日本公衆衛生雑誌
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62 巻 , 7 号
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原著
  • 高橋 由光, 瓜生原 葉子, 井上 真智子, 岡本 茂, 柏原 英則, 鬼頭 久美子, 篠原 圭子, 萬代 真理恵, 森岡 美帆, 田中 司 ...
    2015 年 62 巻 7 号 p. 325-337
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的 マイナンバー制度が2013年に成立し,医療等分野における番号制度(医療等 ID)が検討されている。しかし,医師が抱いている医療等 ID 導入への問題意識は明らかになっていない。医療等 ID 導入に対する医師の賛否および特徴を明らかにすること,医師が医療等 ID 導入に対して抱いているメリット・デメリットを明らかにすることを目的とした。
    方法 医師を対象としたインターネット調査による横断研究である。有意抽出サンプルである調査パネル医師会員より 4 群(病院勤務45歳未満,病院勤務45歳以上,診療所勤務45歳未満,診療所勤務45歳以上)で層別サンプリングを行った。主要評価項目は,医療等 ID 導入賛否であり,医療等 ID のメリット・デメリットに対する回答を自由記述で収集した。4 群別に医療等 ID 導入賛否の割合を算出し,多重ロジスティック回帰分析にて医療等 ID 導入賛否に関連する要因を検討した。メリット・デメリットの回答に対して質的内容分析を行った。
    結果 回答者は562人(回答率68%)。医療等 ID を「必要だと思わない」人は,各群16/143人(11%),25/138人(18%),31/132人(23%),43/149人(29%)であった。「必要だと思わない」人に有意に関連した項目は,年齢(5 歳ごと)(オッズ比[95%信頼区間]:1.14 [1.01-1.29]),勤務医療機関(診療所勤務)(1.99 [1.30-3.08])であった。メリットとして,情報の一元化により医療機関業務の軽減および医療機関の連携による不適切な受診行動の抑制が行われ,医療費の削減,個々の患者のための医療の実現が行われることが挙げられていた。デメリットとして,情報の連携およびビッグデータ時代に対応することで,情報漏えい対策・情報管理作業の増加,連携情報に拘束される医師,連携情報の不適切な利用が挙げられ,医療サービスの悪化にもつながりかねない。連携すべきでない情報もあり,プライバシーに関する倫理的配慮が不可欠である。
    結論 医療等 ID を不必要と考える医師は 1-3 割であり,年長者,診療所勤務という特徴があった。医療費の削減,個々の患者のための医療の実現につながるメリットがある半面,情報漏えい対策,医師が連携情報に拘束される危険性,連携情報の不適切な利用等のデメリットもある。情報を保護しながら利活用するためには,倫理的配慮が不可欠である。医療等 ID 導入には,医師の特徴・意識を考慮しつつ,情報の利活用目的に応じた利活用可能な情報の種類とその提供対象に関する社会的合意形成が求められる。
公衆衛生活動報告
  • 阿部 朱美, 眞崎 直子, 福泉 麻衣子, 橋本 修二
    2015 年 62 巻 7 号 p. 338-346
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的 「住民の健康づくりチェック表」を作成して,地域住民の健康づくりを推進する一助とした。
    方法 最初に,健康日本21(第 2 次)等を参考に健康づくりチェック表の項目を検討した。次に,第 2 次廿日市市健康増進計画にかかる調査票にチェック表の項目を含み,2012年 8 月に質問紙調査を行った。対象は20歳以上の市民で,年齢階級別かつ地区別の層化抽出法で無作為抽出した。結果を本研究に活用する旨を記載した無記名式の調査票を郵送し,返信用封筒で回収した。データを性別年齢階級別に比較し,チェック表の特徴等を検討した。
    結果 チェック表は23項目で,得点を設定したチェック表を作成した(総計33問)。項目は,健診,がん検診,歯科検診,血圧,HbA1c 又は血糖値,脂質異常,BMI,歯の本数,朝食,野菜類,果物,塩分,栄養バランス,運動,喫煙,飲酒,睡眠,ストレス,こころの状態に関する 6 項目の質問,外出,地域活動,健康づくりを目的とした活動,地域のつながりで,健康管理[3 項目],身体的健康度[5 項目],食生活と運動習慣[6 項目],嗜好品[2 項目],心の健康度[3 項目],社会的活動[4 項目]の 6 つに分類した。調査票配付数は4,002件で,有効回収数は1,719件(回収率;43.0%)であった。分類ごとの平均得点±標準偏差は,健康管理1.69±0.98 (N=1,343),身体的健康度6.52±1.51 (N=1,444),食生活と運動習慣12.97±4.36 (N=1,511),嗜好品2.29±0.94 (N=1,518)であり女性が高く,心の健康度5.81±1.80 (N=1,469)は男性が高かった(P<0.05; Mann-Whitney 検定)。年齢階級別にみると,健康管理は40~50歳代が高く,身体的健康度は70歳以上から20歳代へ段階的に高く,食生活と運動習慣は20歳代から70歳以上へ段階的に高く,嗜好品は20歳代が高く,心の健康度は20~30歳代が低く40歳代から70歳以上へ段階的に高く,社会的活動1.93±0.87 (N=1,539)は40歳代以降で高い傾向が示された(P<0.05;Kruskal-Wallis 検定)。
    結論 住民の健康づくりを可視化するチェック表を作成し,多面的に点数化を試みたところ,個人が生活習慣を振り返ることができ,集団や地域の健康づくりへの傾向を把握できることが示唆された。
研究ノート
  • 福田 吉治, 林 辰美
    2015 年 62 巻 7 号 p. 347-356
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的 健康づくりに関するメッセージ(健康メッセージ)の受け止めやその反応は,個人の特性により異なると考えられる。本研究は,一般住民がどのような健康メッセージに効果があると認識しているかを明らかにし,基本的属性や社会経済的要因による認識の違いの有無を明らかにすることを目的とする。
    方法 山口県(山口市および岩国市)に在住する30~59歳の1,200人を無作為に抽出し,構造化質問紙を用いた郵送調査を行った。質問は,個人特性(性別,年齢,婚姻状況,学齢,世帯収入等),健康メッセージの効果の認識などにより構成した。健康づくりのテーマは,禁煙勧奨,がん検診勧奨,減量勧奨とし,それぞれに複数のメッセージを示し,もっとも効果があると思うものを選択してもらった。個人特性とメッセージの選択の関係を分析した。
    結果 445人より回答があった(回答率37.1%)。総じて,「健康影響」を示すメッセージに効果があると回答したものがもっとも多かった。性別や年齢に加えて,婚姻状況,学歴,収入はメッセージの効果の認識と有意な関係が認められた。禁煙勧奨での「受動喫煙」は高学歴,節酒勧奨での「依存症」は低収入,がん検診勧奨での「家族のため」と「自己負担」はそれぞれ低学歴と低収入と有意な関係があった。
    結論 勧奨する行動によって違いは認められるが,性別,年齢,婚姻状況,学歴,収入が健康メッセージの効果の認識と関連していた。このことから,健康メッセージの提供にあたり,社会経済的要因を含む個人特性を考慮することの必要性が示唆された。
  • 小池 高史, 長谷部 雅美, 野中 久美子, 鈴木 宏幸, 深谷 太郎, 小林 江里香, 小川 将, 村山 幸子, 藤原 佳典
    2015 年 62 巻 7 号 p. 357-365
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    目的 自治体による身元不明の認知症高齢者の増加を抑制する事業の利用を広めていくために,大田区で展開される高齢者見守りキーホルダーの利用の特徴を明らかにする。また,普及を担当する地域包括支援センターの方針や戦略と利用の特徴との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 2013年 7 月,東京都大田区 A 地区において,住民基本台帳上65歳以上の高齢者のうち,自力回答が難しいと思われる人を除いた7,608人を対象に質問紙を郵送し,5,166人(回収率67.9%)から回収した。このうち,分析に用いた変数に欠損のなかった4,475人を分析対象とした。見守りキーホルダーの利用の有無を従属変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った。独立変数には,性別,年齢(前期高齢者/後期高齢者),同居者の有無,社会的孤立状況(孤立/非孤立),IADL(自立/非自立),もの忘れ愁訴の有無を投入した。また,2014年 8 月に大田区内 6 か所の地域包括支援センターにて12人の職員を対象にインタビュー調査を実施した。
    結果 ロジスティック回帰分析の結果,女性は男性よりも1.64倍,後期高齢者は前期高齢者よりも4.39倍,独居者は同居者のいる人よりも2.14倍,非孤立者は孤立者よりも1.36倍,IADL 非自立の人は自立の人よりも1.50倍,もの忘れ愁訴のある人は無い人よりも1.37倍見守りキーホルダーを利用していた。地域包括支援センターへのインタビューの結果,見守りキーホルダーの主な普及の対象としては,独居高齢者,心配を持っている人,若くて元気な人などがあげられた。地域包括支援センターのなかでも,独居高齢者と若い層を普及の主な対象と考えているセンターがあったが,実際には独居高齢者は多く利用し,前期高齢者の利用は少なかった。登録している人が多いと考えられていたのは,不安感の高い人,若くて自立度が高い人などであった。実際の登録までの経路としては,人づてや,町会などで登録するケースがあげられた。
    結論 見守りキーホルダーは,女性,後期高齢者,独居者,非孤立者,IADL 非自立の人,もの忘れ愁訴のある人により利用されていた。地域包括支援センターの多くが例示した友人や地域団体を経由しての登録の仕方と,孤立している人の利用率の低さの関連が示唆された。若くて IADL の高い人や社会的に孤立した人の利用を広めていくことが今後の課題である。
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