日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
65 巻 , 10 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 原田 小夜, 種本 香
    2018 年 65 巻 10 号 p. 575-588
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的 地域ケア会議は地域包括ケアの推進に重要な役割を担っている。本研究目的は,地域包括支援センター(地域包括)職員の地域ケア会議の企画運営の課題と運営における工夫を明らかにし,保険者の効果的な地域ケア会議の企画運営を推進することである。

    方法 地域ケア会議を運営している職員30人(1グループ5~9人),委託地域包括職員3グループと保険者職員1グループに「地域ケア会議の進め方,困ったことや課題に思ったこと,効果のあったこと」をテーマにグループインタビューを実施し,質的帰納的に分析した。グループごとに,逐語録を作成し,コード化し,サブカテゴリを抽出した。その後,4グループのサブカテゴリを比較,内容の共通性から,中位カテゴリを抽出し,その共通性からカテゴリを抽出し,カテゴリを比較し,その共通性からコアカテゴリを抽出した。サブカテゴリを比較して中位カテゴリに統合する段階で,すべてのグループで共通するものか,グループにより異なるものかを比較した。

    結果 4グループインタビューの結果,454コード,91サブカテゴリ,29中位カテゴリ,11カテゴリ,4コアカテゴリを抽出した。地域ケア会議の企画運営における課題は,【地域ケア会議の位置づけ・目標設定に対する迷い】,【会議運営のスキル不足に伴う負担感】,【地域包括の介護支援専門員(以下,CM)や住民を巻き込んだ地域づくりへの足踏み】の相互に関連する3コアカテゴリを抽出した。課題を解決するための工夫として,【効果的な会議にするための工夫によって得られた効果の実感】の1コアカテゴリを抽出した。【効果的な会議にするための工夫によって得られた効果の実感】は,地域ケア会議の構造化と経験の蓄積によるスキル強化とCMの地域ケア推進力の育成,地域ケア会議を住民と一緒に活動するきっかけと捉えるという地域包括職員の地域ケア会議に関する認識の変化であった。

    結論 地域ケア会議の効果的な企画運営には,保険者の地域ケア会議の目的の明確化と体系化,地域包括職員のファシリテート能力の向上が必要であり,また,保険者による委託包括への支援,CM研修とともに,保険者の地域ケア会議結果と関連するデータの収集,分析から政策化に向けた保険者機能の強化が必要である。

  • 小澤 啓子, 武見 ゆかり, 衛藤 久美, 岩間 範子
    2018 年 65 巻 10 号 p. 589-601
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的 健康日本21(第二次)の目標項目の1つである野菜摂取量を増やすには,野菜摂取量の関連要因を明らかにする必要がある。そこで,壮中年期を対象に野菜摂取量と食行動,食態度,食知識・スキル,および周囲からの支援との関連を検討した。

    方法 平成23年度埼玉県民健康・栄養調査で得られた30-59歳384人(男性165人,女性219人)のデータ(2日間の食事記録と質問紙)を用いた。野菜摂取量は,本対象集団の平均摂取量が250.2(SD 119.8)g/日と健康日本21(第二次)の目標である350 gよりかなり少なかったこと,先行研究で同集団において300 g/日の摂取で,野菜からの摂取が期待できる栄養素不足が回避または低減できることを確認しているため,300 gをカットオフポイントとすることにした。野菜摂取量300 g以上,300 g未満の2群を従属変数,食行動,食態度,食知識・スキル,周囲からの支援の項目を独立変数,調整変数を年齢,世帯構成,世帯収入としたロジスティック回帰分析を行った。

    結果 男女共に300 g以上である調整オッズ比が有意に高かったのは,「主食・主菜・副菜がそろう食事の平均回数(食事記録)が1日2回以上」であり,男性は調整オッズ比(AOR):2.52,95%信頼区間(CI):1.18-5.39,女性;AOR:4.06,CI:2.18-7.53であった。男性のみ調整オッズ比が高かったのは,「1日に5皿以上の野菜料理を食べる自信がある/どちらかと言えばある」がAOR:2.74,CI:1.30-5.79,「野菜摂取が肥満症予防に効果があることを知っている」がAOR:3.48,CI:1.24-9.78,「家族や周囲が健康や食生活をよりよくするために協力的だと思う/まあそう思う」がAOR:4.46,CI:1.47-13.54であった。一方女性のみ調整オッズ比が高かったのは,「食事づくりをほぼ毎日する」がAOR:2.83,CI:1.02-7.87,「自分の適量とバランスがよくわかる/だいたいわかる」がAOR:2.44,CI:1.30-4.56であった。

    結論 壮中年期の野菜摂取量増加のためには,男女共に野菜摂取に限定した支援だけではなく,健康日本21(第二次)の食事全体の栄養バランスの行動目標である「主食・主菜・副菜がそろう食事を1日2回以上」を促す支援が重要であることが示唆された。

  • 川崎 千恵
    2018 年 65 巻 10 号 p. 602-614
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,乳幼児を育てる母親を対象とした地域活動の機能とその実態,機能の構造を明らかにするとともに,機能に関連する母親の先行要因,地域活動の形態を明らかにすることを目的とした。

    方法 先行研究から得られた概念枠組みに基づき,地域活動の機能を測定する5つの下位尺度から成る45項目,母親の先行要因,地域活動の形態等から成る調査票を作成し,首都圏近郊の地域活動に参加している母親に1,100人に配布した。各下位尺度の構成概念妥当性と信頼性について,確認的因子分析と信頼性係数により検討した。地域活動の機能を測定する5つの下位尺度の構造について,共分散構造分析により検討した。地域活動の機能に関連する母親の先行要因,地域活動の形態については,相関係数および重回帰分析の結果により検討した。

    結果 回答を得た405人(回収率36.8%)のうち379人を分析対象とした(有効回答率93.5%)。地域活動の機能を測定する「母親に効果をもたらす地域活動機能評価尺度」の確認的因子分析の結果,5つの各下位尺度(39項目)のモデル適合度と信頼性係数が高く,内的整合性が確保されていた。共分散構造分析の結果,下位尺度の構造が明らかになった(CFI=0.858, RMSEA=0.060)。重回帰分析の結果,地域活動の5つの機能に関連する母親の先行要因や地域活動の形態が明らかになった。

    結論 「母親に効果をもたらす地域活動機能評価尺度」(CAFES)で測定する,地域活動の5つの機能は,他の機能と関連しながら働くことが示唆された。地域活動の機能に関連する先行要因や活動の形態が確認され,とくに参加回数が「10回以上」であること,活動の形態では「運営に母親が携わる」「半日開催」であることが,機能を促進する可能性が示唆された。CAFESを一般化して使用するためには,集団特性に多様性を持たせ,精錬することが今後の課題である。

資料
  • 小林 良清
    2018 年 65 巻 10 号 p. 615-620
    発行日: 2018/10/15
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

    目的 2015年の都道府県別生命表において長野県男性の平均寿命が滋賀県男性の平均寿命に準じて全国2位に後退したが,20歳以上の平均余命がいずれも全国1位であることから,20歳未満の年齢層における死亡率が2位後退に大きく影響していると考え,既存の統計資料等を活用してその状況を明らかにする。

    方法 政府統計から都道府県別生命表を入手し,長野県,滋賀県,全国における男性のそれぞれの年齢別死亡率を確認した。そして,平均寿命の計算式を作成し,仮の年齢別死亡率における長野県男性の平均寿命を試算した。さらに,長野県の衛生統計から男性の年齢階級別死因別死亡数を入手し,死因の状況を確認した。

    結果 2015年長野県男性の年齢別死亡率は,9歳から13歳において2010年長野県男性の年齢別死亡率より2倍以上高く,9歳から14歳において2015年滋賀県男性の年齢別死亡率より2倍以上高くなっていた。そして,平均寿命の計算式を用い,9歳から13歳における2015年長野県男性の年齢別死亡率が2010年長野県男性の年齢別死亡率と同じだったと仮定して平均寿命を試算すると81.77885歳となり,2015年滋賀県男性で試算される平均寿命81.77882歳を上回った。また,9歳から14歳における2015年長野県男性の年齢別死亡率が2010年長野県男性の年齢別死亡率と同じだったと仮定すると,平均寿命が81.78154歳となった。10歳から14歳において2015年長野県男性の死亡数は,2010年長野県男性の死亡数に比べて2.4倍に増えており,死因別死亡数がわかっている2014年から2015年を2010年と比較すると,「傷病および死亡の外因」に含まれるもの,含まれないものがともに増えていた。

    結論 平均寿命は,すべての年齢の死亡状況が反映された一つの数字であり,その値から課題を抽出するためには年齢に着目した分析が不可欠である。今回の分析により,2015年長野県男性の平均寿命が2015年滋賀県男性の平均寿命に準じて全国2位に後退したのは,10代前半の死亡数・率の増加が大きく影響していたものと推測された。

feedback
Top