日本公衆衛生雑誌
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56 巻 , 9 号
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原著
  • 林 芙美, 横山 徹爾, 吉池 信男
    2009 年 56 巻 9 号 p. 633-644
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 21世紀における我が国の健康寿命の延伸等を実現するために,一次予防に関する地域住民全体に対する働きかけをより強化していくためには,当該地域における特性やリスク等を十分に把握することが不可欠である。そこで,食事および生活習慣と総死亡,およびがん,循環器疾患による死亡との関係について,都道府県を単位とした検討を行った。
    研究方法 2001~05年国民健康・栄養調査のデータセットを用いて,都道府県別および男女別に BMI,歩行数,栄養素等摂取状況の年齢調整平均値,および喫煙・飲酒習慣の年齢調整割合を求めた。総死亡,およびがん,循環器疾患による死亡率(対10万人)については,人口動態特殊報告(2007年)の値を用いた。stepwise 法による重回帰分析により偏相関係数を求めた。
    結果 BMI とは,男女とも急性心筋梗塞,脳内出血による死亡率と正の相関があった。胃がんとは男女とも負の相関が示された。食塩相当量と死亡率の関係では,男女とも脳内出血と正の相関があり,男性では全死因,女性では脳梗塞および全脳血管疾患とも正の相関が示された。飲酒習慣は男性の脳梗塞や食道がんと有意な正の相関が示され,アルコール飲料は男女とも食道がんと正の相関を示した。その他,いくつかの栄養素および食品群の摂取や身体活動で総死亡・疾患別死亡率と有意な関係が認められた。
    結論 本研究は生態学的研究ではあるが,わが国の公衆衛生上の貴重な資料であると考える。
資料
  • 飯島 久美子, 荻原 貴子, 佐久間 淳子, 星山 佳治
    2009 年 56 巻 9 号 p. 645-654
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 住民と遺伝に関連した疾患等の相談に携わる機会が多いと思われる保健師とを比較することにより,遺伝の知識,病気のイメージなどの実態から遺伝病のイメージの特徴について検討し,遺伝病の啓発に向けての資料とすることを目的とした。
    方法 Y 県 K 市在住の住民の中から20歳以上65歳以下の住民を,住民台帳をもとに無作為抽出した500人,および調査時点で Y 県内に在職していた保健師320人を対象として自記式の質問紙調査を実施した。住民は訪問した上で,直接手渡しし,後日直接または郵送にて回収(2004年 8 月~10月),保健師は配布,回収ともに郵送法にて実施した(2005年 5 月~6 月)。
     調査項目は,対象者の基本属性,遺伝に対する関心,遺伝に関する情報収集手段,遺伝病や先天異常の頻度,病気のイメージ,遺伝病のイメージなどの39項目であった。
    結果 住民は,訪問時長期不在であった 2 人を対象から外し,262人の回収(52.6%),保健師は153人(47.8%)の回収となった。住民,保健師の性分布が異なったことから女性のみを最終対象とした(住民144人,保健師151人)。対象者の平均年齢は,住民40.5±12.5歳,保健師35.7±9.5歳であった。
     『遺伝に対する関心』がある者はいずれも約半分であったが,関心がある者の情報収集手段は,住民ではテレビ,新聞の順に多かったのに対し,保健師では医療関係者,インターネットであった。『今までにヒトの遺伝に関する授業・講演・説明などを受けたことがある』者の割合は,住民31.0%,保健師86.1%と保健師の方が高かった。ヒト集団の先天異常や遺伝病の頻度を実際の「1/20」と回答した者の割合は,住民の3.7%に対し,保健師は18.2%ではあったが保健師の方が高かった。
     病気と遺伝病のイメージを比較すると,ことに感情のイメージの得点差が住民では病気と遺伝病のイメージ得点の分布は異なっていたのに対し,保健師では遺伝病の方がより否定的ではあったが,病気のイメージの得点分布と同様の傾向を示した。また,感情面での得点差は,住民より大きかった。
    結語 保健師の方が遺伝に関する専門的な知識や経験があると思われるにも関わらず,病気のイメージと比較して遺伝病の感情イメージの得点差は地域住民よりも大きく,ことに遺伝病に対して「避けたい」と回答する傾向が認められた。
  • 松村 貴代, 谷口 千穂, 濱頭 直子
    2009 年 56 巻 9 号 p. 655-661
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 4 か月児健康診査受診者の母親を対象に,妊娠中の喫煙・飲酒の現状と,妊娠中の喫煙に関連する要因について検討した。
    方法 平成19年 2 月中の京都市保健所・支所における 4 か月児健康診査受診予定者の母親を対象に,喫煙と飲酒の状況についての無記名自記式質問票を送付し,自宅で回答してもらい健診当日に回収した。妊娠中の喫煙に関連する要因については,カイ二乗検定,多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
    結果 質問票の送付数は999枚,回収率は72.3%(回収数722枚),有効回答率は69.0%(有効回答数689枚)であった。妊娠前,妊娠中,産後 4 か月の飲酒率は,それぞれ55.9%,9.1%,22.1%であった。産後 4 か月時点で,授乳をしている者586人での飲酒率は,19.5%であった。また妊娠前,妊娠中,産後 4 か月の喫煙率は,それぞれ23.4%,7.5%,9.0%であった。妊娠前後の喫煙の経過では,妊娠前の喫煙者(161人)のうち妊娠を機に禁煙したのは67.7%であった。夫の喫煙率は43.1%であった。また「受動喫煙について知っている」と回答した者は75.5%であった。「妊娠中の喫煙あり」を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析では,年齢が24歳以下,妊娠中の飲酒あり,夫の喫煙ありは,有意に妊娠中の喫煙と関連していた。オッズ比と95%信頼区間は各々,2.89(1.40-6.00),4.17(2.04-8.54),3.89(2.04-7.45)であった。
    結論 妊娠中の喫煙,飲酒は公衆衛生上重大な課題である。喫煙率はとくに若年層で高く,妊娠中に喫煙を継続する者も少なくはない。また約半数が家庭内での受動喫煙を受けていた。飲酒率は40歳以上で高かった。妊娠前から喫煙・飲酒が胎児に与える影響について正しい情報を提供し,妊婦の年齢にも配慮した禁煙・禁酒の支援,出産後の再喫煙防止指導を行っていく必要がある。
  • 河野 あゆみ, 田髙 悦子, 岡本 双美子, 国井 由生子, 山本 則子
    2009 年 56 巻 9 号 p. 662-673
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本研究の目的は,大都市の高層住宅地域と近郊農村地域に住む一人暮らし男性高齢者のセルフケアを確立するための課題を明らかにすることであり,男性高齢者のセルフケアを支援するケアプログラムを検討する際の基礎資料とする。
    方法 研究デザインは,質的研究である。高層住宅地域と近郊農村地域の各地域から PI(プライマリーインフォーマント)として,一人暮らし男性高齢者を各10人,KI(キーインフォーマント)として保健医療福祉専門職や地域住民各 7 人を対象とし,半構成的面接を実施した。男性高齢者のセルフケアを確立するための課題について,強み,問題点ならびに対処の観点から分析を行った。
    結果 PI からの117コード,KI からの54コードをもとに,都市高層住宅地域と都市近郊農村地域を比較して18のカテゴリを作成した。その結果,セルフケアを確立するための強みとして『自律心』,問題点として『健康上の不安』と『日常生活の維持』,対処として『社会資源の利用』のテーマがみられた。『自律心』では,「自分のライフスタイルは守りたい」,「人の世話にはなりたくない」,「できるだけ前向きに一人でがんばりたい」,「人に干渉されずに一人で気楽に暮らしたい」,『健康上の不安』では「健康状態が悪くなったときや孤独死の不安がある」,「健康状態がよくない」,「安否確認の方法を気にしている」というカテゴリがみられた。『日常生活の維持』では「食べることについての問題が多い」,「食事内容が偏っている」というカテゴリの他に KI は「好ましくない生活習慣を問題視しにくい」ととらえていたが,PI は「生活に不便を感じていない」としていた。一方,『社会資源の利用』については,都市高層住宅地域では「困りごとを表出する」,「能動的に社会資源を利用する」,都市近郊農村地域では「困りごとを表出しない」,「受動的に社会資源を利用する」というカテゴリがみられた。
    結論 大都市に住む一人暮らし男性高齢者は,自律心を持ち,生活に不便はないと考えながら生活しているが,好ましくない生活習慣を問題視しにくく,食生活の問題や健康状態の悪化や孤独死に対する不安を持っており,これらに対するケアの課題をもっている可能性が明らかになった。一方,高齢者の社会資源の利用姿勢については,大都市高層住宅地域と大都市近郊農村地域では違いがあり,地域特性も考慮にいれた支援方法が必要であると考えられた。
  • 続木 雅子, 広瀬 かおる, 増井 恒夫, 皆川 洋子
    2009 年 56 巻 9 号 p. 674-681
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 わが国の麻しん発生状況は1999年以来いわゆる感染症法に基づく感染症発生動向調査定点報告で把握されてきたが,愛知県においては麻しん症例の迅速な把握と適切な感染拡大防止対策実施に資することをめざし,2007年 2 月 1 日に愛知県麻しん全数把握事業が開始された。わが国における麻しん根絶達成の基礎資料とすることを目的に愛知県麻しん全数把握事業について感染症発生動向調査データと比較しながらその成果をまとめた。
    方法 愛知県麻しん全数把握事業は定点医療機関のみならず愛知県内の全医療機関を対象とした。患者住所(市町村名まで),性別,診断年月日,診断時年齢,推定感染経路,予防接種歴,患者の通園・通学・通勤先での患者発生状況の各項目に関する報告は医療機関から直接当所へ行われ,一方情報還元は当所ウェブサイトを介することで迅速化が図られた。年齢・予防接種歴別集計と同時に,感染症発生動向調査における定点医療機関からの報告状況と比較検討した。
    結果 2007年感染症発生動向調査では56人[麻しん45人(80.4%),成人麻しん11人(19.6%)]の報告に対し,愛知県麻しん全数把握事業(2007年 2 月 1 日~12月31日)には212人[麻しん89人(42.0%),成人麻しん123人(58.0%)]の報告があり,感染症発生動向調査では捕捉されなかった15歳以上の成人麻しんが感知された。患者報告総数212人のうち予防接種歴ありは56人(26.4%)で primary あるいは secondary vaccine failure が示唆された。また,予防接種歴なしは88人(41.5%),不明は68人(32.1%)にのぼっており,予防接種の徹底や接種歴の記録保存よびかけの必要性などが,今後の麻しん対策を検討する上での課題として明らかになった。
    結論 感染症法の改正により2008年 1 月から麻しんは全数報告対象疾患となったが,それに先駆けて実施された愛知県麻しん全数把握事業は,監視体制の強化により麻しん発生の正確で迅速な把握が可能となることを示した。今後も麻しん排除にむけてのサーベイランス強化と感染拡大防止に資するための情報収集を継続する必要がある。
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