日本公衆衛生雑誌
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50 巻 , 10 号
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論壇
  • 宮村 季浩, 飯島 純夫
    2003 年 50 巻 10 号 p. 945-949
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
     近年の疾病構造の変化や在宅医療への誘導は,医療における看護の重要性を増している。さらに,医療への市場原理の導入や医療事故の問題に備えるためにも医師-看護師関係をより強固なものにしていく必要がある。しかし現状では,十分な相互理解が得られているとは考えにくい状況にある。特に,日本の医学教育において学ぶべき看護についてあまり検討されていないことが原因の一つと考える。医療従事者,特に看護師の人間性や専門性を生かした医療を実践するためには,医師が医学以外の看護学およびそれに関連した学問領域を体系的に学ぶことが重要となる。本稿では,そのために必要な基本的な考え方と,さらにそれに対する公衆衛生学の役割を示す。
原著
  • 岩佐 一, 鈴木 隆雄, 吉田 英世, 金 憲経, 新名 正弥, 吉田 祐子, 古名 丈人, 杉浦 美穂, 西澤 哲, 胡 秀英, 新開 省 ...
    2003 年 50 巻 10 号 p. 950-958
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,包括的健診(「お達者健診」)において試行された認知機能検査および老研式活動能力指標を用いて,認知機能の年齢差,および認知機能と高次生活機能の関連について明らかにすることを目的とした。
    方法 東京都板橋区内在宅の70歳以上高齢者438人が本研究に参加した。認知機能は,Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised (WAIS-R)符号問題,語想起検査,WAIS-R 数唱問題によって測定した。高次生活機能は,老研式活動能力指標で測定し,「手段的自立」,「知的能動性」,「社会的役割」の 3 つの下位尺度得点を分析に使用した。
    成績 認知機能における年齢差を検討するため,3 つの認知機能検査を従属変数,教育年数を共変量とした共分散分析により検討したところ,WAIS-R 符号問題,語想起検査および WAIS-R 数唱問題において顕著な年齢差が認められ,80歳以上高齢者の成績が80歳未満高齢者のそれよりも低いことが明らかになった。
     認知機能と高次生活機能の関連について,年齢と教育年数を統制変数とした偏相関分析により検討したところ,手段的自立では符号検査および語想起検査と,知的能動性では符号検査,語想起検査および数唱検査と,社会的役割では語想起検査とそれぞれ正の相関関係が認められた。老研式活動能力指標下位尺度をそれぞれ従属変数,認知機能検査,年齢,教育年数を独立変数とする重回帰分析を行ったところ,手段的自立,知的能動性,社会的役割における分散のそれぞれ 4%, 9%, 4%が独立変数によって説明されることが明らかになった。
    結論 80歳以上高齢者と80歳未満高齢者間において WAIS-R 符号問題,語想起検査および WAIS-R 数唱問題の成績に年齢差が認められたことから,後期高齢期以降における認知機能(情報処理速度,遂行機能および一次記憶)の低下が推測された。
     高次生活機能は認知機能と正の関連性を有することが確認され,なかでも知的能動性は認知機能によって規定される傾向が最も強い高次生活機能であることが示唆された。
  • 白鞘 康嗣, 島田 直樹, 中原 俊隆, 潮見 重毅, 里村 一成, 武村 真治, 近藤 健文
    2003 年 50 巻 10 号 p. 959-969
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 介護保険制度実施の前年度にあたる平成11年度,介護保険制度実施年度にあたる平成12年度および介護保険制度実施の翌年度にあたる平成13年度における市区町村の保健・福祉サービスの供給体制について質問票による実態調査を行い,市区町村の保健・福祉サービスの時系列的変化について検討を行った。
    方法 全国の全市町村(671市,1991町,567村,計3229市町村)および東京都特別区(23区)に対して,平成13年11月に保健・福祉サービスに関する質問票を送付した。なお調査票には,保健師活動,保健・福祉事業費,介護保険の実施状況など,各市区町村における保健・福祉事業の実態を幅広く把握するための調査項目が含まれており,回答は各市区町村に勤務する保健師の代表もしくはそれに準ずる者に依頼した。
    結果 平成13年12月から平成14年 1 月にかけて441市 (回答率:65.7%),800町(回答率:40.2%),197村(回答率:34.9%)および16区(回答率:69.6%)の計1454市区町村(回答率:44.7%)から質問票の返送があった。介護保険事業の実施にあたって,すべての業務を単独で行っている市区町村は,全体の42.6%であった。老人福祉サービスの変化を予算面から見るために,平成12年度および平成13年度の介護保険給付以外の老人福祉事業費と,平成11年度老人福祉事業費との比をそれぞれ算出してみると約40%であった。各市町村に雇用される平均常勤保健師数および保健師全体の活動時間の配分割合に関しては,介護保険導入による変化は見られなかった。また,44%の市区町村が,介護保険専従保健師を雇用していた。高齢者 1 人当りの介護量の変化としては,増加したと回答した市区町村が全体の80%以上を占めている。介護の質の変化としては,向上したと回答した市区町村が全体の72%を占めている。介護を受ける高齢者数の変化としては,増加したと回答した市区町村が全体の81%を占めている。
    考察 介護保険制度の導入が,地域保健サービスあるいは地域福祉サービスに対して悪影響を与えたと考えている市区町村は少なく,むしろ市区町村の保健・福祉サービスに対しては良い影響を与えていることが示唆された。また,介護保険制度は介護そのものに対しても良い影響を与えていることが示唆された。
  • 高橋 美保子, 柴崎 智美, 永井 正規
    2003 年 50 巻 10 号 p. 970-979
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 老人クラブに所属する高齢者の社会活動レベルの現状を記述し,高齢者の社会活動に影響を与える環境条件を検討すること。
    方法 1998年10月,埼玉県 O 市内の228老人クラブに所属する65歳以上の高齢者約10,000人以上を対象に,「いきいき社会活動チェック表」を用いた高齢者社会活動レベル調査を実施した。社会活動 4 側面別(個人活動,社会参加・奉仕活動,学習活動,および仕事)の「活発者」「不活発者」の割合を基準集団(活発者25%,不活発者25%)と比較した。
    成績 207の老人クラブ(90.8%)が調査に協力した。各老人クラブでの調査票回収率は平均82.0%であった。
     基準集団と比較して,老人クラブ会員では,「個人活動」「社会参加・奉仕活動」の活発度が高く,「学習活動」「仕事」の活発度が低かった。この特徴は女性会員で顕著であった。一方,75歳未満の男性会員では,「社会参加・奉仕活動」「学習活動」「仕事」の活発度が低かった。会員の居住地区によって社会活動側面別の活発度に格差が認められた。交通機能の充実した市街地に居住する会員では「個人活動」「社会参加・奉仕活動」「学習活動」の活発度が高く,広い耕地面積を有する市の北東部,北西部に居住する会員では「仕事」の活発度が高いという地域格差であった。
    結論 老人クラブ会員の社会活動レベルの特徴を明らかにすることができた。また,老人クラブへの入会,交通の便,産業構造といった環境条件が,高齢者の社会活動と関連する可能性が示唆された。
  • 正林 督章, 神山 吉輝, 高野 正義, 川口 毅, 佐藤 敏彦
    2003 年 50 巻 10 号 p. 980-987
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 近年,疾病構造の変化と医療技術の進歩発展とが相俟って,血液製剤や血漿分画製剤の需要が急速に増大し,その結果,国内での自給が困難となり,他国からの輸入によってその不足分を補うこととなった。アルブミン製剤使用量は,最も多い北海道と最も少ない高知県とでは,およそ10倍の格差がある。そこで血液製剤の使用の適正化を目的として,都道府県間に格差が生じている要因の分析を行った。
    方法 全国の医療機関8,334か所に対して,血液製剤の管理方法や総使用量,使用した患者の性,年齢,傷病名,アルブミン使用前後の血中アルブミン濃度の検査の有無およびその検査結果,手術の有無等について,各都道府県を経由して調査票を配布し,同様に各都道府県を経由して血液製剤調査機構が,回収・解析した。都道府県間の差異は,1,000床当たりの使用量に応じて都道府県を 4 つの群に分けて45歳~84歳の患者を対象に解析した。
    成績 1,000床当たりの使用量が多い上位都道府県では,使用頻度の高い上位20位以内に相当する疾病の患者が占める割合,投与前後に血清アルブミン濃度の検査をしなかった割合が他 3 群の合計に比べて有意に高かった。さらに,投与前後の血清アルブミン濃度が他 3 群に比べて有意に高かった。病床数については,4 群の間で有意差はなかった。疾病ごとにみても,肝繊維症および肝硬変,肝および肝内胆管悪性新生物,胃の悪性新生物,結腸の悪性新生物で,上位都道府県はその他の群に比べて,1 人当たりアルブミン使用量が大きかった。
    結論 アルブミン使用量について,都道府県格差の要因として,アルブミン投与前後の血清アルブミン濃度の検査の有無,投与前の血清アルブミン濃度が考えられた。
  • 大塚 礼, 八谷 寛, 三浦 弥生, 村田 千代栄, 玉腰 浩司, 大城 宏治, 西尾 直樹, 石川 美由紀, 張 恵明, 塩澤 まゆみ, ...
    2003 年 50 巻 10 号 p. 988-998
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 扁平足は足の矢状方向のアーチ高が低下した状態であり,高齢者において足の痛みとの関連が報告されている。一方,健康成人では痛みとの関連はないとの報告もあり,扁平足と足の痛みとの関連性については定かでない。また小児では扁平足と肥満との関連が示されているが,高齢者における関連は明らかでない。本研究では簡便なフットプリント法を用いて,地域在住高齢男女における扁平足の頻度を求め,扁平足と足の痛みや疲れとの関連,ならびに扁平足と肥満の関連について検討する。
    方法 長野県阿南町に居住する60歳以上の在宅自立高齢者2,392人のうち,調査に参加した340人(男性98人,女性242人)を対象とした。身長,体重の計測,フットプリント(足跡印画)の採取を行い,足に関する症状や日常の身体活動に関するアンケートを行った。フットプリントより H ライン(内足部接線と外足部接線の交点と,第二趾先端部とを結ぶ線),footprint index(土踏まず面積/五趾部を除いた足底面積)を測定し,少なくとも一方の足で土踏まずの窩みが H ラインより内側である場合を扁平足とした。足裏の痛みや疲れは「まったくない」,「歩いたり立つとある」,「いつもある」のいずれかから選択させた。肥満度の指標として body mass index (BMI: kg/m2)を用い,男女別に求めた BMI の 3 分位による分類と扁平足との関連性について検討した。
    結果 扁平足は男性の26.5%(95%信頼区間:22.0-31.0),女性の25.7%(95%信頼区間:20.2-31.2)に認められた。扁平足を有する者における足裏の痛みは男性32.0%,女性28.3%,疲れは男性34.6%,女性48.3%に認められ,扁平足なしの者におけるその割合に比し高く(痛み:男性17.2%,女性22.2%,疲れ:男性19.7%,女性28.0%),特に女性における疲れと扁平足との関連は有意であった。BMI と足裏の症状には関連性は認められなかった。女性では BMI の増加に伴い扁平足を有する者の割合は増加し(P=0.04), footprint index も低値をとった(P=0.02)。男性では BMI 3 分位が第 2,第 3 分位群では第 1 分位群に比し扁平足を有する者の割合が高かったが,その差は有意ではなかった。
    結論 扁平足の者では足裏の痛みや疲れを感じている者の割合が高く,女性では扁平足と肥満の間に有意な正の関連性が認められた。
資料
  • 恩田 光子, 河野 公一, 渡辺 丈眞, 渡辺 美鈴, 有末 正敏, 明石 光也, 福富 昭伯, 大浦 清宏, 堀内 俊孝
    2003 年 50 巻 10 号 p. 999-1005
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
     在宅ケア関連業務に着目し,地域による薬局業務の機能的特徴に差があるかを検討するために,大都市近郊 T 市および大都市旧市街 K 区の薬剤師会に所属する全会員薬局(各75, 161薬局)を対象に,薬局業務の実施状況を調査し,その結果を用いて主成分分析を実施した。調査した薬局業務は,患者・介護者への服薬指導,患者への薬剤情報提供,患者の薬歴管理,処方箋調剤,医師への助言・疑義照会,特殊製剤処方の取扱い,OTC(一般用医薬品)の販売,介護用品の展示・カタログ販売,在宅医療に関する相談応需,健康教室などのイベント開催,在宅患者訪問薬剤管理指導,医療他職種との情報交換,保健福祉他職種との情報交換とした。
     本調査によって次のような結果を得た。(1)両地域共に服薬指導,薬剤情報提供,薬歴管理,処方箋調剤,医師への助言・疑義照会,OTC 販売などの実施状況は比較的高かった,(2)両地域共に介護用品の展示・カタログ販売,在宅医療に関する相談応需,健康教室などのイベント開催,在宅患者訪問薬剤管理指導,他職種との情報交換などの実施状況が比較的低かった。(3)主成分分析の結果,T 市では薬局機能が 3 成分抽出され,調剤業務が薬局の機能的特徴に最も強く影響を与えているのに対し,K 区では薬局機能が 4 成分抽出され,相談応需や情報交換などの業務が薬局の機能的特徴に最も強く影響を与えていた。これらのことから,薬局業務の機能的特徴は地域によって差があることが示唆された。(4)居宅訪問薬剤管理指導などの在宅ケア関連業務を拡充するためには,他職種との情報交換を強化することが有効であることが示唆された。
  • 園田 智子, 森 満
    2003 年 50 巻 10 号 p. 1006-1016
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 帯広市における健康日本21地方計画の策定に際しアンケート調査を行い,帯広市民の健康課題を見出すことを目的とした。
    方法 帯広市に住民票を有する 6 歳から74歳までの男女2000人を無作為抽出し調査対象とした。調査内容は健康日本21において国の目標値が設定されている 6 つの分野を中心とした。集計結果から帯広市の現状値を算出し,さらに生活習慣と主観的健康度の因果関係を探るため男女別にパス解析を行った。
    成績 アンケートの回収率は49.0% (979/2000)であった。国の現状値と比べて,「ストレスを感じた人の割合」「睡眠の確保のために睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の割合」「多量に飲酒する人の割合(男性)(女性)」「喫煙する人の割合(女性)」が高かった。「喫煙がおよぼす健康影響について知っている人の割合」は「気管支炎」「胃潰瘍」「妊娠に関連した異常」「歯周病」において低かった。
     パス解析では男女同時モデルを作成した。モデルの適合は良く,次の特徴が見出された。1)男女とも,ストレスがあると睡眠による休養が不足し自分を不健康だと思うが,睡眠で休養がとれているとストレスがあっても主観的健康度への影響は小さい。2)男女とも,喫煙は直接食生活に影響をおよぼすが,その影響は女性の方が大きい。3)男女とも,喫煙が主観的健康度におよぼす影響は食生活に関係なく小さい。4)女性では,飲酒量の多い人は健康だと思う傾向がある。
    結論 帯広市の健康課題はストレスと喫煙ではないかと考えられた。ストレス対策として十分な睡眠の確保,喫煙対策として喫煙による健康障害の知識の徹底が示唆された。
  • 酒井 潔, 坪内 春夫, 三谷 一憲
    2003 年 50 巻 10 号 p. 1017-1029
    発行日: 2003年
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    目的 住宅における空気中カビ濃度を調査するとともに,カビ濃度と室内空気汚染物質濃度ならびに温湿度との関連を検討することである。
    方法 名古屋市内の住宅54戸の総カビ濃度,好乾性カビ濃度,室内空気汚染物質であるホルムアルデヒド,二酸化窒素,炭酸ガス,一酸化炭素の各濃度と温湿度を,1995年度~1997年度の夏季と冬季に調査した。空気中カビ濃度は,ピンホールサンプラー法で採取し,ディクロラン18%グリセロール培地(DG18 培地)を使用して測定するとともに,ポテト・デキストロース寒天培地(PDA 培地)による測定結果と比較した。
    結果 1) DG18 培地は,室内空気中カビ濃度の測定に適していた。
     2) 屋内の総カビ濃度と好乾性カビ濃度の幾何平均値は,夏季では237~301 CFU/m3 と24.1~26.8 CFU/m3 であり,冬季では78.7~87.5 CFU/m3 と18.2~29.5 CFU/m3 であった。外気の総カビ濃度と好乾性カビ濃度の幾何平均値は,夏季では208 CFU/m3 と9.2 CFU/m3 であり,冬季では72.7 CFU/m3 と10.1 CFU/m3 であった。
     3) 屋内濃度および外気濃度が最も高かったカビは,Cladosporium 属であり,次いで Penicillium 属と Aspergillus 属であった。Aspergillus 属では,A. restrictus が最も高濃度であった。
     4) 夏季および冬季ともに総カビ濃度は屋内と外気の間で濃度差がなかったが,屋内外の総カビ濃度は夏季が冬季より有意に高かった(P<0.01)。夏季および冬季ともに好乾性カビの屋内濃度は外気濃度より有意に高かった(P<0.01)が,屋内外ともに夏季と冬季の間で濃度差がなかった。
     5) 総カビ濃度および好乾性カビ濃度は,住宅や床材質の種類,冷暖房の有無と関連がなかった。
     6) 総カビ濃度および好乾性カビ濃度は,室内空気汚染物質濃度との間に有意な関連はなかった。冬季には総カビ濃度および好乾性カビ濃度は平均湿度と有意な正の相関関係があった(P<0.01)。
    結論 室内空気中総カビ濃度は外気濃度を反映していたが,好乾性カビ濃度は外気濃度と関連がなかった。室内空気中総カビ濃度ならびに好乾性カビ濃度は,室内空気汚染物質濃度と関連がなかった。
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