日本公衆衛生雑誌
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50 巻 , 3 号
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論壇
総説
  • 関川 暁, 岡村 智教, 門脇 崇, 三ツ浪 健一, 村田 喜代史, 柏木 厚典, 中村 保幸, 神田 秀幸, Daniel EDMUNDO ...
    2003 年 50 巻 3 号 p. 183-193
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
     虚血性心疾患は米国において死亡原因の第一位であり,1999年の死亡者数53万人,内25万人は病院外死亡であり,そのほとんどは心突然死である。心突然死の内,以前より虚血性心疾患の症状を認めるものは半数に満たない。古典的危険因子(コレステロール,喫煙,血圧,糖尿病)は,明らかにリスクの高い者,また低い者を選別する上で有効であるが,大部分の者はどちらでもない中間層に分類されるため,一般住民を対象としたスクリーニング手段としては不十分である。これは,同一レベルの危険因子を有していても,危険因子への曝露期間,古典的危険因子以外の危険因子,遺伝子多型,遺伝子と環境因子との相互作用等の影響と考えられ,危険因子そのものよりも,危険因子への曝露の結果である潜在的動脈硬化所見を用ることで,より有効に発症予測,予防を行い得る可能性が検討されている。
     電子ビームコンピュータ断層撮影(EBCT)による冠状動脈石灰化の測定は非侵襲的に冠状動脈の潜在的動脈硬化を定量出来,一般住民を対象とした虚血性心疾患の初回発症予防におけるスクリーニングの手段として,米国で注目されている。本論文では,EBCT の意義,また初回発症予防における EBCT の有効性を評価した疫学研究を概説した。EBCT は非常に有用である可能性があるものの,現状では,十分な結論が得られていない。
     日本における虚血性心疾患死亡率は先進国の中でいまだ低いが,戦後世代である,30歳代,40歳代の男性に焦点を当てると,日米において,血圧,コレステロール値に関して大きな差はなく,また日本の喫煙率は米国の約 2 倍である。さらに,日本の剖検による検討からは,男性の20-30歳代で動脈硬化が増加していることが指摘されている。日本において,戦後世代の一般住民における,潜在性動脈硬化の程度を評価し,かつ,米国の一般住民と比較することは,日本の虚血性心疾患の今後の動向を予測する上で非常に重要であると考えられ,その評価手段として EBCT は非常に有用であると思われる。
  • 浜島 信之, 湯浅 秀道
    2003 年 50 巻 3 号 p. 194-207
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    PurposeInterleukin (IL)-1A C-889T, IL-1B C-511T, IL-1B C-31T, IL-1B C3954T, and IL-1RN 86-bp VNTR (variable number of tandem repeats) are polymorphisms potentially influencing IL-1β production. This review summarizes 1) the biological roles of IL-1β, 2) allele frequencies of the polymorphisms, and 3) the reported associations between these polymorphisms and disease risk.
    Methods Papers were obtained from PubMed with keywords “IL-1, polymorphism”, as well as from the references in each paper. The most relevant papers were then selected. In this review, a narrative approach was adopted.
    Results IL-1β is a multifunctional proinflammatory cytokine, whose signal is transduced through IL-1 receptor I (IL-1RI) on the cell surface. Binding levels are influenced by the IL-1 receptor antagonist (IL-1Ra), IL-1RII (decoy receptor with no signal transduction), soluble IL-1RI, and soluble IL-1RII. IL-1B encoding IL-1β is located on chromosome 2q14, along with IL-1A encoding IL-1α and IL-1RN encoding IL-1Ra. The minor alleles, IL-1A -889T, IL-1B 3954T, and IL-1RN 2R, are rarer in Japanese than in Caucasians, while IL-1B -511T and IL-1B -31C are more frequent. These polymorphisms have been reported to have potential associations with the risk of diseases, such as stomach cancer, breast cancer, inflammatory bowel, Alzheimer's, and osteoporosis.
    Discussion Although there are many inconsistent findings on associations with the polymorphisms, IL-1B C-511T and the tightly linked T-31C may be useful for predicting the risk of diseases with an inflammation basis among Japanese.
原著
  • 岡 浩一朗
    2003 年 50 巻 3 号 p. 208-215
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
     行動変容のトランスセオレティカル・モデル(TTM)は,人がどのように健康行動を変容するかを理解するために用いられてきた。元々は,不健康な習慣的行動(たとえば,喫煙)の変容を説明あるいは予測するために開発されたものであった。最近では,身体活動・運動行動の研究分野においても TTM を利用することが支持されている。本研究は,日本人中年者を対象に,運動行動における TTM の構成要素について検討した。特に,運動行動の変容段階と運動セルフ・エフィカシーとの関係を調べた。
     初めに,本研究では運動セルフ・エフィカシーを査定するための尺度を開発した。467人の中年者が,調査票に回答した。ステップワイズ変数選択による探索的因子分析の結果,5 項目 1 因子からなる尺度が開発された。計量心理学的分析の結果,この尺度が高い信頼性と妥当性を有することが示唆された。
     次に,変容段階とセルフ・エフィカシーの関係を検討するため,中年者808人を対象に横断的調査が行われた。運動行動の変容段階と運動セルフ・エフィカシーを査定する調査票を実施した。運動行動の変容段階分類と運動セルフ・エフィカシーとの間に有意な関連が認められた。特に,本研究の対象者におけるセルフ・エフィカシー得点は,無関心期に属する人が他の段階の人と比較して最も低く,維持期の人が最も高かった。一般的に,段階を通じて直線的なパターンで変化した。
     本研究では横断的調査デザインおよび非無作為サンプル抽出法を用いているために結果の解釈が制限されるが,本研究と先行研究の結果の類似性は,運動行動の変容段階と運動セルフ・エフィカシーの関係が,年齢や文化の違いに関わらず支持されることを示している。これらの関係を正しく理解することによって,健康増進に関わる専門家は身体活動・運動の増進に対する働きかけを改善させることができる。
  • 横山 美江, 山城 まり, 大木 秀一
    2003 年 50 巻 3 号 p. 216-224
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,三つ子の出生体重・出生身長を分析し,それらに関連する要因について検討した。
    方法 調査対象は,当研究室で把握し,研究の主旨説明に同意の得られた1986年以降に出生した三つ子371組,1113人である。調査内容は,三つ子の出生体重,出生身長,性別,出生順位,分娩方法,在胎週数,母親の身長,妊娠前の体重,分娩時の母体体重,および不妊治療等である。なお,母親の妊娠前体格については,body mass index (BMI)と算出した。
    成績 本調査における三つ子の出生体重および出生身長は,それぞれ平均1763.3±420.6 g と42.2±3.36 cm であった。また,その96%以上が低出生体重児,さらに24.4%が極低出生体重児,4.9%が超低出生体重児として出生していた。三つ子の出生体重は,在胎週数の他に,男子が女子より,異性の組合せが同性の組合せより,経膣分娩で出生した三つ子が帝王切開で出生した三つ子よりも有意に重かった。また,第 3 子が 1 番軽く,第 2 子,第 1 子の順で重くなっていた。妊娠前の BMI が26 kg/m2 より大きい肥満型の妊婦から出生した三つ子は,BMI が19.8 kg/m2 未満の痩せ型の妊婦から出生した三つ子よりも出生体重が有意に重かった。また,分娩時母体体重増加量は出生体重と有意な相関が認められた。三つ子の出生身長は,在胎週数の他に,男子が女子より,異性の組合せが同性の組合せより有意に大きかった。妊娠前に肥満型の妊婦から出生した三つ子は,痩せ型の妊婦から出生した三つ子よりも出生身長が有意に大きかった。さらに,三つ子の出生身長は,分娩時母体体重増加量ならびに不妊治療とも関連が認められた。
    結論 三つ子の出生体重ならびに出生身長は,単胎児および双子よりもさらに低値を示した。三つ子の出生体重は在胎週数以外に三つ子の性,出生順位,母親の妊娠前体格,分娩方法,分娩時母体体重増加量の影響を受けており,出生身長は在胎週数以外に三つ子の性,母親の妊娠前体格,不妊治療の影響を受けてることが明らかとなった。
資料
  • 田島 静, 千々和 勝己
    2003 年 50 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 初夏,学校給食が原因で発生した SRSV 集団食中毒の事例についてその概要を紹介した。的確な初動調査と対応の重要性と,カキ非関連性 SRSV 食中毒の感染経路および調理従事者の給食喫食について検討した。
    方法 平成11年 6 月校医と教育委員会から,欠席者数が急増しているという情報提供があった。探知日から 1 週間前までの欠席状況,欠席者・早退者の状況把握,給食献立等の調査を行った。探知日夕方までに把握した概要が,嘔吐あるいは腹痛が初発症状で,1 日以上にわたる症状発現期間であったので,直ちにウイルス検査も併せて実施した。引続いて毎日健康調査を行い,健康状況の変化,喫食状況等を入力し児童・教職員のデータベースを整備した。
    結果 児童・教職員のどちらからも有症状者がみられ,児童の発症率は30.8%,教職員は14.7%であった。有症状者は 6 月 9 日 1 時から11日24時にかけて発生していた。児童の主な症状は,腹痛,嘔吐,発熱であった。児童13人中 6 人,調理従事者 6 人中 1 人の便から SRSV 遺伝子が検出された。遺伝子解析を行ったところ,すべて Genogroup II型に属する Hawaii type であった。症状の時間集積性,SRSV の潜伏時間,給食の実施状況および SRSV 遺伝子が検出された調理従事者が米飯給食時のみの臨時職員であったことから,本食中毒の原因食品は 6 月 8 日の給食と推定した。
    結論 SRSV の非流行期である夏季でも,集団の疫学的・臨床的概要を早くつかみ,原因微生物として SRSV も考慮し検査を実施することが必要である。今後,SRSV によるカキ非関連性食中毒の集団発生を予防する方策としては,調理従事者の十分な手洗いと非加熱食品の取扱い時の手袋着用を啓発することが重要である。本事例では,調理従事者の便からも SRSV 遺伝子が検出されたが,調理従事者が当該施設で調理された食品を喫食していたため原因究明に至らなかった。集団給食施設の調理従事者は当該施設で調理された食品を喫食しないことを厚生労働省・文部科学省併せて,御指導願いたい。
  • 田中 久子, 笹原 賢司, 勢井 雅子, 新家 利一, 石本 寛子, 津田 芳見, 中堀 豊
    2003 年 50 巻 3 号 p. 234-245
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 徳島県医師会生活習慣病予防対策委員会では,小児期から生活習慣病予防対策を効果的に推進するために,県下の児童生徒の健康状態の現状を把握することとなった。手始めに,基礎データとして,県下全域の小中学生の体格の現状について調査した。
    方法 調査は,徳島県におけるすべての小中学校の児童生徒を対象に行った。解析にあたり,養護学校を除くほぼすべての小中学校の児童生徒74,859人のデータを使用した。収集した身長,体重の数値より,BMI を算出し,さらに,平均値,標準偏差,変動係数を算出し,正規性の検定,母平均の検定を学年ごとに行った。男女とも身長,体重,BMI それぞれにおいて,全体および学年別にヒストグラムを作成し,得られた身長,体重,BMI の分布について考察した。
    結果 学年別の身長分布は,小学 2 年生を除いて正規分布であり,学年が進むにつれて分布域を増した。変動係数が最も大きい学年は,男子は中学 1 年生,女子は小学 5 年生であった。学年別の体重分布は,身長に比べてピークが急峻であるが,各学年とも重い方に裾野を持つ分布で,学年が進むにつれてバラツキを増した。学年別の BMI 分布は,学年が進むにしたがって,BMI の値も徐々に増加していくが,形の変化はあまりみられなかった。全体の身長分布は,男女とも明らかに二峰性のヒストグラムとなった。全体の体重分布も二峰性であるが,身長分布ほど,明確な谷が観察されなかった。全体の BMI 分布については,男女ともにバラツキの少ないヒストグラムで,身長や体重のような凹凸はみられなかった。
    結論 身長,体重,BMI のそれぞれ,また,全体分布について検討し,小児の成長に関して知見を得た。また,徳島県の特性が明らかになった。今回得られた資料は今後の活動の基本データとなる。
  • 佐藤 牧人, 森泉 茂樹, 長屋 憲, 桜山 豊夫, 小柳 博靖, 岡澤 昭子, 池田 和功, 川島 ひろ子, 岡田 尚久, 竹之内 直人, ...
    2003 年 50 巻 3 号 p. 246-255
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 医療法第25条に基づく医療機関への立入検査と保健所機能に関する現状および課題と今後のあり方について検討した。
    方法 平成12年度の立入検査の状況について全国592の保健所長および121の自治体主管担当部局へ32項目からなる質問調査を行った。513保健所および64主管部局より得た回答を分析した。
    結果 1) 平成12年度において調査し得た保健所管内8916病院のうち92.8%に立入検査が実施された。実施主体は 8 割以上が保健所であったが,実施主体,立入職員数,医師の同行,所要時間など実施方法に自治体間で差異が見られた。2) 病院規模に応じた立入検査の人員数と時間は必ずしも十分でない。3) 医療監視員や保健所長などに対する研修は極めて不十分である。4) 各自治体における立入検査の方法や指導基準の標準化の取り組みは 6 割強の自治体で行われ,院内感染や医療事故防止対策に取り組む保健所が徐々に増えている。5) 医師標準数の不足など指導事項改善の実効性が確保されていない。6) 立入検査に関連する情報開示について今後積極的に進めていくべきとの意見が多い。7) 立入検査の性格を法に基づく管理指導のみならず自主管理支援と考える保健所長が過半数を超えている。
    結論 自治体および保健所が立入検査の充実強化を図っていく上で現状には解決すべき数多くの課題がある。今後のあるべき方向性について以下のように提言する。
     1) 基本的に検査すべき最低限の事項の整理を全国的に行い,その上で自治体は地域事情に見合った検査体制を構築すべきである。2) 効率性,専門性,適切性,実効性の観点から検査対象,立入方法,指導基準などを見直す必要がある。3) 立入検査に携わる職員の資質向上について研修の充実など早急に考慮すべきである。4) 医師の同行を必須とすべきである。5) 医療の安全確保は医療機関の責任で行われるべきだが,自治体および保健所も自主管理支援の立場から積極的に関与すべきである。6) 市民の立場に立った情報公開のあり方について検討すべきである。
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