日本公衆衛生雑誌
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52 巻 , 7 号
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原著
  • 名倉 育子
    2005 年 52 巻 7 号 p. 607-617
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 都市住民の15年間の健康診査の結果をもとに,BMI の変化と血圧の変化との関連についての実態を明らかにすることである。
    方法 対象者は,大阪府 A 市における1984年度から1998年度までの各年の基本健康診査受診者のうち,受診時点において40歳から69歳であった男4,760人,女9,318人,総数14,078人である。分析時点における降圧剤服用の高血圧治療中の者は除外した。1984年度から1998年度までの15年間を各 5 年間ごとに前期,中期,後期に 3 区分し,各期間における各人の初回の健診データを用い,Body Mass Index(以下 BMI)区分別に最大血圧および最小血圧の平均値を分析した。正常血圧者における BMI 区分別の10年後の高血圧者の年次別割合を分析した。血圧区分は,最大血圧140 mmHg 以上,あるいは最小血圧90 mmHg 以上を高血圧,それ以外を正常血圧とした。前期各年度の受診者の10年後の受診結果から BMI の変化量区分別に血圧の平均変化量を算出した。
    成績 (1)15年間を 3 期間に区分した年齢区分別の BMI の高値群の最大血圧および最小血圧の平均値は,男性の一部の期間の年齢区分を除き,男女とも中値群,低値群の平均値に比して有意に高値であった。
     (2)最大血圧および最小血圧に対する BMI の線型回帰係数は,男女とも全ての年齢区分において正の値を示し,女性の一部の年齢区分を除き,有意差が認められた。
     (3)観察した受診時点の BMI 区分別にみた10年後の高血圧の発症割合は,その経年的推移から男女とも BMI の高値群では低値群に比べ高い傾向を示し,女性では有意差が認められた。
     (4)観察受診時点の非肥満群および肥満群において,男女とも10年後の BMI の減少群および不変群の最大血圧および最小血圧の平均変化量は,増加群に比べ低値の傾向を示した。一部の受診年度においては 3 群間に有意差が認められた。
    結論 都市住民の15年間の健診結果を用いた分析結果から,異なる 3 時期においても BMI の高値群の平均血圧値は他群に比べ高値であり,10年後の高血圧発症割合は高値の傾向を示した。10年間の BMI の変化量の経年的推移の分析結果から,BMI の低下は血圧に対して良好な影響を示すことが明らかになった。
  • 菅原 民枝, 大日 康史, 近藤 正英, 本田 靖, 大久保 一郎
    2005 年 52 巻 7 号 p. 618-626
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    緒言 医療費の高騰は社会的に大きな課題であり,患者の受療行動に影響を及ぼす要因を把握し,それに基づいた予測を行うことは医療費の適正化にとって意義のあることである。そのため,本研究は,風邪症候群を有した人がその対処行動として,病院や診療所等の医療サービスを選ぶのか,大衆薬を選ぶのか,何もしないのかについて,その選択に影響を及ぼす要因を把握し,その選択のモデルを作成し予測を行った。
    研究方法 ある健康保険組合の組合員本人から無作為抽出法により12,000人を対象として,仮想的質問法による質問調査を郵送法にて行った。分析方法は,風邪症候群の対処行動の選択を目的変数とした multinomial probit model による推定を行った。
    研究結果 回答者は3,139人で回収率は26.2%であった。対処行動の選択の推定結果は,性別,年齢,家族人数,収入には有意な関連を示さず,かかりつけ医をもつかどうかと大衆薬常備数が選択確率に有意な関連を示した。かかりつけ医を持ち,大衆薬常備数が0個の場合,医療サービスを選択する確率は0.46,大衆薬を選択する確率は0.32,何もしない確率は0.22となった。常備薬数が増えるほど医療サービスの選択確率は減少し,大衆薬の選択確率が上昇した。常備薬数が 3 個以上では大衆薬の選択確率が医療サービス選択確率より高くなった。
    結論 大衆薬の需要が増加すると,医療サービスの需要は減少することが予測された。常備薬数 3 個で医療サービスの選択確率が大衆薬の選択確率より低くなった。このことより医療費の適正化対策として,保険者が慢性疾患を有さない被保険者に補助金の給付等により大衆薬の購入を促すことが考えられる。
  • 新開 省二, 藤田 幸司, 藤原 佳典, 熊谷 修, 天野 秀紀, 吉田 裕人, 竇 貴旺
    2005 年 52 巻 7 号 p. 627-638
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 地域高齢者におけるタイプ別閉じこもりの予後と,それぞれの閉じこもりが予後に及ぼす独立した影響を明らかにする。
    方法 新潟県与板町の65歳以上の地域高齢者1,673人を対象とした初回調査(2000年11月実施)に応答した1,544人(応答率92.2%)を 2 年間追跡し(追跡調査は2002年10月実施),初回調査の総合的移動能力とふだんの外出頻度から定義したタイプ 1(総合的移動能力がレベル 3 以下かつ外出頻度が週 1 回程度以下)およびタイプ 2(同レベルが 1 または 2 かつ外出頻度が週 1 回程度以下)の閉じこもりの予後を,それぞれの対照群(総合的移動能力が同レベルであるが,外出頻度が 2,3 日に 1 回程度以上である非閉じこもり)との間で比較した。予後指標は,追跡期間中の死亡,追跡調査時の入院・入所および活動能力水準(歩行能力,手段的 ADL,基本的 ADL,認知機能),あるいは活動能力障害の新規発生とした。閉じこもりの独立した影響は,重回帰分析あるいは多重ロジスティックモデルを用いて,交絡要因(性,年齢,慢性疾患,初回調査時の活動能力水準や心理・社会的変数)を調整して検討した。
    成績 初回調査に応答し,閉じこもりの有無とタイプが判定できた1,520人の内訳は,レベル 1,2 非閉じこもり1,322人(87.0%),タイプ 2 閉じこもり81人(5.3%),レベル 3 以下非閉じこもり39人(2.6%),タイプ 1 閉じこもり78人(5.1%)であった。タイプ 2 は対照群に比べ,2 年後の活動能力が低下しやすく,交絡要因を調整しても活動能力低下の独立したリスク要因であった。2 年後活動能力障害が新規に発生するタイプ 2 の相対危険度(オッズ比とその95%信頼区間)は,一部の交絡要因を調整したモデルでは,歩行障害3.20(1.60-6.38),手段的 ADL 障害2.85(1.20-6.82),基本的 ADL 障害1.52(0.61-3.75),認知機能障害3.05(1.06-8.78)であり,すべての交絡要因を調整したモデルではそれぞれ2.49(1.20-5.17),2.25(0.90-5.63),1.46(0.54-3.94),2.41(0.71-8.17)であった。一方,タイプ 1 は対照群に比べ,追跡期間中の死亡率は高かった(33.3% vs. 5.1%)が,入院・入所の割合は低く(9.0% vs. 25.6%),それらの合計に対してはタイプ 1 の独立した影響は認められなかった(調整済オッズ比は2.05[0.54-7.75])。
    結論 タイプ 2 閉じこもりは移動能力が高い高齢者における活動能力低下の独立したリスク要因であるが,タイプ 1 閉じこもりは移動能力が低い高齢者の予後を左右する独立したリスク要因とはいいがたい。
資料
  • 本田 文子, 梅内 拓生, 三浦 宏子, 濱田 彰, 坂野 晶司
    2005 年 52 巻 7 号 p. 639-651
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
     本研究は,フィリピンの都市部および農村部において家庭が負担する疾病あたりの財政費用を調べ,地域間および所得層間で比較検討することを目的としている。フィリピン,ダバオ市の都市部240世帯,農村部239世帯を対象に質問票による家庭訪問調査を行った結果,外来受診においては,民間医療機関での疾病あたり財政費用が,公立医療機関に比べ有意に高かった(P<0.0001)。また,都市部および農村部の両地域において,公立医療機関を選択する割合は非貧困層に比べ,貧困層が有意に高い傾向が認められ,貧困層は疾病あたりの財政費用がより安価な医療機関を選択する傾向にあることが明らかになった。さらに,項目別の財政費用を地域間で比較すると,外来受診や家庭医療の薬剤購入にかかる交通費は,都市部より農村部で有意に高く(外来 P=0.005,家庭医療 P=0.009),地域間で医療サービスの利用可能性(アクセシビリティー)に格差があることが示された。また,疾病の財政費用を家計から支払うことが不可能ないしは困難な場合,家庭はローンまたはクレジット,病院のソーシャル・サービスなど支払を補助する手段を利用し,対処していることがわかった。
  • 鈴木 寿則, 坪野 吉孝, 栗山 進一, 寳澤 篤, 大森 芳, 遠藤 彰, 辻 一郎
    2005 年 52 巻 7 号 p. 652-663
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/08/06
    ジャーナル フリー
    目的 近年,糖尿病患者の医療費が増加しているなか,糖尿病の合併症が医療費に及ぼす影響を定量的に検証することは,医療費を適正化するための対策を検討する上で重要である。これまでの国内における糖尿病の合併症の医療費分析は少数の施設に限定され,地域住民を対象にしたものはなかった。また,従来の診療報酬明細書により把握できる傷病は主傷病のみであったため,合併症の正確な把握は困難であり,医療費に及ぼす影響も十分に把握できなかった。この問題点を打開し,糖尿病とその合併症の保有状況を把握し,医療費構造を明らかにするには,主傷病だけではなくすべての傷病を診療報酬明細書に記載することが望まれる。本研究の目的は,地域住民を対象に,全傷病登録による国民健康保険診療報酬明細書を用いて,糖尿病の合併症が医療費に及ぼす影響を分析することである。
    方法 調査対象は宮城県内 7 町における国民健康保険加入者全員の中から平成14年 5 月 1 日から31日までの間に医療機関を受診した17,994人のうち,糖尿病または糖尿病性傷病名が診療報酬明細書に記載されている2,999人である。診療報酬明細書により性,年齢,傷病名,受療状況(入院・外来の各日数)と入院・外来・調剤の各費用を把握し,糖尿病の合併症を有しない群と,有する群の 1 人当たり 1 か月医療費を,性,年齢を補正した共分散分析により比較した。続いて,性,年齢に加えて,それぞれの合併症の有無を補正し比較を行った。
    結果 糖尿病患者全体において,性,年齢,それぞれの合併症を補正し,合併症を有しない群と有する群で 1 人当たり 1 か月医療費を比較すると,腎症(55,421円,1.71倍),網膜症(44,265円,1.65倍),脳血管障害(22,296円,1.33倍),心疾患(51,726円,1.88倍)では合併症を有する群で有意に高かった。一方,神経障害(8,771円,0.88倍)では有意差を認めなかった。糖尿病患者の 1 か月医療費総額において,腎症は7.1%,網膜症は4.9%,脳血管障害は5.5%,心疾患は17.7%を占めていた。
    結論 糖尿病の合併症のなかで,医療費に影響を及ぼしたのは糖尿病性腎症,糖尿病性網膜症,脳血管障害,心疾患であった。これらの合併症を予防することで,糖尿病医療費の顕著な低下を期待されることが示唆された。
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