日本公衆衛生雑誌
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57 巻 , 10 号
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原著
  • 米山 京子, 池田 順子
    2010 年 57 巻 10 号 p. 871-880
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 妊娠前半期および後半期における骨密度変化率とカルシウム(Ca)およびたんぱく質摂取量との関係を骨代謝指標との関係も含めて検討する。
    対象と方法 平成18年 7–9 月および平成19年11月–20年 1 月に奈良市内の 1 産科を受診した妊娠16週以下の妊婦40人を対象に超音波法による骨密度測定および血液,尿中骨代謝指標の測定を妊娠のほぼ初期(11–16週),中期(24–28週),出産時の 3 回,食事状況および歩数調査を妊娠前半期と後半期の 2 回行った。妊娠前半期,後半期および全期間における骨密度変化率と Ca およびたんぱく質摂取量との関係を骨代謝との関係も含めて分析した。
    結果 種々の要因を考慮した重回帰分析で,前半期および後半期の骨密度変化率に対して,それぞれ同時期の Ca 摂取量はいずれも有意の正の関連,たんぱく質摂取量は負の関連またはその傾向が認められた。前半期および後半期とも,Ca 摂取量の影響を調整した骨密度変化率はたんぱく質摂取量が多い場合は少ない場合より有意に低かった。Ca 摂取量は前半期では血清 Ca/P,後半期では血清骨型アルカリフォスファターゼ/尿中 NTX(N-terminal crosslinking telopeptide of type I collagen)と有意の正相関,たんぱく質摂取量は前半期では血清 Ca/P と有意の負相関が認められた。
    結論 妊娠前半期および後半期において,各時期の Ca 摂取量が少ないほど,たんぱく質摂取量が多いほど骨密度は低下することが示唆された。妊娠中の骨密度低下を抑制するためには妊娠前半期および後半期とも,たんぱく質摂取量が多いほど Ca 摂取量を増加させる必要があるのではないかと考えられる。
  • 中村 美詠子, 近藤 今子, 久保田 晃生, 古川 五百子, 鈴木 輝康, 中村 晴信, 早川 徳香, 尾島 俊之, 青木 伸雄
    2010 年 57 巻 10 号 p. 881-890
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,児童生徒における「学校に行きたくないとしばしば感じる気持ち」(以下,不登校傾向)の保有状況と自覚症状,生活習慣関連要因との関連を横断的に明らかにすることを目的とする。
    方法 平成15年11月に小学校 2・4・6 年生,中学校 1 年生,高等学校 1 年生の5,448人と小学生の保護者1,051人を対象として実施された静岡県「子どもの生活実態調査」のデータを用いた。自記式の調査票により,児童,生徒の不登校傾向,自覚症状,生活習慣,および小学生の保護者の生活習慣を把握した。
    結果 有効な回答が得られた小学生2,675人,中学生940人,高校生1,377人,小学生の保護者659人について分析を行った。不登校傾向は,男子小学生の11.4%,男子中学生の12.1%,男子高校生の25.3%,女子小学生の9.8%,女子中学生の19.6%,女子高校生の35.9%にみられた。不登校傾向を目的変数,自覚症状,生活習慣関連要因をそれぞれ説明変数として,性別,小学(学年を調整)・中学・高校別に,不登校傾向と各要因との関連を多重ロジスティック回帰分析により検討した。男女ともに,小学・中学・高校の全てでオッズ比(OR)が統計学的に有意に高かったのは,活力低下(OR: 3.68~8.22),イライラ感(OR: 3.00~6.30),疲労倦怠感(OR: 3.63~5.10),朝眠くてなかなか起きられない(OR: 1.98~2.69)であり,また強いやせ希望あり(OR: 1.83~2.97)のオッズ比は中学男子(OR: 2.09, 95%信頼区間:0.95–4.60)以外で有意に高かった。一方,小学生において保護者(女性)の生活習慣関連要因と不登校傾向との間に有意な関連はみられなかった。
    結論 不登校傾向の保有状況は小学生では男女差は明らかではないものの,中高生では女子は男子より高かった。また,不登校傾向は,不登校者においてしばしば観察されるような様々な自覚症状と関連していた。
  • 川上 諒子, 宮地 元彦
    2010 年 57 巻 10 号 p. 891-899
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」の標準的な質問票を用いた身体活動調査と 3 次元加速度計を用いて測定した歩数や身体活動量との比較を行うとともに,全身持久力との関係についても比較検討することを目的とした。
    方法 被験者は,20から69歳までの成人男女483人であった。「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」の標準的な質問票より,運動習慣,身体活動,歩行速度に関する 3 つの質問を用いた。質問は「はい」または「いいえ」で回答する形式であった。3 つの質問に「はい」と回答した個数をもとに 4 つの活動レベルに分類した。歩数および身体活動量の測定には,3 次元加速度計が用いられ,1 日あたりの平均歩数,3 メッツ未満,3 メッツ以上,4 メッツ以上の活動強度の身体活動量(メッツ・時)が測定された。さらに,運動負荷試験により最高酸素摂取量が測定され,全身持久力の指標とした。
    結果 運動習慣,身体活動,歩行速度のいずれの質問においても,「はい」と答えた者は「いいえ」と答えた者より 1 日あたりの歩数,3 メッツ以上および 4 メッツ以上の身体活動量ならびに全身持久力が有意に高いことが示された。「健康づくりのための運動基準2006」で示された身体活動量の基準において各質問による感度は62~73%,特異度は45~71%であった。また,活動レベル 2 をカットオフ値とした際に感度と特異度の和が最高となり,感度73%,特異度68%であった。全身持久力の基準における感度や特異度は,身体活動量の基準によるものよりもやや低かった。
    結論 特定健診・保健指導の標準的な質問票を用いた身体活動調査によって,精度としてはそれほど高くないものの,簡易的な質問に回答するだけで日常の身体活動状況をある程度推定することが可能であることが示唆された。
公衆衛生活動報告
  • 村山 洋史, 奈良部 晴美, 兒島 智子, 戸丸 明子, 立花 鈴子, 山口 拓洋, 村嶋 幸代
    2010 年 57 巻 10 号 p. 900-908
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 地域の専門機関とインフォーマル組織間のネットワーク構築を促進するためのプログラムを作成することを目的とした。
    方法 インフォーマル組織とのネットワーク構築に関するニーズアセスメントを,インタビュー調査と質問紙調査を用いて地域包括支援センター職員に実施した後,社会的認知理論に基づきプログラムを作成した。プログラムの目的は,地域のインフォーマル組織とのネットワーク構築に関する意識が向上し,実際に行動するためのスキルが身に付くことであった。
    結果 作成したプログラムは全10回で構成される。「これまでの活動の振り返り」,「インフォーマル組織とネットワークを構築する意義の理解」,「組織内での意思統一」,「インフォーマル組織とのネットワーク構築の進め方」がプログラムのテーマに含まれ,それを基に毎回達成目標を設定する。プログラムでは,毎回設定されるテーマに基づいた参加者によるグループワークを中心に構成した。
    結論 本プログラムが確立し,臨床現場において実施されることで,地域の専門機関とインフォーマル組織間のネットワークが強固となることが期待できる。今後は,実際にプログラムを実施し,プログラムの効果を多側面から検証していく必要がある。
  • 村山 洋史, 兒島 智子, 戸丸 明子, 奈良部 晴美, 立花 鈴子, 山口 拓洋, 村嶋 幸代
    2010 年 57 巻 10 号 p. 909-920
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 地域の専門機関とインフォーマル組織間のネットワーク構築を促進するための社会的認知理論に基づいたプログラムを地域包括支援センター職員に対して試行し,その有効性を検討することを目的とした。
    方法 プログラムは,東京都世田谷区の地域包括支援センターの職員 9 人に対して 1 年間(全10回)実施された。プロセス評価として,参加者を対象に,各回の満足感や内容の分かりやすさ等の内容評価と参加者の目標達成度の評価を行い,全プログラム修了後にはプログラム全体への満足感を評価した。定量的アウトカム評価として,プログラムの開始時と終了時にインフォーマル組織とのネットワーク構築に関する自己効力感等を測定した。また,定性的アウトカム評価として,プログラム修了者に対してインタビュー調査を実施した。
    結果 参加者 9 人中,1 人が脱落したものの,8 人がプログラムを修了した。プログラムの内容評価,およびは目標達成度の評価は,いずれの回でも肯定的な評価が多かった。また,全プログラム修了後の参加者のプログラムへの満足度は高かった。さらに,インフォーマル組織とのネットワーク構築に関する自己効力感をはじめとする参加者個人の認知面の変化,ならびに地域包括支援センター全体としての意識や雰囲気の変化がみられた。
    結論 今後,より詳細にプログラムの有効性,妥当性の検証を行っていく必要があるものの,地域包括支援センター職員への試行を通して,一定程度の有効性が示唆された。
  • 富田 早苗, 二宮 一枝, 福原 弘子
    2010 年 57 巻 10 号 p. 921-931
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 平成19年度 A 町基本健康診査結果から,糖尿病予防の必要な者を特定し,6 か月にわたる教室を実施し,その介入効果を 1 年間の追跡により明らかにすることを目的とした。
    方法 平成19年 8~9 月に実施した A 町基本健康診査受診者で,40歳以上65歳未満の国民健康保険加入者で糖尿病予防の必要な者から,ヘルスアップ教室(以下,教室とする)に参加した20人を対象とした。対象者には 6 か月にわたる積極的支援を行い,経時的比較には,生活習慣,健康意識等の項目によるアンケート調査と血液検査等の結果を用いた。さらに,1 年後のフォローアップ研修終了時に,半構成的グループインタビューにより教室終了後の生活実態を把握した。
    結果 6 か月にわたる教室を実施した結果,体重,BMI(Body Mass Index),腹囲,TG, HbA1c の 5 項目が教室前と比較し,実施後は有意に減少し(P<0.05),効果がみられた。1 年後まで追跡できた者は少なく,血液検査等の結果は教室開始前の状態にほぼ戻っていた。
     1 年後に実施した面接聞き取り調査から【客観的データの確認や記録】,【ストレスを貯めない方法での食事・運動の継続】,【買い物や食事環境の整備】,【食生活改善行動と困難性】,【運動習慣の継続と困難性】,【自己および周囲からの評価】,【現実にあわせた減量の修正】,【家族の協力支援】,【友人や地域の支援】,【家族への配慮】,【参加の動機と目標】の11カテゴリーが抽出された。
    結論 6 か月間の教室により,BMI(Body Mass Index),HbA1c など 5 項目において開始前と比較し有意に効果が認められた。1 年後まで追跡できた者は少なく,血液検査等の結果はほぼ開始前の状態に戻っていた。家族については,配偶者などの同世代では協力が得られていたが,世代が異なる家族への配慮から食生活改善のスタイルを変えにくい現状が明らかとなった。食生活・運動習慣の困難な面を把握し,対象者の個別性に配慮した保健指導のスキルアップが今後の課題といえよう。
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