日本公衆衛生雑誌
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62 巻 , 10 号
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原著
  • 柏原 康佑, 松山 裕, 上原 里程, 村上 義孝
    2015 年 62 巻 10 号 p. 587-595
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 患者の医療に対する不満足は多様な要因によって引き起こされ,それらは医療の受け手である患者側の要因と提供者である医療施設側の要因に大別される。医療施設側の要因が患者満足度に与える影響を調べたものは少ないため,本研究では平成23年受療行動調査に含まれる患者満足度に着目し,検討を行った。
    方法 平成23年受療行動調査,平成23年患者調査および平成23年医療施設調査を突合したデータベースの解析を実施した。受療行動調査の全体的満足度を用い,アウトカムは患者満足度での不満とした。医療施設側の要因は医療施設調査項目を用い,患者側の要因は患者調査の性別,年齢,傷病コードを用いた。解析は外来・入院患者別に実施し,病院種を変量効果として異質性を考慮したロジスティック混合効果モデルを用いて,不満割合と医療施設項目との関連を検討した。
    結果 解析対象者数は外来患者が27,842人,入院患者が17,770人であった。外来患者において,患者の不満と統計的に有意であった項目は開設者(P<0.001),受動喫煙防止対策(P<0.001),新人研修の有無(P=0.002)であった。入院患者において,患者の不満と統計的に有意であった項目は,開設者(P=0.037),受動喫煙防止対策(P<0.001),緩和ケアチーム(P=0.001),新人研修(P=0.013)であった。病院種の違いによる異質性は外来・入院ともに小さかった。
    結論 患者の不満は受動喫煙防止対策,緩和ケアチームの有無,新人研修の有無などと有意に関連していた。これら項目は病院の医療環境改善を示す項目であり,病院における患者満足度を向上させる重要な因子であると推察された。
研究ノート
  • 斎藤 民, 近藤 克則, 村田 千代栄, 鄭 丞媛, 鈴木 佳代, 近藤 尚己, JAGES グループ
    2015 年 62 巻 10 号 p. 596-608
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 生きがいや社会的活動参加の促進を通じた高齢者の健康づくりには性差や地域差への考慮が重要とされる。しかしこれらの活動における性差や地域差の現状は十分明らかとはいえない。本研究では高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動の性差と地域差を検討した。
    方法 Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES)プロジェクトが2010年~2012年に実施した,全国31自治体の要介護認定非該当65歳以上男女への郵送自記式質問紙調査データから103,621人を分析対象とした。分析項目は,週 1 日以上の外出有無,就労有無,団体・会への参加有無および月 1 回以上の参加有無,友人・知人との交流有無および月 1 回以上の交流有無,趣味の有無を測定した。性,年齢階級(65歳以上75歳未満,75歳以上),および地域特性として都市度(大都市地域,都市的地域,郡部的地域)を用いた。年齢階級別の性差および地域差の分析にはカイ二乗検定を実施した。さらに実年齢や就学年数,抑うつ傾向等の影響を調整するロジスティック回帰分析を行った(有意水準 1%)。また趣味や参加する団体・会についてはその具体的内容を記述的に示した。
    結果 年齢階級別の多変量解析の結果,男性は有意に週 1 回以上の外出や就労,趣味活動が多く,団体・会への参加や友人・知人との交流は少なかった。ほとんどの活動項目で都市度間に有意差が認められ,郡部的地域と比較して大都市地域では週 1 回以上外出のオッズ比が約2.3と高い一方,友人との交流のオッズ比は後期高齢者で約0.4,前期高齢者で約0.5であった。性や都市度に共通して趣味の会の加入は多い一方,前期高齢者では町内会,後期高齢者では老人クラブの都市度差が大きく,実施割合に30%程度の差がみられた。趣味についても同様に散歩・ジョギングや園芸は性や都市度によらず実施割合が高いが,パソコンや体操・太極拳は性差が大きく,作物の栽培は地域差が大きかった。
    結論 本研究から,①外出行動や社会的・余暇的活動のほとんどに性差や都市度差が観察され,それらのパターンが活動の種類によって異なること,②参加する団体・会や趣味の内容には男女や都市度に共通するものと,性差や都市度差の大きいものがあることが明らかになった。以上の特徴を踏まえた高齢者の活動推進のための具体的手法開発が重要であることが示唆された。
  • 藤井 正美, 石丸 泰隆, 高橋 幸広, 惠上 博文, 西田 秀樹, 岡 紳爾, 調 恒明
    2015 年 62 巻 10 号 p. 609-616
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 てんかんは人口の約 1%を占める決して珍しくない病気であり,近年,高齢化とともにてんかん患者が増加している。また就学,就労,運転免許などの社会生活面や障がい者福祉などでも患者は多くの問題を抱えている。しかしてんかん患者の抱える問題が地域保健行政に十分理解されているとは言い難く,医療・介護・福祉の連携体制の不備も指摘されている。そこで,てんかんに関する地域保健活動の実態を把握し,今後の支援体制や啓発活動に活用することを目的に全国保健所を対象に実態調査を行なった。
    方法 全国490か所の保健所を対象にてんかんの地域保健支援体制に関するアンケートを実施した。方法は自記式調査票を保健所に郵送,担当保健師 1 人が代表して回答・返送する形式とし,平成26年 9~10月に実施した。調査内容は保健所で受けたてんかんに関する相談の有無および内容,研修会等実施の有無,保健所で扱う難病および感染性疾患の研修との対比等とした。
    結果 全国347保健所から回答を得た(回収率71%)。内訳は都道府県型保健所(県型)263か所(72%),指定都市・中核市・政令市・特別区保健所(市型)84か所(67%)であった。保健師がてんかんに関する相談を受けた経験は73%(県型69%,市型88%)であり,市型に多かったが(P<0.01),適切に対応できるという回答はわずか10%であった(県型,市型で差はなし)。相談の内容は医療機関,症状・将来の不安が多かった。保健師が把握している研修会の開催は専門職,住民対象がともに 8%であり,県型(専門職,住民ともに 5%)に比べ市型(専門職17%,住民18%)で多く開催されていた(P<0.01)。またこの割合は他の保健所が扱う疾患の研修会(21%~70%)と比べ有意に少なかった(P<0.01)。てんかんについての知識は保健師の76%が必要と考え,60%は研修会があれば参加したいと回答した。
    結論 多くの保健所保健師はてんかんに関する相談を受けている反面,適切には回答できていないと感じている。またてんかんの知識は必要と感じているが,研修等を通して知識の修得ができない境遇にある。これらの結果を踏まえ,今後はてんかん学会・協会,医師会,医療機関等が行政と恊働し,てんかんの啓発活動を地域保健に取り入れることが重要である。さらに都道府県単位に包括的高度専門てんかんセンター等を設置し,行政保健師や介護・福祉・教育等専門職が情報収集のできる環境整備が望まれる。
資料
  • 橋本 修二, 川戸 美由紀, 山田 宏哉, 鈴木 茂孝, 三重野 牧子, 遠又 靖丈, 村上 義孝
    2015 年 62 巻 10 号 p. 617-623
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    目的 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数について,東日本大震災によって調査対象から除外された地域の補完を行った。
    方法 国民生活基礎調査において,東日本大震災によって調査対象から除外された2011年の岩手県・宮城県・福島県と2012年の福島県の世帯数について,前後の大規模調査年の情報を用いて線型内挿法で補完した。2011年における宮城県と福島県の推計患者数について,同年の患者調査(宮城県の石巻・気仙沼医療圏と福島県が調査対象から除外)と2012年の福島県患者調査,2011年と2012年の医療施設調査と病院報告を用いて補完した。
    結果 全国の世帯数(各年 6 月時点)における補完値は2011年で48,732千世帯,2012年で48,874千世帯であった。世帯構造別の世帯数において,2011年と2012年の調査値が前後の年次よりも大きく落ち込んでいたのに対して,両年の補完値には落ち込みがなかった。2011年10月の推計患者数の補完値は,全国で入院1,365.4千人と外来7,383.9千人,施設所在地が宮城県で入院21.2千人と外来130.0千人,施設所在地が福島県で入院22.0千人と外来108.8千人であった。調査値に対する補完値の比を性・年齢階級と傷病分類ごとにみると,全国の推計患者数ではほぼ1.02倍であったが,患者住所地が宮城県と福島県の推計患者数ではきわめて大きかった。
    結論 国民生活基礎調査の世帯数と患者調査の推計患者数の補完値を示した。年次推移の観察にあたって,補完の仮定を十分に考慮することが重要であろう。
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