目的 本研究の目的は,都市在宅高齢者における健康三要因の 6 年間の経年変化とともに,相互の因果関係を明確にすることである。
方法 都市郊外在宅に居住する65歳以上高齢者を対象にして,2001年 9 月に実施した郵送自記式質問紙調査回答者13,195人(回収率80.2%)を基礎的データベースとした。3 年後の2004年 9 月と 6 年後の2007年 9 月に同様な追跡調査を実施した。分析対象者は2,375人である。健康三要因の因果関係は,交差遅れ効果モデルを応用し共分散構造分析によって分析した。
結果 身体的健康度の一つである BADL(Basic Activities of Daily Living)が全てできる割合は,91.0%から 6 年後には82.9%へと低下した。精神的健康度の一つである主観的健康感が,健康である割合は,85.4%から 6 年後には77.0%へと統計学的にみて有意に低下した。
健康三要因の因果関係は,“精神的要因”(“ ”は潜在変数を示す)が基盤となり,3 年後の“身体的要因”を直接に規定し,6 年後の“社会的要因”を間接的に規定するモデルの決定係数が,男性25%,女性19%であり,適合度指数はNFI=0.935, IFI=0.950, RMSEA=0.036と,高い適合度が得られた。
結論 高齢者の社会的健康は,6 年前の精神的健康が基盤となり,3 年前の身体的健康を経て間接的に規定される可能性が示唆された。研究成果を他の世代で明確にするとともに,外的妥当性を高めることが研究課題である。
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