目的 トランスセオレティカルモデルの構成概念の核として行動変容ステージと並び変容プロセスがあり,変容プロセスは行動変容に強く関わっているとされる。本研究では,野菜摂取行動に関する変容プロセス尺度を作成し,その信頼性•妥当性を検討した。
方法 新潟市内の20の企業施設に属する20~59歳の成人男性勤労者を対象に,2009年 9 月に自記式質問紙調査を実施した。行動変容ステージは「1 日に野菜を 5 皿以上食べること」を目標行動として,実施度と行動変容の準備性の 2 段階で構成した評価法を用いた。変容プロセスは海外の既存尺度から項目選定し,「野菜をたくさん食べること」に関する 5 つの認知的プロセス(意識の高揚,情動的喚起,環境の再評価,自己の再評価,社会的解放)と 5 つの行動的プロセス(コミットメント,褒美,援助関係の利用,逆条件付け,環境統制)各 1 項目について,実施頻度をたずねる10項目の尺度としてまとめた。また,変容プロセスに関連する構成概念として,意思決定バランス(pros 2 項目,cons 2 項目)および自己効力感(3 項目)を把握した。信頼性の評価は,Cronbach のアルファ係数を用い検討した。妥当性の評価では,変容プロセス,意思決定バランス,自己効力感の各尺度の項目の因子負荷量により構成概念妥当性を,尺度の得点と行動変容ステージとの間の関連性により基準関連妥当性を検討した。
結果 回答が得られた600人のうち,527人(平均41.1歳)を解析対象とした。作成した変容プロセス尺度の Cronbach のアルファ係数は認知的プロセス0.722,行動的プロセス0.803と各々一定の信頼性が確認された。因子分析では,変容プロセスが「意識の高揚,情動的喚起,環境の再評価,自己の再評価,コミットメント,褒美,援助関係の利用,社会的解放」と「逆条件付け,環境統制」の 2 因子に分かれ,意思決定バランスの pros と cons,自己効力感の各構成概念とそれぞれ異なる因子に分類された。行動変容ステージとの関連について,認知的プロセスの得点は,前熟考期に比し,熟考期および準備期で有意な高値を示した(
P<0.05)。一方,行動的プロセスでは,前熟考期,熟考期,ならびに準備期でステージが上がる程得点が高い方にシフトし(
P<0.05),実行期+維持期は前熟考期に対し有意に得点が高かった(
P<0.05)。
結論 作成した変容プロセス尺度は尺度の内的整合性とともに構成概念妥当性および基準関連妥当性も確認されたことから,男性勤労者を対象とした場合,一定の信頼性•妥当性を有すると考えられる。
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