日本公衆衛生雑誌
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55 巻 , 5 号
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原著
  • 笹井 浩行, 西連地 利己, 入江 ふじこ, 磯 博康, 田中 喜代次, 大田 仁史
    2008 年 55 巻 5 号 p. 287-294
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 特定保健指導等に活用するための糖尿病発症リスクを予測するスコアの作成と糖尿病発症リスク予測シートを開発することを目的とした。
    方法 茨城県健診受診者生命予後追跡調査のデータより,1993年度に基本健康診査を受診した40~69歳の男女53,388人(男性16,289人,女性37,099人)を解析の対象とし,毎年の基本健康診査結果を2003年度まで追跡した(平均追跡年数:男性5.0年,女性5.5年)。ベースライン時の健診結果に基づき,血糖,中性脂肪(対数変換値),収縮期血圧,body mass index(BMI),治療の有無(高血圧,高脂血症),喫煙状況,飲酒状況,採血時の空腹状況の各項目が,糖尿病発症(空腹時血糖126 mg/dL 以上,随時血糖200 mg/dL 以上,糖尿病治療中のいずれか)に及ぼす影響を stepwise 法による Cox の比例ハザードモデルを用いて検討した。分析で有意であった項目の相対危険度(relative risk: RR)をすべて乗算することで糖尿病リスクスコアを算出した。さらにその糖尿病リスクスコアを基に特定保健指導に活用しうる糖尿病発症リスク予測シートの開発を試みた。
    結果 追跡期間中に,3,654人(男性1,667人,女性1,987人)の糖尿病発症が観察された。糖尿病発症を予測する項目として,男女ともに BMI,血糖,空腹状況,収縮期血圧,高血圧治療,中性脂肪および喫煙状況が採択され,これらを用いて糖尿病リスクスコアを算出した。作成したスコアに基づき,各危険因子の代表値および RR を示し,良好な生活習慣の獲得を促すための内容を盛り込んだ糖尿病発症リスク予測シートを開発した。
    結論 本シートは,特定保健指導を効果的に実践するためのひとつのツールとなることが期待できる。
  • 岸田 研作, 谷垣 靜子
    2008 年 55 巻 5 号 p. 295-305
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 介護保険導入後における特別養護老人ホームの入所の緊急性に影響する要因を明らかにすること。
    方法 対象は,中国地方の 2 つの市に在住する在宅介護を継続する同居世帯である。特別養護老人ホームの入所の緊急性の指標は,世帯が入所申請をしていない場合に 0,入所申請をしている場合は,世帯を担当するケアマネジャーが「将来,必要になったときに入所したらよい」と判断した場合は 1,「しばらくは待つことができる」と判断した場合は 2,「できるだけ早く入所した方がよい」と判断した場合は 3 をとる。推定は,緊急性の指標を従属変数,在宅介護の継続に影響すると考えられる個人・世帯属性を独立変数とする順序ロジットモデルである。推定では,従属変数のカテゴリーによって係数が異なる可能性を考慮した。
    成績 必要な変数に欠損値がなく分析対象になったのは,146の入所申請世帯と494の非入所申請世帯であった(計640世帯)。入所申請者間でもケアマネジャーが判断する適切な入所時期には差があり,「できるだけ早く入所したほうがよい」(29%),「しばらくは待つことができる」(32%), 「将来,必要になったときに入所すればよい」(39%)であった。多変量解析の結果,入所の緊急性が高いことと有意に関連していたのは,要介護度が高いこと,主介護者の自覚症状数,家族が介護に消極的であること,A 市在住,持ち家以外であること,事業者都合によるショートステイの利用制限,であった。
    考察 入所の緊急性については,入所申請の有無のみならず,入所申請者間の緊急性の差も考慮すべきである。入所の緊急性が高いことと有意に関連していたのは,要介護度が高いこと,主介護者の自覚症状数,家族が介護に消極的であること,A 市在住,持ち家以外であること,事業者都合によるショートステイの利用制限,であった。
  • 尼崎 光洋, 清水 安夫
    2008 年 55 巻 5 号 p. 306-317
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 本研究の目的は,性行動が活発化する青年期の大学生を対象に,性感染症予防を意図した心理・行動科学的な尺度の開発を行うことである。尺度の構成概念として,性感染症予防に効果的であるコンドームの使用に対する意識に着目し,性感染症の感染リスク行動および予防行動という二つの観点から尺度の構成概念の検討を行った。また,開発された尺度によるコンドーム使用行動の予測性について検討を行った。
    方法 質問紙法による 2 回の調査を実施した。第 1 回目は,2006年 1 月に大学生362人(男180人,女182人)を対象に実施し,第 2 回目は,2007年 1 月に大学生248人(男121人,女127人)を対象に実施した。なお,今回の研究では,異性間の性交による性感染症予防に対する意識を検討するため,異性愛者を分析対象とした。
     尺度開発のために,探索的因子分析,ステップワイズ因子分析,検証的因子分析を実施した。また,抽出された各因子に対して,信頼性係数(Cronbach's α)を算出した。さらに,開発された尺度の予測性の検討を行うために,ロジスティック回帰分析による検討を行った。
    結果 1) 大学生の性感染症予防行動に関する意識尺度(STDASUS)について,探索的因子分析の結果,4 因子(各 5 項目)が抽出され,計20項目構成となった。
    2) 抽出された項目の精査を行うために,ステップワイズ因子分析を行った結果,4 因子(各 4 項目)の計16項目の尺度が開発された。各因子の α 係数は0.759~0.879であった。
    3) 構成概念を検証するために,探索的因子分析を実施した調査対象者とは異なる対象者に対して,4 因子16項目の尺度を用いて検証的因子分析を実施した。その結果,尺度全体の適合度を表す指標は,GFI=0.916, AGFI=0.883, CFI=0.948, RMSEA=0.057を示した。
    4) 最近の性交時のコンドームの使用状況を従属変数,大学生の性感染症予防行動に関する意識尺度を独立変数としたロジスティック回帰分析の結果,統計的に有意な偏回帰係数(β=0.154, P<0.001)が認められた。
    結論 本研究の結果,4 因子16項目による「大学生の性感染症予防行動に関する意識尺度」が開発された。尺度の信頼性および構成概念妥当性は,十分な適合値を示した。また,本尺度による近時点におけるコンドームの使用の有無の予測性が示唆され,今後のリスク行動および予防行動のアセスメントの可能性が推察された。
  • 佐藤 厚子, 北宮 千秋, 李 相潤, 畠山 愛子, 八重樫 裕幸, 面澤 和子
    2008 年 55 巻 5 号 p. 318-326
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 育児不安を「育児ノイローゼ,育児不安,育児ストレス,育児疲労,育児葛藤などを諸要因とした Child Rearing Burnout」として捉えた。4 か月健康診査時での訪問群(訪問指導を受けた母親)と非訪問群(訪問指導を受けなかった母親)の育児不安の実態を調査し,育児不安得点を比較することを目的とした。
    方法 対象者は H 市保健センターの 4 か月健康診査に来所した母親169人であり,自記式質問紙による調査を行った。調査用紙は受付けで配布し,健康診査終了後にその場で回収した。配布部数は196部であった。調査用紙配布の際に本研究の目的,意義他,研究によって得られた個人情報は研究以外の目的には使用されないこと,研究者以外の者がデータを用いることはないこと,アンケートの回答は任意であることを明確に記した文書を示し,口頭で説明した。同意が得られたものを対象者とした。
    結果 有効回答率は86.2%であり,訪問群は92人(54.4%)であった。アンケート結果を因子分析し,育児不安因子として 5 因子22項目を抽出した。各因子を次のように命名した。第 1 因子:「気分変化の因子」(気分変化)(7 項目)第 2 因子:「身体的疲労の因子」(身体疲労)(5 項目)第 3 因子:「家族関係の因子」(家族関係)(4 項目)第 4 因子:「子育てに関する不安・心配の因子」(子育て)(3 項目)第 5 因子:「人付き合いの因子」(人付き合い)(3 項目)。訪問群・非訪問群とも「育児の協力は夫であるか」の質問に「いいえ」と回答した対象者に「子育てに失敗するのではないかと思うことがある」,「この子がうまく育つかどうか不安になることがある」,「子供のことでどうしたらよいかわからないときがある」と答えたものが有意に多かった。育児不安項目と関連していた対象者の特性は,初産婦,拡大家族,無職,30才代以降の出産であった。訪問群と非訪問群では第 1 因子(気分変化),第 2 因子(身体疲労),第 4 因子(子育て)において有意差があり,訪問群の育児不安得点が高かった。
    結論 訪問群は非訪問群よりも育児不安得点が有意に高く,訪問指導時に Child Rearing Burnout の内容を把握することで,継続支援が必要な母親を把握できる可能性がある。
公衆衛生活動報告
  • 久保田 晃生, 永田 順子, 杉山 眞澄
    2008 年 55 巻 5 号 p. 327-340
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 本研究の目的は,ソーシャルサポートを強化したグループ参加による減量プログラム(以下,減量チャレンジラリー)の有効性について検討することである。
    方法 対象は静岡県内に在住もしくは勤務し,body mass index(BMI)が22 kg/m2 以上の者のうち,減量チャレンジラリーの参加を希望した38グループ,合計114人(男性41人,女性73人)であった。ソーシャルサポートを強化するため,個人ではなくグループでの参加形式とした。グループメンバーの12週間の減量状況(現体重の 5%の減量を目指す),1 日の平均歩数,日常生活の運動目標および食事目標の平均達成率によって,それぞれ点数化し,その結果から順位付けした。この他,報償制,通信制といった特徴があり,個人ではなくグループ単位で評価を行った。なお,減量チャレンジラリーの有効性について検討するため,開始時,終了時の測定会で,身体計測,質問紙調査を実施した。
    結果 減量チャレンジラリーは,32グループ,合計96人が継続し,継続者の92.7%に平均3.7 kg の減量が認められた。BMI は平均1.4 kg/m2,体脂肪率は平均2.8%,ウエスト周囲径は平均3.9 cm の減少が認められた。終了時に実施した減量チャレンジラリーの評価に関する質問紙の結果では,グループで参加したことが良かったと回答する割合が94.8%と高率を示すなど,参加に関して概ね高い評価が得られた。
     なお,グループをメンバー構成の状況から,同僚群,友人群,家族群の 3 群と,男性群,女性群,男女混合群の 3 群に,それぞれ類型化して分析したが,いずれの群も体重,BMI,体脂肪率,ウエスト周囲径は減少が認められた。
    結論 今回の減量チャレンジラリーの試みによって,継続者96人の内,88人に減量の効果が認められた。したがって,ソーシャルサポートの効果を期待して減量を図る減量チャレンジラリーは,減量を図るための 1 つの取組みになると思われる。
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