日本公衆衛生雑誌
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54 巻 , 2 号
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総説
  • 藤野 善久, 松田 晋哉
    2007 年 54 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
     政策,施策,事業の計画段階において,将来それらによって起きうる健康影響が見落とされることはよくあり,その結果,健康に直接関連しないと思われていた政策が,重大な健康影響を与えた事例は過去に多く経験されてきた。このような認識が明らかになるにつれ,政策,施策,事業の計画時には,これらの健康影響を予め評価して,健康影響を是正するような取組みが国際的にも重要視されるようになってきた。このような背景のなかで,多くの政府や EU または WHO 等の国際機関において Health Impact Assessment(HIA:健康影響評価)と呼ばれる手法が広く取り入れられるようになった。HIA は,意志決定を支援するためのツールであり方法論のことで,WHO によると「政策,施策,事業が潜在的に集団に与える健康影響や,集団中の属性による影響の違いなどについて判断するための一連のプロセス,方法,およびツールのこと」とある。近年では,新空港建設,ダム建設,雇用政策,および住宅供給政策など様々な分野において HIA が実施されている。しかしながら,国内においては HIA の情報はほとんどなく,公衆衛生の専門家や政策関係者においても認識は少ない。本稿では,HIA の概念,理論を紹介するとともに,国内において HIA が普及するための考察を行った。
原著
  • 鈴木 育子, 柳 久子, 戸村 成男
    2007 年 54 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 介護保険制度下で提供される,在宅介護サービスを利用している在宅要介護高齢者の日常生活動作能力(ADL)を,Functional Independence Measure (FIM) を用いて縦断的に評価し,ADL の変化に関連のある要因を明らかにすることを目的とした。
    方法 茨城県 K 医師会居宅介護支援事業所および介護サービス事業所の利用契約者で,調査の承諾を得られかつ調査が可能であった60人をベースライン調査の対象とし,その内54人が追跡可能であった。本人及び介護者に対して,訪問聞き取り調査をベースライン調査および追跡調査の 2 回実施した。調査内容は,身体情報(年齢・性別・疾患名など),介護情報(要介護度・障害老人自立度・在宅療養期間・介護者の有無など),介護サービス利用情報(在宅介護サービスの種類・頻度・内容など)である。評価尺度としては,機能的自立度評価(FIM),認知能力評価(Mini-Mental State Examination: MMSE),うつ評価(Geriatric Depression Scale: GDS-15)の日本語版を用いた。
    成績 追跡調査(112±22.2日)の結果,追跡可能者の FIM 得点は83.6(±36.4)から81.7(±37.4)に有意に低下した。追跡可能であった54人の内 FIM 得点が維持・向上したのは39人で,低下したのは15人であった。FIM 得点の低下に関連する要因について,多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,「在宅期間 1 年未満」,「介護サービス利用率」がそれぞれ独立して FIM 得点の低下と関連していた。
    結論 在宅要介護高齢者が日常生活動作能力を向上または維持するためには,在宅療養の早期から必要な介護サービスを十分に活用することが重要であると示唆された。
  • 赤松 利恵
    2007 年 54 巻 2 号 p. 89-97
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 食態度の 1 つである食物選択に関する動機について,本研究では間食の選択に焦点をあて,日本の中学生を対象とした「間食選択動機」調査票を作成し,調査票で確認された各因子の特徴を調べることを目的とする。
    方法 東京都内の公立中学校 8 校の生徒1936人を対象に,無記名・自己記入式の横断的調査を行った。「間食選択動機」に関する項目,日本版 DEBQ(The Dutch Eating Behavior Questionnaire)の「外発的摂食傾向」に関する項目,間食に関する行動と環境に関する項目,生活習慣に関する項目,属性についてたずねた。
    結果 「間食選択動機」に関する項目22項目について,因子分析を行った結果,「流行・販売促進」,「嗜好・便利性」,「健康・ダイエット」の 3 因子が抽出された。内的整合性の指標であるクロンバック α は,いずれも0.8以上であった。「流行・販売促進」(r=.349, P<.001)と「嗜好・便利性」(r=.418, P<.001)の因子得点でのみ,過食傾向を示すDEBQの得点と正の相関がみられ,「健康・ダイエット」の因子得点とは,関連はみられなかった(r=.014, ns)。また,菓子をよく食べている,あるいはよく買っている子どもの方が,「流行・販売促進」と「嗜好・便利性」の因子得点は高く(いずれも,P<.001),この傾向は,「健康・ダイエット」の因子得点ではみられなかった。「流行・販売促進」はテレビの視聴時間と(β=.060, P<.05),また,「嗜好・便利性」は家の近くのコンビニの有無と関連があり(β=.109, P<.001),2 つの因子の特徴が示された。
    結論 本研究は,日本の子どもを対象とした「間食選択動機」調査票の作成を試みた初めての研究である。調査票において「流行・販売促進」因子が確認できたことにより,メディアリテラシー教育や消費者教育を取り入れた総合的な教育の可能性を提案した。今後,本調査票の精度を高めるためには,さらなる検討が必要である。
  • 椛 勇三郎, 西田 和子
    2007 年 54 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 近年,眼精疲労を引き起こすと考えられる生活習慣の激変が子どもたちの視力低下を引き起こしているのではないかと懸念されている。本研究では,女子中学生の視力低下に関連する要因を検討するために,生活習慣や生活環境に着目し視力低下との関連性を評価することを目的とした。
    方法 女子中学生を対象に生活習慣に関する横断的調査を実施し,視力低下要因に関する統計的分析を行った。屈折力の測定を行わない学校健診では,精度が高い測定を期待することは難しい。また,変数によっては非対称で右に裾を引く分布およびはずれ値が存在する。これらの影響を受けにくくするために,本論文では対象とする変数をすべてカテゴリー化してロジスティックモデルによって解析した。ロジスティックモデルの構築には,グラフィカルモデリングによって要因間の相互関連性を調べたうえで,AIC(赤池情報量基準)によるモデル選択技法を適用した。
    結果 ロジスティックモデルより得られた主要な結果として,自宅や学習塾での勉強時間,読書時間,親や兄弟のメガネやコンタクトレンズの使用状況,睡眠時間で調整した TV からの視聴距離が「2 m 未満」の「2 m 以上」に対する調整オッズ比は2.08で有意であった(95%CI: 1.23-3.50)。しかし,TV の視聴時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比は,1 に近くモデルに選択されなかった。自宅や学習塾での勉強時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比,読書時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比,親や兄弟がメガネやコンタクトレンズの「使用あり」の「使用なし」に対する調整オッズ比は,いずれも有意であった。
    結論 以上より,女子中学生の視力低下に関連する要因として「TV からの視聴距離」のほうが「TV の視聴時間」よりも強い関連性を持つ要因であることが示唆された。さらに,視力低下要因の多変量的評価をオッズ比で与えた結果は,教育現場における生活習慣,生活環境の改善を推進する上で有意義なものと考える。
資料
  • 山口 恵, 萱場 一則, 尾島 俊之, 高久 悟, 新村 洋未, 柳川 洋
    2007 年 54 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 全国市区町村の健康日本21の地方計画における歯科保健事業のうち,現状把握,目標値の設定,目標値を設定している場合の達成見込みの現状,を明らかにする。
    方法 2003年の全国調査で地方計画策定済みまたは予定と回答した市区町村1,446か所のうち,2006年 3 月31日までに合併が終了または予定でない953市区町村に対し,質問紙調査を実施した。調査項目は健康日本21の歯の健康に関する項目の現状把握,目標値設定状況,目標値の達成見込み,である。
    結果 回答があった788市区町村(回答率82.7%)のうち,地方計画を策定済みの638市区町村について解析した。
     現状把握が最も多くされていたのは,う歯のない 3 歳児の割合(93.5%)であった。最も少なかったのは,進行した歯周炎を有する人の割合(25.2%)であった。目標設定は,う歯のない 3 歳児の割合(63.7%)が最も多く,少なかったのは,学齢期の定期健診受診者の割合(6.8%)や進行した歯周炎を有する人の割合(16.3%)であった。目標値の達成困難が少なかったのは,う歯のない 3 歳児の割合(10.1%)で,多かったのは,歯間部清掃用具使用者の割合(30.1%)などであった。人口規模が大きいほど把握率や達成率が高い傾向がみられた。
    結論 全国の自治体を対象に,歯科保健事業のうち,健康日本21の歯の健康に関する項目の現状把握,目標値の設定状況,目標値を設定している場合の達成見込みの現状調査を行った。う歯対策については把握や目標設定の割合が高い傾向を示したが,生活習慣病や嚥下性肺炎との関連を通じて高齢者の生活の質への影響が注目される歯周病対策に関して低い傾向がみられた。
  • 大井田 隆, 曽根 智史, 武村 真治, 尾崎 米厚, 兼板 佳孝, 玉城 哲雄, 簔輪 眞澄, 林 謙治
    2007 年 54 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 全国規模で妊産婦の喫煙行動および関連要因を疫学的に明らかにし,健康教育の推進を含めた今後の政策立案に資するための科学的根拠を確立することを目的として,平成14年および18年の 2 回にわたり全国調査を実施した。
    方法 調査は,社団法人日本産婦人科医会の調査定点の産科医療機関のうち,最終的に調査協力の得られた全国260か所(平成14年),344か所(平成18年)で実施した。対象者は当該産科医療機関を受診した女性のうち,「妊娠の確定した再診の妊婦」とし,初診の者,妊娠未確定の者,妊娠の継続を望まない者は除いた。無記名自記式の質問票を用いて,待ち時間に各自に回答してもらい,密封封筒により回収した。回答数は平成14年16,528,平成18年19,650で,全てを有効回答として解析の対象とした。
    結果 妊娠前に喫煙していたが妊娠中(調査時点)は喫煙していない妊婦の比率は平成14年24.6%,平成18年25.7%で,妊娠中の喫煙率は平成14年10.0%,平成18年7.5%であった。最終学歴が高くなるにつれ妊娠中の喫煙率は低くなる傾向があった。回答者の約 2 分の 1 は日常的に受動喫煙しており,その場合の喫煙者は夫が 8 割であった。
    結語 ほぼ同じ方法で実施された調査において,平成18年調査で妊娠中の喫煙率は 4 年前の平成14年調査に比較して低くなっている。喫煙率が下がっていることは健康日本21における禁煙運動の進展や産婦人科医師による保健指導の成果があったものと推測される。とくに年齢階級別で19歳以下の喫煙率が低下していることは十分評価できる。
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