目的 平成20年度より開始された特定健康診査・特定保健指導制度では,医療保険者に特定保健指導の実施が義務付けられ,多くの医療保険者が保健指導サービスを外部委託している。調査の目的は,委託先である保健指導サービス実施機関の保健指導サービスの質の管理の取り組みの実態を明らかにすることである。
方法 保健指導サービス実施機関に対して郵送法による無記名自記式の質問紙調査を実施した。対象は社会保険支払基金に登録されている特定保健指導実施機関から抽出した。調査項目は「保健指導サービス実施機関の概況」,「保健指導サービスの質の管理の取り組み」である。「保健指導サービスの質の管理の取り組み」は,先行研究で作成した「保健指導の品質管理ガイドライン」より重要な活動を抽出し「保健指導サービスの質の管理の仕組み」に関する 5 項目と「保健指導実施者の質の管理」に関する 7 項目について取り組みの状況を確認した。調査期間は平成22年10月~12月である。
結果 回収数は469であり,回収率は34.5%であった。そのうち平成20年度に特定保健指導サービス未実施の72機関を除き397機関を分析対象とし,組織形態ごとに比較した。「企業外労働衛生機関」と「保健指導サービスを主に提供する会社」は,保健指導サービスの質の管理の取り組み11項目すべての項目で,「自治体」と比較し実施割合が高く,組織形態の違いにより取り組みの状況に差があることが明らかになった。
委託基準に示された項目である「基本方針の作成」の実施割合は「病院」7.5%,「自治体」10.3%と他の項目と比較し低い結果となった。
組織内部で実施した教育研修の実施割合が高かった内容は,知識習得を目的とした教育・研修であった。技術習得を目的とした教育研修の実施割合が高かった具体的内容は「事例検討」であったが,実施割合にはバラつきがあり,「保健指導サービスを主に提供する会社」は73.9%,「自治体」は20.3%であった。
結論 特定健診・保健指導の制度において保健指導を実施している実施機関では,委託基準を順守出来ていない保健指導サービス実施機関があること,委託基準を順守していたとしてもサービスの質の管理の組織的な取り組みについては,組織形態ごとにバラつきがあることが明らかになった。質の高い保健指導サービスが提供される環境づくりのための方策が必要と考えられた。
抄録全体を表示