日本公衆衛生雑誌
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58 巻 , 12 号
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原著
  • 大橋 靖雄, 島本 和明, 佐藤 眞一, 磯 博康, 喜多 義邦, 北村 明彦, 斉藤 功, 清原 裕, 河野 宏明, 中川 秀昭, 豊嶋 ...
    2011 年 58 巻 12 号 p. 1007-1015
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 前向きコホート研究の個票ベースのメタアナリシスにより,メタボリックシンドロームを構成するリスク因子の重積と脳卒中発症の関連に肥満の有無が影響を与えているかを明らかにする。
    方法 1985年以降にベースライン時調査が行われた合計10コホート19,173人を対象とした。メタボリックシンドロームを構成するリスク因子を国内の 8 学会合同の診断基準を参考に定義し,リスク因子(血圧高値,脂質異常,高血糖)の保有数と BMI25(kg/m2)以上で定義した肥満の有無の組み合わせによってリスクの階層化を行った。Poisson 回帰モデルを用いて脳卒中発症の調整済みハザード比と人口寄与割合を群ごとに算出した。
    結果 平均7.1年の追跡期間中,374件の脳卒中の新規発症が観察された。肥満の有無に関わらず,最も保有割合が高いリスク因子は血圧高値であった。リスク因子 0 個の非肥満群を基準とした脳卒中発症ハザード比は,リスク 1 個の非肥満群,リスク 2 個以上の非肥満群でそれぞれ,2.48(95%信頼区間:1.75–3.5),3.75 (2.58–5.45),リスク 1 個以下の肥満群,リスク 2 個以上の肥満群でそれぞれ2.38 (1.58–3.59),3.26 (2.11–5.02)であり,いずれも有意なリスク増加が認められた。脳卒中発症に対する人口寄与割合は,リスク 1 個の非肥満群が23.3%で最も高く,次いでリスク 2 個以上の非肥満群であった。リスク 1 個以下の肥満群では8.1%,リスク 2 個以上の肥満群では8.0%であった。病型別の検討でも同様の傾向が認められた。
    結論 リスク因子の重複は肥満の有無によらず脳卒中発症リスクを上昇させ,脳卒中罹患者数の増加に対する寄与は非肥満者でのリスク因子保有の方が肥満者より大きいと考えられた。以上より,わが国においては内臓型肥満を前提とするメタボリックシンドローム対策のみでは十分ではなく,個々のリスク因子に注目した脳卒中予防対策が依然として重要であることが示唆された。
  • 鈴木 洋子, 堀 容子, 星野 純子, 濱本 律子, 杉山 晃子, 岡田 武, 永井 邦芳, 近藤 高明, 玉腰 浩司, 岡本 和士, 長澤 ...
    2011 年 58 巻 12 号 p. 1016-1025
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 家族介護者(以下,介護者群)の高血圧に罹患した自覚(以下,高血圧自覚)の有無による血圧管理状況を,介護を行っていない者(以下,対照者群)と対比して明らかにすること。
    方法 2005年12月から2007年 4 月に実施した「主介護者の健康支援システムの構築に関する研究」で収集された既存データの一部を使用した。解析対象者は,女性の高血圧有病者とした(介護者群66人 年齢49~84歳,対照者群52人 年齢47~81歳)。高血圧有病者とは自記式質問紙にて「高血圧に現在かかっている」,「血圧の薬を服用している」のいずれかに回答した者,あるいは,血圧測定値の SBP が140 mmHg 以上又は DBP が90 mmHg 以上であった者とした。また,自記式質問紙の高血圧自覚について「高血圧に現在かかっている」,「今までにかかったことがある」,「血圧の薬を服用している」のいずれかに回答した者を自覚有り群とし,いずれにも回答しなかった者を自覚無し群とした。血圧管理状況の指標には血圧値を用いた。検定には χ2 検定,Student の t 検定等を用い,有意水準は P<0.05とした。
    結果 介護者群では,自覚有り群と無し群ともに血圧値の平均値が高く,有意な差は認められなかった(有り群 vs 無し群 SBP: 148±20 mmHg vs 154±9 mmHg, DBP: 79±13 mmHg vs 82±10 mmHg)。一方,対照者群では自覚有り群が無し群よりも血圧値の平均値が有意に低かった(有り群 vs 無し群 SBP: 135±15 mmHg vs 149±7 mmHg, DBP: 73±10 mmHg vs 78±6 mmHg)。さらに,介護者群の自覚有り群における降圧薬服用者の血圧値についてみると,高血圧の基準値となる SBP 140 mmHg を超えた高い値であり,非服用者の血圧値と有意な差は認められなかった(介護者群 降圧薬服用者 vs 非服用者 SBP: 148±21 mmHg vs 149±8 mmHg, DBP: 78±14 mmHg vs 86±5 mmHg)。
    結論 介護者群の血圧値は,高血圧自覚の有無による差は認められず高い値であった。さらに,介護者群は降圧薬を服用していても,高血圧の基準値を上回る高い血圧値であった。このため,介護者群は降圧薬による血圧管理が悪い状況にあることが示唆された。
  • 大倉 美佳, 野呂 千鶴子, 荻田 美穂子, 荒井 秀典
    2011 年 58 巻 12 号 p. 1026-1039
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,行政分野で働く保健師(以下,行政保健師とする)にとってのキャリア志向(以下,行政保健師キャリア志向とする)に関する尺度を開発し,その信頼性を検討すること,またその尺度と基本属性との関連について明らかにすることを目的とした。
    方法 10府県における行政保健師7,170人を対象とし,自記式質問紙調査票により,行政保健師として仕事の何を重要と考えるのかについてリッカート法による回答を求めた。バリマックス回転による主因子分析を行い,尺度項目を決定した。また,累積寄与率およびクロンバッハの α 係数を算出し,信頼性を検討した。なお,同意書に署名を得た協力者により,再テスト調査を行った。
    結果 1 次調査の回収数は2,065人(28.8%),有効回答数2,003人(97.0%),再テストの協力同意者は252人,有効回答数222人であった。バリマックス回転による主因子分析を行った結果,5 因子19項目が選定され,各因子に管理志向,協働志向,奉仕志向,専門志向,安定志向と命名された。累積寄与率46.9%,クロンバッハの信頼係数 α=0.863(各志向 α=0.612–0.821)であった。また,1 回目の調査と再テストの回答完全一致率は平均59.7%(各項目47.7–72.1%,各参加者12.0–92.0%)であった。行政保健師キャリア志向を従属変数とする重回帰分析の結果,組織づくりの立ち上げの経験の有無,ロールモデルの存在の有無,家族の協力•理解の程度,行政保健師としての経験年数の 4 つの独立変数から説明できる重回帰係数は R2=0.052であった。
    結論 本研究の結果開発された行政保健師キャリア志向の尺度は,簡便で自己査定しやすい因子数および項目数と評価でき,因子負荷量,累積寄与率,信頼係数の高さから内的整合性は高いと考えられる。しかし,回答完全一致率は非常に個人差が大きく,再現性については検討の余地がある。
研究ノート
  • 舛田 ゆづり, 田髙 悦子, 臺 有桂, 糸井 和佳, 田口 理恵, 河原 智江
    2011 年 58 巻 12 号 p. 1040-1048
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 近年,高齢者の孤立死が都市部を中心に社会問題となっている。この問題に対し,地域の見守り活動を推進していくことは喫緊の課題であるが,見守り活動を担う住民組織が直面する課題や方策に焦点化して明らかにしたものは見当たらない。本研究では,今後の都市部における孤立死予防に向けた地域見守り活動推進における住民組織が有しているジレンマならびにそれらに対処する方略を住民組織の立場から明らかにし,今後の実践の示唆を得ることを目的とした。
    方法 対象は,A 市 b 区 c 地区(中学校区)で見守り活動の実績のある住民組織の代表14人である。研究デザインは,質的帰納的研究である。データ収集は,フォーカスグループインタビュー法(FGI)を用い,テーマは,住民組織が地域の見守り活動を進めていく上で感じている困難や課題等とし,計 3 回実施した。データ分析は,FGI の逐語録から単独で意味の了解が可能な最小単位の単語や文章をコードとして抽出し,次いでコードの類似性を勘案してサブカテゴリとし,さらにサブカテゴリを抽象化してカテゴリとした。
    結果 住民組織における見守り活動の推進に向けた課題と取組みは個人,近隣,地域の 3 領域に抽象化された。まず,ジレンマについては【見守りの拒否や無関心】,【若年層での孤立や閉じこもり】,【家族が見守りをしない】,【近隣住民の関係性の希薄】,【新旧住民がつながりにくい】,【近所付き合いへの負担感】,【プライバシー意識の高まりによる情報共有の困難】,【見守りの担い手や集う場の資源不足】の各カテゴリーが抽出された。また,方略については【地域の中で 1 対 1 の関係をつくる】,【地域の集まりや輪へ引き込む】,【さりげない日々の安否確認を行う】,【助けが必要な人の存在を知らせる】,【生活の中で互いに知り合う仕掛けをする】,【近隣単位の小さな見守りのシステムをつくる】,【行政と住民組織が連携し地区組織を活かす】,【地域住民の信頼感やつながりを育む】が抽出された。
    結論 地域の見守り活動の推進に向けては,各住民組織が互いの活動や存在についてより理解を深めるとともに,連携が推進されるような機会の開催や場(ネットワーク)の整え,あるいはそのような風土を地域につくっていくための検討が必要である。
資料
  • 植村 直子, 山田 全啓, 畑下 博世, 有埜 みや子, 山下 典子, 角野 文彦, 佐伯 圭吾, 車谷 典男
    2011 年 58 巻 12 号 p. 1049-1055
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 保健所デイケアの実施状況を分析し,今後の方向性と課題を考察した。
    方法 全国の保健所517施設に平成20年度に郵送調査を実施し,単純集計•保健所区分別割合を比較した。保健所区分は都道府県型,政令指定都市型,中核市•保健所政令市型,特別区型に分類した。
    結果 回収数は411施設(79.5%)であった。保健所デイケアを実施している施設は128施設(31.1%)で,保健所区分別では,都道府県68施設(21.5%),政令指定都市16施設(43.2%),中核市•保健所政令市31施設(73.8%),特別区13施設(81.3%)であった。デイケア利用者特性は,統合失調症の慢性期で40歳代男性が最も多かった。「今後保健所デイケア継続は必要」と回答したのは60施設(46.9%),「新たなデイケアが必要」と回答したのは33施設(26.2%)であった。新たな保健所デイケア対象は,「うつ病」19施設(57.6%),「統合失調症」18施設(54.5%),「発達障害」18施設(54.5%)が上位であった。
     保健所デイケアを実施していない施設は283施設(68.9%)であった。過去の保健所デイケア実施数は250施設(88.3%)で,保健所区分別では,都道府県227施設(92.3%),政令指定都市12施設(57.1%),中核市•保健所政令市 8 施設(72.7%),特別区 3 施設(100%)であった。デイケア終了時期は平成17年以降が148施設(59.2%),終了理由は「社会資源の充実」が172施設(68.8%)と最も多かった。「今後保健所デイケアは必要」と回答したのは,15施設(5.3%)で,新たな保健所デイケア対象は,「ひきこもり」13施設(86.7%),「発達障害」11施設(73.3%),「統合失調症」3 施設(20.0%)であった。「管内デイケア実施施設への支援」では,「ケース検討」が135施設(47.9%)で最も多かった。
    結論 都道府県型保健所では保健所デイケアを終了し市町村のデイケア支援などに役割を移行している状況が示されたが,社会資源が充実していない等の理由で保健所デイケアを継続している施設においては,社会資源状況を踏まえて保健所デイケア継続の有無を検討する必要がある。また政令指定都市型,中核市•保健所政令市型,特別区型保健所では,従来どおり統合失調症の利用者を中心とした保健所デイケア,もしくは統合失調症以外の疾患を持つ利用者への保健所デイケアを検討することが方向性として考えられる。しかし,都道府県型保健所と同様に他の社会資源状況との関連を検討し,保健所のデイケア継続の有無や内容を決めることが課題である。
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