日本公衆衛生雑誌
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66 巻 , 8 号
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特別論文
  • 後藤 あや, 尾崎 米厚, 伊藤 慎也, 郡山 千早, 坂野 晶司, 鈴木 貞夫, 鈴木 友理子, 髙橋 美保子, 田中 耕, 横川 博英, ...
    2019 年 66 巻 8 号 p. 391-396
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    目的 健康リスクに関する情報収集を目的として日本公衆衛生学会が設置したモニタリング・レポート委員会(MR委員会)の11グループのうち,「疫学・保健医療情報,保健行動・健康教育」グループが収集したトピックを学会総会で聴衆参加型シンポジウムとして公表した。本報告は公衆衛生課題のモニタリングと人材育成の具体案を提示すべく,シンポジウム実施までの経過とその成果を報告する。

    方法 年間通じて注目すべきトピックを,インターネットの無料ツール(掲示板とメッセージサービス)を用いてメンバーが収集した。投稿されたトピックの中から,委員会の年度報告書で取り上げたいものを無料日程調整ツールにより多数決で決定した。

    活動内容 計14トピックについて報告書にまとめ,2017年と2018年に6つのトピック(健康ゴールド免許,医師の強制勤務,電子タバコ,新型たばこ,ヘルステック,糖質制限)をシンポジウムで公表した。各々の反対者と賛成者を設定してそれぞれの根拠を立論した後,聴衆と意見交換を行い,賛成・反対のどちらを支持する人が多いか概数を比較して,最後に講評を行った。全体討論では,政策の公平性,健康格差への影響,生活の質などに関する意見が述べられた。

    結論 MR委員会のグループとして,インターネットのツールを活用することにより,効率よく情報を収集して蓄積し,共有することができた。聴衆参加型シンポジウムでは,アクティブラーニングに沿った手法を用いて,最新の様々なトピックに共通する課題について議論ができた。

原著
  • 内藤 美智子, 対馬 真弓, 早田 美穂子, 千住 理恵, 上田 里美, 水島 秀雄, 田原 由起子, 浦部 富士子, 森 美穂子, 石竹 ...
    2019 年 66 巻 8 号 p. 397-406
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    目的 国の「健やか親子21」についての2014年の最終評価において,悪化した項目のひとつに低出生体重児の増加が挙げられた。久留米市における低出生体重児と流産・死産児の数をさらに減らすためにも,その原因として新たなリスク要因はないかの探求を含め今後の対策につなげることを目的に調査研究を行った。

    方法 調査対象は,2014年度に妊娠届出を提出後に,久留米市以外に転出あるいは出生時体重の追跡が困難なケースを除いた2,986人の妊婦である。妊娠届出書の記載内容と出生時体重とを連結させ,低出生体重,流産・死産と妊婦属性との関連性について検討を行った。単変量解析で関連性が示唆された変数について,低出生体重児と流産・死産児をそれぞれ目的変数として,多重ロジスティック回帰分析を行った。

    結果 多重ロジスティック回帰分析の結果,低出生体重児と有意に独立して関連した妊婦要因は「35歳以上(オッズ比1.41),」「身長158 cm未満(オッズ比1.45)」,「非妊娠時のBMI18.5未満(オッズ比1.48)」,「今回の妊娠中に医師から身体に異常を指摘された(オッズ比2.20)」であった。流産・死産児と有意に独立して関連した要因は,「35歳以上(オッズ比2.05)」,「喫煙(オッズ比3.42)」であった。また,「飲酒を止めた(オッズ比0.51)」はリスクを有意に減少させた。

    結論 「年齢」や「非妊娠時のBMI」は変更できない事実であるため,とくに35歳以上の妊婦に対しては,妊娠時の異常を早期に発見するために定期的な妊婦健診を勧めたり,妊婦同士を集め互いの交流の場を提供して精神面での支援をすでに行っている。また,若い世代へは,35歳以上から低出生体重児や流産・死産のリスクが上がること,やせた妊婦からは低出生体重児の危険性が高まるなどの啓発を引き続き行いたい。「適正体重の維持」,「喫煙」,「飲酒」や社会経済的要因である「相談体制・支援者の不足」,「経済面での不安」については,保健師による保健指導や多職種による支援介入により改善が期待できる。久留米市に設置された「こども子育てサポートセンター」では,妊娠・出産・子育て期の家庭を専門職が協力して継続的なサポートを行うことにより,低出生体重児や流産・死産児を減らすことに寄与するかもしれない。

公衆衛生活動報告
  • 大類 真嗣, 黒田 佑次郎, 安村 誠司
    2019 年 66 巻 8 号 p. 407-416
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    目的 2011年の福島第一原子力発電所事故による住民の精神的健康度の指標として,避難区域の自殺死亡率の動向を継続的に把握しており,2015年時点で避難指示が解除された市町村で上昇していることを確認した。そのため,1. 2017年4月までに避難指示が解除された区域の自殺死亡率のモニタリングを行い,2. 避難指示解除後に自殺死亡率の上昇の懸念のある福島県飯舘村を対象に,住民の自殺予防,精神的健康の向上を目的とした対策を展開した。

    方法 1. 自殺死亡率のモニタリング:人口動態調査を基に,2017年4月までに大部分の地域で避難指示が解除された8市町村を対象に,自殺死亡率の推移を検討した。2. 福島県飯舘村を対象とした避難指示解除後の自殺・メンタルヘルス対策:以下の3つの内容で対策を展開した。1)精神的健康度や自殺念慮に関するスクリーニングおよび個別支援,2)住民リーダーや支援者へのゲートキーパー養成講座を通じた地域づくり,3)被災自治体の職員への技術的支援(スクリーニングおよびハイリスク者支援,地域自殺対策計画策定に向けた住民の健康課題の抽出や事業整理および一般職員向け研修)。

    活動内容 1. 避難指示解除区域の男性の自殺死亡率は低い状況から一転し,解除開始後の2015年から3年間全国よりも高い状況が続いた。女性では2013年以降全国水準よりも高く,とくに避難指示解除が進んだ2017年は全国よりも有意に高い状況であった。2. およそ4,800人の住民を対象に行ったスクリーニングでは,精神的健康度,ソーシャルサポート,1年以内の自殺念慮などを総合的に判断してハイリスク者を選別し,個別支援を行った。地域自殺対策計画策定に向けた住民の健康課題の抽出では「子ども家族との再同居で気を遣う」,「かつての仲間が村にはおらず孤独」など,仮設住宅からの転居の影響による,避難指示解除後に特徴的な課題が浮き彫りになった。その状況を踏まえ,様々な理由で精神的健康が損なわれている住民と接する機会の多い自治体一般職員向け自殺研修を開催した。

    結論 避難指示解除区域の自殺死亡率のモニタリングや,コミュニティーの再分離といった避難指示解除後に特徴的な背景を踏まえ,地域づくりを意識したゲートキーパー養成,被災自治体の一般職員に対する研修を行った。解除後の自殺死亡率の上昇を踏まえ,当該地域での対策をより一層強化していく必要がある。

資料
  • 荒木田 美香子, 藤田 千春, 竹中 香名子
    2019 年 66 巻 8 号 p. 417-425
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は教員や保育士などの教育関係職,保健医療職の発達障害に対する認知を一般社会人と比較検討し,発達障害児者への社会の認知を向上させるための情報提供のあり方を検討することを目的とした。

    方法 2016年に842人の20-69歳の成人(男性418人,女性424人)を対象に発達障害名とその対応の認知について,Web を活用した横断調査を行った。職業(教育関係職,保健・医療職)および家族・友人に発達障害がいる者,それ以外に分けて認知状況を分析した。

    結果 「発達障害」を聞いたことがあると回答した者の割合は91.5%であったが,発達障害児者に対する何らかの対応や支援を回答できた割合(対応に関する認知)は26.5%であった。そのうち教育関係職および保健医療職の回答は,「発達障害」という言葉を認知していた割合は100%に近かったが,対応に関する認知の割合はそれぞれ63.9%,42.9%であった。回答者の発達障害に関する情報源はテレビやラジオ番組が67.1%と最も多く,次いでインターネットであった。学校と回答した者は11.3%,職場と回答した部分は9.9%であった。

    結論 教育関係職や保健専門職においては,発達障害の対応に関する理解を基礎教育および現任教育において充実させる必要性が示唆された。加えて,広くマスコミを介した情報提供を行うことの重要性が明らかとなった。

  • 加藤 承彦, 青木 康太朗
    2019 年 66 巻 8 号 p. 426-438
    発行日: 2019/08/15
    公開日: 2019/09/21
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,小学校児童と中学校生徒を対象に,家庭の状況と子どものインターネットの長時間使用との関連を分析することを目的とした。

    方法 国立青少年教育振興機構が2017年に20の都道府県の小・中学校で実施した「インターネット社会の親子関係に関する意識調査」のデータを用いて分析を行った。分析の対象者は,インターネットを使用していない210人を除いた小学5年生から中学2年生の2,062人だった。説明変数として,インターネットに接続できる機器の所有,家庭での親の携帯電話やスマートフォンの使用のあり方,親子関係などを用いた。平日における1日3時間以上のインターネット使用または休日における1日5時間以上のインターネット使用を長時間使用と定義し,アウトカム変数として用いた。また,睡眠不足の経験もアウトカムとして用いた。多変量ロジスティック回帰分析を行い,長時間使用および睡眠不足の経験の調整オッズ比と95%信頼区間(95%CI)を算出した。

    結果 子どものスマートフォンやタブレットの所有と平日と休日の長時間使用および睡眠不足に関連が見られた。スマートフォンを所有していない群と比較して,所有している群の平日の長時間使用の調整オッズ比は,2.55[95%CI:1.92-3.38],睡眠不足は,1.66[1.17-2.34]だった。親子の会話中に親が携帯電話やスマートフォンを操作することが良くある家庭では,子どものインターネットの長時間使用の可能性が高かった(休日の長時間使用の調整オッズ比は,1.59[1.03-2.44])。家族と一緒にいて楽しくないと子どもが答えた場合,休日の長時間使用の調整オッズ比は,2.05[1.00-4.18]だった。追加分析の結果,会話中に親が携帯電話などを操作することがよくある家庭,家族が一緒にいても各々が携帯電話などを操作することがよくある家庭,親子関係が良好でない家庭では,家での携帯電話やパソコンの使い方などに関してルールを決めていない傾向が見られた。

    結論 親の携帯電話やスマートフォンの使用のあり方など家庭の状況と子どものインターネットの長時間利用が関連していた。今後,子どもが適切にインターネットを使用する環境づくりを考える上で,親自身の使用のあり方への注意や家庭におけるルール作りおよび家族全員の遵守の重要性が示唆された。

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