日本公衆衛生雑誌
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58 巻 , 11 号
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原著
  • 渋井 優, 村山 洋史, 河島 貴子, 可野 倫子, 虎谷 彰子, 立花 鈴子, 澁田 景子, 福田 吉治, 村嶋 幸代
    2011 年 58 巻 11 号 p. 935-947
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は都市部高齢者における閉じこもり予備群の実態を明らかにするために,その出現状況を記述し,類型化によって既知の閉じこもり予測因子の保持状況を明らかにし,さらに類型化されたそれぞれの群の特徴について検討することを目的とした。
    方法 東京都世田谷区の自宅で生活する65歳以上の全高齢者(149,991人)を対象に郵送調査を実施した。普段の外出頻度が週 2~3 回程度の者を「閉じこもり予備群」と定義した。既知の閉じこもり予測因子である,手段的日常生活動作能力(Instrumental Activities of Daily Living; IADL),抑うつ度,認知機能,交流状況を用いて非階層的クラスター分析により閉じこもり予備群を類型化し,得られた群の群間比較を行い,各群の特徴を記述した。
    結果 自己回答した者のうち,「閉じこもり予備群」は11,282人(13.0%)であった。閉じこもり予備群について行ったクラスター分析の結果,全体良好群(46.4%),抑うつ傾向群(23.5%),認知機能低下•抑うつ傾向群(19.6%),IADL 低下群(6.5%),全体低下群(3.8%)の 5 群が得られた。群間の特徴比較から,「全体良好群」は身体•心理•社会的側面のいずれにおいても良好であること,「抑うつ傾向群」と「認知機能低下•抑うつ傾向群」は将来や転倒に対する不安感を有する者の割合が高く,昨年と比較して外出頻度が減少した者の割合が高いこと,「IADL 低下群」と「全体低下群」は平均年齢が高く要介護認定者の割合が高いこと,等が示された。
    結論 得られた各群の特徴に基づき,一次予防介入方策を検討した。「全体良好群」:全体的に良好であるにもかかわらず外出頻度が週 2~3 回程度にとどまっている理由を同定し,生活実態に即して外出を促す。「抑うつ傾向群」:転倒不安の軽減を目的とした介入を行い,身体機能の低下を防ぐ。「認知機能低下•抑うつ傾向群」:認知機能低下を考慮したうえで,抑うつ傾向群同様,転倒不安の軽減を目的とした介入を行い,身体機能の低下を防ぐ。「IADL 低下群」:維持されている認知機能の低下を予防するために,認知症の発症を遅らせる生活スタイル等の情報提供を行う。「全体低下群」:現在導入されているサービスおよび支援が継続され,状態の変化に早期に対応できるように,地域の保健医療専門職および家族•近隣が目を配る。以上,本研究によって得られた結果は,閉じこもり一次予防対象者の状態像の把握の一助となり,その予防策の確立に寄与することが期待される。
研究ノート
  • 高泉 佳苗, 原田 和弘, 中村 好男
    2011 年 58 巻 11 号 p. 948-958
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,食事バランスガイドを認知していない者の人口統計学的特徴および健康特性を明らかとすることを目的とした。
    方法 社会調査会社の登録モニター1,012人(40.2±SD10.0歳)を対象とした。2007年11月(T1),2008年12月(T2)の計 2 回,インターネットを用いた質問調査を縦断的に実施した。調査項目は,食事バランスガイドの認知レベル(内容を知っている,聞いたことがある,聞いたことがない),人口統計学的要因(年齢,結婚の有無,教育歴,職業の有無,世帯収入,独り暮らしの有無),健康特性要因(肥満,内臓脂肪蓄積,不十分な身体活動)であった。T1 における食事バランスガイドの認知レベルと,人口統計学的要因および健康特性要因との関連については,食事バランスガイドの認知(内容を知っている,聞いたことがある)を従属変数,両要因を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析にて検討した。食事バランスガイドの認知レベルの経時変化(T1–T2)と各要因との関連性については,χ2 検定を行った。解析は男女別に行った。
    結果 変数間の影響を調整した結果,男性では,世帯収入500~1,000万円未満であること(OR=1.78, 95%CI=1.10–2.88)が「聞いたことがある」に正の影響を示した。女性では,未婚であることが「内容を知っている」(OR=0.35, 95%CI=0.17–0.70)および「聞いたことがある」(OR=0.50, 95%CI=0.27–0.92)に負の影響を示した。T1からT2にかけて,男性の認知レベルは向上していた。「聞いたことがない」(T1)という認知レベルの経時変化と最終学歴(P=0.023)との間に有意な関連性が認められた。女性では,認知レベルに有意な経時変化は認められなかった。「聞いたことがある」(T1)という認知レベルの経時変化と世帯収入が関連していた(P<0.001)。男女ともに認知レベルの経時変化と健康特性との間には有意な関連は認められなかった。
    結論 肥満や身体活動の不足といった健康へのリスク要因を有している集団において,食事バランスガイドの認知は進んでいた。今後の食事バランスガイドの普及ターゲットとして,低学歴の男性,未婚の女性,高所得の女性が示された。
  • 福川 康之, 川口 一美
    2011 年 58 巻 11 号 p. 959-966
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 孤独死の発生状況,孤独死問題への認識,孤独死の判定基準,孤独死者の属性等の情報把握率,孤独死予防対策の実施状況などについて明らかにすることを目的として,全国の自治体を対象に質問紙調査を行った。
    方法 東京23区を含む全1,811の市町村に調査票を郵送し,961の自治体から回答が得られた(回収率53.1%)。自治体を人口規模別に 4 群に分け,回答を比較した。
    結果 以下の主な結果が得られた。1) 孤独死実態調査を実施(実施中•実施予定含む)していた自治体は全体の16.8%で,大規模自治体の実施率が比較的低かった。2) 孤独死問題を「重要だが二次的課題である」とする自治体は全体の72.0%で,人口規模に関わらず多かった。3) 孤独死発生率は全体で人口千人あたり約0.10人であった。4) 非高齢者や非独居者などの事例も孤独死としていた自治体とそうでない自治体があった。5) 孤独死者の情報把握率は,性別(55.1%)が最も高く,死亡原因(28.1%)の把握率は最も低かった。小規模自治体ほど総じて情報把握率が低かった。6) 全体の84.2%の自治体が孤独死予防対策として「巡回•訪問活動」を実施していた。最も実施率が低い対策は「条例の発案や制定」で,全体の0.5%にとどまった。7)「巡回•訪問活動の担い手」は,自治会やボランティアなどの民間組織(88.0%)と,福祉事務所や保健所などの行政関連機関(76.4%)が総じて多かった。小規模自治体では,大規模自治体よりも「家族•地域住民」,「警察•消防署員」など多様なネットワーク要員が担い手となっていた。8) 孤独死予防対策遂行上の利点として,とくに小規模自治体で「地域の強いつながり」と「目配りの利きやすさ」が挙げられた。遂行上の難点としては,とくに大規模自治体で「地域の弱いつながり」と「住居構造の障害」が挙げられた。「人手不足」,「支援や関わりの拒否」,「地理的障害」は,人口規模に関わらず挙げられた難点であった。
    結論 孤独死を巡る我が国の現状に関して,実態把握ができている自治体が少ないこと,定義が不統一なまま調査が行われていることなどが明らかとなった。孤独死予防対策の実施状況に関する地域差も認められた。本研究で得られた知見は,我が国の高齢者福利厚生施策の基礎的資料となるとともに,地域の状況に沿った孤独死対策の立案や遂行に資するものと考えられる。
  • 朴峠 周子, 武田 文, 戸ヶ里 泰典, 山崎 喜比古, 木田 春代
    2011 年 58 巻 11 号 p. 967-977
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,小学校高学年における首尾一貫感覚(SOC)とソーシャルサポートの 1 年間の変化,および両者の因果関係を明らかにする。
    方法 神奈川県内近郊の公立 A 小学校に通う 4~6 年生全児童403人を対象とし,属性,SOC,ソーシャルサポートに関する自記式調査票を用い 1 年間の縦断調査を実施した。各学期(全 3 回)の調査への回答が完全であった237人について,潜在成長曲線分析を行った。まず,SOC 得点とソーシャルサポート得点それぞれについて,各学期の得点を観測変数,1 学期の得点を表す[切片]と 1 年間の得点の変化を表す[傾き]を潜在変数,学年と性別を予測変数とするモデルを作成し,集団全体の変化と変化の個人差を観察した。次に,両得点のモデルを組み合わせ双方向の因果関係を検討した。
    結果 SOC 得点は,その[傾き]の平均値が0.01(n.s.),分散が2.87(P<.05)であったことから,集団全体では 1 年間変化せず,個人レベルでは徐々に高くなる児童と低くなる児童いずれもいることが観察された。ソーシャルサポート得点は,その[傾き]の平均値が−1.25(P<.05),分散が8.47(P<.01)であったことから,集団全体では 1 年間で低下し,個人レベルでは徐々に高くなる児童と低くなる児童いずれもいることが観察された。各得点の変化に学年と性別の有意な関連はみられなかった。続いて,ソーシャルサポート得点の[切片]から SOC 得点の[傾き]に対して0.44(P<.001)の,SOC 得点の[切片]からソーシャルサポート得点の[傾き]に対して0.34(P<.05)のパス係数がそれぞれ認められた。よって,1 学期のソーシャルサポート得点が高いほど 2 学期さらに 3 学期の SOC 得点が高くなること,また 1 学期の SOC 得点が高いほど 2 学期さらに 3 学期のソーシャルサポート得点が高くなることが明らかになった。これらの関係性に学年と性別の有意な関連はみられなかった。
    結論 237人の小学校高学年集団では,1 年間で全体の SOC は変化せずソーシャルサポートは減少した。また,1学期にソーシャルサポートを豊富に受けている者はその後の SOC が高くなること,1 学期に SOC が高い者はその後のソーシャルサポートが豊かになることが明らかになった。即ち,潜在成長曲線分析によって SOC とソーシャルサポートが双方向の因果関係をもつことが示唆された。
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