日本公衆衛生雑誌
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62 巻 , 3 号
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原著
  • 斉藤 雅茂, 近藤 克則, 尾島 俊之, 平井 寛, JAGES グループ
    2015 年 62 巻 3 号 p. 95-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 社会的孤立や孤立死の問題への関心は高い一方で,孤立状態の操作的定義に関する根拠は蓄積されていない。社会的孤立が健康の社会的決定要因の 1 つであることを考慮し,健康リスクが高まる交流の乏しさ(頻度)があるのかを明らかにすることを目的にした。
    方法 2003年10月に愛知県下 6 市町村における要介護認定を受けていない高齢者14,804人を対象にした AGES(Aichi Gerontological Evaluation Study,愛知老年学的評価研究)プロジェクトのデータの一部を用いた(回収率=50.4%)。性別・年齢が不明な人を除き,調査時点で歩行・入浴・排泄が自立であった12,085人について分析した。要介護認定・賦課データに基づいて,調査時点から2013年10月時点までの約10年間を追跡し,要介護状態(全認定および要介護 2 以上)への移行,認知症の発症と死亡状況を把握した。社会的孤立の指標には,別居家族・親族および友人と会う頻度と手紙・電話・メールなどで連絡を取り合う頻度を用いた。1 か月を4.3週と換算してすべての交流頻度を加算後,「月 1 回未満」から「毎日頻繁(週に 9 回以上)」群に分類した。
    結果 Cox 比例ハザードモデルの結果,調査時点での性別・年齢や同居者の有無,治療疾患の有無等を調整したうえでも,毎日頻繁群と比べて,月 1 回未満群では,1.37(95%CI:1.16–1.61)倍要介護 2 以上に,1.45(95%CI:1.21–1.74)倍認知症に,1.34(95%CI:1.16–1.55)倍早期死亡に至りやすいということが示された。月 1~週 1 回未満群でも同様に,いずれの健康指標とも有意な関連が認められたが,週 1 回以上の群では有意な関連は消失した。なお,調査後 1 年以内に従属変数のイベントが発生したケースを除外しても結果は大きく変わらなかった。同居者以外との交流頻度が月 1 回未満を孤立の基準とすると,高齢者の7.4%(男性で10.2%,女性で4.7%)が該当し,週 1 回未満を含めると15.8%(男性で21.2%,女性で10.6%)が該当した。
    結論 同居者以外との対面・非対面交流をあわせて週に 1 回未満という状態までがその後の要介護状態や認知症と関連し,月 1 回未満になると早期死亡とも密接に関連する交流の乏しさであることから,これらが社会的孤立の妥当な操作的定義であることが示唆された。
研究ノート
  • 井上 洋士, 高久 陽介, 矢島 嵩, 生島 嗣
    2015 年 62 巻 3 号 p. 106-116
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 HIV 感染告知をされる際に,受検者は HIV 感染告知担当者に,自身が推定する「実際の HIV 感染経路」を伝えているのかどうか,「実際の HIV 感染経路」と異なる感染経路を伝える関連要因は何かを明らかにすること,HIV 感染告知された受検者が,自身の推定する実際の経路をそのまま HIV 感染告知担当者に伝えられる告知の場をどのようにして作れるか,その考察を加えること。
    方法 無記名自記式質問調査である「HIV 陽性告知に関する調査」をウェブにおいて実施した。調査期間は2010年 9 月から12月までとした。日本国内在住の HIV 陽性者237人から得られたデータを分析した。「実際の HIV 感染経路」と異なる感染経路を HIV 感染告知担当者に伝えることに関連する因子の分析については,目的変数として「『実際の HIV 感染経路』と HIV 感染告知担当者に伝えた感染経路との相違」,説明変数として性別,年代,居住地域,感染経路,HIV 検査の承諾,HIV 感染告知年代,HIV 感染告知担当者の対応についての総合評価を各々投入して,粗オッズ比と95%信頼区間を算出した。
    結果 「実際の HIV 感染経路」と,HIV 感染告知担当者に伝えた感染経路は同じであったのは全体の75.1%,異なる感染経路を伝えたとする人は全体の17.7%であった。HIV 感染告知担当者に対して同性間性的接触と伝えた人のなかで実際にも感染経路が同性間性的接触である人の割合は97.5%であったのに対し,異性間性的接触と HIV 感染告知担当者に対して伝えた人のなかでは「実際の HIV 感染経路」も異性間性的接触である人の割合は64.3%,同性間性的接触も28.6%含まれていた。同性か異性か不明の性的接触と伝えた人のなかでは,実際には同性間性的接触である人が47.4%であった。HIV 感染告知担当者の対応についての総合評価が「良い」とした人に比して「悪い」とした人で,異なる感染経路を伝える人が有意に多くなっており,粗オッズ比2.51(95%CI:1.26–5.01)であった。
    結論 エイズ動向委員会による HIV 感染者数・AIDS 患者数における同性間性的接触者の割合は実際のものよりも低い可能性が推察された。受検者が「実際の HIV 感染経路」を HIV 感染告知担当者に伝えない要因として HIV 感染告知担当者の望ましくない対応が示され,受検者に正確に感染経路を打ち明けてもらうためにはそれらの改善の必要性がある。
  • 佐藤 祐佳
    2015 年 62 巻 3 号 p. 117-124
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,地域住民・養鶏農家の鳥インフルエンザに対するリスク認知を明らかにすることを目的とした。
    方法 無記名自記式質問紙調査で,地域住民310/1,000人(回収率31.0%)と養鶏農家198/976人(回収率20.3%)に実施した。主な調査項目は,感染症についての認知とリスクイメージである。リスクイメージは,恐ろしさ因子(4 項目,各項目 1 点から 7 点と配点)と未知性因子(4 項目)の平均得点を恐ろしさ因子得点,未知性因子得点として算出した。
    結果 感染症の認知では,SARS(OR=0.49 P=.003)で地域住民は養鶏農家に比べ有意に認知が低かった。感染症のリスクイメージにおいて有意差を認めた変数は,鳥インフルエンザの恐ろしさ因子(β=−0.89 P<.001),未知性因子(β=0.74 P<.001)であった。地域住民は鳥インフルエンザに対して,養鶏農家に比べて恐ろしさのイメージが低く,未知性のイメージは高かった。また養鶏農家は,未知性のイメージは低いものの,恐ろしさのイメージが高かった。
    結論 地域住民と養鶏農家の鳥インフルエンザのリスク認知の違いが明らかになった。
資料
  • 谷口 千枝, 田中 英夫
    2015 年 62 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 クイットラインは,禁煙を希望する喫煙者に対し,主として電話を通じた相談業務を行う禁煙のホットラインのことである。欧米先進国や東アジア諸国においては,すでに多くの国で実施されているが,日本での国レベルの運用はされていない。今後日本でクイットラインを整備するための方向性について考察することを目的に,諸外国でのクイットラインの現状とクイットラインの効果についてまとめた。
    方法 諸外国でのクイットラインの現状を,ホームページ閲覧等により調査した。クイットラインの禁煙に関する効果については,主に“Medline”,“Cochrane Database of Systematic Review”で「hotline」,「Smoking Cessation」をキーワードとして文献検索し,該当する先行研究を,用いられている媒体の種類別に検討した。これらの情報を元に,日本でクイットラインを展開するためには,どのような組み立てが望ましいか,方向性を考察した。
    結果 オーストラリア,ニュージーランド,韓国,香港,シンガポール,台湾,タイ,米国カリフォルニア州,英国のクイットラインは,電話相談だけでなく,小冊子の郵送やインターネット,携帯電話,電子メールなど様々な媒体を用いており,電話を含むすべての禁煙支援媒体を総称してクイットラインと呼んでいた。また,電話を用いる場合でも,クイットライン側のオペレーターから利用者に電話をかけてアドバイスを行う,能動的な方法を取り入れていた国もあった。各々の媒体・方法別に禁煙成功率に違いがみられたが,能動的な電話介入,携帯電話,携帯メール,インターネットを用いた個別化されたプログラムでは,メタ解析や無作為割付試験で,その効果が確認されていた。これらの方法は,そのサービスの広域性,標準化のしやすさ,人的コスト面などで相当の違いがあることが考えられた。わが国のように喫煙者人口がなお多い国では,広域性やコスト面での実行可能性が重要になると考えられ,現在行われている健診の場における禁煙支援体制などに合わせた介入や,利用者に合った個別化されたアルゴリズムを用いたインターネットや電子メールによる介入などを取り入れて行くことが望ましいと考えられた。
    結論 日本で国レベルでのクイットラインを展開していくためには,電話だけでなく様々な個別化された介入媒体を増やし,既存の禁煙支援体制とも連携した包括的なサービス体制を構築することが必要かつ現実的であると考える。
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