日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
55 巻, 8 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
原著
  • 高橋 和子, 工藤 啓, 山田 嘉明, 邵 力, 石川 仁, 深尾 彰
    2008 年 55 巻 8 号 p. 491-502
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 生活習慣病予防対策の効果的な促進を目指し,地域住民の生活習慣病予防における健康行動と健康行動に関わるソーシャルサポートの関連性を明らかにすることを目的とした。
    方法 対象は,平成17年度の住民基本健康診査を受診した宮城県 A 町の40歳以上の住民である。有効回答者は1,225人であった(有効回答率49.9%)。調査は,自記式調査票を用い,基本属性のほか,主観的健康感,生活習慣病の現病・既往歴,その他の現病の有無,生活習慣病の家族歴,同居家族の生活習慣を把握した。
     健康行動は,「毎食,野菜をとる」,「脂肪控えめ」,「甘いもの控えめ」,「塩分控えめ」,「間食・夜食控えめ」,「アルコール控えめ」,「タバコは吸わない」,「三食規則正しく食べている」,「体重を定期的に測定」,「定期的に運動」の10項目を挙げ,実施合計数を得点とした。
     ソーシャルサポートは,「精神面」,「食生活」,「食事の支度」,「運動」に関する支援者と「健康情報源」の有無を把握した。
     分析は,性・年齢別に65歳で区分して 4 群に分けて行った。各変数における健康行動実施合計数の平均値の比較は t 検定および一元配置分散分析を用いた。健康行動と他の変数との相関係数を確認した上で,健康行動を従属変数に,ステップワイズ法(変数増減法)による重回帰分析を実施した。また,その際,疾患の有無により,健康行動の関連要因が異なるかを確認した。
    結果 健康行動得点は,男性の65歳未満では5.9±2.2点,65歳以上は7.4±1.8点,女性の65歳未満では7.4±1.8点,65歳以上では8.0±1.5点であった。重回帰分析の結果,65歳未満の男性は,全体では健康行動とソーシャルサポートの関連は認められなかったが,糖尿病や,疾患のある人を除いた場合,精神的支援者の有無で有意な正の関連があった(糖尿病なし P<0.05,疾患なし P<0.01)。65歳以上の女性は,疾患の有無を問わず,運動支援者の有無と正の関連があった。また,65歳以上の男性では関連は認められず,65歳未満の女性は疾患がある人を含む場合に,食生活支援者の有無で負の関連(P<0.01),健康情報源の有無は正の関連(P<0.05)があった。
    結論 生活習慣病予防に向けた健康行動の実施には,壮年期の男性では精神的な支援者,高齢の女性では運動の支援者がいることが,効果的に作用する可能性が示唆された。
資料
  • 西村 美八, 竹森 幸一, 山本 春江
    2008 年 55 巻 8 号 p. 503-510
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 20, 30代女性の結婚,妊娠,出産,育児などのライフイベントに注目し,これらのライフイベントが生活習慣に及ぼす影響について検討した。
    方法 青森県 A 市在住で,現在育児中の20, 30代の女性を対象とした。対象者には,出生届後,または乳幼児健診受診後に無記名の自記式質問紙を配布し,郵送法により回収した(有効回答数200人,有効回答率37.7%)。Breslow らおよび森本らの健康習慣を参考に,12項目の生活習慣を設定し,その合計得点を生活習慣得点として,年代別およびライフイベント前後の生活習慣の変化について比較した。
    結果 対象者の平均年齢(SD)は31.1(4.2)歳であった。現在の生活習慣では運動,健診受診の項目で望ましくない生活習慣を実施している者が半数を超えた。また,朝食摂取,健診受診の項目で20代より30代で望ましい生活習慣をしている者の割合が有意に高かった(朝食摂取:P<0.05,健診受診:P<0.01)。
     ライフイベントと生活習慣の関係では,生活習慣得点は結婚後,妊娠後に有意に高く(結婚後:P<0.05,妊娠後:P<0.01),出産後に有意に低かった(P<0.01)。結婚,妊娠後に望ましい生活習慣に変化した項目は,生活の規則性,食事に関する項目であった。とくに妊娠後は飲酒,喫煙の項目で望ましい生活習慣に変化した者の割合が有意に高かった(P<0.01)。一方で,出産後はすべての項目で望ましくない生活習慣をしている者の割合が上昇し,食事に関する項目や飲酒,喫煙,健診受診において有意に低下していた(P<0.01)。また,結婚後,妊娠後に離職する者の割合が有意に多いことが示された(P<0.01)。
    結論 20, 30代女性では結婚,妊娠,出産,育児等のライフイベントは生活習慣に大きく影響し,ライフイベントを経験しながら望ましい生活習慣を維持し続けることは難しいことが示唆された。望ましい生活習慣が維持できるような支援形態や,現状の母子保健事業等を有効活用した施策の検討の必要性が示された。
feedback
Top