日本公衆衛生雑誌
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65 巻 , 2 号
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原著
  • 安齋 紗保理, 佐藤 美由紀, 池田 晋平, 柴 喜崇, 吉田 裕人, 芳賀 博, 植木 章三
    2018 年 65 巻 2 号 p. 61-71
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    目的 筋骨格系の痛みは生活機能の低下や要介護の原因となっている.日本では高齢者の痛みへの対策として運動指導によるプログラムが実施されてきた.また,高齢者は運動以外にも様々な取り組みを痛みへの対処として行っているが,痛みの対処に関する研究は日本では緒についたばかりで,地域在住高齢者が実施している痛みへの対処方法は整理されていない。そこで本研究では,地域在住高齢者における筋骨格系の痛みに対する対処方法の実態および痛みの状況との関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 地域在住高齢者2,281人を対象に郵送アンケート調査を実施し,1,835人より回答を得た。調査項目は,基本属性,痛みに関する項目(対処方法,部位など)であった。痛みへの対処方法はインタビュー調査および先行文献から項目の収集を行い16つの項目を使用し調査した。痛みへの対処方法を因子分析によりタイプに分類した後,タイプごとに得点を算出し(得点が高いほど対処を実施していることを示す),痛みの状況(部位,継続期間)との関連を一元配置分散分析によって分析した。

    結果 因子分析の結果,痛みへの対処方法は「病院での治療」,「日常での積極的対応」,「日常行動の制限」,「自己療法」,「安静休息」の5つに分類された。痛みの状況別にそれぞれのタイプの得点を比較した結果,痛みの部位では「病院での治療」,「日常行動の制限」で有意差がみられ,腰や膝の単独の痛みよりも痛みの重複(腰・膝)において得点が高かった。また,継続期間では「病院での治療」,「日常行動の制限」,「自己療法」において有意差がみられ,半年未満よりも5年以上で得点が高かった。

    結論 地域在住高齢者は「病院での治療」,「日常での積極的対応」,「日常行動の制限」,「自己療法」,「安静休息」の5つのタイプの痛みへの対処方法を実施しており,「病院での治療」や「日常行動の制限」は痛みの重複や痛みの継続がある場合に実施される対処方法であることがわかった。今後,地域在住高齢者の痛みへの対策として痛みへの対処方法を活用するためには,これらのタイプが心身機能に及ぼす影響を明らかにする必要がある。

  • 中村 好一, 松原 優里, 笹原 鉄平, 古城 隆雄, 阿江 竜介, 青山 泰子, 牧野 伸子, 小池 創一, 石川 鎮清
    2018 年 65 巻 2 号 p. 72-82
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    目的 地方紙における遺族の自己申告型死亡記事の記載事項を集計し,その地域での死亡やそれに伴う儀式の実態を明らかにするとともに,死亡記事のデータベースとしての利点と問題点を明らかにする。

    方法 栃木の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄に掲載された2011~2015年の栃木県内の死亡者全員のデータを集計解析し,一部の結果は人口動態統計と比較した。観察項目は掲載年月日,市町村,住所の表示(市町村名のみ,町名・字まで,番地まで含めた詳細な住所),氏名,性別,死亡年月日,死因,死亡時年齢,通夜・告別式などの名称,通夜などの年月日,告別式などの年月日,喪主と喪主の死亡者との続柄の情報である。

    結果 観察期間中の掲載死亡者数は69,793人で,同時期の人口動態統計による死亡者数の67.6%であった。人口動態統計と比較した掲載割合は男女で差がなく,小児期には掲載割合が低く,10歳代で高く,20歳台で低下し,以降は年齢とともに上昇していた。市町別の掲載割合は宇都宮市や小山市など都市化が進んだ地域では低く,県東部や北部で高い市町がみられた。最も掲載割合が高かったのは茂木町(88.0%),低かったのは野木町(38.0%)であった。死亡日から通夜や告別式などの日数から,東京などで起こっている火葬場の供給不足に起因する火葬待ち現象は起こっていないことが判明した。六曜の友引の日の告別式はほとんどなく,今後,高齢者の増加に伴う死者の増加によって火葬場の供給不足が起こった場合には,告別式と火葬を切り離して友引に火葬を行うことも解決策の1つと考えられた。死亡者の子供,死亡者の両親,死亡者の子供の配偶者が喪主の場合には,喪主は男の方が多いことが判明した。老衰,自殺,他殺の解析から,掲載された死因の妥当性は低いことが示された。

    結論 栃木県の地方紙である下野新聞の自己申告型死亡記事「おくやみ」欄の5年分の観察を行い,実態を明らかにした。約3分の2に死亡が掲載されており,データベースとしての使用に一定の価値があると考えられたが,記載された死因の妥当性は低いことが判明した。

公衆衛生活動報告
  • 松本 加代, 漁 亜沙美, 糸井 陽一, 佐久間 陽子, 平山 千富, 北村 淳子
    2018 年 65 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    目的 2012年から2013年にかけて成人を中心に風しんの大規模な流行がみられた。患者は,20代から40代の男性が多く,女性では20代の割合が高くなっており,妊婦または妊婦の周囲の感染が懸念され,先天性風しん症候群(CRS)の発生が危惧された。墨田区では,CRS対策として,成人へ風しんの予防接種事業と抗体検査事業を行った。本報告は,予防接種事業についての接種者状況および抗体検査の評価と,事業周知活動の振り返りを行う。

    方法 2013年4月から2014年3月までの期間は,予防接種事業の接種者状況を医療機関で接種をした対象者の予防接種記録票から算出した。2014年4月から2016年3月までの期間は,抗体検査および予防接種状況を抗体検査受診票および予防接種記録票から算出した。予防接種事業の事業周知活動は,2013年4月から2016年3月までの期間中の情報提供の内容を検討する。

    活動成果 2013年度予防接種事業におけるワクチン接種者は合計4,302人で男性1,141人(26.5%),女性3,161人(73.5%)であった。2014年度抗体検査および予防接種事業で抗体検査を受けた人数は1,160人で,抗体検査を受けた結果,風しんワクチンの予防接種が必要と判断された低抗体価の人数は,364人(31.4%)であった。2015年度抗体検査および予防接種事業で,抗体検査を受けた人数は1,058人で,抗体検査を受けた結果,風しんワクチンの予防接種が必要と判断された低抗体価の人数は374人(35.6%)であった。2014年度および2015年度に予防接種を受けた人数はそれぞれ602人,607人であった。また,区ホームページ,事業ポスター,チラシ,保育園サーベイランスを通じて,あるいは婚姻届出時や母子手帳交付時に予防接種および抗体検査事業の事業周知活動を行った。

    結論 CRS防止対策として風しんの流行中,そして流行後も予防接種を行い,多くの成人が接種の機会を得ることができた。抗体検査を受けた結果による風しんワクチンの予防接種が必要と判断された低抗体価者の割合は,男女ともに約3割であることが明らかになった。CRSの予防には地域全体で風しん抗体の保有率を上げる必要があり,成人の風しん予防接種の啓発が重要である。

資料
  • 月野木 ルミ, 村上 義孝
    2018 年 65 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/03
    ジャーナル フリー

    目的 平成22年国民生活基礎調査の匿名データに基づき高血圧通院患者が抱える自覚症状の実態調査を行った。

    方法 統計法第36条に基づき申請・入手した平成22年国民生活基礎調査匿名データBを利用した。対象者は20歳以上の10,218人とした(施設入所・入院者,悪性新生物および精神障害通院者除く)。自覚症状と高血圧通院との関連の検討にはロジスティック回帰を用い,結果変数として高血圧通院有無,要因として高血圧に関連すると考えられる主な自覚症状(頭痛,耳鳴り,動悸,肩こり,足の浮腫とだるさ)を投入し,年齢,喫煙状況,日常生活動作障害有無を調整して男女別に検討した後,さらに男女を統合して男女別を調整変数に加えたモデルでも解析を行った。

    結果 高血圧通院者数は男性640人,女性740人であった。高血圧通院と自覚症状との関連を,男女を統合してみると,頭痛は1.25(95%信頼区間[CI]: 0.92-1.69,P=0.153),動悸は1.35(95%CI : 0.96-1.92, P=0.088)とオッズ比の上昇傾向を認めた。肩こりは1.55(95%CI : 1.29-1.88, P<0.001),足の浮腫やだるさは1.39(95%CI : 1.04-1.85, P=0.024)と有意なオッズ比の上昇を示した。

    結論 高血圧通院者では,頭痛,動悸,肩こり,足の浮腫とだるさの訴えが認められた。各症状は高血圧に関連する症状と考えられるが,加齢や併存疾患など複合的な要因で生じている可能性にも留意して長期的かつ包括的な高血圧治療管理を行っていく必要がある。

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