日本公衆衛生雑誌
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61 巻 , 1 号
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原著
  • 坂田 祥, 成瀬 昂, 田口 敦子, 村嶋 幸代
    2014 年 61 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 幼児をもつ母親を対象に,子どもの行動特性の分類ごとに母親の育児困難感とその関連要因を明らかにし,支援方法を検討する。
    方法 A 県内 5 市および首都圏近郊 3 市の 3 歳児健康診査(2009年 7 月~9 月)に来所した母親を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。対象者を子どもの行動特性によって,Low Need 群,内向的特性群,外向的特性群,混合型特性群の 4 群に分類し,群ごとに育児困難感を従属変数とした重回帰分析を行った。
    結果 回収数818票(回収率48.8%)のうち,回答に欠損のあったもの等計43人を除く775人を分析対象とした(有効回答率46.3%)。Low Need 群の子どもを持つ母親は332人,内向的特性群は104人,外向的特性群は230人,混合型特性群は109人であった。多重比較の結果,Low Need 群よりも他 3 群の方が,育児困難感が高く,混合型特性群,外向的特性群,内向的特性群の順に育児困難感が高い傾向があった。育児困難感を従属変数とした重回帰分析の結果,いずれの行動特性群でも,自己効力感が低いこと,家族からの評価的サポートを受けていないことが,育児困難感の高さに関連していた。Low Need 群では,きょうだいへの対応困難感がある場合に育児困難感が高かった。内向的特性群では,母親が若いこと,専業主婦であること,子どもが男児であることが母親の育児困難感の高さに関連していた。外向的特性群では,母親が若いこと,母親の健康状態がよくないこと,集合住宅に住んでいること,友人からの評価的サポートを受けていないことが,母親の育児困難感の高さに関連していた。混合型特性群では,母親が専業主婦であること,きょうだいへの対応困難感があること,友人からの評価的サポートを受けていないことが,母親の育児困難感の高さに関連していた。
    結論 子どもの行動特性によって,母親の育児困難感とその関連要因は異なっていた。母親の育児困難感軽減のためには,子どもの行動特性にかかわらず,その自己効力感を高め,家族からの評価的サポートを得られるような支援が重要である。内向的特性群の母親には,子どもの特性に対する理解を促し,子どもの特性そのものに対する不安や戸惑いを軽減する支援が重要である。外向的特性群の母親には,子どもの外向的行動に対処する際の母親の負担を軽減し,その対処行動を肯定的に評価することが重要である。混合型特性群は他群よりも複雑な育児困難感を持っている可能性があるため,より専門的な支援が必要であると考えられた。
研究ノート
  • 高橋 美保子, 仁科 基子, 太田 晶子
    2014 年 61 巻 1 号 p. 16-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 我が国における社会的要因による出生日選好傾向の現状を概観する目的で,日別出生数の現状を記述した。
    方法 1981~2010年の人口動態統計から,病院,診療所,および助産所における生年月日別出生数(日別出生数)を得た。出生場所別に,その月の 1 日平均出生数に対する日別出生数の比(日別出生数比)を求め,同年の七曜別の平均を求めて観察した。七曜別に日別出生数比の95%範囲を求めて観察値と比較した。統計学的に有意であったいくつかの特殊日の日別出生数比について,同年の当該期間(年始の 3 日間等)の平均を求めて観察した。七曜別に日別出生数比の標準化偏差を求めて,出生変動の大きさを検討した。
    結果 病院,診療所について,七曜別平均出生数比は火曜に最高,日曜に最低であった。病院では平日と土曜日曜の出生格差が著しく大きく,それが顕著化傾向にあった。診療所では平日と土曜の出生格差は比較的小さかった。年始(三が日)の平均出生数比は日曜より低値であった。1990年代中頃まで,閏日と 4 月 1 日(早生まれ)の標準化偏差は,病院が−3.0~−8.3,診療所が−5.5~−13.9と異常に低く,3 月 1 日と 4 月 2 日(遅生まれ)のそれは概ね有意に高かった。その後,日曜の閏日,日曜の 4 月 1 日,および 3 月 1 日と 4 月 2 日に有意な出生変動はほとんどみられなくなった。助産所においても,1980年代まで,あるいは1990年代中頃まで,同様の出生変動が認められた。
    結論 病院と診療所の七曜別出生変動の相違は,診療日の全国的な傾向の相違によって解釈が可能であった。医療施設側の診療体制の他,遅生まれ選好等の母側の要望を考慮した産科的医療介入による出生日調整•出生日操作の可能性が示唆された。1990年代中頃までの閏日と 4 月 1 日の著しい出生変動は,産科的医療介入だけでは説明が難しく,虚偽の届出による出生日操作の可能性も考えられる。1990年代中頃以降の日別出生数の分布は,出生日操作の多くが特定日の産科的医療介入を避けたものであった可能性を示唆した。助産所でも1990年頃まで,医療施設側,母側の社会的要因による出生日操作が行われていた可能性が示唆された。
  • 福嶋 篤, 河合 恒, 光武 誠吾, 大渕 修一, 塩田 琴美, 岡 浩一朗
    2014 年 61 巻 1 号 p. 30-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 介護予防リーダー養成講座(以下,講座)の受講を経て,介護予防活動を実践する自主グループを設立した高齢者を対象にインタビュー調査を行った。本研究では,調査結果を質的に分析し,自主グループ設立に至るまでの対象者の過程およびそれらに関連する要因について明らかにすることを目的とした。
    方法 対象者は東京都 A 市在住の高齢者で,講座を受講した者10人とした。対象者の年齢は62–76歳であった。対象者に自主グループの設立に至る過程について40~90分の半構造化された個別インタビューを行い,回答を質的分析方法である修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。自主グループの設立に関連があると考えられる概念を抽出し,概念をまとめるカテゴリを生成して,それらの関係性を比較検討しながら結果図にまとめた。
    結果 対象者は,自主グループ設立に至るまでに「地域コミュニティへの参加を後押しする気持ち」,「地域コミュニティ参加の契機」,「地域コミュニティにおける課題の認識」,「介護予防の重要性の認識」,「活動意欲の向上」,「自主グループ設立準備での課題の認識」といった気持ちや認識の変化の過程を経ていた。その過程には「過去の経験」,「地域コミュニティでの経験」,「講座での経験」などの経験が関連要因として気持ちや認識の変化へ影響していた。同様に,「地域コミュニティでの支援」,「講座受講での支援」,「自主グループ設立での支援」などの支援や「設立活動を促進・阻害する感情」が関連要因として自主グループ設立に至る気持ちや認識の変化に必要であった。この一連のプロセスは「地域コミュニティ参加に至らせる気持ち・経験がある」,「地域コミュニティ・講座を通して課題の認識が深まる」,「設立準備を通して活動意欲・ノウハウが向上する」の 3 つの中心的概念からなっていた。
    結論 本研究の結果から,高齢者が自主グループの設立に至るまでには,段階的な気持ちや認識の変化やその変化に関連する要因があることが示された。この一連のプロセスは「地域コミュニティへの参加」,「地域課題の認識」,「活動意欲・ノウハウの向上」の 3 つの段階から構成されており,各段階の移行へ関連する要因を考慮して,高齢者の地域コミュニティへの参加促進,講座開催,自主グループ設立準備支援を進めることで,効果的な高齢者の自主グループ設立支援を行うことができると考える。
資料
  • 赤澤 正人, 竹島 正, 立森 久照, 宇田 英典, 野口 正行, 澁谷 いづみ
    2014 年 61 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 保健所における「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」(以下,運営要領)の運用実態を把握し,運営要領の改訂に向けた基礎資料とすることを目的とした。
    方法 全国の保健所495か所を対象に,平成24年に郵送による質問紙調査を実施した。保健所を県型,中核市型,指定都市型の 3 群に分類し,独自に作成した項目の単純集計,または平均値をもとに分析した。
    結果 回収数は308か所(62.2%)であった。保健所の型別の回収数は,県型239か所(63.9%),中核市型48か所(67.6%),指定都市型21か所(42.0%)であった。
      精神保健福祉法と障害者自立支援法の担当課が別であったのは,県型99か所(41.4%),中核市型32か所(66.7%),指定都市型 8 か所(38.1%)であった。担当業務の概ね 4 分の 3 以上が精神保健福祉業務である職員数は,県型においてより少ない傾向がみられた。組織育成のための助言指導は,精神障害者家族会に対する割合が最も高く,県型205か所(85.7%),中核市型42か所(87.6%),指定都市型14か所(66.7%)であった。精神保健のグループワークは,中核市型において半数以上の27か所(56.3%)で実施されていたが,県型では75か所(31.4%),指定都市型で 8 か所(38.1%)であった。県型保健所における市町村への協力および連携の内容では,精神保健福祉相談•訪問指導(83.5%)が最も高く,次いで精神保健福祉の課題や業務の方向性の検討(44.6%),事例検討会(42.0%)であった。また,主たる領域•対象では,対応困難事例(84.8%)が最も高く,次いで社会復帰•地域移行(59.5%),自殺対策(44.2%)であった。
    結論 障害者自立支援法,自殺対策基本法の成立など,近年の法制度の整備とともに,保健所の精神保健福祉業務の実施体制と業務内容に変化が起こっている可能性が示唆された。運営要領改訂に当たっては,この点を考慮する必要があると考えられた。
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