日本公衆衛生雑誌
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56 巻 , 2 号
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原著
  • 星野 純子, 堀 容子, 近藤 高明, 前川 厚子, 玉腰 浩司, 榊原 久孝
    2009 年 56 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本邦では,血液や尿など生体学的指標を用い女性介護者の身体の状態や身体的疾患を検討した研究はみあたらない。本研究は,生体学的指標と自記式質問紙を用い,一般住民健診受診者との比較から女性介護者における心身の健康的特性を明らかにすることを目的とした。
    方法 対象は,在宅で要介護 3 相当以上もしくは要介護 3 未満でも認知症の者を介護している女性介護者161人(介護者群)である。対照群は,対象の性と10歳階級ごとの年齢を 1:1 対応でマッチングさせた K 市の一般住民健診を受診した者である。調査期間は,2005年12月から2007年 4 月であった。調査方法は,介護者の生活習慣,介護状況,ピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI),食物摂取頻度などに関する自記式質問紙調査と訓練を受けた調査員が被験者宅を訪問して実施する主に生活習慣病に関する生化学的検査や血圧などの測定であった。
    結果 介護者群の平均年齢は62.8±11.9歳で,対照群の平均年齢は63.2±12.4歳であった。介護者は,介護期間が 5 年以上の者が46.0%と多く,1 年未満の者は8.7%と少なかった。要介護者の要介護度は要介護 5 が33.8%と多かった。介護者群の高血圧有病率は46.0%,対照群は34.2%であり,介護者群で有意に高い割合を示した。耐糖能異常,低 HDL コレステロール血症の有病率は,介護者群において高い割合を示すものの有意な差はみられなかった。HDL-コレステロールは介護者群において有意に低い平均値を示した。生活習慣に関しては,質問紙調査から運動,PSQI 得点,栄養比率の炭水化物エネルギー比において両群で有意な差がみられた。生体学的指標を用いた24時間尿中ナトリウム(Na)排泄量推定値も両群で有意な差がみられ,介護者群において高い平均値を示した。また,介護者群は主観的に健康でないと答える者が多いものの,毎年健康診査を受診する者は対照群と比較し少なかった。さらに,介護者群は健康・老後に関するストレスや抑うつ感のある者が多く,気晴らしをすることが少ないことが明らかとなった。
    結論 女性介護者は,高血圧の有病率が高いことが明らかとなり,高血圧の対策が必要であることが示唆された。また,生体学的指標も用い検討しても望ましくない項目があることや健康・老後に関するストレス,抑うつ感のある者も多いため,健康支援が必要であると思われた。
  • 中谷 安寿, 杉浦 圭子, 三上 洋
    2009 年 56 巻 2 号 p. 87-100
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 超高齢社会の到来に伴い,在宅福祉の要とされているホームヘルプサービスを担っているホームヘルパーの仕事意欲測定尺度を作成し,さらにその仕事意欲に影響する要因を明らかにすることを目的とした。
    方法 2007年 7 月,訪問介護サービスを行うホームヘルパー834人を調査対象とし,無記名自記式質問紙を直接配布し,郵送による回収を行った。調査項目は,ホームヘルパー本人に関する情報,担当利用者に関する情報,バーンアウト,ストレス,職務満足度,生活満足度,自己尊重度である。仕事意欲に影響する要因の検討においては階層的重回帰分析を行った。
    結果 仕事意欲測定尺度に関して,構成概念妥当性においては因子分析により 2 因子が得られ,「現状肯定感」(9 項目),「向上志向」(3 項目)と命名した。内容的妥当性においては GP・IT 分析ともに 1%水準で有意であり,信頼性においては因子順に α=0.94, α=0.77であった。併存的妥当性において,仕事意欲下位尺度とバーンアウトとの関係では有意な負の(r=−0.23~−0.50),職務満足度・生活満足度との関係では有意な正の相関(r=0.24~0.49)が確認された。仕事意欲の下位尺度のうち現状肯定感には,利用者との関係やプロとしての技能を高められる環境,給料に満足していることが有意に正の影響を与え,向上志向には,利用者との関係や生活全般に満足していることが有意に正の影響を与えていた。
    結論 ホームヘルパーの仕事意欲測定尺度を作成し,信頼性および妥当性を確認した。ホームヘルパーの仕事意欲の下位尺度は,現状肯定感と向上志向であることが確認された。ホームヘルパーの職場の環境や給料などの仕事に関する満足度を高める支援が現状肯定感を高め,生活全般における満足度を高める支援が向上志向を高める可能性が示唆された。
  • 大坪 浩一, 山岡 和枝, 横山 徹爾, 高橋 邦彦, 西川 正子, 丹後 俊郎
    2009 年 56 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 医療資源の適正配分・適正配置を考える上で,地域における医療資源と死亡との関連を評価することは重要である。前報にて,福岡県内の市区町村を対象に「経験的ベイズ推定に基づく標準化死亡比」(EBSMR)に基づき医療資源と死亡との関連を評価したところ,医師数および入院や救急に関する医療資源を充実させることの重要性が示唆された。この結果をふまえ,全国の市区町村を対象として,医療資源と死亡との関連について評価することを目的とした。
    方法 本研究では医療資源に着目し,これまでの研究で主な医療資源の指標とされてきた医師数,一般診療所数,一般病床数に加え,脳血管疾患や心疾患死亡に影響すると考えられた救急告示病院数を取り上げた(いずれも対人口)。死亡指標は,平成 9 年~平成13年の全国の市区町村(札幌市清田区,三宅村を除く)における全死因および脳血管疾患,心疾患,悪性新生物の 3 大疾患,および急性心筋梗塞の EBSMR を取り上げた。社会経済指標として,人口総数,出生数,高齢者世帯数,婚姻件数,離婚件数,1 人課税対象所得,完全失業者数,第二次産業就業者数,第三次産業就業者数および都道府県を取り上げた。EBSMR と医療資源指標および社会経済指標との関連性を,重回帰分析により検討した。
    結果 医師数と一般病床数は相関(ピアソン,r=0.776)が高く,一般病床数を分析から除外した。重回帰分析より得られた主要な結果として,対人口の医師数(男性全死因標準偏回帰係数 β=−0.042(P=0.024),女性全死因−0.150(P<0.001),女性脳血管疾患−0.074(P<0.001),男性心疾患−0.066(P<0.001),女性心疾患−0.087(P<0.001),女性急性心筋梗塞−0.061(P=0.003),女性悪性新生物−0.064(P=0.001))が多いほど EBSMR は低く,逆に,一般診療所数(男性全死因0.053(P=0.001),女性全死因0.115(P<0.001),男性脳血管疾患0.047(P=0.002),女性脳血管疾患0.070(P<0.001),女性心疾患0.061(P<0.001),女性急性心筋梗塞0.048(P=0.006),男性悪性新生物0.036(P=0.018),女性悪性新生物0.046(P=0.005))が多いほど EBSMR が高い傾向が認められた。医療資源指標として救急告示病院の有無のみを投入し,重回帰分析を試みたところ,救急告示病院(女性全死因−0.085(P<0.001),男女の脳血管疾患それぞれ−0.032(P=0.031), −0.059(P=0.001),女性心疾患−0.052(P=0.008))があると,EBSMR が低い傾向がみられた。
    結論 全国の市区町村を事例として,市区町村レベルでの医療資源と死亡との関連を EBSMR で評価したところ,医師数および救急医療資源を市区町村レベルで充実させることの重要性が示唆された。
資料
  • 都筑 千景, 村嶋 幸代
    2009 年 56 巻 2 号 p. 111-120
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 複数の自治体における 1 歳 6 か月児健康診査(以下健診とする)の実施内容と保健師の関わりの実態について調査した。
    方法 関西 2 府 4 県における平成10年度の出生数が概ね200人以上の市町村(105市町村)に対して,平成12年度の健診内容と保健師の関わり,健診後フォローの状況について郵送調査を行い,66市町(回収率62.9%)から有効回答を得た。
    結果 1)対象としたすべての自治体では集団健診方式が採用されていた。主な実施内容は,医師の診察100%,歯科医師の診察100%,身体計測100%,問診95.5%,集団指導(衛生教育)47.0%,個別保健指導93.9%(受診者全員対象83.3%),カンファレンス92.4%であった。2)健診に関与する専門職として,医師,歯科医師,保健師が100%,歯科衛生士が98%,栄養士が88%,心理職が75%の自治体で配置があった。3)人口と健診受診率には負の相関,人口もしくは出生数と健診開催回数については正の相関が認められた。4)保健師は健診の多くの場面で配置されており,結果判断にも広く関わっていたが,健診結果の判断に一定の基準を設けている自治体は36.4%であった。また各自治体における要経過観察者の割合は1.9%~56.3%と大きな差がみられた。5)健診後の経過観察事業や未受診者への対応は,保健師が主体となって関わっていた。
    結論 本研究では,複数の自治体における 1 歳 6 か月児健診内容と保健師の関わりの実態を明らかにした。その結果,保健師は健診や健診後における多く場面で配置され,対象者と関わりも多かったが,結果の判断やフォロー方法など自治体間で異なるところも多く,今後の課題と考えられた。
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