日本公衆衛生雑誌
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61 巻 , 3 号
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原著
  • 佐藤 美樹, 田髙 悦子, 有本 梓
    2014 年 61 巻 3 号 p. 121-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 孤独感に関する研究は,一般成人や高齢者を対象とした研究は比較的多くみられるものの,乳幼児を持つ母親を対象とした研究は,まだ限られている。本研究の目的は,都市部在住の乳幼児を持つ母親の孤独感の実態ならびに関連する要因について,乳幼児の年齢集団別(4 か月,1 歳 6 か月)に個人要因ならびに環境要因から検討を行い,育児支援に関する実践への示唆を得ることである。
    方法 A 市 B 区の乳幼児健康診査に2012年 9 月~11月(計10回)に来所した母親を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。分析は,日本語版 UCLA 孤独感尺度得点を従属変数とし,乳幼児の年齢集団別に基本属性,個人要因(内的作業モデル,育児感情),地域要因(子育てのしやすさ,近所との付き合い方,ソーシャルネットワーク)を独立変数とした重回帰分析を行った。
    結果 回収した251票(回収率58.4%)のうち回答に欠損のあった 3 人を除く248人(有効回答率57.7%)を分析対象とした。なお,4 か月児は125人(55.8%),1 歳 6 か月児は123人(59.7%)であった。その結果,4 か月児を持つ母親の孤独感尺度の平均点は39.2±9.4点,孤独感の高い者は,内的作業モデルタイプがアンビバレント型(β=.354,P<.001)傾向もしくは回避型(β=.331,P<.001)傾向であり,また育児感情の負担感(β=.180,P<.05)の得点が高く,ソーシャルネットワークの家族(β=−.144,P<.05),育児仲間(β=−.255,P<.01)の得点が低かった。また 1 歳 6 か月児を持つ母親の孤独感尺度の平均点は37.5±10.0点,孤独感の高い者は,母の主観的健康感(β=−.191,P<.01)が低く,内的作業モデルタイプがアンビバレント型(β=.297,P<.001)傾向もしくは回避型(β=.190,P<.05)傾向であり,育児感情の負担感(β=.283,P<.001)の得点が高く,ソーシャルネットワークの育児仲間(β=−.213,P<.01)の得点が低かった。
    結論 母親の孤独感を予防•軽減するためには,母親が育児を通じた人間関係を構築することやサポートを受けながら育児を行っていくための力を高める支援とともに,地域の人的ネットワークを含む地域の環境づくりへの支援が重要であると考えられた。
研究ノート
  • 大和 浩, 太田 雅規, 中村 正和
    2014 年 61 巻 3 号 p. 130-135
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 飲食店の全客席の禁煙化が営業収入に与える影響を,全国で営業されている単一ブランドのチェーンレストランの 5 年間の営業収入の分析から明らかにする。
    方法 1970年代より全国で259店舗を展開するファミリーレストランでは,老朽化による改装を行う際に,全客席の禁煙化(喫煙専用室あり),もしくは,喫煙席を壁と自動ドアで隔離する分煙化による受動喫煙対策を行った。2009年 2~12月度に全客席を禁煙化した59店舗と,分煙化した17店舗の営業収入の相対変化を,改装の24~13か月前,12~1 か月前,改装 1~12か月後の各12か月間で比較し,客席での喫煙の可否による影響が存在するかどうかを検討した。改装が行われておらず,従来通り,喫煙区域と禁煙区域の設定のみを行っている82店舗を比較対照とした。解析は Two-way repeated measures ANOVA を行い,多重比較検定は Scheffe 法を用いた。
    結果 全客席を禁煙化した52店舗,喫煙席を壁とドアで隔離する分煙化を行った17店舗,および,未改装の82店舗の 3 群の営業収入の相対変化(2007年 1 月度比)は,12か月単位の 3 時点の推移に有意差が認められた(P<0.0001)。改装によりすべての客席を禁煙とした店舗群の営業収入はその前後で増加したが(P<0.001),喫煙席を残して壁と自動ドアで隔離する分煙化を行った店舗群の営業収入は有意な改善を認めなかった。
    結論 ファミリーレストランでは,客席を全面禁煙とすることにより営業収入が有意に増加するが,分煙化では有意な増加は認めらなかった。
資料
  • 灘岡 陽子, 早田 紀子, 杉下 由行, 梶原 聡子, 渡部 ゆう, 吉田 道彦, 長谷川 道弥, 林 志直, 大地 まさ代, 甲斐 明美, ...
    2014 年 61 巻 3 号 p. 136-144
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    目的 本報告の目的は,東京都における2011年の麻しんの流行状況を把握し,麻しん排除に向けて,今後の対策へ反映させることである。
    方法 感染症発生動向調査事業によって2011年に都内で報告された麻しん患者の発生届と麻しん調査票の内容を対象とした。年齢階級別,遺伝子型別,ワクチン接種歴別の発生状況,発生届の取り下げ状況,遺伝子検査結果別の IgM 抗体検査結果と検体採取日の関係等について分析を行った。
    結果 2011年の麻しん患者報告数は178件で,13週から24週にかけて一つのピークを形成し,この期間に128件(71.9%)の報告が集中していた。1~4 歳が40件(22.5%)で最大で,20歳代と30歳代がそれぞれ34件(19.1%)であった。麻しん患者が 2 人以上発生した施設数は 6 か所,1 事例の患者数は 4 人以下にとどまり,散発例がほとんどであった。1~4 歳の年齢層を除くすべての年齢層で,接種歴が無いか不明が過半数を占めた。PCR 遺伝子検査で検出された麻しんウイルスの遺伝子型は主に D4 型,D9 型で,2008年まで国内流行株の中心だった,いわゆる土着株である D5 型ウイルスはみられなかった。
    結論 2011年の麻しんの流行は,海外から持ち込まれたウイルス株によるものであった。2007年,2008年のような大流行に至らなかったのは,発生後の関係機関の対応が迅速かつ適切になったことと感受性者が減少したことが影響していると思われる。麻しん排除に向けて,引き続き麻しんワクチン接種率の向上に努めること,麻しん疑い患者に確実に遺伝子検査を実施し,的確なサーベイランスを実施することが重要と考えられた。
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