日本公衆衛生雑誌
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58 巻 , 6 号
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原著
  • 緒方 泰子, 永野 みどり, 福田 敬, 橋本 廸生
    2011 年 58 巻 6 号 p. 409-419
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 マグネット•ホスピタルの特性に基づいて開発された the Practice Environment Scale of the Nursing Work Index (PES–NWI)日本語版を用いて測定した看護実践環境と看護職の就業継続意向,病棟別離職率との関連を検討することを目的とした。
    方法 東京都内の 5 病院91病棟の看護職2,211人を対象に無記名自記式調査票を用いた郵送調査を行った(2008年 2~3 月)。調査内容は,看護職特性(性別,年齢,看護経験年数等),看護実践環境(PES–NWI),就業継続意向,職務満足に関する項目等である。就業継続意向は,来年の今頃も現病院で働いているかどうかを 4 段階(「勤めている」から「勤めていない」)で尋ねた。病棟別離職率算出に必要な数値は,別途,看護部経由で病棟師長に回答を依頼した。就業継続意向を従属変数,PES–NWI や看護職特性を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。離職率と PES–NWI 得点との相関関係を検討した。
    結果 有効回答者1,067人(有効回収率48.3%)は,女性95.9%,平均年齢29.2歳であり,総看護経験年数は平均7.0年,現病院では5.8年の経験があった。PES–NWI の Chronbach's α は 5 つのサブスケール別では0.77から0.85,サブスケール全体では0.75であった。PES–NWI サブスケール得点および合成得点には職務満足度得点と有意な相関があった。看護職特性で調整した上で,PES–NWI サブスケール得点や合成得点による就業継続意向への影響を検討したところ,PES–NWI のサブスケール得点の一部および合成得点が,就業継続意向と有意に関連した(P<0.05)。病棟別離職率は平均10.4%,新卒のみでは平均17.6%であり,何れも PES–NWI サブスケール得点の一部および合成得点と有意に関連した。
    結論 就業継続意向を従属変数としたロジスティック回帰分析や,病棟別離職率との関連において,PES–NWI で測定した看護実践環境は,就業継続意向とは正の,離職率とは負の関係があり,看護実践環境を整えることは,看護職の定着に寄与しうることが示された。内的整合性や基準関連妥当性が確認されたことから,PES–NWI 日本語版は,日本の病棟における看護実践環境を測定するツールとして一定の信頼性•妥当性を備えていると考えられる。
  • 深作 貴子, 奥野 純子, 戸村 成男, 清野 諭, 金 美芝, 藪下 典子, 大藏 倫博, 田中 喜代次, 柳 久子
    2011 年 58 巻 6 号 p. 420-432
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,特定高齢者を対象とした介護予防教室において,運動と栄養による包括的なプログラムの提供が生活機能や体力に及ぼす介護予防効果を,運動に加えて栄養指導を実施した栄養介入群(運動+栄養群)と対照群(運動のみ群)の比較検討を行い明らかにすることを目的とした。
    方法 茨城県 Y 町,S 市にて開催された,3 か月間の介護予防運動教室に参加した特定高齢者161人を対象とし,栄養介入群81人(Y 町•平均年齢76.2±5.7歳)と対照群80人(S 市•平均年齢76.2±4.7歳)の比較検討を行った。面接調査により,属性•日常生活動作(ADL)•生活機能(老研式活動能力指標)•食品摂取状況(食品摂取の多様性評価票)などを調査し,採血と体力測定(握力•ステップテスト•5 回椅子立ち上がり•開眼片足立ち•タンデムバランス•ファンクショナルリーチ(FR)•長座体前屈•5 m 通常歩行•タイムアップアンドゴー(TUG))を教室開始時と教室終了時に実施した。
    結果 栄養介入群は,食品摂取の多様性得点が教室開始時に比べ教室終了時に有意に改善し(P<0.01),特に魚介類•肉類•卵•牛乳•果物類•油脂類(P<0.01),大豆製品•海草類•いも類(P<0.05)の計 9 食品の摂取頻度に良好な変化がみられた。一方,対照群は魚介類•肉類•牛乳のみに有意な変化がみられた。栄養介入群は,5 回椅子立ち上がり•タンデムバランス•FR•長座体前屈•TUG が教室開始時に比し教室終了時に有意な体力の向上がみられた。さらに,年齢•性別•教室開始時に群間差のあった体力測定項目で調整後も,開眼片足立ち(P<0.05)に両群間に有意差が認められた。
    結論 運動に加え栄養指導を取り入れた介護予防教室では,特定高齢者の食品摂取状況の改善とともにより多くの体力の向上が認められた。栄養と運動を組み合わせた包括的なプログラムの提供が介護予防効果をより一層期待できることが示唆された。
  • 野村 恭子, 佐藤 幹也, 鶴ヶ野 しのぶ, 矢野 栄二
    2011 年 58 巻 6 号 p. 433-445
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 わが国の医師不足は深刻で女性医師の社会的活用が急務である。ところが女性医師は結婚,出産で離職する割合が高い。欧米の研究では女性医師の就労モチベーションは,性差による就労機会格差と関連のあることが示唆されている。本研究では,性差に伴う男女就労機会格差に対する認識と就労上の不利益な経験について男女間で差があるか検討を行い,さらに女性医師の就労に影響を与える因子について検討する。
    方法 平成21年 6 月,某私立大学医学部同窓会会員1,346人に自記式質問票を郵送した。男女就労機会格差については,「医学部で女性は昇進しにくい」を筆頭に14問を作成し,因子分析を用いて男女就労機会格差変数を作成した。就労上の不利益な経験については,「性別のために有給ポスト獲得•昇進人事•終身雇用の機会を得られなかったと感じる経験はありましたか」と尋ねた。就労形態(週40時間以上をフルタイム,それ以下をパートタイムと定義)をアウトカムとし,専門医取得の有無,性差に伴う就労上の不利益な体験,男女就労機会格差,子供の有無,世帯収入などの影響をロジスティック分析にて検討した。
    結果 回収数は男性452人(平均48歳),女性224人(平均43歳),回収率はそれぞれ44%と71%であった。性差に伴う就労上の不利益な経験について「あった」と回答した医師は女性で40人(18%),男性では15人(3%)であった(P<0.001)。就労機会格差の14項目は 1 項目を除いてすべての項目で,男性よりも女性においてその点数が高かった。女性医師における就労形態はフルタイムが66%,パートタイムが32%,無職および休職は 2%であった。女性医師のみを対象としたロジスティック分析では,フルタイムに比して,パートタイムで婚姻率が高く(P<0.001),就労格差の総得点が高かった(trend P=0.034)。またパートタイムに比して,フルタイムは専門医を取得している医師が多かった(P=0.048)。子どもの有無,世帯収入は女性医師の就労に有意な影響を与えていなかった。
    結論 性差による就労上の不利益な経験は女性医師に多く,就労機会格差は女性医師で強く認識されていた。女性医師の就労に影響を与える因子として,従前より指摘のあった子供の影響よりも専門医資格取得や就労機会格差に対する認識がより深く関連した。
  • 小林 江里香, 藤原 佳典, 深谷 太郎, 西 真理子, 斉藤 雅茂, 新開 省二
    2011 年 58 巻 6 号 p. 446-456
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,高齢者の社会的孤立を同居家族以外との接触頻度の低さから定義し,孤立者が抱える生活•心理面での課題と,そのような課題が同居者の有無や性別によってどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。
    方法 65歳以上の在宅高齢者を対象とした調査より,独居群948人,同居群1,426人のデータを分析した。社会的孤立状況は,別居親族または友人•近所の人との接触が週 1 回以上あるかで,「対面接触あり」,「非対面接触のみ」,「接触なし(孤立)」に分けた。私的サポートの利用可能性(6 項目),公的サポートの利用可能性(2 項目),抑うつと将来への不安を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,年齢,IADL,社会経済的地位を調整後の社会的孤立状況,独居,性別の主効果と交互作用効果を調べた。
    結果 独居男性では42%が孤立に該当し,独居女性(17%)と大きな差があった。私的サポート入手不能,サービス相談先なし,地域包括支援センターの非認知,抑うつ傾向あり,将来への不安の高さのいずれについても,「対面接触あり」に対する孤立者のオッズ比は有意に高かった。また,私的サポートについては,孤立状況と同居者の有無の交互作用があり,孤立と独居が重なることでサポートを得られないリスクが一層高まっていたが,独居が独立した効果を示したのは,一部のサポート項目や抑うつ傾向に限られた。
    結論 孤立高齢者は,同居者の有無にかかわらず,私的•公的なサポートを得にくく,抑うつ傾向や将来への不安も高いなど,多くの課題を抱えていることが明らかになった。
資料
  • 江口 尚, 塚原 照臣, 野見山 哲生
    2011 年 58 巻 6 号 p. 457-462
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/06/06
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,全国の市区町村の環境政策に対する市民参加の対応状況を,関連計画へのパブリック•コメント実施と環境関連問題を審議する会議への市民公募委員の選任を指標として,人口規模に応じた実態を把握すること,を目的として調査を実施した。
    方法 全国の市区町村(1,816か所)と東京特別区から以下の手順で抽出した325自治体を調査対象とした。人口規模20万人未満の自治体については,1 万人未満,1 万人以上 5 万人未満,5 万人以上10万人未満,10万人以上20万人未満に区分し,それぞれについて50自治体ずつ多段階無作為抽出を行った。20万人以上については,全数調査を行った。調査項目は,環境とまちづくりに関連する,環境基本法に基づく環境基本計画,景観法に基づく景観計画,都市計画法に基づく都市計画を取り上げ,それぞれについて,パブリック•コメントの実施の状況,審議会設置への公募委員の選任状況について情報を得た。
    結果 269か所(回収率82.8%)から回答があった。人口規模とパブリック•コメントの実施状況は,環境基本計画,都市計画で人口規模が大きくなるほど実施率が上昇する傾向が認められた(P=0.04, 0.001)。人口規模と市民公募委員の選任率は,環境審議会,景観審議会,都市計画審議会で人口規模が大きくなるほど選任率が上昇する傾向が認められた(P=0.001, 0.045, <0.001)。また,各計画,審議会によって,パブリック•コメントの実施状況や市民公募委員の選任状況,委員の構成が異なっていた。
    結論 自治体における環境政策への市民参加は,人口規模に関連していることや,同じ人口規模の自治体であっても,それぞれの計画,審議会によって,市民参加の程度が異なることが明らかとなった。
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