圧亢進症を伴った膵尾部の仮性嚢胞の1例に対し, 手術前後にendoscopic ultrasonography (以下EUSと略) を施行し, 術式の決定および胃静脈瘤の改善の評価に有用であったので報告する.患者は42歳男性.主訴は左上腹部痛.abdominal ultrasonography (以下USと略) および腹部のcomputed tomography (以下CTと略) にて膵尾部の約5×4cmの嚢胞と脾腫を認めた.US, CTをはじめとして, 術前の種々の画像検査では嚢胞に悪性所見は認められなかった.一方, 胃内視鏡検査, EUSにて胃穹窪部に限局した静脈瘤を認めた.手術術式は静脈瘤損傷の危険が少ない嚢胞空腸吻合術を選択した.術後26日目に施行したCTでは, 脾腫の改善傾向を認めた.術後のEUSでは, 術前にみられた胃静脈瘤は数, 大きさともに減少していた.膵尾部仮性嚢胞症における手術術式の決定, 術前後の局所性門脈圧亢進症の評価にEUSは有用と思われた.
  • 長谷川 順一, 大口 善郎, 荻野 信夫, 福田 宏嗣, 松宮 護郎, 中場 寛行, 奥村 賢三, 越智 昭博, 大下 征夫, 小林 春秋男 ...
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2823-2827
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    当院で経験したCrohn病手術症例9例の成績について検討した.初回手術例の手術理由は急性穿孔4例, 膿瘍形成1例, 狭窄3例, 出血1例であった.手術術式は全例主病変から10cm以内を切除断端とする小範囲腸切除を行った.術後症状再発は直死例1例を除く8例中4例に認められ, 1例には2度の再手術を行った.本症例に対しては再手術の際short bowel syndromeを避けるため小腸の狭窄性病変に対してstrictureplastyを行ったが, 後日同部に再発を認め, 再々手術の際, 切除を余儀なくされた.現在生存中の6例は術後観察期間が1年5か月~15年7か月と短いが全例就労可能となっている.
    Crohn病に対する手術は合併症に対する治療法であることを念頭において過度の侵襲を加えない術式を選択すべきである.
  • 小出 圭, 加藤 良隆, 清光 六郎, 三浦 義夫, 岡本 太郎, 則行 敏生, 岩本 俊之
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2828-2832
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は, 比較的まれな疾患であるが, われわれは最近2手術症例を経験したので報告する.症例1は59歳男性, イレウス症状で発症, CAI9-9の高値および, 小腸造影でTreitz靱帯より10cm肛側で全周性の狭窄を認めた.腫瘍は同部の空腸にあり, 空腸および回腸の腸間膜付着部側に動脈血行性転移と思われる小病巣を多発性に認めた.原発巣を含む空腸部分切除を行いえた.術後1年5か月で死亡した.症例2は53歳女性.約6か月間心窩部痛, 悪心, 嘔気が続き, イレウス症状が出現, 小腸造影で空腸末端付近での閉塞を認めた.腫瘍はTreitz靱帯より130cm肛側の空腸にあり, napkinringconstrictionを認め, 腹膜播種もあった.空腸部分切除を行った.術後1年11か月で死亡した.
  • 唐原 和秀, 内田 雄三, 柴田 興彦, 村上 信一, 葉玉 哲生
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2833-2836
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回腸のblind loopに発生した多発性腺癌の1例を報告した.
    症例は77歳女性で52歳時 (25年前) に回腸末端炎によるイレウスに対して, 回腸横行結腸吻合術を受けた.昭和60年9月より, 胃潰瘍にて近医で治療をうけていたが, 昭和62年4月, 胃潰瘍穿孔による腹膜炎で緊急手術が施行された.広範囲胃切除術ならびに胃十二指腸吻合術 (Billroth I法) とともに, 回腸上行結腸のblind loop部の切除と回腸横行結腸吻合術を行った.
    切除標本の肉眼所見では, 回盲弁 (Bauhin弁) の変形と高度の狭窄が見られ, blind loopを形成している回腸粘膜に多発性の潰瘍性病変がみられた.組織学的には, 多発性潰瘍6個のうちの3個に分化型腺癌が認められ, 腸間膜まで浸潤していた.Crohn病や, 結核などの所見はなかった.術後の経過は順調であったが, 11か月目に他院にて, 癌再発で死亡した.
  • 岡田 和也, 岩松 正義, 西野 豊彦, 筑波 貴与根, 清水 力, 松尾 俊和
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2837-2841
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は比較的まれな疾患であり, 特有な臨床症状に乏しいため, 術前に確定診断を得ることはきわめて困難である.
    今回われわれは, 年齢的にも発育様式的にもきわめてまれな原発性虫垂癌の1例を経験したので報告する.症例は17歳女性で, 主訴は上腹部痛.高度の貧血と右下腹部腫瘤を認めたため, 注腸造影検査や大腸内視鏡検査により盲腸癌と診断した.R3のリンパ節郭清を伴う右半結腸切除術を施行し, 切除標本の病理組織学的検索により, 盲腸内腔へ内翻性に発育した虫垂原発の結腸型, 中分化型腺癌と判明した.また全てのリンパ節において転移は認められなかった.
    中高年者と同様, 若年者においても, 右下腹部腫瘤や疼痛を繰り返すような症例に対しては, 本症の可能性も考慮して検査をする必要があると思われる.また原発性虫垂癌においては, リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術や回盲腸部切除術が望ましい.
  • 川原田 嘉文, 岩田 真, 山際 健太郎, 横井 一, 野口 孝, 水本 龍二
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2842
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
  • 板橋 道朗, 亀岡 信悟, 中島 清隆, 泉 公成, 浜野 恭一, 河野 敦
    1990 年 23 巻 12 号 p. 2843
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
feedback
Top