日本公衆衛生雑誌
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57 巻 , 6 号
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原著
  • 三村 明沙美, 須藤 紀子, 加藤 則子
    2010 年 57 巻 6 号 p. 431-438
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 内容を説明せずにリーフレットを一度配布するだけでも教育効果がみられるかどうかを評価した。
    方法 F 県にある某女子大学の家政学部栄養学科 4 年生(58人)と選択科目「健康と栄養」の受講者全員(81人)を対象に,非ランダム化比較試験を実施した。まず介入前調査として,妊娠中の飲酒についてどう思うか(妊娠中の飲酒に関する意識),妊娠前後の飲酒についてどうしたいと思うか(妊娠中の飲酒に対する態度),胎児性アルコール症候群(FAS)という病気を知っているか(FAS の知識)について,選択肢でたずねた。1 か月後に,介入群にはリーフレットを配布し,対照群には何も配布しなかった。介入から 1 週間後に再び質問紙調査(介入後調査)を実施した。リーフレットの配布と 2 回の質問紙調査は,教員の協力を得て,授業時間中に行った。リーフレットはアルコール•薬物問題に取り組んでいる NPO が作成したものであり,FAS を予防するためには妊娠を考えた時から飲酒を避けることなどをすすめる内容となっている。
    結果 有効回答率は83%であった。2 群間で学年や現在の飲酒状況,妊娠やアルコールに関するこれまでの教育機会に有意差はみられなかった。介入群の79%がリーフレットを全部もしくは半分くらい読んでいた。妊娠中の飲酒に対する意識の変化については 2 群間で有意差はみられなかった。妊娠前後の飲酒に対する態度と FAS の知識については,介入群において有意な改善がみられた。
    結論 妊娠中の飲酒に対する意識の変化に 2 群間で有意差はみられなかったことは,回答者の75%が栄養学科の学生であったことや,介入前から 8 割近くが「絶対禁酒」と回答していた等,もともと意識の高い集団であったためと考えられた。一方,態度については,介入群では「結婚するなど,妊娠を望んだ時点でお酒を飲まないようにする」と回答した者が介入後は倍近くに増加したことから,リーフレットで学んだ内容を反映していると考えられる。FAS を知った媒体も介入群の半数以上がリーフレットをあげていた。以上の結果から,授業の合間に情報提供としてリーフレットを配布するだけでも態度や知識を改善する効果が得られると考えられた。今回の対象者は 7 割以上が栄養学科の学生という,知識や関心の高い集団であったことから,一般住民に対しても,リーフレットの配布が効果的であるかは今後検証する必要がある。
  • 山崎 幸子, 藺牟田 洋美, 橋本 美芽, 野村 忍, 安村 誠司
    2010 年 57 巻 6 号 p. 439-447
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 近年,地域で介護予防を進めていくための強化分野の 1 つとして,「閉じこもり予防•支援」が展開されており,その効果を評価する心理的側面を含めた指標が求められている。行動変容の視点によれば,閉じこもりの改善には,外出に特化した自己効力感が潜在的に影響していると想定されるが,評価尺度は未だ存在しない。そこで本研究では,地域高齢者の外出に対する自己効力感を測定する尺度(self-efficacy scale on going out among community-dwelling elderly:以下,SEGE と略す)を開発し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とした。
    方法 都内 A 区在住の地域高齢者18人から項目収集を行い,得られた項目をもとに,某県 O 市の地域高齢者258人に対する予備調査によって,13項目から成る尺度原案を作成した。本調査は,都内 A 区在住の地域高齢者8,000人を無作為抽出し,郵送法による調査を実施した。調査内容は,尺度原案,年齢,性別などの基本属性および妥当性を検討するための評価尺度であった。
    結果 分析対象者は2,627人(男性1,145人,女性1,482人),平均年齢73.8±6.6歳であった。週 1 回以上,外出していたのは全体の86.1%であった。予備調査で作成した尺度原案について主成分分析を行った結果,1 因子構造が確認された。ステップワイズ因子分析による項目精選を行った結果,6 項目から成る尺度が開発された。これら 6 項目の内的整合性は,α=.96であり,高い信頼性が確認された。外出頻度が低いほど,SEGE 得点も低かった。SEGE と,動作に対する自己効力感,健康度自己評価および健康関連 QOL は有意な相関関係にあり,基準関連妥当性および構成概念妥当性が確認された。さらに,高い相関関係にあった SEGE と動作に対する自己効力感における確証的因子分析を行ったところ,両尺度は相関が高いものの,別々の概念を測定していることを確認した。
    結論 本研究の結果,高い信頼性および妥当性が確認された 6 項目 1 因子から成る SEGE が開発された。本尺度により,「閉じこもり予防•支援」の心理的側面を測定する新たな効果指標を提案できたと考える。今後,地域で広く活用していくことが求められる。
資料
  • 原 邦夫, 星子 美智子, 石竹 達也
    2010 年 57 巻 6 号 p. 448-457
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,35中核市を対象に,中核市移行に伴う保健•福祉業務の変化の把握を目的とした。
    方法 本研究では,中核市移行に伴う県からの委譲業務の中で保健•福祉等の業務—(1)福祉行政,(2)保健衛生,(3)都市計画,(4)環境保全行政,(5)教育,および(6)市の活性化—に焦点を当てた。アンケート調査票は,中核市移行後のそれらの委譲業務の実施状況と,業務の変化による市行政の活性化および市民•市職員の健康への影響について,選択肢で質問する27の項目と12の自由記述項目で構成するものとした。2008年 2 月中旬に電子メールでアンケート調査票を担当課に送付し,回答を求めた。
    結果 2008年 3 月中旬に,35市中の合計で27市から得られた(回収率:77%)。回答した中核市は,障害児補装具の交付期間の短縮が進んでないこと,広域行政実施の困難さ,および教育センターの設立などのいくつかの課題はみられたが,ほとんどの委譲された業務をこなしていた。中核市として多くの業務が委譲されることで,自立的•自主的そして統一的に業務が実施できるようになっているとの回答が多かった。また,中核市移行に際して保健所が新設された市が27市中17市あり,保健所が新設された市では増員がなされ,市民と直接対応する組織の整備が進展し市行政の効率化が進んだとする回答が多くみられた。
    結論 先行する35の中核市は,中核市移行に伴い大幅に委譲された保健•福祉業務をほぼ実施していた。中核市移行に伴って保健所を新設した中核市でも大幅に増員しつつ,業務変化に対応していた。
  • 藤原 佳典, 渡辺 直紀, 西 真理子, 大場 宏美, 李 相侖, 小宇佐 陽子, 矢島 さとる, 吉田 裕人, 深谷 太郎, 佐久間 尚子 ...
    2010 年 57 巻 6 号 p. 458-466
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 少子高齢社会においては高齢者のボランティア活動が地域社会へもたらす多面的な波及効果が期待される。我々は平成16年 6 月より高齢者による児童への絵本の読み聞かせを通した世代間交流型介入研究(REPRINTS)を継続している。すでに,高齢者ボランティアと児童への互恵効果は示されてきたが,同一の保護者集団を経時的に観察し,波及効果を検証した研究は見当たらない。今回,ボランティアが活動する小学校の保護者のボランティアに対する評価の 2 年間の変化を報告する。
    方法 A)保護者への調査:対象は川崎市 A 小学校の 1~6 年生の保護者368人。A 校では60歳以上の “REPRINTS” ボランティア(以降,ボランティア)6~10人が週 2 回訪問し,主に 1, 2 年生を対象に絵本の読み聞かせを通じた交流を継続している。6 か月毎に計 5 回,保護者を対象に無記名•自記式調査を行った。質問項目は保護者の年齢,ボランティアに対する認知度(以降,認知度)および活動への評価(読書推進,高齢者への親近感,学校への奉仕•協力に対する保護者の物理的•心理的負担感等)である。1, 2 年生児童の保護者(以降,低学年保護者),3, 4 年生児童の保護者(以降,中学年保護者)の回答の経時変化を二元配置分散分析により比較した。
     B)児童への調査:1~4 年生の全330人を対象に記名•自記式調査を行った。読み聞かせ経験,学校内外でのあいさつの経験,ボランティアとの会話の経験を尋ね,中,低学年各々について,χ2 検定により,経時変化を評価した。
    結果 第一回調査では保護者の年齢のみ低,中,高学年保護者間に有意差がみられた。低および中学年保護者の回答の 2 年間の経時変化において,「児童の高齢者への親近感」の評価は低学年保護者では変化を認めなかったが,中学年保護者で有意に低下した。「保護者の物理的負担の軽減」は,低学年保護者の評価が中学年保護者に比べて有意に高く,かつ両群とも経時的に評価は向上した。「保護者の心理的負担の軽減」および「認知度」は,両群に有意差は無く,ともに経時的に評価は向上した。一方,中学年児童の「読み聞かせの経験」と「学校内外でのあいさつの経験」が減少した。
    結論 2 年間のボランティア活動により,認知度とその活動の一部への評価は児童の学年を問わず高まった。児童を媒介として,高齢者と保護者世代にまたがる三世代の信頼感の構築に寄与する可能性が示唆された。
  • 赤松 利恵
    2010 年 57 巻 6 号 p. 467-474
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 子どもを対象とした間食に関する企業の販売促進活動について,テレビコマーシャルの実態とそのコマーシャルに出てくる商品の特徴を把握すること。
    方法 研究 1:2007年 4 月 1 日から2007年 5 月 7 日の 5 週間を,日本テレビ,TBS,フジテレビ,テレビ朝日,テレビ東京の 5 つのテレビ局に,ランダムに 1 週間ずつ割り当て,番組を録画し解析した。研究 2:研究 1 で対象としたコマーシャルの商品を対象に,商品パッケージから,エネルギー量,販売促進活動(おまけ,キャンペーン,URL)を調べた。結果は度数分布表にまとめ,エネルギー量(200 kcal 以下,201 kcal 以上)とコマーシャル中の飲食状況(なし,1 人のみ,2 人以上)の関連性の検討には,χ2 検定を用いた。
    結果 調査対象の105時間中,食品コマーシャルは 5 時間18分,間食コマーシャルは 2 時間57分(食品コマーシャルの55.7%)であった。繰り返し放映されていたものおよび大人向けコマーシャルを除いた197個のコマーシャルを分析対象とした。飲料類のコマーシャルが多く,楽しくなる,元気になるといった「気分」を強調するコマーシャルが多かった。エネルギー量(200 kcal 以下,201 kcal 以上)とコマーシャル中の飲食状況(なし,1 人のみ,2 人以上)との関連性はみられなく(χ2(2)=2.2, P=0.33),200 kcal 以下,それ以上の商品とも,1 人で飲食している描写が多かった。また,164個の商品についてパッケージを分析した結果,多くの商品が URL を記載していた。
    考察 調査期間が限られていたなどの限界はあるものの,本研究は,子どもを対象とした間食に関する企業の販売促進活動について,テレビコマーシャルとそのコマーシャルに出てくる商品の特徴を示した。今後は,その他のメディアの現状を把握するとともに,メディアリテラシー教育を含めた栄養教育の内容を検討していく必要がある。
  • 安達 美佐, 渡辺 満利子, 山岡 和枝, 丹後 俊郎
    2010 年 57 巻 6 号 p. 475-485
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 栄養教育に用いるための食物摂取頻度調査票(FFQW82)を開発し,その妥当性および再現性の検討を目的とした。
    方法 妥当性と再現性の検討は,男性29人(42~63歳),女性60人(35~53歳)を対象に行った。妥当性は 1 週間の秤量調査結果と再現性は 1 か月後の FFQW82の再調査結果との比較により行った。データはすべて対数変換したうえでピアソン積率相関係数を求めた。
    結果 FFQW82から算定されたエネルギーの推定摂取量は,1 日合計では男性,女性ともに秤量調査から得られた実摂取量よりも高めであった(中央値の相対差はそれぞれ 7%, 15%)。妥当性に関しては,相関係数が,男性0.61,女性0.47であり,食事別では朝食,昼食では男女とも0.66~0.89と高かったが,夕食では男女とも0.19, 0.26と低かった。9栄養素での相関は一日合計で男性は0.28(カリウム)~0.65(炭水化物),女性では0.39(脂質)~0.59(カルシウム)の範囲であった。再現性について,エネルギーでは男性0.65,女性0.69であり,9栄養素では男性0.46(食塩相当量)~0.70(炭水化物),女性0.59(脂質)~0.70(食塩相当量)であった。
    結論 FFQW82は成人を対象とした栄養教育において,個人の食事摂取量を把握するための調査票として,実摂取量に比べて高めに推定されたが,習慣的な 1 日のエネルギー摂取量に対する三食のエネルギー摂取量のアンバランスの改善や食生活改善に重要な食品群の適量摂取の理解を図るためのツールとして利用可能と考える。
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