日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
65 巻 , 8 号
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原著
  • Taeko SHIMAZU
    2018 年 65 巻 8 号 p. 377-385
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    Objectives The Japanese government has supported public health nurses’ systematic career development and preceptors’ learning. Previous studies on precepting public health nurses indicated the value of precepting for career development. However, assessment scales for preceptor learning were not found. The purpose of this study was to develop the “PHN Precepting Experiential Learning Scale” (PHN-PELS) based on Kolb's experiential learning theory.

    Methods This study included three phases of questionnaire development. First, the preliminary qualitative pilot study resulted in the PHN-PELS. The second pilot study was a questionnaire survey, returned by 52 (54.2%) public health nurses (PHNs) who had examined the validity and modified the items. Finally, a nation-wide questionnaire survey was conducted for PHNs who precepted novice PHNs in public health units from 2012 to 2016.

    Results Of the 868 questionnaires mailed to 86 public health units, 438 (59.4%) were returned with 378 (43.5%) valid responses. PHN-PELS has 20 items forming four sub-scales, with confirmed content validity, construct validity, and reliability (α>.7). Sub-scales were: “Role Performance of Fostering Novice PHN,” “Self-development as a PHN,” “Sharing to Foster Novice PHN,” and “Improving Career Development Environment.”

    Conclusion Scale development of the PHN-PELS resulted in four sub-scales with 20 items; its validity and reliability were supported. The PHN-PELS measures experiential learning in precepting novice PHNs, therefore, its usability is recommended for preceptors to evaluate their experiential learning and for preceptor training program in selecting sub-scales as appropriate.

  • 田中 美加, 池内 眞弓, 松木 秀明, 谷口 幸一, 沓澤 智子, 田中 克俊, 兼板 佳孝
    2018 年 65 巻 8 号 p. 386-398
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    目的 不眠症状を訴える高齢者は多い。高齢者の不眠症状に対しては,非薬物的アプローチが優先されることが望ましい。不眠に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)が不眠症患者に有効であることが多くの臨床研究で示されていが,地域高齢者の睡眠の改善にも役立つかは十分に示されていない。我々は,看護職でも実施可能な簡易型CBT-Iが地域高齢者の睡眠を改善させ,睡眠薬服用者の服薬量を減らす効果があるかを調べることを目的に無作為化比較試験を行った。

    方法 60歳以上の地域高齢者を対象に,看護職が,集団セッション(60分)と個人セッション(30分)からなる簡易型CBT-Iを実施した。主要アウトカムは,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)の得点と不眠重症度指数(Insomnia Severity Index: ISI)得点の介入前後の変化量,副次アウトカムは,介入前後の不眠症有所見者(ISI得点8点以上)の割合と,睡眠薬使用者における減薬の有無とした。フォローアップ期間は3か月間とした。

    結果 介入3か月後のPSQI得点は,対照群(38人)に較べ介入群(41人)で有意に改善し,介入の効果量(Cohen's d)は,0.56(95% Confidence interval [CI], 0.07 to 1.05)であった。ISI得点も,介入群で有意に改善し,介入の効果量は,0.77(95%CI, 0.27 to 1.26)であった。サブグループ解析において,不眠改善に対するNumber Needed to Treat(NNT)は2.8(95%CI, 1.5 to 17.2),睡眠薬の減薬に対するNNTは2.8(95%CI, 1.5 to 45.1)であった。

    結論 簡易型CBT-Iは,地域高齢者の主観的睡眠の質を改善させ,不眠症状を軽減させることが示唆された。また,簡易型CBT-Iは睡眠薬の減薬に対しても効果的な介入であることが示唆された。睡眠の問題を抱える地域高齢者は多いことから,地域保健活動における簡易型CBT-Iの方法や効果についてさらなる検討が必要と考える。

公衆衛生活動報告
  • 髙山 佳洋, 池田 和功, 長谷川 麻衣子, 古畑 雅一, 永井 伸彦, 土屋 久幸, 山田 全啓, 武智 浩之, 中里 栄介, 前田 秀雄 ...
    2018 年 65 巻 8 号 p. 399-410
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    目的 東日本大震災以来,大規模災害時には急性期の救命医療に引き続いての医療保健,生活衛生の確保等の公衆衛生対策の重要性が再確認され,保健所への期待感が増大した。しかしながら保健所の取り組みにはいまだ温度差があるため,今後全国の保健所において大規模災害時に標準的な公衆衛生対策が展開されるよう,大規模災害への備えの現状と課題を明らかにし,災害時健康危機管理支援チーム(Disaster Health Emergency Assistance Team:以下DHEATと略)の支援を受けて,標準的な対策を実施できるための受援体制の構築および普及について検討した。

    方法 大規模災害への備えの先進事例の調査を行い公衆衛生支援・受援体制の基本要素を抽出した。次に,それに基づき作成した調査票により,全国の保健所の取り組みの実態を把握した。それを踏まえ,保健所の現状に応じて段階的に受援体制を整備するためのガイドラインを策定した。さらに,本活動期間中に発生した熊本地震の検証を加味してガイドラインを改訂した。

    結果 先進事例から把握された公衆衛生支援・受援体制の基本要素は,市町村との情報の共有,受援計画策定,地域,分野別のコーディネーター設置,関係機関,住民総出のリアルな救護訓練,災害医療調整組織の迅速な立ち上げ,民間人材の有効活用,県内支援チームの早期出動等であった。これらに基づく調査で378保健所(回答率78.8%)の回答から把握された大規模災害への保健所の備えは,いまだ多くがマニュアル整備や所内対応訓練にとどまり,医療救護や避難所への公衆衛生支援・受援や情報システムの実働等の対外的な連携,訓練は未実施だったが,DHEAT基礎編研修への参加意向は大きかった。

     熊本地震の検証も経て整理された,保健所に求められる大規模災害時の公衆衛生マネジメントは,発災早期からの初動組織の立ち上げ,情報収集,評価,外部支援者の統合指揮,Disaster Medical Assistance Teamから引き継ぐ災害医療コーディネート,市町村と連携した避難所保健衛生支援等であるが,これらをDHEATの支援を受けて標準的に実施できるよう受援体制を平時に整備する必要がある。このためすべての保健所が段階的に取り組めるようにガイドラインを作成した。

    結論 大規模災害への保健所の備えは,多くが所内対応にとどまり市町村や外部の支援との連携は未着手であるため,すべての保健所においてDHEATの支援を得て標準的な公衆衛生対策を展開できるように訓練や支援経験を重ね,段階的に受援体制の整備を図る必要がある。

資料
  • 志澤 美保, 義村 さや香, 趙 朔, 十一 元三, 星野 明子, 桂 敏樹
    2018 年 65 巻 8 号 p. 411-420
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/09/14
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,地域在住の幼児の養育者を対象に,子供の食行動の問題への子供側の要因および環境要因の食行動への影響を検討することを目的とした。

    方法 対象は,A県2市において研究協力の同意が得られた保育所,幼稚園,療育機関に通う4~6歳の子供1,678人の養育者であった。協力機関を通じて養育者に無記名自記式質問紙を配布し,回答は協力機関に設置した回収箱および郵送で回収した。調査項目は,①子供の基本属性,②養育者による食行動評価,③対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale; SRS)日本語出版準備版,④日本感覚インベントリー(Japanese sensory inventory revised; JSI-R)および⑤育児環境指標(Index of Child Care Environment; ICCE)であった。統計学的解析は,χ2検定,Fisherの正確確率検定,相関分析,および重回帰分析を行った。

    結果 調査は843人から回答を得て(回収率50.4%),有効回答数は583人(有効回答率34.7%)であった。養育者の捉える食行動の問題数は,一人平均2.43±2.26個,男女ともに約4割に偏食が認められ,次に「じっと座っていられない」は約3割に認められた。食行動の問題数と関連要因についての重回帰分析では子供の食行動の問題数と有意な正の関連を示した変数は,個人要因のSRST得点total(β=0.188, P<0.001),JSI-Rの味覚(β=0.319, P<0.001),聴覚(β=0.168, P<0.001),環境要因のICCEの人的かかわり(β=0.096, P=0.010)と社会的サポート(β=0.085, P=0.022)であった。一方,負の関連を示したのは,個人要因のJSI-Rの嗅覚(β=−0.108, P=0.013)ときょうだい(β=−0.100, P=0.005),年齢(β=−0.077, P=0.029),および性別(β=−0.091, P=0.010)であった。

    結論 本研究において,「偏食がある」,「じっと座っていられない」はこの時期の典型的な食行動の問題と考えられた。食行動の問題の多さには,自閉症的傾向,感覚特性などの個人要因だけでなく,人的かかわり,社会的サポートなどの育児環境要因についても関連が認められた。食事指導には,これらの関連要因を合わせて検討することの重要性が示唆された。

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