日本公衆衛生雑誌
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65 巻 , 12 号
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原著
  • 根本 裕太, 倉岡 正高, 野中 久美子, 田中 元基, 村山 幸子, 松永 博子, 安永 正史, 小林 江里香, 村山 洋史, 渡辺 修一 ...
    2018 年 65 巻 12 号 p. 719-729
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

    目的 本研究では,若年層(25-49歳)と高年層(65-84歳)における世代内/世代間交流ならびにそれらの組み合わせと精神的健康との関連について検討することを目的とした。

    方法 2016年に地域住民を対象とした質問紙調査を実施した。有効回答を得た若年層3,334人(回収率24.6%)および高年層3,116人(回収率46.0%)を本研究の解析対象者とした。精神的健康については,WHO-5を用いて,合計点数が13点未満もしくはいずれかの設問に対し1点以下の回答をした者を「不良な健康状態」と判定した。世代内/世代間交流については,親族や仕事関係の人を除いた者との交流頻度を調査した。若年層においては「20-40代」,高年層においては「70代以上」との交流を「世代内交流」,若年層における「70代以上」,高年層における「20-40代」との交流を「世代間交流」とした。また,これらの組み合わせとして両世代との交流がある者は「両世代交流あり」,両世代とも交流がない者を「交流なし」とした。統計解析においては,精神的健康を目的変数,世代内/世代間交流を説明変数,性別,年齢,最終学歴,婚姻状態,同居者,主観的経済状況,地域活動への参加,就労,健康度自己評価,手段的日常生活動作能力を調整変数としたロジスティック回帰分析を行った。

    結果 若年層3,334人のうち,精神的健康が良好な者が61.5%,「世代内交流あり」は51.3%,「世代間交流あり」は21.9%,「両世代交流あり」が16.5%,「交流なし」が42.7%であった。一方,高年層3,116人のうち,精神的健康が良好な者は65.8%,「世代内交流あり」は67.9%,「世代間交流あり」は34.3%,「両世代交流あり」は29.9%,「交流なし」は21.1%であった。ロジスティック回帰分析の結果,いずれの世代においても「世代内交流あり」,「世代間交流あり」は交流していない者と比較して精神的健康状態が良好であった。世代内/世代間交流の組み合わせと精神的健康との関連では,両世代において,「世代内交流のみ」と比較して「交流なし」は精神的健康が有意に劣り,「両世代交流あり」は良好であることが示された。

    結論 若年層と高年層において世代内交流ならびに世代間交流が良好な精神的健康と関連し,両世代と交流している者はさらに精神的健康が良好であることが示唆された。

  • 荒木 和夫, 増澤 祐子, 高橋 由光, 中山 健夫
    2018 年 65 巻 12 号 p. 730-743
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

    目的 現行個人情報保護・研究倫理法制の体系と立法目的を明らかにすることにより,研究主体と研究対象の違いによる分類ごとに適用すべき個人情報保護・研究倫理関係法令等の適用関係を示す。学術研究目的による個人情報保護法令等の適用除外を考察することにより,改善点と今後の在り方を提示する。

    方法 系統的文献調査による記述的研究。「e-Gov法令検索」により,個人情報保護又は研究倫理に関する法令であって,人を対象とする医学系研究又はヒトゲノム・遺伝子解析研究に適用可能なものを選択した。薬機法およびGCP・GPSP省令等ならびに行政組織・手続等に関する法令は除外した。さらに,都道府県の個人情報保護条例(個条例)および対象法令に対応するガイドライン等を選択した。これらの法令等に基づき,個人情報保護と研究倫理に関する現行法体系とそれらの適用範囲・優先適用関係等を検討した。個人情報保護3法・個条例の目的規定および学術研究目的による適用除外規定の内容ならびに個条例の規定の地域的偏りを調査した。

    結果 個人情報保護に関する現行法体系は約2,000件の法令等を含む3階層から成ること,医学研究に関する個人情報の保護について包括的な法律がないこと,そのため研究主体の類型により適用法令等が異なることが明らかとなった。研究倫理は,医学研究の種類により適用法令等が異なっていた。個人情報保護法(個情法)は2つの目的を,行政機関個人情報保護法(行個法)と独立行政法人等個人情報保護法(独個法)は3つの目的を規定していた。学術研究目的の場合,個情法には包括的除外規定があるが,行個法と独個法は3つの個別除外規定を設けていた。個条例では,都道府県により規定の有無・内容にばらつきがあるが,国の法令と整合性を取るため要配慮個人情報に関する改正が相次いだ。

    結論 我が国の現行個人情報保護法令等の体系は「混合方式」と考えられる。さらに,(1)法令等の間で必ずしも整合性がとられていない,(2)研究倫理に関する包括的な法律はない,(3)研究主体の類型により適用法令が異なるため,学術研究目的による個人情報保護法令等の適用除外に違いがあるほか,とくに共同研究の場合は適用法令等の判別が複雑である。そのため,医療に関する個人情報については,今後,制度という大きな枠組みで,その保護,利活用および倫理問題について検討を進めることが不可欠と考えられる。

  • 田中 泉澄, 北村 明彦, 清野 諭, 西 真理子, 遠峰 結衣, 谷口 優, 横山 友里, 成田 美紀, 新開 省二
    2018 年 65 巻 12 号 p. 744-754
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

    目的 大都市部在住の高齢者における孤食の実態についてその頻度を含めて明らかにするとともに,孤食と食品摂取の多様性との関連を示す。

    方法 2016年6月に,東京都大田区に在住する65歳以上の男女を対象とし,15,500人に自記式調査票を郵送した。回答を得た11,925人(回収率76.9%)のうち,データ欠損を含まない8,812人(有効回答率56.9%)を分析対象とした。毎食一人で食事をとる1週間当たりの日数を孤食頻度として0,1~3,4~6,7日群に分類した。食品摂取多様性得点(DVS)は,10の食品群それぞれの1週間あたりの摂取頻度から算出し,3点以下の場合をDVS低値と定義した。統計解析は,DVSまたは各食品群について「ほぼ毎日食べる」の有無を従属変数,孤食頻度を独立変数,年齢,居住地域,BMI,教育歴,等価所得,就業,独居,既往歴,飲酒,喫煙を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。

    結果 男性の47.1%,女性の48.5%が週1日以上の孤食であり,さらに男性の14.9%,女性の16.9%が週7日(毎日)孤食であると回答した。孤食頻度0日群と比較して,男性ではすべての頻度の孤食群でDVS低値に対するオッズ比が1.51~2.00と有意に高値を示した。女性では,孤食頻度7日群でのDVS低値のオッズ比は1.15(95%信頼区間0.92-1.43)と有意差はみられなかった。男女とも孤食習慣のある群では,非孤食群と比較して緑黄色野菜類,果物類,油を使った料理を「ほぼ毎日食べる」オッズ比が有意に低値を示した。

    結論 大都市部の高齢者では,男女ともに半数近くに孤食習慣があることが明らかとなった。孤食群は非孤食群と比較して年齢や等価所得,同居家族の有無とは独立して食品摂取の多様性が低い傾向を示した。本成績は,孤食習慣のある大都市部高齢者の低栄養対策に資する有用な知見となると考えられる。

公衆衛生活動報告
  • 劔 陽子, 池田 洋一郎, 稲田 知久, 緒方 敬子, 木脇 弘二, 小宮 智, 長野 俊郎, 服部 希世子, 林田 由美, 渕上 史
    2018 年 65 巻 12 号 p. 755-768
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

    目的 2016年4月に発生した熊本地震における熊本県内各保健所の災害対応を振り返り,今後の災害時における保健所・保健医療行政の役割・あり方について考察する。

    方法 2016年8~9月にかけて,県内各保健所長が発災後超急性期~亜急性期における自分が勤務する保健所の対応について,また県保健所長会長が同時期における所長会としての活動について,記述的にまとめた。これらを「所長会の活動」,「被害が大きかった地域を管轄する保健所の活動」,「被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所の活動」に分けてまとめ,KJ法により課題や反省点を抽出した。

    活動内容 所長会は県の医療救護対策本部における「コーディネーター連絡会議」に参画し,全県的な対応が必要な事項について調整する等の活動を行った。被害が大きかった地域を管轄する保健所は,支援者・団体の調整,市町村支援として避難所の衛生管理や感染症対応支援等の活動を行った。保健所内の指揮命令系統がうまく動かなかった,市町村や外部支援団体に保健所の機能が知られていなかった,県本部との意思疎通が困難であった,などが課題として挙げられた。被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所は,職員の安否や管内の被害状況を確認後,待機体制をとった。その後,県本部からの指示により職種別に職員を被災地域の保健所に応援派遣し,また二次避難者を管内に受け入れた。保健所「チーム」としての応援派遣はなかった。長期間の待機による職員の疲弊,ニーズと実際の応援のミスマッチ,被害が小さかった地域にも開設された避難所への対応が保健所により異なっていたこと等が課題として挙げられた。

    結論 次の災害に備え,災害時の保健医療部局における一本化した指揮命令系統の確立,管理職のマネジメント能力の強化,市町村や関係団体との平時よりの連携強化,災害時保健所活動についてのマニュアルの整備,被災地域を管轄する保健所への人員補強計画の作成等に取り組む必要がある。

資料
  • 秋本 美加, 斉藤 功, 﨑山 貴代
    2018 年 65 巻 12 号 p. 769-776
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2018/12/27
    ジャーナル フリー

    目的 産後の母親の疲労は,身体的・精神的健康と関連があり育児困難感にも影響する。よって効果的な産後のケア実践において,母親の産後の疲労の状態を知ることは重要である。そこで本研究は,産後1か月までの母親の疲労感の変化および影響する要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 A 市内の調査施設BおよびCで出産した20歳以上の母親154人を対象とし,出産後の産院入院中と1か月健診時に無記名自記式アンケート調査を行った。調査内容は,産後に受けたサポートの内容,睡眠・食事の状況,身体的ストレス状態,精神的ストレス状態,睡眠が不足した状態,育児困難感で構成される山﨑らの産後の疲労感尺度とした。この尺度は合計点が高いほど産後の疲労感が強いことを意味しており,本研究では1か月健診時と産院入院中のスコアの差を従属変数として重回帰分析を行った。有意水準は0.05とした。

    結果 産後の疲労感尺度の全体得点は産院入院中76.1点,1か月健診時69.7点と有意に低下した(P<0.001)。下位尺度では身体的ストレス状態と育児困難感で有意に得点が低下した(P<0.001)。産後の疲労感尺度全体およびすべての下位尺度得点には,産院入院中と1か月健診時の2時点で正の相関が認められた(P<0.001)。2時点の産後の疲労感尺度のスコアの差を従属変数とした重回帰分析により,産後の疲労感尺度全体と下位尺度の身体的ストレス状態,育児困難感において,正常からの逸脱による児の入院が抽出された。その他,産後の疲労感尺度の下位尺度において,身体的ストレス状態ではバランスのよい食事,精神的ストレス状態では出産年齢,睡眠が不足した状態では母子同室,出産前に自分の母親と同居に有意な関連があった。

    結論 産後の疲労感尺度全体の得点は,産院入院中と1か月健診時で比較すると有意に低下した。産後の疲労感尺度全体に対して産後1か月までの正常からの逸脱による児の入院は産後の母親の疲労感を増加させる要因であった。下位尺度では,正常からの逸脱による児の入院の他,バランスの良い食事,高齢出産,出産前に自分の母親と同居の有無,産院入院中の母子同室が影響した。産後の母親の疲労感を予測し,分娩後早期から継続して疲労回復に向けた専門的なケアを実施する必要がある。

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