日本公衆衛生雑誌
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53 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 村山 洋史, 田口 敦子, 村嶋 幸代
    2006 年 53 巻 12 号 p. 875-883
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 保健分野の住民組織活動の一つとして,行政養成型ボランティアである健康推進員活動が存在する。本研究では,健康推進員が活動する上で感じる満足感,負担感,すなわち活動満足感,活動負担感の尺度を開発することを目的とした。
    方法 対象は,S 県 A 市および B 市で活動する健康推進員604人であった。予備調査として行ったインタビュー結果を参考に,活動満足感10項目,活動負担感14項目を作成し,内容妥当性を確認した上で,2005年 9 月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した。
    結果 有効回答数は433票(有効回答率71.7%)であった。活動満足感,活動負担感について因子分析を行った結果,活動満足感は「活動愛着」,「自己利益」の 2 因子 9 項目,活動負担感は「日常生活負担」,「精神的負担」,「活動量負担」の 3 因子14項目からなる尺度が得られた。また,多特性・多方法行列を作成し検討した結果,活動満足感尺度においては収束妥当性が,活動負担感尺度においては収束妥当性と弁別妥当性が確認された。活動満足感尺度,活動負担感尺度それぞれの下位尺度ごとの Cronbach's α は高く,尺度の信頼性が確認された。さらに,Item-Total 相関分析でも良好な結果が得られた。
    考察 健康推進員活動における活動満足感尺度,活動負担感尺度の信頼性および妥当性は概ね確認され,十分に使用可能であると考えられた。
公衆衛生活動報告
  • 世古 留美, 川戸 美由紀, 橋本 修二, 加藤 昌弘, 岡部 信彦
    2006 年 53 巻 12 号 p. 884-888
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 母親からみた予防接種の認識と妨げの状況を調査するとともに,母子の属性による相違,および,予防接種の標準接種年齢内の接種完了との関連を検討した。予防接種としては,百日せき・ジフテリア・破傷風混合(三種混合)1 期 3 回,ポリオ 2 回,麻しんとした。
    方法 愛知県大府市において,2 歳・4 歳・6 歳児から無作為抽出した900人の母親に対し,予防接種の認識と妨げおよび接種状況を郵送法により調査した。回収者757人の中で,23か月齢末までの予防接種状況が得られた721人のデータを解析した。
    成績 予防接種の認識は「きわめて大切」と「大切」がほとんどであった。予防接種の妨げは「日時が決められている」,「子供の体調がよくない」,「副反応が心配」,「接種間隔が決められている」が多かった。予防接種の認識は児の出生順と母親の仕事の有無,予防接種の妨げは母親の年齢と仕事の有無で違いがみられた。予防接種の認識が「きわめて大切」はそれ以外に比べ標準接種年齢内の接種完了率が高く,とくに麻しんで有意であった。予防接種の妨げにおいて,「あり」は「なし」に比べ標準接種年齢内の接種完了率が低い傾向であった。とくに「種類や回数が多い」でポリオ,「接種間隔が決められている」でポリオ,「時間が取れない」で三種混合と麻しん,「子供の体調がよくない」でポリオと麻しんが有意であった。
    結論 予防接種の認識と妨げについて,その状況は母子の属性により違いがあり,その状況により標準接種年齢内の接種完了率に違いがあると考えられた。
  • 栁澤 尚代, 吉本 照子, 波川 京子, 阿部 芳江
    2006 年 53 巻 12 号 p. 889-898
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 中山間地の配食サービスにおけるボランティア活動者(以下,活動者)が,活動を通して認識している問題,および行政や社会福祉協議会(以下,社協)に期待する広報の内容を明らかにする。
    方法 調査対象地域は,高齢化率25%以上で人口 4 千人未満の 3 つの自治体 A, B, C であり,調査対象者は,A, B, C の配食サービスにおいて調理あるいは配達を担う活動者総数173人のうち,社協や保健師を通して書面で目的および方法を説明し,協力する意思のある活動者 A:28人(活動者総数に対する割合40%,以下同様に各地域の活動者数に対する割合を示す),B:11人(48%),C:22人(28%),の計61人(35%)であった。調査項目は,日頃の配食サービスの活動を通して目指していること,感じている問題とその解決方法,行政と社協に対する要望であり,5~10人のグループインタビューを行い,逐語録を作成した。複数の研究者が行政と社協に期待する広報に関連した部分を抽出してコード化し,内容の類似性をもとにカテゴリー化を行い,期待する保健福祉の広報の背後にある問題認識との関係を分析した(調査期間2003年 3~11月)。
    結果 活動者が行政と社協に期待する保健福祉広報の内容は 3 つのカテゴリーと,各々 2 つの内容を含んでいた。【利用者・住民が配食活動のねらいや内容を理解するための広報】として,〈高齢者が自発的に配食サービスを利用できるための周知〉,〈配食活動に関する住民の理解を促すための啓発〉を期待し,【活動者の量的・質的確保のための広報】として,〈活動者確保に行政・社協も責任を取るための募集〉,〈意欲ある活動者を誘引するための探索〉を期待し,【活動者と利用者の関係を調整するための広報】として,〈配食を円滑に行うための支援〉,〈活動への評価的支援〉を期待していた。
    結論 活動者による保健福祉広報への期待は,高齢者自らが自発的に配食サービスを利用できるよう,高齢者を取り巻く住民の理解を促す啓発と,活動継続のための意欲ある活動者の確保と,円滑な活動への支援とそのしくみを求める内容であった。これらは,活動者が配食サービスを効果的に機能させるための課題として認識した内容であり,行政や社協,住民と共有したい配食サービスの意味や実態を示していると考えられた。活動者の広報への期待内容の明確化は,行政と社協及び住民や活動者が共有すべき情報を明らかにすることであり,期待に応えることが連携の推進に必要である。
資料
  • 大畑 政子, 萱場 一則, 丸山 優, 大塚 眞理子
    2006 年 53 巻 12 号 p. 899-906
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 首都圏に隣接する A 市在住高齢者を対象に,高齢者が生活圏と感じる地域の範囲について年齢,性別,家族構成,居住期間,手段的日常動作状況(IADL),外出頻度を考慮しつつ明らかにする。
    方法 調査対象者は,A 市に在住している65歳以上の高齢者である。調査期間は,平成17年 1 月から 2 月であった。A 市に在住する要介護認定をうけていない4,000人を無作為に抽出し,郵送式自記式質問紙調査を行い,3,070人(77.0%)から回答があり,有効回答数2,692(67.3%)を分析した。
    結果 A 市在住の高齢者が生活圏と感じる地域範囲は,A 市全域が最も多く,次いで,地区センターであった。これらが全体の半数以上を占めており,生活圏を広く感じていた。一方,最も回答が少なかったのは,中学校区,次いで小学校区で全体の 3%弱であった。性別では,男性は地区センターの範囲,女性では A 市全域が最も多かったが,男女による生活圏の認識には統計的に差がなかった。年齢層別では,65~79歳までの各年齢層において最も多かったのが,A 市全域,次いで地区センターの範囲であった。80歳以上になり自治会・町内会と最も狭い範囲に縮小した。家族構成別では,本人と親・子供の同居世帯を除くすべての世帯で,A 市全域と感じているものが多く,本人と父母の同居世帯は,地区センターの範囲が多かった。居住期間では,10年未満のものは,地区センターが最も多く,10年以上のものは A 市全域と広く感じているものが多い傾向にあった。手段的日常生活動作では,できると答えたものは A 市全域,できないと答えたものは地区センターの範囲が多かった。週あたりの外出頻度別では,外出頻度が少なくなるにつれて生活圏の範囲が狭くなっていた。
    結論 高齢者が感じる生活圏の範囲は一定ではなく,年齢,IADL,居住期間,外出頻度などにより異なることが明らかになった。高齢者が地域で自立して生活できるよう支援するには,それぞれの生活背景や,住民の思いを反映していく必要がある。今後は,地域の特性や環境も考慮し検討していきたい。
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