目的 細胞診と自己採取ヒトパピローマウイルス(HPV)検査を選べる受診再勧奨方法が子宮頸がん検診未受診者の検査応答率と病変発見率に及ぼす効果を明らかにする。
方法 2016~2018年度に江別市の子宮頸がん検診未受診者に対して,子宮頸部細胞診(以下細胞診)あるいは自己採取腟分泌物検体によるHPV検査(以下自己採取HPV検査)を選択できる受診再勧奨を行った。主要評価項目は検査応答率,病変発見率(≥CIN2: cervical intraepithelial neoplasia grade2以上および≥CIN3:CIN3以上),副次評価項目は要精検率,精検受診率である。
結果 未受診者総計6,116人の応答率は15.9%であり,内訳は細胞診6.5%,HPV検査9.4%だった。HPV検査応答者の11.7%がHPV陽性であり,精密検査への選別をする細胞診トリアージの対象となった。病変発見率はHPV検査応答者で≥CIN2:1.7%,≥CIN3:0.9%,細胞診応答者で≥CIN2:1.0%,≥CIN3:0.8%であり,どちらの病変基準にも差がなかった。細胞診トリアージ受診者における病変発見率は≥CIN2:23.8%,≥CIN3:11.9%であった。
結論 本フィジビリティスタディで,自己採取HPV検査+細胞診トリアージ法は,応答率が細胞診単独法よりも高く,かつ効率的に子宮頸部病変を発見できることが示され,未受診者対策として有効と考えられた。自治体の共同で本法の手順を標準化し,有用性を検証することが望まれる。新型コロナウイルス感染蔓延下の子宮頸がん検診受診促進策としても検討に値すると考えられる。
目的 人生の最終段階を可能な限り長く自立して過ごしていくためには,Activities of Daily Living(ADL)のような身体的な自立に加え,高次生活機能(「手段的自立」,「活動」,「参加」)があわせて必要となってくる。そこで,地域住民を対象とした長期追跡研究において,手段的自立,知的能動性,社会的役割と健康状態(総死亡,要介護発生)の関連性を検討した。
方法 鴨川コホート研究の参加者データを用いて,2003年から2013年までに千葉県鴨川市民を対象に,医療サービス利用状況,健康状態,疾病有病率,介護保険サービスの利用状況を調査した。鴨川市民の生活習慣と高次生活機能の違いを死亡状況別,要介護発生状況別に比較した。高次生活機能は,老研式活動能力指標を用いて評価し,各質問への回答,各領域の得点,合計得点を調べた。
結果 40-69歳の成人6,503人がコホート研究に参加し,2013年末までに810人の死亡を把握した。総死亡と高次生活機能との関連をみると,手段的自立得点4または5に対する3点未満のハザード比2.03(95%CI: 1.59-2.60),知的能動性得点4に対する3点未満のハザード比1.39(95%CI: 1.09-1.77),社会的役割得点4に対する3点未満のハザード比1.28(95%CI: 1.03-1.59))であった。性別の層別解析では,手段的自立得点の低さは,男女ともに総死亡発生に対して関連がみられたが,知的能動性,社会的役割については,女性においてのみ総死亡発生との関連がみられた。同じ期間に917人の要介護発生を把握した。同様に高次生活機能との関連をみると,手段的自立,社会的役割についてはハザード比が有意であった(手段的自立1.93(95%CI: 1.55-2.40),社会的役割1.30(95%CI: 1.07-1.58))。男女別では,手段的自立得点の低さは,男女ともに要介護発生に対して関連がみられたが,社会的役割については,女性でのみ関連がみられた。
結論 総死亡,要介護発生に対して,高次生活機能の手段的自立,知的能動性,社会的役割のいずれのドメインにおいても,得点が最も低いカテゴリーは,総死亡,要介護発生に対して有意に関連していた。
目的 介護予防事業推進による財政効果を評価する際の基礎資料を得るために,介護予防・日常生活圏域ニーズ調査で把握可能な要支援・要介護リスク評価尺度点数別の介護サービス給付費の6年間累積額を分析した。
方法 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の一環で,2010年に実施された要介護認定を受けていない高齢者を対象にした質問紙調査の一部をベースラインにした(全国12自治体を対象。回収率:64.7%)。その後,行政が保有する介護保険給付実績情報と突合し,46,616人について2016年11月まで(最長76か月間)に利用した介護サービス給付費を把握した。要支援・要介護リスクについては,性・年齢を含む12項目で構成される要支援・要介護リスク評価尺度・全国版(0-48点)を用いた。ベースライン時の基本属性等を調整した重回帰モデルに加えて,従属変数の分布を考慮したトービットモデルおよび多重代入法による欠損値補完後の重回帰モデルを行った。
結果 追跡期間中に7,348人(15.8%)が新たに介護保険サービス利用に至っていた。要支援・要介護リスク評価尺度点数が高いほど,6年間の要支援・要介護認定者および要介護2以上認定者割合,累積介護サービス給付費が高く,介護サービスの利用期間は長く,いずれも下に凸の曲線状に増えていた。ベースライン時の諸特性を統計的に考慮したうえでも,リスク評価点数が1点高いほど,6年間累積介護サービス給付費は1人あたり3.16(95%信頼区間:2.83-3.50)万円高い傾向にあった。リスク評価点数が低い群(16点以下)では1点あたり0.89(95%信頼区間:0.65-1.13)万円,高い群(17点以上)では1点あたり7.53(95%信頼区間:6.74-8.31)万円高い傾向にあった。推計モデルによる大きな違いは確認されなかった。
結論 ある時点での集団のリスク評価尺度点数からその後6年間の累積介護サービス給付費の算出が可能であることが示された。外出頻度などリスク点数を構成する可変的な要素への介入が保険者単位でみると無視できない財政的なインパクトになりうることが示唆された。
目的 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年経った現在でも,「放射線の影響が子どもや孫など次の世代に遺伝するのではないか」という「次世代影響不安」が根強く残っている。マスメディア報道やインターネットによる情報等が,この不安に影響していると考え,その関連を明らかにして,今後の施策に繋げることを目的とした。
方法 2016年8月に,20~79歳の福島県民2,000人を対象に,無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。福島県の会津地方,中通り地方,浜通り地方,避難地域から500人ずつ無作為抽出し,原発に近い沿岸部の浜通りと避難地域のデータを分析対象とした。目的変数は「次世代影響不安」で,その程度を4件法で尋ねた。説明変数は,放射線について信用する情報源と,利用するメディアを尋ねた。この他に属性,健康状態,放射線の知識等を尋ねた。2つの地域を合わせた全体データで,「次世代影響不安」と質問項目との間で単変量解析を行った。次に「次世代影響不安」を目的変数,単変量解析で有意差があった項目を説明変数として重回帰分析を行った。さらに,このモデルに項目「避難地域」と,「避難地域」と全説明変数との交互作用項を加えて,重回帰分析を行った。
結果 有効回答は浜通り201人(40.2%),避難地域192人(38.4%)であった。重回帰分析の結果,次世代影響について,2つの地域全体では,政府省庁を信用する人,健康状態がよい人,遺伝的影響の質問に正答した人の不安が有意に低かった。また,がんの死亡確率の問題に正答した人は,不安が有意に高かった。さらに浜通りを基準にして交互作用項を投入したモデルでは,浜通り地方で,全国民放テレビを利用する人の不安が有意に高く,遺伝的影響の質問に正答した人の不安は有意に低かった。避難地域を基準にしてこのモデルを分析すると,避難地域は全体と同じ結果であった。
結論 二つの地域で,情報源とメディアが次世代影響に有意に関連していた。報道者が自らセンセーショナリズムに走らないような意識が必要である。受け手は正しい情報を発信している情報源やメディアの選択が必要であり,メディアリテラシー教育の必要性が示唆された。また,健康状態の向上は,不安を下げる方策であることが示唆された。一方がんの死亡確率の知識は,伝え方に誤解を招かないような工夫を要することが示唆された。さらに,遺伝的影響の知識の普及は不安を下げる方策であることが示唆された。