目的 家族機能の特徴を把握することへの関心が高まり,利用可能な家族評価尺度が求められている。そこで,家族関係を測定する指標として Family Relationships Index (FRI)日本語版を参考にして,その項目の一部に変更を加えスケール化した家族関係尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。
方法 日本の全国サンプルより層化二段階抽出をした男女3,000人のうち,不在や調査協力の拒否を除く対象者に対して訪問面接調査を行い,1,910人から回答を得た。家族関係尺度の因子構造を検討するため確証的因子分析,および探索的因子分析を実施した。サブスケールの信頼性はクロンバックの α 係数(以下 α 係数)を求めることにより,妥当性は,サブスケールと人口学的特性の関連,および健康関連 QOL との関連により検討した。
結果 家族関係尺度について,当初 FRI の理論的背景から想定された 2 次 3 因子構造を仮定したが,確証的因子分析の結果,適合度は低かった。そこで,探索的因子分析の結果を基にモデルを修正し,確証的因子分析を実施したところ,「凝集表出性」「葛藤性」の 2 因子構造を仮定し,さらに 2 項目を削除したモデルで妥当な適合度が認められた。サブスケールの α 係数は「凝集表出性」で.795,「葛藤性」で.659と妥当な値であった。人口学的特性とサブスケールの関連は,性別を除く年齢,世帯収入,世帯形態との関連がみられ,本尺度の内容妥当性が示された。健康関連 QOL とサブスケールの関連は,「凝集表出性」は活力,社会生活機能,日常生活機能(精神)と有意な正の相関を示し,「葛藤性」は上記に加え,心の健康と有意な負の相関を示した。しかし,これらはいずれも0.1程度の低い関連であった。
結論 家族関係尺度について,事前に想定された 3 因子構造は支持されず,今回の調査では一部項目を削除した 2 因子モデルで妥当な適合度が得られた。サブスケール「凝集表出性」,「葛藤性」については,信頼性はおおむね示されたが,妥当性は内容妥当性の検証にとどまった。したがって,家族関係尺度を一つの概念を表す尺度として用いることの妥当性やサブカテゴリーの妥当性について十分検証されなかった。現代の日本の家族関係の概念とその構造について,今後も検討が積み重ねられる必要があると考えられた。
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