日本公衆衛生雑誌
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61 巻, 9 号
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原著
  • 片岡 千恵, 野津 有司, 工藤 晶子, 佐藤 幸, 久保 元芳, 中山 直子, 岩田 英樹, 渡部 基
    2014 年 61 巻 9 号 p. 535-544
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/08
    ジャーナル フリー
    目的 我が国の高校生における危険行動と睡眠時間との関連を明らかにする。
    方法 分析には,Japan Youth Risk Behavior Survey 2011のデータ(全国の高校から無作為に抽出された102校の 1~3 年生,男子5,027人,女子4,751人,計9,778人)を用いた。危険行動に関しては,「有酸素運動不足」,「朝食欠食」,「月喫煙」,「月飲酒」,「シンナー乱用経験」,「性交経験」,「シートベルト非着用」,「暴力行為」,「自殺願望」の 9 項目を取り上げた。
    結果 睡眠時間の実態は,6 時間未満の者が男女ともに40%前後を占める等,憂慮される状況であった。危険行動が最も低率であった,睡眠時間が「6 時間以上 8 時間未満」の群を基準として,他の群における危険行動のオッズ比を算出した結果,「4 時間以上 6 時間未満」の群では,男女ともの「有酸素運動不足」および「朝食欠食」等のオッズ比が有意に高値であった。さらに睡眠時間が短い「4 時間未満」の群では,男子では全 9 項目(オッズ比1.47~3.28),女子では「シートベルト非着用」を除く 8 項目(1.54~4.68)について,オッズ比が有意に高値であった。他方で,睡眠時間が長過ぎる「10時間以上」の群でも,男女ともの「月喫煙」および「シンナー乱用経験」等について,オッズ比が有意に高値であった。
    結論 我が国の高校生において,6 時間未満の短い睡眠時間および10時間以上の長過ぎる睡眠時間は危険行動に関連していることが示され,睡眠時間も危険行動の一つとして注目していくことの必要性が示唆された。
  • 石川 孝子, 福井 小紀子, 澤井 美奈子
    2014 年 61 巻 9 号 p. 545-555
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/08
    ジャーナル フリー
    目的 今後都市部における高齢化が著しく進むことから都市部の地域終末期ケア体制の推進が重要となる。終末期療養や看取りに対する認識は,年代によって大きく異なることが指摘されている。そこで,65歳以上と40–64歳の年代別に,都市部在住市民の終末期の希望療養場所と,医療福祉資源などの知識,経験,認識との関連を検討する。
    方法 東京都武蔵野市民のうち層化無作為抽出した40歳以上の1,500人を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,終末期の希望療養場所,属性,医療・介護の経験・知識・認識とし,終末期の希望療養場所との関連を年代別にロジスティック回帰分析で検討した。
    結果 769人(回収率51.6%)から回答が得られた。終末期の希望療養場所は,65歳以上では自宅40.9%,自宅以外59.1%,40–64歳では自宅54.1%,自宅以外45.9%であった(P<0.001)。自宅療養選択に関連する要因は,65歳以上の群では,緩和ケアにおける薬物による疼痛管理の知識:「麻薬は中毒になるのではないかと心配」と認識していない(オッズ比:95%信頼区間1.90:1.17–3.08),セルフケア:「服薬行動(風邪をひいたときにすぐに薬を飲まずに予防行動)」をしている(1.97:1.21–3.22),社会的役割:「ボランティア」をしている(2.38:1.34–4.21),在宅療養の認識:「在宅療養費用を入院費の8割以内が妥当」と認識している,「相談できる医療関係者が居る」と認識している(1.82:1.10–3.03,1.90:1.06–3.41),在宅医療の認識:「自宅での看取りでも医療を十分に受けている」と認識している(2.30:1.37–3.87)ことが挙げられた。40–64歳の群では,介護希望者:「介護士」を希望しない(2.80:1.62–4.83),在宅医療の認識:「自宅でも急変時対応ができる」と認識している(2.97:1.15–7.66),終末期の認識:「最期は自由な環境がいい」と認識している(4.57:2.43–8.59)ことが挙げられた。
    結論 本研究の結果,終末期療養場所の希望と実際の隔たりを少なくするために,65歳以上では介護の社会化への意識変革,40–64歳では死生観の醸成をする機会を持つ,両年代共通として正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。
研究ノート
  • 緒方 剛, 中村 好一, 圓藤 吟史, 林 朝茂, 本田 靖
    2014 年 61 巻 9 号 p. 556-564
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/08
    ジャーナル フリー
    目的 2003年に茨城県神栖町で井戸水の飲用による神経系健康被害が見つかった。これは,ジフェニルアルシン酸で汚染された水による集団中毒として初めて経験する例である。その後,より低い濃度の井戸水を飲用した同町民も確認された。本研究は曝露住民の神経系およびその他の自覚症状と流・死産の状況を検討した。
    方法 2004年に町内に居住する10~65歳の住民のうち,ヒ素換算値 2,262 μg/L のジフェニルアルシン酸を含む井戸水を飲用した高濃度曝露住民20人,2–230 μg/L(平均 85 μg/L)の井戸水を飲用して毛髪または爪からジフェニルアルシン酸の検出された中低濃度曝露住民67人,および後者住民の性・年齢をマッチした非曝露住民134人を対象とし,自覚症状,妊娠および自然流産について質問紙法で面接調査した。年齢で層別化して症状を比較した。
    結果 神経系自覚症状の「目眩」,「立ちくらみ・ふらつき」,「手足がビリビリ・ジンジン」,「文字が書きにくい」,「物が二重に見える」の出現割合,および神経系以外の自覚症状の「不眠」,「憂うつ」,「頭痛」,「皮膚が痒い」,「体重変化」,「下痢」,「咳」,「息苦しい」の出現割合は中低濃度曝露住民で非曝露住民に比べて有意に高かった。高濃度曝露住民でも高い傾向がみられた。1999~2003年に非曝露住民では妊娠が15回あり自然流産はなかったが,妊娠中に井戸水を飲用した中低濃度曝露住民では 5 回の妊娠で自然流産が 3 回あった。この自然流産は2001年以後であり,そのうち 2 人が飲用中止後に再度妊娠し出産した。
    結論 ジフェニルアルシン酸の曝露住民は,非曝露住民よりも神経系およびその他自覚症状の出現割合が有意に高かった。また,中低濃度曝露住民で自然流産がみられた。
  • 成瀬 昂, 阪井 万裕, 永田 智子
    2014 年 61 巻 9 号 p. 565-573
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/08
    ジャーナル フリー
    目的 「特定の職務」を遂行する際の,「特定の相手」とのチームワークを評価する Relational coordination 尺度の日本語版(J-RCS)を作成し,その信頼性と妥当性を検証する。
    方法 原作者の承認を得て日本語版を作成した後,2013年 7 月,滋賀県内の11か所の訪問看護ステーションに勤務する全訪問看護師124人を対象に,インターネットを用いた自記式調査を行った。回答者には,主治医,居宅介護支援専門員,同僚の訪問看護師との関係性について J-RCS を尋ねた(以後,J-RCS[主治医],[居宅介護支援専門員],[同僚看護師])。
    結果 訪問看護師81人(65.3%)から回答を得た後,70人(56.5%,第 1 回調査回答者の86.4%)から再テストの回答を得た。Cronbach の α は,0.770~0.859,1 回目と 2 回目の級内相関係数は0.673~0.830であった。因子妥当性では J-RCS[主治医]のみ 1 因子構造で良好な適合度を得た。併存的妥当性では,それぞれの相手との間柄について,J-RSC と連携のしやすさ(r=0.559~0.585, P<0.001),ソーシャルサポート(r=0.549~0.789, P<0.001)の関連性が示された。
    結論 因子妥当性の適合度,一部の項目に回答が集中する傾向等の検討課題は残されたが,J-RCS の一定の信頼性・妥当性を示すことができた。
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