日本公衆衛生雑誌
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61 巻 , 2 号
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原著
  • 太田 ひろみ
    2014 年 61 巻 2 号 p. 71-85
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 個人レベルのソーシャル•キャピタル(Social Capital,以下SC とする)と主観的健康感,抑うつとの間には,関連があるとする結果が多いものの一致した結果は得られていない。また,関連に男女でどのような違いがあるのかを明らかにした研究も十分とはいえない。そこで本研究では,地域在住高齢者の個人レベルの SC が,いくつかの交絡要因を調整したうえでも主観的健康感および抑うつと関連するか,男性と女性では関連は異なるかという 2 つを明らかにすることを目的として検討を行った。
    方法 対象は要介護認定を受けていない65歳以上80歳未満の高齢者2,400人である。東京都 A 市の住民に実施した郵送自記式質問紙調査のデータを利用した。主観的健康感と抑うつを目的変数とし,説明変数である SC 指標は,認知的 SC(他者に対する信頼と互酬性の規範)と構造的 SC(地区組織への参加)を用いた。調整因子として年齢•経済的ゆとり•教育期間•慢性疾患の既往•高次活動能力•婚姻状況•在住期間を投入した多重ロジスティック回帰分析を行い検討した。
    結果 1,776人(男性887人,女性889人,有効回答率74.5%)のデータを分析した。
      主観的健康感と関連する認知的 SC 要因は男性では信頼であり,主観的健康感不良に対するオッズ比は,「信頼できない」1.58(95%CI;1.07–2.34,P=0.022)であった。女性では信頼は主観的健康感に関連せず,互酬性の規範の低さが主観的健康感不良と関連し,オッズ比1.63(95%CI;1.10–2.41,P=0.014)であった。
      抑うつに関しては,男女共通して「信頼できない」,「互酬性の規範が低い」ことが関連した。
      「地区組織への不参加」は女性のみの主観的健康感不良と抑うつに関連し,それぞれのオッズ比は1.68(95%CI;1.16–2.44,P=0.007)と2.24(95%CI;1.49–3.38, P<0.001)であった。
    結論 男性では「信頼できない」が主観的健康感不良と関連し,「互酬性の規範が低い」が抑うつと関連した。女性では「信頼できない」が抑うつと関連し,「互酬性の規範が低い」,「地区組織への不参加」が主観的健康感不良と抑うつの両健康指標と関連した。男女とも関連する SC が低いことが主観的健康感不良•抑うつを促進する方向に働くことが示唆され,関連する SC の要因には男女で違いがみられた。SC と健康には相互の因果関係があると考えられることから,縦断的調査を実施することによって SC が人々の健康にとって望ましい効果をもつかどうかを明らかにすることが今後の課題である。
研究ノート
  • 村上 晴香, 吉村 英一, 髙田 和子, 西 信雄, 笠岡(坪山) 宜代, 横山 由香里, 八重樫 由美, 坂田 清美, 小林 誠一郎, 宮 ...
    2014 年 61 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 我々は,東日本大震災約 7 か月後の2011年10月に仮設住宅居住者70人を調査し,身体活動量が低いことを報告した。本研究は,2011年10月から2012年11月の約 1 年間における仮設住宅居住者の身体活動量の変化を把握することを目的に行った。
    方法 2012年11月に「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査」(健康調査)に参加した岩手県釜石市 H 地区の仮設住宅居住者のうち,身体活動量調査に協力の得られた39人(男性10人,女性29人)を対象とした。このうち,2011年10月の身体活動量調査にも参加した31人を縦断的解析に用いた。2011年10月と2012年11月の身体活動量調査のいずれも,3 次元加速度計により健康調査日から 2 週間の身体活動量を評価した。
    結果 2011年から2012年において,歩数の中央値は4,959(四分位範囲:2,910–6,029)歩/日から4,618(四分位範囲:3,007–7,123)歩/日に変化した。歩数が増加した者は18人(58%)であった。また中高強度身体活動量では2011年の13.3(7.7–22.4)メッツ•時/週から2012年の16.1(6.3–25.2)メッツ•時/週へと変化した。65歳未満(21人)と65歳以上(10人)に分けてみると,65歳未満において歩数が増加していた人は14人(67%)であったのに対し,65歳以上では 4 人(40%)のみであった。
    結論 歩数の中央値は減少したものの,四分位範囲は増加しており,また中高強度身体活動に関しても増加していることから,集団としては増加傾向にあると言える。しかしながら,全国の平均歩数や岩手県の平均歩数と比較した場合,それらの値はまだまだ低く,今後の身体活動量増大のための支援が必要である。
資料
  • 植田 紀美子
    2014 年 61 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 障害が判明した時の障害児家族支援,就学前期の障害福祉サービスの紹介,および学齢期•青年期の障害児に対する地域生活支援の紹介,障害福祉サービスの情報収集について,病院小児科における実態を明らかにする。
    方法 全国の日本小児科学会が認定する専門医研修施設518施設に対して無記名自記式質問票による調査を実施した。調査対象者は,部長や医長など小児科の全貌を把握している医師とした。質問票は,障害が判明した時の障害児家族の心理的反応に対する対応,就学前期(障害が判明した時から就学まで)の障害児への障害福祉サービス(療育•医療費の助成•地域生活支援)等の紹介,学齢期•青年期の障害児に対する地域生活支援における医療機関の役割などである。回答結果を記述的に集計した。
    結果 278病院(回収率53.7%)から回答を得た。障害が判明した時,主治医は家族の心理的反応に留意して対応していた。就学前期では,障害児通園施設や児童サービス等の発達支援に関する障害福祉サービスについて,97.9%が「紹介している」とした一方で,相談支援,移動支援,日常生活用具給付,地域活動支援等の地域生活支援に関するサービスについては,13.3%で「紹介しない」と回答していた。学齢期•青年期では,障害福祉サービス等の紹介など,地域生活支援については50.0%が「役割を担っていない」と回答していた。療育や地域生活支援に関する障害福祉サービス等の最新情報の入手について,「特に何もしていない」と回答した者は39.6%であった。情報収集していると回答した者でも受動的に情報が入手できる者は少なく,医師が自ら情報収集していた。
    結論 病院小児科は,障害児に対して早期発見からフォローアップまで一貫した関わりができる。障害児のすべてのライフステージにおける障害福祉サービスの充実に向けては,福祉•行政からのアプローチの重要性は言うまでもないが,病院小児科においては,障害が判明した時の家族へのきめ細かな心理社会的支援の提供,障害福祉サービスを紹介できるようなシステムの構築,マンパワーの強化が必要である。
  • 神奈川 芳行, 赤羽 学, 今村 知明, 長谷川 専, 山口 健太郎, 鬼武 一夫, 髙谷 幸, 山本 茂貴
    2014 年 61 巻 2 号 p. 100-109
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 世界的に人為的な食品汚染についての関心が高まるに伴い,G8 では専門家会合が開催されたり,米国では多くの対策•方針案等が策定されている。しかし,日本では,食品企業の食品テロに対する認識が低く,その脆弱性が危惧されている。今回我々は,日本の食品企業に食品防御対策を普及させるためのガイドライン等を作成した。
    方法 すでに作成されている食品工場用チェックリストに示されている食品防御対策について,費用対効果を考慮した「推奨度」を整理した。その推奨度(費用対効果の高い対策順)を基に,「食品防御対策ガイドライン(案)」を作成し,食品工場に対して聞き取り調査を実施した。また,食品防御の観点から,食品工場用チェックリストやガイドラインと「総合衛生管理製造過程承認制度実施要領(日本版 HACCP)」を比較した。
    結果 推奨度を基に試作したガイドライン(案)に対する食品工場への聞き取り調査を踏まえて,「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)」とその解説を作成した。また,食品企業に普及させるために,HACCP における食品防御の観点からの留意事項を作成した。
    結論 食品防御対策を普及させるためには,食品事業者が使用しやすいガイドラインが有用と考えられた。
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