日本公衆衛生雑誌
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62 巻 , 4 号
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原著
  • 川畑 輝子, 武見 ゆかり, 村山 洋史, 西 真理子, 清水 由美子, 成田 美紀, 金 美芝, 新開 省二
    2015 年 62 巻 4 号 p. 169-181
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 地域在住高齢者を対象とした虚弱予防教室による,虚弱および食習慣の改善効果を検討すること。
    方法 介入効果の検討はランダム化比較試験,フォローアップ時(介入後 3 か月)までの変化の持続の検討は,介入効果のみられた項目について介入群の介入前,介入後,フォローアップ時の比較を行った。対象は埼玉県鳩山町の地域在住虚弱傾向高齢男女,介入期間は2011年10月から12月,内容は運動,栄養,社会参加の複合的プログラム(PG)とした。運動 PG は,転倒予防を目標とした筋肉運動を中心に 1 回60分×週 2 回実施,栄養 PG は低栄養予防を,社会参加 PG は閉じこもり予防を目標に,それぞれ 1 回30分×週 1 回実施した。測定は介入前後,およびフォローアップ時の 3 回実施した。虚弱および食品摂取の多様性は質問紙調査を,栄養状態には血液生化学検査を,栄養素および食品群別摂取量には簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて把握した。介入前後の効果検討は,intention-to-treat(ITT)解析とし,介入群21人,対照群22人を対象に,Mann-Whitney の U 検定,および対応のない t 検定を行った。変化の持続に関する解析対象は,介入群のうち 3 回の調査に有効回答が得られた16人で,分散分析および多重比較を行った。
    結果 1. 対象者の 7~8 割が男性。平均年齢(±標準偏差)は,介入群75.7±5.4歳,対照群74.7±5.4歳であった。2. メインアウトカムである虚弱総得点の介入前後の変化量には,有意な群間差は認められなかった。3. 介入前後の変化量に有意な群間差が認められた項目は,①虚弱総得点の下位項目である「閉じこもり」得点(中央値[25~75%tile])が,介入群 0[0~0],対照群 0[0~1] (P=0.023),②栄養素摂取の介入前後の変化量(平均値±標準偏差)では,たんぱく質エネルギー比(%E),介入群2.3±0.7,対照群−0.3±2.0 (P=0.002)と,動物性たんぱく質エネルギー比(%E),介入群2.4±1.5,対照群−0.5±1.5 (P=0.002),③食品摂取の介入前後の変化量(g/1000 kcal)では,魚介類,介入群18.1±25.1,対照群−4.1±21.9 (P=0.004)と,卵類,介入群5.0±11.2,対照群−2.1±11.3 (P=0.046)で,それぞれ,介入群において有意に改善もしくは増加した。4. フォローアップ時まで改善および増加の持続がみられた項目は,虚弱の下位項目である「閉じこもり」およびたんぱく質摂取量(%E)だった。
    結論 本プログラムは,虚弱の改善効果は認められなかったものの,虚弱傾向高齢者の「閉じこもり」を改善し,たんぱく質摂取量を増加させ,虚弱と食物摂取状況を改善に導く可能性を有することが示唆された。
研究ノート
  • 濱武 通子, 青木 梨絵, 山﨑 貢, 大西 賢治郎, 松本 一年
    2015 年 62 巻 4 号 p. 182-189
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 水道直結式ミスト発生装置(以下,ミスト発生装置)は,夏の暑さ対策として,一般に広く普及し始めている。しかし,その維持管理方法についての指針等はなく,ミストの水質も十分把握されていない。そこで,ミスト発生装置を適切に利用するための維持管理方法を検討した。
    方法 一宮保健所管内の同一規格のミスト発生装置が設置されている61施設中 5 施設において,ミストの水質検査およびレジオネラ属菌の検査を行った。水質検査において,一般細菌が飲料水の水質基準を超えた施設については,ミスト発生装置のホース等の各連結部において,洗浄と消毒を水道の蛇口からノズルまで順次行い,菌数の変化を調べることにより,細菌汚染の部位を特定した。また,優勢菌の同定を行った。
    結果 上水使用の調査対象 5 施設中 3 施設のミストは遊離残留塩素濃度が0.1 mg/l 以上存在していたにもかかわらず,一般細菌は飲料水の水質基準を大きく超え,Brevundimonas 属菌が優勢に発育していた。レジオネラ属菌は全施設で陰性であった。汚染部位はミスト発生装置のホースであった。
    結論 ミスト発生装置は,遊離残留塩素濃度が一定以上あっても細菌に汚染されることがある。ミスト発生装置の維持管理には,適切な洗浄と消毒を行い,使用期間中の持続的放水により水を滞留させないことが有効であることが示唆された。
  • 大河内 彩子, 田高 悦子
    2015 年 62 巻 4 号 p. 190-197
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 慢性期の外傷性頸髄損傷者はセルフマネジメントを必要とするが,セルフネグレクトが報告されている。本研究は彼らが受傷後セルフマネジメントを確立してきた過程を明らかにすることで,地域ケアのあり方についての示唆を得る。
    方法 研究デザインはグラウンデッドセオリーによる質的研究である。全国的な当事者団体の 3 支部と 1 訪問看護ステーションの各々から紹介された,外傷性頸髄損傷者29人(26–77歳)を対象者とし,対象者自宅で半構造化面接を実施した。セルフマネジメントに関する認識や実践について,無認識期・模索期・適応期に分類した時間軸の観点から分析を行った。
    結果 セルフマネジメントの確立過程の中核カテゴリは【生活上の混乱の程度を最小にして在宅生活を維持するための絶え間ない調整】であり,以下の 7 カテゴリが得られた。無認識期には《健康管理の必要性を認識できない》と感じられ,管理が必要な身体であることを自覚しづらく,介助者に健康管理を任せていた。模索期には《わけがわからないまま変化への対応に追われる》と表明され,我流の対処をしたり,受診の必要性を認識しないこともあった。また,《なんとか健康でいるための方法を模索する》と語られ,自己責任の自覚や最良の方法の探求や助言の活用がなされる一方で,服薬の自己中断等の経験から身体の限界レベルを学ぶこともあった。適応期には《一旦構築した健康管理方法を継続する工夫をする》,《ストレス管理をする》,《自分の信念を医療の約束事よりも優先させる》,《変化を恐れず健康管理方法を修正する》ことが行われ,セルフモニタリングや二次障害の予防行動やストレス管理が取られていたが,服薬を自己判断で避けたり,ライフスタイルを優先する健康管理方法を用いたりすることもあった。
    結論 対象者は試行錯誤を経て維持可能なセルフマネジメント方法を習得している一方で,すべての時期において,健康管理の意義や受診の必要性を意識できなかったり,我流の対処が取られていることが明らかになった。今後はセルフネグレクトを行う患者の視点を生かしたセルフマネジメントプログラムの開発,患者が社会参加とセルフマネジメントのバランスを取りやすい健康管理方法の教育,在宅療養生活を支える専門職間の連携ネットワークの構築が必要と考えられた。
  • 蔭山 正子, 大島 巌, 中村 由嘉子, 横山 恵子, 小林 清香
    2015 年 62 巻 4 号 p. 198-208
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 精神障がい者の家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」が全国に普及し始めている。プログラム遷移を防止し,提供されるプログラムの質を担保するために,効果的援助要素を包含したフィデリティ尺度を開発することを目的とした。
    方法 まずフィデリティ項目案を作成した。次に,プログラム実施場所でマニュアルに忠実に実施できるよう支援・助言するアドバイザー72人を対象として,2013年 6~7 月に自記式質問紙調査を行い,フィデリティ項目案の必要度や意見を把握してフィデリティ項目を作成した。2013年度はアドバイザーがプログラムの第 1 回目に実施場所を訪問し,フィデリティ項目を採点した。2013年10月から年度内にプログラムを終了した38か所でプログラム最終回に自記式質問紙調査を行った。アウトカム指標は Client Satisfaction Questionnaire 8 項目版,Group Benefit Scale,Therapeutic Factors Inventory-19を用いた。フィデリティ項目の回答分布,項目間の相関,アウトカム指標との関連を検討した。
    結果 フィデリティ項目案は,実施回数や実施時間などの基本的構造(9 項目)とグループ進行に関連するプロセス(21項目)の 2 ドメインで構成した。アドバイザーを対象とした調査は47人から有効回答を得て,基本的構造(8 項目)とプロセス(5 サブドメイン20項目)で構成するフィデリティ項目を作成した。アドバイザーから提出された36か所のフィデリティ項目の点数を分析し,プロセス項目間で Spearman 相関係数が0.5以上の項目を集めてサブドメインとした。サブドメインは,全体の発言を重視した「全体で話し合う進行」,同じ家族による「ピアのおもてなし」,対等な発言を重視した「ピアグループの進行」,参加者の肯定的側面に着目した「肯定的フィードバック」の 4 つだった。収束的・弁別的相関係数による尺度化成功率は100%だった。
     プログラムの最終回にいた386人のうち283人からアウトカム指標に関する質問紙が返送された。フィデリティ項目のうち,基本的構造 8 項目すべてがいずれかのアウトカム指標と P<0.1の関連を示した。プロセスのサブドメインのうち「肯定的フィードバック」以外はいずれかのアウトカム指標と P<0.1の関連がみられた。
    結論 基本的構造(8 項目)とプロセス(4 サブドメイン)の 2 つのドメインで構成するフィデリティ尺度を開発した。尺度は一定程度の妥当性が確認された。本尺度を活用することによってプログラム遷移を防ぎ,一定の質を担保したプログラムの提供に役立つと考えられる。
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