目的 非喫煙成人女性および小児で,気道アレルギー発症の主要なリスク要因であるヤケヒョウヒダニ(Dp)のアトピー(Dp 感作)に対する住宅の気密性や受動喫煙の関与の態様を検討する。
方法 ①対象:平成 7~9 年に大阪府下の成人病検診を受診した健康成人女性(主婦)のなかから非喫煙者382人と,大阪府下の小学校に通う学童で,平成12年 4 月に保健所で実施されたアレルギー性疾患予防健診を受診した 9~12歳までの健常小児214人を対象に,Dp 感作に対する住宅の気密性や受動喫煙の関与を検討した。また,平成 5 年12月~平成 6 年 5 月に病院小児科を受診した小児のなかから家族に喫煙者がいると答えた原則として12歳までの小児170人を対象に,住宅の気密性と受動喫煙量との関係を検討した。
②方法:アンケート調査により,①住宅の気密性に関連して住宅構造(鉄筋住宅/木造住宅),②受動喫煙に関連して家族喫煙の状況,③室内での吸入アレルゲンへの曝露状況に関連して室内(台所)でのカビの発生,の三要因を調査した。Dp 感作の状況については,血清 Dp 特異的 IgE 陽性でもって Dp 感作ありとし,受動喫煙については,尿中コチニン量が 6 ng/mgCr を超えると受動喫煙ありとした。
成績 1. 生活環境要因のうち,室内でのカビの発生と家族喫煙は Dp 感作に関与し,その効果は相乗的であった。
2. 鉄筋住宅居住群の受動喫煙量は,木造住宅居住群に比べ主婦では多く,独立した子ども部屋を持っている学童では少なかった。
3. 受動喫煙の Dp 感作に対する影響は,主婦では主に鉄筋住宅居住群に,学童では主に木造住宅居住群に発現した。
4. 台所でのカビの発生の Dp 感作に対する影響は,主婦では主に木造住宅居住群に発現し,学童ではみられなかった。
結論 生活環境要因の中で,鉄筋住宅居住,受動喫煙,室内でのカビの発生の三要因について,Dp 感作への影響を主婦と学童とで疫学的に検討したところ,Dp 感作は,住宅の気密性などによる吸入アレルゲンの負荷の増大か,抗体産生反応の亢進(タバコ粒子によるアジュバント効果)によって促進されることが確かめられ,三要因の関与の態様は,家庭内での生活状況の違う主婦と学童とで異なることが分かった。
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