日本公衆衛生雑誌
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56 巻 , 7 号
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特別論文
原著
  • 下開 千春
    2009 年 56 巻 7 号 p. 446-455
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 乳幼児をもつ保護者のいつでもどこでも安心して医療を受けたいという医療機関への需要が高まる中,限られた医療機関でどう対処するかが社会的課題となっている。この課題に向けて,乳幼児をもつ保護者による医療機関の利用に関連する社会的な要因を明らかにすることを目的とした。
    方法 解析の対象は,東京近郊の一つの市の保育園,幼稚園,幼児サークルに通う 7 歳未満の乳幼児をもつ保護者957人(有効回答率79.2%,うち母親は97.7%)である。その市には,乳幼児医療費助成制度がある。調査方法は,質問紙の手渡し,回収箱による回収とした。調査時期は,2007年10月である。過去 1 年間に病気があり,医療機関の利用回数に回答があった790人を分析対象とした。調査項目は,対象児の年齢,性別,出生順,保護者の就労,親族および非親族による育児支援の人数,医療機関の利用の意識,調査時点から過去 1 年間の病気の有無と医療機関の利用回数である。乳幼児の過去 1 年間の医療機関の利用回数を被説明変数とした単回帰分析および重回帰分析を行った。
    結果 過去 1 年間の医療機関の利用回数を被説明変数とした単回帰分析の結果から,対象児の持病の有無,日頃の育児を支えてくれる親族人数,医療機関の利用意識と過去 1 年間の医療機関の利用回数に関連がみられた。具体的には,対象児に持病がある場合,日頃の育児を支えてくれる親族人数が少ない場合,気軽に医療機関を利用する意識が高い場合に,過去 1 年間の医療機関の利用回数が多かった。重回帰分析の結果も,同様の結果となった。
     なお,対象児の年齢や性別,出生順位,回答者の就労の有無,日頃の育児を支えてくれる非親族人数については,とくに関連はみられなかった。
    結論 乳幼児をもつ保護者による医療機関の利用回数には,子どもの持病や親族による育児支援,保護者の医療機関の利用意識などの社会的な要因が関連していることが示唆された。
資料
  • 川野 直子, 伊藤 輝子, 高橋 東生
    2009 年 56 巻 7 号 p. 456-462
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,新潟県中越地震(2004年10月23日マグニチュード6.8)の中心被災地の一つである小千谷市において,災害時における子供と小規模地域コミュニティにおける食環境の実態調査することを目的にアンケート調査を実施した。
    方法 2007年11月~12月の間,市内の小中学校の児童・生徒の保護者1,221人を対象に,災害時における食生活に関するアンケート調査を行った。また同年 8 月に市内基幹避難所において震災当時を知る関係者らへの聞き取り調査を行った。
    結果 有効回答率は,72.7%であった。地震発生から 1 週間の食生活に関する質問に対し「地域住民で集まり,共同で料理を作り食べていた」と回答した者と自家発電機の利用を回答した者との間に有意な関連がみられた。また 7 割近い回答者が,被災生活における生鮮食品の不足を回答した。
    結論 自家発電機を利用した者は,地域コミュニティに参加し食事を共にしている傾向だったことが示唆された。また被災者は生鮮食品を中心とした品目の不足を感じながらも,ライフラインが完全に使用できない被災生活において,救援物資のみに依存した食生活ではなく,備蓄食料や地域コミュニティを同時に活用し,子供たちの食生活を維持していたことが示唆された。
  • 川野 直子, 伊藤 輝子, 高橋 東生
    2009 年 56 巻 7 号 p. 463-467
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 本調査は,ライフラインが使用不可能な災害時において,どのような食事が営まれていたのか,新潟県中越地震における子供たちの食生活を事例に,実態把握することを目的とした。
    方法 新潟県中越地震(2004年10月23日マグニチュード6.8)の中心被災地の一つである小千谷市おいて震災当時の子供たちの食生活の実情に関するアンケート調査を実施した。またこれらの結果について KJ 法を用いてまとめ,気づいた点について考察した。
    結果 アンケート回収率は80.4%,うち有効回答率は72.7%であった。震災発生翌日の子供の避難場所について調べたところ,自宅58人(6.5%),自宅周囲(車,テントなど)524人(59.0%),住居地域の避難所231人(26.0%),市外に避難させた38人(4.3%)であった。自宅に避難した者のうち67.2%が,自宅周囲に避難した者のうち53.8%は「自宅の保存食を食べた」と回答した。また自宅や自宅周囲に避難した582人のうち27.7%は,「救援物資」を利用していたが,それ以外は自分たちで用意した料理や食べ物を利用していた。さらに有効回答者のうち約 4 割強の者からは,震災翌日の食事内容についての具体的な回答を得ることができた。
    結論 本震災被災者らは,ライフラインが使用できなかった震災当日や翌日において,地域住民と共に元々自宅にあった食品や料理を活用し,非常事態に対応していた者が多く存在していたことが明らかになった。
  • 田口 良子, 山崎 喜比古, 戸ヶ里 泰典
    2009 年 56 巻 7 号 p. 468-477
    発行日: 2009年
    公開日: 2014/06/13
    ジャーナル フリー
    目的 家族機能の特徴を把握することへの関心が高まり,利用可能な家族評価尺度が求められている。そこで,家族関係を測定する指標として Family Relationships Index (FRI)日本語版を参考にして,その項目の一部に変更を加えスケール化した家族関係尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。
    方法 日本の全国サンプルより層化二段階抽出をした男女3,000人のうち,不在や調査協力の拒否を除く対象者に対して訪問面接調査を行い,1,910人から回答を得た。家族関係尺度の因子構造を検討するため確証的因子分析,および探索的因子分析を実施した。サブスケールの信頼性はクロンバックの α 係数(以下 α 係数)を求めることにより,妥当性は,サブスケールと人口学的特性の関連,および健康関連 QOL との関連により検討した。
    結果 家族関係尺度について,当初 FRI の理論的背景から想定された 2 次 3 因子構造を仮定したが,確証的因子分析の結果,適合度は低かった。そこで,探索的因子分析の結果を基にモデルを修正し,確証的因子分析を実施したところ,「凝集表出性」「葛藤性」の 2 因子構造を仮定し,さらに 2 項目を削除したモデルで妥当な適合度が認められた。サブスケールの α 係数は「凝集表出性」で.795,「葛藤性」で.659と妥当な値であった。人口学的特性とサブスケールの関連は,性別を除く年齢,世帯収入,世帯形態との関連がみられ,本尺度の内容妥当性が示された。健康関連 QOL とサブスケールの関連は,「凝集表出性」は活力,社会生活機能,日常生活機能(精神)と有意な正の相関を示し,「葛藤性」は上記に加え,心の健康と有意な負の相関を示した。しかし,これらはいずれも0.1程度の低い関連であった。
    結論 家族関係尺度について,事前に想定された 3 因子構造は支持されず,今回の調査では一部項目を削除した 2 因子モデルで妥当な適合度が得られた。サブスケール「凝集表出性」,「葛藤性」については,信頼性はおおむね示されたが,妥当性は内容妥当性の検証にとどまった。したがって,家族関係尺度を一つの概念を表す尺度として用いることの妥当性やサブカテゴリーの妥当性について十分検証されなかった。現代の日本の家族関係の概念とその構造について,今後も検討が積み重ねられる必要があると考えられた。
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