日本公衆衛生雑誌
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59 巻 , 3 号
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原著
  • 鈴木 浩子, 山中 克夫, 藤田 佳男, 平野 康之, 飯島 節
    2012 年 59 巻 3 号 p. 139-150
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 何らかの在宅サービスが必要であるにもかかわらず,介護サービスの利用に至らない高齢者に関して,介護サービスの導入を困難にしている問題を明らかにし,問題の関係性を示すモデルを共分散構造分析にもとづいて作成することにより,有効な対策について検討する。
    方法 高齢者相談業務に従事する本州地域657か所の行政保健師に対し,自記式質問紙による郵送調査にて事例調査を実施した。調査対象事例は,本研究に該当する介護サービスの導入が困難な高齢者で,回答する保健師が,2000年 4 月以降家庭訪問による介入援助を行った,とくに印象に残る 1 事例とした。調査内容は,回答者および所属する自治体の属性,対象事例の基本的属性,対象事例への介入援助の結果,事例調査および文献検討により作成した介護サービスの導入を困難にする問題43項目である。有効回答を得た311通(有効回答率47.3%)を解析対象とした。介護サービスの導入を困難にする問題について,因子分析を行った後,共分散構造分析により関係性の検討を行い,最も適合度の高いモデルを選定した。
    結果 1) 介護サービスの導入を困難にする問題は,項目分析,因子分析の結果,第 1 因子『生活の変化に対する抵抗』,第 2 因子『親族の理解•協力の不足』,第 3 因子『手続き•契約における能力不足』,第 4 因子『インフォーマルサポートの不足』,第 5 因子『受診に対する抵抗』が抽出•命名された。2) 因子分析で得られた 5 因子を潜在変数として共分散構造分析を行った結果,GFI=0.929,AGFI=0.901,CFI=0.950と高い適合度のモデルが得られた。このモデルから,『生活の変化に対する抵抗』,『親族の理解•協力の不足』の問題に,『手続き•契約における能力不足』,『インフォーマルサポートの不足』,『受診に対する抵抗』の問題が重なり,介護サービスの導入が困難となっていることが示された。
    結論 行政保健師を対象とした事例調査により,介護サービスの導入を困難にする問題の関係性が示された。このような高齢者への支援には,個々の問題に応じた介入援助方法の他,手続き能力やサポートが不足し,支援が必要な高齢者を早期に把握,対応する体制を地域レベルで検討することが必要である。
  • 吉田 礼維子, 長谷部 幸子, 白井 英子
    2012 年 59 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,北海道の農村に在住する高齢女性の食生活の満足および生活の満足に影響する食行動の要因を明らかにすることを目的とする。
    方法 北海道の農村地区の 3 町 5 か所のデイサービスに通所している65歳以上の女性156人を対象とした。質問紙による聞き取り調査は,基本属性,健康状態,食行動,食生活の満足度,生活の満足度についてデータ収集した。はじめに,食行動の因子分析を行い,食行動の因子と食生活の満足度および生活の満足度の相関係数を算出した。さらに,「生活の満足度」を従属変数に,年齢,自立度,家族形態,経済状態と食行動の因子得点,食生活の満足度を独立変数としてパス解析を行った。
    結果 156人のデータを分析した結果,食行動の22項目を選択し,【調理や食事の時の不自由さ】,【調理の習慣】,【食事内容の質】,【食材入手の関心】,【食事をする理由】,【一緒に食べる】の 6 因子を抽出した。食生活の満足度と生活の満足度に正の相関がみられた(ρ=0.58, P<0.01)。パス解析の結果,食生活の満足度に直接影響を与えていたのは,食行動の因子の【食事内容の質】(β=0.36, P<0.01),【一緒に食べる】(β=0.19, P<0.05)と「年齢」(β=0.19, P<0.05)であった。【食事内容の質】には,【食材入手の関心】(β=0.23, P<0.05)が影響していた。生活の満足度に影響を与えていたのは【食生活の満足度】(β=0.57, P<0.01)で,決定係数は34%であった。
    結論 高齢女性の生活の満足を高めるためには,食生活の満足度を高めることが必要であることが示唆された。「食事内容の質」を高め,「一緒に食べる」環境づくりをすることが食生活の満足度に影響を与える。高齢女性の食生活に焦点を当てた保健福祉サービスの提供は,生活の質を高めるために重要である。
公衆衛生活動報告
  • 小宇佐 陽子, 清水 由美子, 李 相侖, 西 真理子, 藤原 佳典, 新開 省二
    2012 年 59 巻 3 号 p. 161-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 地域の保健•福祉の向上を目指す取り組みとして,住民ボランティア育成を行った。その経緯と内容について紹介するとともに,今後の課題と活動の方向性を検討した。
    方法 ①平成13年,地域住民への調査を行い,地域課題を抽出した。②平成14年,課題解決の手段として,保健センターや筆者らとともに地域の健康づくりに取り組む住民ボランティア「地域健康づくり支援者」(以下,支援者)を育成した。③同年,①で把握された虚弱高齢者を対象に,行政と支援者の協働による介護予防教室を開催した。④支援者のステップアップを目的に,継続的な研修を実施した。⑤平成18年,支援者が運営主体となり,高齢者の体力づくりと交流を目的とした「地域健康教室」を立ち上げた。⑥支援者に対し,活動の課題や同町が抱える課題に対する考え,などのアンケートを実施した。⑦支援者の育成•支援と並行し,一般住民に対するポピュレーションアプローチ(意識啓発などの集団全体に対する働きかけ)も行った。
    結果 ①の調査から把握された地域課題「既存組織の活性化」,「住民ネットワークの強化」,「地域共生意識の向上」への取り組みとして育成•支援してきた住民ボランティア(支援者)は,現在約40人である。支援者らは,行政との協働である介護予防教室や自主活動である地域健康教室において積極的に活動している。介護予防教室は平成22年度には第13期が修了し,地域健康教室は町内 4 か所にまで増えた。介護予防教室修了後には地域健康教室で健康づくりを継続できる仕組みもできた。さらに,今後の支援者の育成や既存の他組織との連携も視野に入れ,会則の作成,会の組織化を行い,「鳩山町健康づくりサポーターの会」として新たなスタートを切った(平成23年 4 月)。広く一般住民に対するポピュレーションアプローチとしては,健康づくりへの意識啓発を目的としたアンケート調査や町が実施する住民健診の充実,健康に関する講演会,シンポジウムの開催などを展開した。
    結論 地域の保健•福祉の向上には,核となる住民ボランティアの育成と行政や専門職による継続的なサポート,さらに並行してポピュレーションアプローチにより住民全体の意識の向上を行うことが重要である。今後さらに,住民同士のネットワーク化を推進するとともに,住民の社会参加の場の活性化と地域の保健•福祉の向上の関連を検証する必要がある。
研究ノート
  • 林 芙美, 赤松 利恵, 蝦名 玲子, 西村 節子, 奥山 恵, 松岡 幸代, 中村 正和, 坂根 直樹, 足達 淑子, 武見 ゆかり
    2012 年 59 巻 3 号 p. 171-182
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 特定保健指導対象の職域男性における減量成功までの関連条件とその流れ(以下,フロー)を整理することを主な目的とし,質的な検討を行った。
    方法 対象は,埼玉,栃木,大阪,和歌山の 5 つの職域健保組合の41歳から59歳の特定健診後継続支援対象の男性で,6 か月間の特定保健指導後に 4%以上の体重減少があった男性26人であった。2009年10月から12月にかけて30分間のインタビューを行い,その録音と逐語録をもとに,質的データ分析(理論的コード化)を行った。妥当性を高めるために専門家による検討を行った。
    結果 対象者の平均年齢は49.9±5.6歳,6 か月後の平均体重減少割合は6.8±2.5%であった。質的データ分析の結果,取組前は【健康状態や体型に関して,もともと気になっていたが,こんなものだと思っていた】が全対象者に共通して認められたが,初回面接後の手順は「結果や対象となったことへの危機感」などの【自分のこととして危機感を感じた】者(以下,【危機感】)と,「保健指導者のとの約束」など【義務感を抱いた】者の大きく 2 つのフローに分けられた。さらに,【危機感】を感じた者は,【良い変化の実感】の後に【肯定的な認知】を持った者と【否定的な認知】を持った者に分かれた。【否定的な認知】を持った者では支援終了後のリバウンドの可能性が高い傾向が示された。取組みを開始する際の介在条件としては,【本人の性格•価値観】,【家族の支援】,【職場の支援】,【取組に対する態度】の 4 カテゴリーが挙げられた。
    結論 4%以上の減量に成功した職域男性を対象とした個別インタビューの結果から,取組開始時やその過程における対象者の認知が減量成功に大きく関わっている可能性が示唆された。そこで,特定保健指導では,初回面接及び継続支援時に対象者の認知を通じて取組み状況を確認し,行動変容を促し,維持し,リバウンドを防ぐ支援が重要と考えられた。
  • 廣内 智子, 田中 守, 島田 郁子, 吉本 好延, 佐藤 厚
    2012 年 59 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 大規模震災時に期待される大学の対応は,学生と地域住民の生命および身体の安全の確保である。本研究では,地域社会と密接な関係にある公立大学を対象に災害対策の実態を明らかにすることを目的とし,2011年 3 月25日から 5 月10日に,全国公立大学77校にアンケート調査を実施した。
    方法 調査項目は災害発生時に地域の避難場所に指定されているか否か,災害対策マニュアルの有無,防災用具の備蓄状況,飲料水の備蓄状況,災害食の備蓄状況などの計10項目とした。
    結果 地域の避難場所に指定されている大学は51%であった。避難場所に指定されている大学,指定されていない大学それぞれでの対応は,災害対策マニュアルを作成しているが42%•57%,防災用品を備えているが55%•33%,飲料水を備蓄しているが32%•13%,災害食を備蓄しているが26%•7%であった。
    結論 災害発生時における地域の避難場所の指定の有無にかかわらず,公立大学の過半数が災害対策マニュアルを作成しておらず,防災用品や食糧等の支援物資の備蓄もほとんど整備されていない実態が明らかとなった。
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