日本公衆衛生雑誌
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61 巻 , 10 号
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原著
  • 坪井 聡, 上原 里程, 小熊 妙子, 古城 隆雄, Tsogzolbaatar ENKH-OYUN, 小谷 和彦, 青山 泰子, 岡山 明 ...
    2014 年 61 巻 10 号 p. 613-624
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/27
    ジャーナル フリー
    目的 糖尿病患者の病院への満足度に関する対策を政策的に推し進める科学的根拠を得るためには,一般化可能な知見が必要である。本研究の目的は,既存の公的統計を二次利用することで外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を詳細に検討することである。
    方法 患者調査,医療施設調査および受療行動調査(いずれも平成20年)を連結させたデータセットを作成した。患者調査と医療施設調査の連結には,医療施設調査整理番号を,加えて,受療行動調査との連結には,性と生年月日の情報を用いた。外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を検討し,また,様々な要因との関連の有無を検討した。関連の検討に用いた項目は,受診状況(初診か再来か),診察までの待ち時間,医師による診察時間,受療状況(他の医療機関の利用の有無等),糖尿病性の合併症,その他の合併症,生活保護法による支払い,禁煙外来,糖尿病内科(代謝内科)の標ぼう,診療時間(土曜日,日曜日,祝日の診療),生活習慣病に関連する健診の実施である。
    結果 糖尿病患者の62.3%は,病院への満足度において,やや満足,非常に満足と回答し,やや不満,非常に不満と回答した者は5.6%であった。受診状況,診察までの待ち時間,診察時間,受療状況,土曜日の診療の有無は,病院への満足度と統計学的に有意な関連を示した。一方,その他の項目は病院への満足度との間に明らかな関連を示さなかった。統計学的に有意な関連を示した要因を用いた多変量解析では,再診,短い待ち時間,他の医療機関にかかっていないこと,長い診察時間と高い満足度との間に統計学的に有意な関連が観察された。
    結論 複数の公的統計を連結させることによって,外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を明らかにすることができた。糖尿病患者の病院への満足度を高めるために,待ち時間の短縮と診察時間の確保が重要である。今後,多くの公衆衛生施策の検討に際して,公的統計の更なる活用が望まれる。
研究ノート
  • 蔭山 正子, 横山 恵子, 中村 由嘉子, 小林 清香, 仁科 雄介, 大島 巌
    2014 年 61 巻 10 号 p. 625-636
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/27
    ジャーナル フリー
    目的 精神障がい者の家族を対象とした家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」の効果的な普及戦略を検討するために,プログラムを実施していない家族会を対象として,家族学習会の採用に関連する要因を明らかにすることを目的とした。
    方法 精神障がい者家族会連合会12か所と加盟する単位家族会を対象に,2013年 6~9 月に郵送で質問紙調査を実施した。分析枠組みは,ヘルスケア組織におけるプログラム普及の理論枠組みを適用し,プログラムの採用プロセスを 2 段階に分けた。第一段階のプログラムを把握する段階では,把握レベル(家族会で把握あり/家族会で把握なし)の 2 群,第二段階のプログラムの採用意思を決める段階では,実施予定(実施予定あり・検討/実施予定なし)の 2 群をそれぞれ従属変数とし,2 群間で比較した。プログラムを把握した段階については,多重ロジスティック回帰分析を行い,検討した。
    結果 10の精神障がい者家族会連合会から協力が得られた。加盟家族会のうち,家族学習会を実施したことのない177か所の家族会に調査票を送付し,110か所から回答を得た(回収率62.1%)。プログラムを把握する段階では,家族会所在市町村の人口が10万人以上であり(OR=5.53, 95%CI; 1.93–15.89),周囲にプログラムを積極的に勧める人がいて(OR=5.22, 95%CI; 1.46–18.69),連合会からプログラムのことを知った(OR=3.41, 95%CI; 1.27–9.17)家族会ほど,プログラムを家族会で把握していた。プログラムの採用意思を決める段階では,プログラムを家族会で把握していた39か所を分析した。プログラムを実施予定・検討中の家族会は,実施予定なしの家族会と比較して,役員数が多く,プログラム実施に必要なマンパワーがあり,意欲的な会員がいると思っている家族会が有意に多かった。また,実施予定・検討中の家族会は,プログラムの難しさ・リスク・労力といったプログラムの実施負担が少ないと思っており,プログラムを実施することで会員増や相互支援が進むことにつながると思っている家族会が有意に多く,プログラムが家族会や会員の関心と合致しており,周囲にプログラム実施に反対する人がいないと思っている家族会が有意に多かった。
    結論 本プログラムを知ってもらうためには,影響力の大きい人との協力と連合会を通した情報発信が有効であり,プログラムを採用してもらうためには,複数の家族会での合同実施,および,家族会に未入会の家族を対象に実施する方法が有効である。
  • 永田 昌子, 篠原 將貴, 林田 賢史, 梶木 繁之, 前野 有佳里, 鳩野 洋子, 曽根 智史, 森 晃爾
    2014 年 61 巻 10 号 p. 637-646
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/27
    ジャーナル フリー
    目的 平成20年度より開始された特定健康診査・特定保健指導制度では,医療保険者に特定保健指導の実施が義務付けられ,多くの医療保険者が保健指導サービスを外部委託している。調査の目的は,委託先である保健指導サービス実施機関の保健指導サービスの質の管理の取り組みの実態を明らかにすることである。
    方法 保健指導サービス実施機関に対して郵送法による無記名自記式の質問紙調査を実施した。対象は社会保険支払基金に登録されている特定保健指導実施機関から抽出した。調査項目は「保健指導サービス実施機関の概況」,「保健指導サービスの質の管理の取り組み」である。「保健指導サービスの質の管理の取り組み」は,先行研究で作成した「保健指導の品質管理ガイドライン」より重要な活動を抽出し「保健指導サービスの質の管理の仕組み」に関する 5 項目と「保健指導実施者の質の管理」に関する 7 項目について取り組みの状況を確認した。調査期間は平成22年10月~12月である。
    結果 回収数は469であり,回収率は34.5%であった。そのうち平成20年度に特定保健指導サービス未実施の72機関を除き397機関を分析対象とし,組織形態ごとに比較した。「企業外労働衛生機関」と「保健指導サービスを主に提供する会社」は,保健指導サービスの質の管理の取り組み11項目すべての項目で,「自治体」と比較し実施割合が高く,組織形態の違いにより取り組みの状況に差があることが明らかになった。
    委託基準に示された項目である「基本方針の作成」の実施割合は「病院」7.5%,「自治体」10.3%と他の項目と比較し低い結果となった。
    組織内部で実施した教育研修の実施割合が高かった内容は,知識習得を目的とした教育・研修であった。技術習得を目的とした教育研修の実施割合が高かった具体的内容は「事例検討」であったが,実施割合にはバラつきがあり,「保健指導サービスを主に提供する会社」は73.9%,「自治体」は20.3%であった。
    結論 特定健診・保健指導の制度において保健指導を実施している実施機関では,委託基準を順守出来ていない保健指導サービス実施機関があること,委託基準を順守していたとしてもサービスの質の管理の組織的な取り組みについては,組織形態ごとにバラつきがあることが明らかになった。質の高い保健指導サービスが提供される環境づくりのための方策が必要と考えられた。
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