日本公衆衛生雑誌
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53 巻 , 7 号
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論壇
原著
  • 横山 公通, 宮崎 康文, 水田 嘉美, 松木 秀明, 岡崎 勲
    2006 年 53 巻 7 号 p. 471-479
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 近年,社会環境やライフスタイルの多様化に伴い,中学生の間で疲労感や不定愁訴など,自覚症状についての訴えが増加しつつあることが問題視されてきている。本研究では,愁訴と生活様式,特に睡眠不足や不適切な食習慣の関連を解明し,生活指導に活用することを目的に検討を行った。
    対象および方法 対象者は神奈川県内の13市,3 町の中から29校の公立中学校を無作為抽出し,各校,各学年のうち 1 クラスの男女とした。方法は CMI 簡略版の質問項目を含む100項目の設問からなる質問票を用い,自己記入法により実施した。
    結果 CMI の身体的症候評価で「異常」,精神的症候評価で「要検診」と評価された者は,男女共に,高学年になるにしたがって増加傾向を示した。「異常」群や「要検診」群では,生活リズムの規則性に関する質問で,生活リズムが「いつも不規則」と回答した者が多く存在した。生活リズムの規則性と関連が見出された生活習慣は,(1)就寝時刻,(2)睡眠時間,(3)食生活評価であった。生活リズムが「いつも不規則」な者は,就寝時刻が遅く,睡眠時間が短く,食生活評価が悪い者が多く存在した。数量化理論による解析の結果,生活リズムの規則性に最も関連するのは,就寝時刻であることが明らかとなった。また,食生活では,90%以上の者が,食事の際に,食品の組み合わせに対する配慮をしないと回答していた。
    結論 生活リズムの不規則な中学生に対して,十分な睡眠時間を確保するための生活指導に加えて,適切な食教育を行う必要があると考えた。
  • 緒方 泰子, 和泉 由貴子, 北池 正
    2006 年 53 巻 7 号 p. 480-492
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 自分専用の携帯電話を所有している高校生の携帯電話のメール機能(以下,携帯メール)の利用頻度と友人とのネットワークや携帯電話利用における利点や欠点(以下,携帯電話の利点・欠点)に対する認識,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすること,孤独感と携帯メールの利用,友人とのネットワーク,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 関東地区の A 高等学校の各学年 2 クラス計227人を対象に無記名で自記式調査を行った。調査内容は,孤独感,携帯電話の利用状況,1 日あたりの平均メール利用回数(以下,携帯メール回数),友人とのネットワーク(友人数や課外活動への参加程度等),携帯電話の利点・欠点である。孤独感の測定には,UCLA 孤独感尺度邦訳版20項目を用い,「決して感じない」から「度々感じる」までの 4 段階の選択肢を設け,孤独感の低い方から高い方へ 1~4 点を与えて合計した(以下,孤独感得点)。携帯電話の利点・欠点は,先行研究等から20項目を設定し,「全くそう思わない」から「よくそう思う」の 4 件法で尋ね,因子分析を行い,各因子を分析に用いた。
    結果 回答者220人は,男子57.5%,女子42.0%で,各学年ほぼ同人数であり,携帯電話所有率は94.1%であった。孤独感20項目のクロンバックの α 係数は0.87,孤独感得点の平均値は先行研究に近似していた。携帯電話の利点・欠点20項目の因子分析により 5 因子が抽出された。メール回数を従属変数とした重回帰分析の結果,学年,通話回数,授業中の通話・メールの確認,着信・メールの頻繁なチェック,伝達の困難性,夜間利用による睡眠不足により,メール回数の分散の42.9%が説明された。孤独感に有意差のみられた,性別,友人とのネットワーク(友人数等),携帯メール回数等を独立変数,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析の結果,性別,友人数,恋人の有無,携帯メール回数により孤独感の分散の24.4%が説明された。
    結論 携帯メールの利用は,友人とのネットワークと同様に,高校生の孤独感に低減効果をもたらし,その利用回数は,携帯電話の利用頻度や,携帯電話の利点や欠点を高校生がどのように感じているかによって影響を受けていた。また,高校生が,携帯電話の利便性や限界を認識しつつ,苛立ちや束縛感を感じながらも友人との関係性強化に携帯メールを利用していることが明らかになった。
  • 三輪 のり子, 中村 隆, 成瀬 優知, 大江 洋介, 大野 ゆう子
    2006 年 53 巻 7 号 p. 493-503
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 20世紀における脳血管疾患死亡率の変動要因を明らかにし,脳卒中対策の成果ならびに21世紀前半の脳血管疾患死亡数の動向を検討する。
    方法 分析対象期間は,男女の年齢階級別の脳血管疾患死亡数と人口の把握が可能であった1920~2003年(1940~1946年を除く)とした。中村のベイズ型ポワソン Age-Period-Cohort モデルを用いて,男女別に,20~79歳(5 歳年齢階級別)の各年データから,脳血管疾患死亡率に対する影響の大きさ(効果)を推定した。さらに,得られた年齢・世代効果の推定値と,1995~2003年の時代効果の推定値についての直線回帰による2003年時点の値および 1 次・2 次関数に基づく時代効果の将来設定値を用いて,2050年までの脳血管疾患死亡数の推計を行った。
    成績 脳血管疾患死亡率の変動に対して,年齢・時代・世代の 3 効果が認められ,それぞれ男女で似た傾向であった。3 効果の変動幅(レンジ)は,年齢,世代,時代効果の順に大きかった。年齢効果は20~24歳から年齢階級があがるにつれて上昇していた。時代効果は1970年頃から下降していた。世代効果は,1840~1890年代生まれで高く,1920~1970年代生まれで低くなっていた。ただし1940年代生まれ以降は,女性は下降,男性は漸増の後1960~1970年代生まれは一定の傾向であった。3 効果の推定値に基づく脳血管疾患死亡数の将来推計では,時代効果を一定に仮定すると,とくに男性は2025,2045年前後をピークとする 2 峰性を示し,推計期間を通して増加傾向となる。これに対して時代効果の下降がつづくと仮定すると,死亡数の推移は男女とも現在と同程度もしくは減少していくことが示された。
    結論 20世紀における脳卒中対策や生活環境の改善の成果は,社会全体としては1970年頃より表れ,その影響を受けた世代は脳卒中の罹患や重症化を予防する特性を備えていた。にもかかわらず21世紀前半は,第一次・二次ベビーブーマーが脳血管疾患死亡率の高い年齢層に達すること,男性の世代効果が上昇基調にあることから,脳血管疾患死亡数は基本的に増加傾向となる。今後は,過去30年における時代効果の下降が続くような集団戦略と,男性の現若齢層(20~30歳代)に対する高リスク戦略の両面について検討を行う必要がある。
  • 岡本 秀明, 岡田 進一, 白澤 政和
    2006 年 53 巻 7 号 p. 504-515
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 大都市に居住する高齢者の社会活動に関連する要因を,身体,心理,社会・環境的な状況から総合的に検討することを目的とした。
    方法 大阪市に居住する65~84歳の高齢者1,500人を,選挙人名簿を用いて無作為に抽出した。調査は,自記式調査票を用いた郵送調査を実施した。有効回答数771人(51.4%)のうち,代理回答および IADL 得点が 0 点の者を除外したため,分析対象者は654人となった。社会活動は,個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動,仕事という 4 側面を捉える社会活動指標を用いて測定した。分析は,社会活動の 4 側面それぞれを従属変数,基本属性,身体,心理,社会・環境的な変数を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。
    結果 ロジスティック回帰分析を行った結果,個人活動が活発な者の特性は,外出時のからだのつらさがない,親しい友人や仲間の数が多い,活動情報をよく知っている,活動情報を教えてくれる人がいる者であった。社会参加・奉仕活動では,地域社会への態度の得点が高い,平穏でのんびり志向の得点が高い,親しい友人や仲間の数が多い,外出や活動参加への誘いがある,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。学習活動では,地域社会への態度の得点が高い,外出や活動参加への誘いがある,活動情報をよく知っている者であった。仕事では,変化や新しさを伴う活動的志向の得点が高い,技術・知識・資格がある,中年期に地域とのかかわりがあった者であった。
    結論 高齢者の社会活動には,身体,心理,社会・環境的な要因が幅広く関連していた。高齢者が社会活動に参加しやすい社会を構築していくためには,地域における仲間づくりや共通の関心を持つ者同士が出会ったり共に活動したりしやすいような支援や,地域の委員等が活動参加を適度に促すことなどが求められる。また,個人の側も高齢期以前から地域の活動に関心を持つなどの努力が必要であろう。
資料
  • 森脇 睦子, 黒岩 寿美子, 林田 賢史, 山口 扶弥, 梯 正之, 烏帽子田 彰
    2006 年 53 巻 7 号 p. 516-524
    発行日: 2006年
    公開日: 2014/07/08
    ジャーナル フリー
    目的 予防医学を中心とした基本戦略の柱である「健康日本21」は,計画策定の情報の共有化と目標管理・評価により,国民の意識改革と行動変容を促しており,さらに関連団体,行政,地域住民等の連携を重視している。多くの自治体では,独自の健康づくりへの取り組みを行っているが,その評価に関する問題点は数多く指摘されており,また,それぞれの事業がどの程度根拠に基づいているのか明確ではないことが多い。そこで,本研究では,地域住民ニーズの把握が事業に与える影響と,他部署・他機関との連携の現状を明らかにすることを目的とした調査を行った。
    方法 2003年 9 月~11月,政令指定都市を除く全国市町村健康づくり部局を対象に,各市町村規模,「健康日本21」に関連した計画策定,計画の実行,評価(地域住民ニーズの行政施策への反映,健康水準への貢献,事業の有効性の根拠),将来的な計画遂行構想,住民を対象とした取り組み,市町村の属性等 7 領域についての質問紙調査を行い,地域住民ニーズの把握が事業に与える影響と,他部署・他機関との連携について検討した。
    結果 調査対象は1,975市町村(回収率61.4%)であった。地域住民ニーズの把握状況は,「把握している」41.2%,「把握していない」56.2%であった。「健康づくり」分野における地域住民ニーズの把握の重要性は,「とても必要」75.1%,「どちらかといえば必要」22.6%であった。把握した地域住民ニーズの行政政策への反映は,「反映している」44.9%,「反映していない」26.4%,「わからない」17.5%であった。「健康づくり」に関する事業による住民の健康水準への貢献は,「貢献してきた」87.1%,「貢献してこなかった」2.5%,「わからない」9.0%であった。健康づくりに関する事業の有効性の根拠は,「事業には有効性があると判断できる根拠がある」14.4%,「事業には有効性があると思うがその根拠が明らかでない」75.8%であった。「地域住民ニーズの把握状況」と「行政施策への反映」,「地域住民ニーズの把握状況」と「事業の有効性の根拠」との間には有意な関連がみられた。
    結論 6 割の市町村で地域住民ニーズを把握していない現状が明らかとなった。地域住民ニーズを把握している市町村のほうが,行政施策や住民の健康水準の貢献に反映していた。また,事業の有効性の根拠を持っている市町村は,行政施策にも反映できていた。これらのことより,地域住民ニーズを把握することが,効果的な事業を企画,実施していく上で必要であり,単に住民ニーズを「知る」以上の効果があることが示唆された。
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