目的 高齢者の中には運動行動に関心が低くても,健康の保持・増進に必要な歩行時間(1日30分以上)を満たしている者が存在する。しかし,そのような集団の特性は明らかになっていない。そこで,本研究では,運動行動の変容ステージ別に,1日30分以上の歩行を行っている高齢者の特性を明らかにすることとした。
方法 本研究は2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES)が行った自記式郵送法調査を用いた横断研究である。対象者は24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者45,939人とした。調査項目は1日の歩行時間,運動行動(1回20分以上で週1回以上)の変容ステージ,身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目,心理・認知・情緒的要因3項目,行動要因8項目,社会文化的要因40項目,環境要因3項目)とした。分析は変容ステージで3群に層別し(①前熟考期,②熟考期・準備期,③実行期・維持期),目的変数を1日30分以上の歩行の有無,説明変数を身体活動の関連要因,調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目としたポアソン回帰分析とした。
結果 調査への回答者24,146人(回収率52.6%)のうち,分析に必要な項目に欠損がある者,介護・介助が必要な者を除いた18,464人を分析対象とした。前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみ,1日30分以上の歩行ありと有意な関連が認められた要因は,人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり,負の関連では年齢80歳以上,および手段的日常生活動作非自立),行動要因2項目(外出頻度週1回以上,テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり),社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり,友人と会う頻度が週1回以上,町内会参加,互酬性高い,趣味が読書,負の関連では趣味が囲碁)であった。
結論 高齢者において,前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみで1日30分以上の歩行と関連が認められたのは,人口統計・生物学的要因,行動要因,社会文化的要因の中の11項目であった。変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには,身体活動を前面に出さず,人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された。
目的 人とのつきあいのわずらわしさなど対人関係上のストレスから対人関係や社会的場面を避け,たとえ危機に陥っても他者に援助を求めない傾向が若者を中心に見られている。他者に援助を求める行動には,子ども期に両親に援助を求めた経験が関係することが報告されている。しかし,家族への援助の要請が難しい場合でも,近隣住民との関係の中で,他者に援助を要請するようになることも考えられる。そこで本研究では,子ども期の両親への援助要請の経験と成人期の対人関係の忌避傾向の関連における地域交流の経験による効果の修飾の有無を検討した。
方法 名古屋市の18~39歳を対象にした調査より,1,274人のデータを分析した。修正ポアソン回帰分析を用いて,子どもの時に父親・母親に対して援助を要請した経験,小・中学校の時の地域行事に参加した経験,およびこれらの交互作用項による対人関係の忌避の割合の比を男女別に算出した。年齢・両親の最終学歴・子どもの時の母親の就労状況および主観的経済状況,もう片方の親への援助要請経験を調整した。また,援助を要請した経験,地域行事に参加した経験それぞれの有無別に対人関係の忌避の状態にある者の割合の予測値を算出し,効果の修飾の有無を評価した。
結果 父親への援助要請経験と地域行事への参加経験の交互作用項を入れた多変量解析および算出された予測値からは,地域行事への参加経験による効果の修飾は男女とも観察されなかった。母親への援助要請経験に関しては,男性で,地域行事への参加経験による効果の修飾が観察され,母親への援助要請経験があり,かつ地域行事への参加経験があった場合は,なかった場合の予測値よりも低い傾向があった。女性では,地域行事への参加経験による効果の修飾は観察されなかった。
結論 対人関係の忌避を抑制する上で,とくに男性では,子ども期の母親への援助要請経験があった場合に,地域行事への参加経験があることの重要性が示唆された。親からの適切な援助を得ることに加えて子どもの地域交流を促すことで,将来の社会生活で困難に陥るリスクを緩和できる可能性がある。
目的 新型コロナウイルス感染症流行により2020年4月~5月の1回目緊急事態宣言は,ロックダウンに近い内容であった。本研究では,緊急事態宣言中および緊急事態宣言解除後(以下,活動再開後とする)の第2層生活支援コーディネーターの住民支援活動の状況について調査を通じて把握し,さらに行政や所属先からの業務に対する指示の有無は緊急事態宣言中や活動再開後の生活支援コーディネーターの活動にどのように影響をしたのかを明らかにすることを目的とした。
方法 東京都特別区内の第2層生活支援コーディネーター279人に2020年10月に自記式質問紙を配布,181件回収した。調査項目は基本属性,緊急事態宣言前後の感染拡大前と活動再開後,緊急事態宣言中のコーディネーターの活動内容とその頻度を尋ね,加えて緊急事態宣言中と活動再開後の行政や所属先から指示の有無も尋ね,自由記載にてその内容を確認した。解析は感染拡大前と活動再開後の活動頻度との比較と行政や所属先からの指示の有無で緊急事態宣言中と活動再開時の活動頻度を比較した。
活動内容 感染拡大前と活動再開後の比較では【社会資源の把握と関係者への情報提供】に含まれる担当地区の地域診断表の作成・改訂,情報誌やリーフレットなどの作成や配布等は活動再開後に頻度が高くなっていたが,多世代の担い手養成やサービス開発,地域関係者のネットワーク化等は前後で変化はみられなかった。緊急事態宣言中に活動頻度が高かったのは所属機関業務であり,地域住民への訪問や声掛けは3.4%だった。緊急事態宣言中に行政や所属先から91.1%指示があり,指示がある方が全般的に活動頻度が高まっていた。活動再開後の指示は76.5%だったが,指示がある方が個別面談や訪問による住民のニーズ把握,サービスとのマッチングおよび活動団体の再開支援等の活動頻度が高まっていた。
結論 活動再開後には社会資源の把握と関係者への情報提供が優先的に行われていた。緊急事態宣言中は地域住民への訪問,声掛けはほぼ実施されていなかった。緊急事態宣言中,活動再開後は指示がある方が活動の頻度が高くなり,とくに活動再開後は指示がある方が,住民に働きかける活動頻度が高くなっていた。新たな感染症の急拡大時は現場に混乱が生じる可能性が高く,具体的な指示があることは生活支援コーディネーターの活動内容に影響することが示唆された。
目的 急速に発展しているインターネット(以下,ネット)等の普及に伴い,ネットの過剰利用や利用年齢の若年化が問題視されている。中学生・高校生(以下,中高生)のネット等の長時間のメディア利用と朝食欠食,運動不足,睡眠時間の減少,精神的健康度の低下の関連が報告され,中高生の健康悪化が懸念される。そこで,本研究では中高生におけるメディアの利用と主観的健康感の関連について明らかにすることを目的とした。
方法 2016年5月に実施した「福島市民の健康と生活習慣調査」のデータを分析した。対象者は福島市内の全中学校・高校に在籍する生徒から1,633人を無作為抽出した上で,自記式質問紙調査を実施,留め置き回収とした。最終的に1,480人(中学生583人,高校生897人)を解析の対象とした。解析は中学生・高校生別に行い,主観的健康感を従属変数,メディア利用時間を独立変数,各種生活習慣等を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比(OR)とその95%信頼区間(95%CI)を算出した。
結果 主観的健康感が不良の者は,中学生では52人(8.9%),高校生では123人(13.7%)であった。中高生において,3時間以上のメディア利用をするものは主観的健康感が不良となる割合が高く,高校生では有意な関連を認めた(OR : 2.30,95%CI : 1.36-3.90)。また,中高生共に「肥満」,「運動習慣(なし)」,「ストレス(あり)」と主観的健康感不良の間に有意な関連が示された。さらに,高校生では「就寝時間(遅い)」と主観的健康感不良の関連も認めた。
結論 中高生においてメディア利用時間が長い者は,主観的健康感が不良となりやすい可能性が示唆される。
目的 新型コロナウイルス感染症の流行ががん患者の受療状況に与えた影響とその理由の評価。
方法 2021年12月10-13日にインターネットによるアンケート調査を実施した。対象は40-79歳の男女とし,予備調査と本調査の二段階で調査を行った。調査会社が保有するパネルメンバーのうちがん疾患ありと登録されている5,000人に予備調査を行い,現在治療中または経過観察中のがん患者に本調査への参加を依頼した。本調査の項目は,通院や治療日程の変更の有無,変更内容,変更理由,病院にかかることに対する抵抗感,今後の希望通院方法・頻度の5項目とした。2020年4月から2021年12月までの状況を対象とした。
結果 1,920人から回答を得た。新型コロナウイルス流行の影響で通院や治療日程が変更となったのは13.8%であった。変更になったものは主に通院日や方法(144人),治療の日程(87人),診断から治療開始まで時間がかかった(44人)などであり,日程変更があった治療内容は手術またはカテーテル治療(55人),点滴の抗がん剤治療(28人),放射線治療(22人)などであった。変更の理由は,感染の機会を減らすために医療機関から変更を提案された(49.6%),医療機関がコロナ対応に専念するため(27.3%),自分の感染が心配だったので自分から変更を申し出た(17.0%)などであった。変更の有無については診断時期による影響が大きく,2020年4月以降にがんと診断された人では19.9%だが,それ以前に診断された人では11.9%であった。居住地によって変更割合に差はなかった。
結論 新型コロナウイルス感染症流行ががん患者の受療状況に影響を与えていたことが示唆された。今後も引き続き長期的な影響について調査を継続する必要がある。