日本公衆衛生雑誌
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53 巻 , 2 号
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論壇
  • 湯浅 資之, 中原 俊隆
    2006 年 53 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
     プライマリヘルスケア(PHC)とヘルスプロモーション(HP)を文献考証すると,その中心概念の一つに“エンパワーメント”があることがわかる。パワーには多面性があり,パワーされる主体が誰であるかによって“エンパワーメント”の定義は多様に存在し得る。それゆえ,“エンパワーメント”を内包する PHC と HP も多様な戦略的特性の解釈が成り立つ。たとえば,“エンパワーメント”に対する軽重認識の違いから包括的 PHC と選択的 PHC の齟齬が生じ,パワーの多面性から HP 活動の幅広いスペクトルが可能なのである。とりわけブラジルにおける HP 活動の政治的側面の主張は,貧富格差の著しい社会矛盾の上に,Paulo Freire に始まる“政治的エンパワーメント”を強調する健康教育思想の基盤を背景とした HP 戦略の特性であると思われる。
原著
  • 藤原 佳典, 天野 秀紀, 熊谷 修, 吉田 裕人, 藤田 幸司, 内藤 隆宏, 渡辺 直紀, 西 真理子, 森 節子, 新開 省二
    2006 年 53 巻 2 号 p. 77-91
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 在宅自立高齢者が初回介護保険認定を受ける関連要因を,要介護認定レベル別に明らかにする。
    方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象にした面接聞き取り調査(2000年11月実施,初回調査と称す)に1,544人が応答した。ベースライン調査時の総合的移動能力尺度でレベル 1(交通機関を利用し一人で外出可能)に相当し,未だ要介護認定を受けていない1,225人をその後 3 年 4 か月間追跡した。この間,介護保険を申請し要支援・要介護 1 と認定された者を軽度要介護認定群,要介護 2~5 の者を重度要介護認定群,未申請で生存した群(以降,イベント未発生群と称す)に分類し,男女別にイベント未発生群と軽度あるいは重度要介護認定群との間で初回調査時の特性を比較した。つぎに Cox 比例ハザードモデル(年齢,老研式活動能力指標の手段的自立,慢性疾患の既往は強制投入し,単変量分析で有意差のみられた変数すべてをモデルに投入したステップワイズ法)を用いて,要介護認定に関連する予知因子を抽出した。
    成績 追跡対象者のうち初回調査時に BADL 障害がなく,かつ申請前の死亡者を除く1,151人を分析対象とした。うちイベント未発生群は1,055人,軽度要介護認定群は49人,重度要介護認定群は47人であった。男女とも共通して在宅自立高齢者の軽度要介護認定に関連する予知因子として高年齢と歩行能力低下(男は「1 km 連続歩行または階段昇降のいずれかができないまたは難儀する」のハザード比が7.22[95%CI 1.56-33.52] P=0.012;女は「1 km 連続歩行・階段昇降ともにできないまたは難儀する」のハザード比は3.28[95%CI 1.28-8.42] P=0.014)が,また重度要介護認定の予知因子として高年齢と手段的自立における非自立(4 点以下のハザード比は男で3.74[95%CI 1.59-8.76] P=0.002;女で3.90[95%CI 1.32-11.54] P=0.014)が抽出された。また,男性のみ重度要介護認定に重度認知機能低下が,女性のみ軽度要介護認定に入院歴と咀嚼力低下が抽出された。
    結論 在宅自立高齢者の要介護認定の予知因子は,高年齢を除き,大半は介護予防事業により制御可能であろう。今後,これら介護予防事業の効果が学術的に評価されることが期待される。
  • 三觜 雄, 岸 玲子, 江口 照子, 三宅 浩次, 笹谷 春美, 前田 信雄, 堀川 尚子
    2006 年 53 巻 2 号 p. 92-104
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 在宅高齢者の検診受診行動とソーシャルサポート・ネットワークとの関連性について,社会的背景の異なる三地域で男女別・地域別に検討する。
    方法 北海道内の都市部・札幌市(70歳),旧産炭過疎地域・夕張市(69歳・70歳),都市近郊農村・鷹栖町(69歳以上75歳未満)の三地域で調査・集計を行った。
     調査項目は,社会的活動性として各種団体(町内会,老人クラブ等)への加入状況および活動性,所属する団体での役職経験の有・無,社会への関心の度合い(広報誌,新聞,選挙・政治への関心など),趣味および生きがいの有・無,別居子および近隣との接触頻度,親友・親密な親戚の有・無,ソーシャルサポートの授受の状況として,手段的及び情緒的サポート(困窮時の援助者,および悩み事が生じた際の相談相手の有・無および人数),手段的・情緒的サポートの提供の有・無,等の項目について,自記式で回答を得た。χ2 検定と Mantel-Haenszel の検定を用いて,地域で層別化し男女別に検診「受診群」と「非受診群」を比較した。
    結果 男性・女性の両者ともに,「受診群」は「非受診群」に比較して,町内会・老人クラブ等の各種団体へ加入し,活発に活動している者,所属する団体での役職経験が有り,行政の広報誌をよく読み,政治への関心を有する者の比率が高く,検診受診行動と有意な関連が認められた。男性のみでは,選挙への関心が有る者,趣味や生きがいの有る者の比率が高かった。女性の「行った活動状況」についてのみ地域差を認め,鷹栖町では「受診群」において,行った活動が有りの者の比率が高かったのに対し,札幌市・夕張市では「受診群」・「非受診群」で差が無かった。
     男性・女性に共通して「受診群」は「非受診群」に比較して,親友を有する者の比率が高かった。男性のみでは,さらに「受診群」で親密な親戚を有する者ならびに近隣とより親密な関係を有する者の比率が高く,検診受診行動との有意な関連が認められた。
     男性においてのみ「受診群」は「非受診群」に比較して,手段的・情緒的サポートを多く受領しているだけでなく,さらにサポートの提供を自らしている者の比率が高く,検診受診行動と有意な関連を認めるという結果が得られた。しかし,女性ではいずれの項目も有意な関連を認めなかった。
    結論 高齢者の検診受診行動は,ソーシャルサポート・ネットワークが関連を有することが明らかになった。
公衆衛生活動報告
  • 加藤 昌弘, 川戸 美由紀, 世古 留美, 橋本 修二, 岡部 信彦
    2006 年 53 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 百日せき・ジフテリア・破傷風混合(三種混合)1 期 1 回,2 回と 3 回,ポリオ 1 回と 2 回,麻しんの 6 種の予防接種について,接種月齢と接種順の状況を示すとともに,標準接種年齢内の接種完了に対する 1 番目の予防接種の接種月齢および接種順の関連性を検討した。
    方法 愛知県大府市において,2 歳・4 歳・6 歳児から無作為抽出した900人に対し,予防接種の接種状況を郵送法により調査した。回収者757人の中で,23か月齢末までの 6 つの予防接種状況が得られた721人について,接種月齢と接種順を検討した。
    結果 三種混合 1 期 1 回,2 回と 3 回,ポリオ 1 回と 2 回,麻しんの予防接種について,23か月齢末の接種率は77~93%であり,月齢別の接種率のピークは,それぞれ 6, 8, 10, 5, 10, 12か月齢であった。接種順としては,ポリオ 1 回,三種混合 1 期 1 回,2 回と 3 回,ポリオ 2 回,麻しんの順が21%と最も多かった。6 種の予防接種全体の標準接種年齢内接種完了率は37%であり,1 番目の予防接種の接種月齢が遅い児,また,ポリオ 2 回が最後となる接種順の児で低かった。
    結論 予防接種の接種月齢と接種順の状況を示した。1 番目の予防接種の接種月齢と接種順が標準接種年齢内の接種完了に関連することが示唆された。
  • 植木 章三, 河西 敏幸, 高戸 仁郎, 坂本 譲, 島貫 秀樹, 伊藤 常久, 安村 誠司, 新野 直明, 芳賀 博
    2006 年 53 巻 2 号 p. 112-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 後期高齢者が自宅において一人で実施可能であり,転倒予防に必要な脚筋力や身体バランス能力,柔軟性などを維持改善するために有効な体操プログラムをつくる転倒予防教室を開催し,参加した後期高齢者の評価をもとに動作を選定しプログラムを作成した。本論では,この転倒予防体操プログラムの作成の経緯と内容を紹介するとともに,その効果について検討した。
    方法 宮城県 S 町の75歳以上の高齢者で,介護保険の要支援および要介護認定者を除外した551人を対象とした。調査対象地域の中に介入地区と非介入地区を設定し,介入地区の対象者のうち「過去 1 年の転倒歴あり」と「最大歩行速度が中央値より遅い」を基準として特に転倒の危険性があると思われる者85人(男性29人,女性56人)を抽出した。このうち転倒予防教室への参加を表明した者は40人(男性15人,女性25人)であった。参加者は,柔軟性の強化,脚筋力の強化,身体のバランス維持,つまずき防止の要素を勘案した30種類の体操を体験し,毎回教室終了後に体操の評価を行った。この転倒予防教室に参加した対象者への介入効果については,ベースライン調査から 1 年後に実施した面接調査および身体機能の測定の結果から分析を行った。また,作成された体操プログラムの運動強度として METS 値を算出した。
    成績 各体操の評価得点ランクをもとに教室参加者との協議により,立位ならびに床座位による10種類の体操と椅子を使用する 7 種類の体操を選定し,転倒予防体操プログラムを作成した。この体操プログラムの運動強度(METS)は,学生3.41±0.37,推進員3.16±0.47,後期高齢者3.08±0.49でありいずれの群間にも有意差はみられなかった。1 年間の転倒発生率は,教室参加者で教室開始前48.4%から教室終了後25.8%と低下し有意差がみられたが,不参加者では変化がみられなかった。また,開眼片足立ちの時間は,女性においてのみ,教室参加者で教室開始前から教室終了後に有意に延長し,不参加者では有意な変化はみられなかった。
    結論 今回の介入結果から,計12回の転倒予防教室を通じて作成された体操プログラムを自宅でも実践することによって,転倒発生率が低下する可能性が示唆された。
  • 栗山 進一, 島津 太一, 寳澤 篤, 矢部 美津子, 田崎 美記子, 物永 葉子, 境 道子, 三浦 千早, 伊藤 文枝, 伊藤 孝子, ...
    2006 年 53 巻 2 号 p. 122-132
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 糖尿病予防対策として個別健康教育が広く実施され効果を得ているが,本邦で実施されているプログラム例と海外のプログラム,とくに米国の Diabetes Prevention Program (DPP)のそれとでは大きな違いがあり,DPP では面接回数が多くより強力な介入を行っている。本研究の目的は,糖尿病予防の個別健康教育における面接回数の多寡による介入効果の短期的な差を検討することである。
    方法 対象は福島県耶麻郡西会津町の住民で,平成14年または平成15年の健康診断で空腹時血糖値が95 mg/dl 以上126 mg/dl 未満の値を示し,平成16年の事前検査で Body Mass Index (BMI)が23.0以上かつ空腹時血糖値126 mg/dl 未満・糖負荷後 2 時間血糖値200 mg/dl 未満(糖尿病型でない)で,がん,心筋梗塞,脳血管疾患,腎疾患の既往のない44歳から69歳までの男女25人である。居住地区を単位として面接回数の多い(月に 2 回:n=11)強力介入群と通常の面接回数である(月に 1 回:n=14)通常介入群とに無作為に割り付け,生活習慣の変容を通して少なくとも 7%以上の体重減少を目指した個別健康教育を 6 か月間実施した。
    成績 強力介入群と通常介入群との間で,介入前における基本属性に有意な差はみられなかった。介入の結果,体重が 7%以上減少したのは,強力介入群で 5/11人(46%),通常介入群で3/14人(21%)であった。体重は両群とも有意に低下し,強力介入群で−3.5 kg(P<0.0001),通常介入群で−1.8 kg(P=0.02)の変化がみられた。性,年齢,介入前の体重値を調整した両群の変化の差(強力介入群の変化−通常介入群の変化)は,−2.0 kg(95%信頼区間−4.0,−0.05;P=0.045)で統計学的に有意であった。BMI,皮下脂肪面積も,通常介入群に比べ強力介入群で有意により大きく低下した。一方,負荷後 2 時間血糖値およびその他の検査結果には両群間で統計学的に有意な変化の差はみられなかった。
    結論 6 か月間の介入による短期効果の点からみて,月に 1 回の面接指導と月に 2 回の面接指導はともに過体重者または肥満者の体重を減少させた。体重減少は面接指導を月に 1 回よりも 2 回行う方が 2 kg 大きく,強力な介入はより効果的な糖尿病予防に資する可能性が示唆された。
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