日本公衆衛生雑誌
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54 巻, 5 号
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総説
  • 平井 寛, 近藤 克則
    2007 年 54 巻 5 号 p. 293-303
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
      本報告の目的は,1)日本における「閉じこもり」研究の動向を概観すること,2)先行研究における「閉じこもり」定義を整理し,要介護リスクとしての「閉じこもり」定義について考察すること,3)定義の妥当性をコホート研究レビューにより検討することである。
     医学中央雑誌の検索等で入手した105論文をレビューした結果,以下の知見が得られた。
     1)「閉じこもり」関連の研究は2000年以降急激に増加していた。2)「閉じこもり」定義を構成する要素は,①生活行動範囲,②外出頻度,③交流状況,④移動能力の 4 つに大別することができた。「外出頻度」に他者との「交流状況」や,本人の「移動能力」を組み合わせた定義を行うものもあった。近年「外出頻度」を用いる研究が増えていた。3)要介護リスクとしての「閉じこもり」定義の妥当性を検討しうるコホート研究は 3 編であった。サンプル数と追跡期間,他の定義との比較,交絡の調整の必要性など改善すべき課題が指摘できた。今後これらを考慮した質の高いコホート研究の蓄積により,高齢者の「閉じこもり」の定義の妥当性を検討していくことが望まれる。
原著
  • 辻 恵, 金高 久美子, 原田 久, 中井 信也, 中出 和子, 中村 好美, 鈴木 仁一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 304-313
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 鎌倉保健福祉事務所において無償で未成年禁煙希望者にニコチンパッチ(以下パッチ)処方を行い,未成年喫煙者に対するニコチン置換療法(Nicotine Replacement Therapy 以下 NRT)と属性別の禁煙指導の効果について検討した。
    方法 平成16年 4 月 1 日から平成17年 3 月31日の期間に禁煙相談を行った20歳未満の喫煙者を対象とした。分析項目は性別,年齢,喫煙開始年齢,過去の禁煙状況,喫煙本数,同居家族・友人の喫煙状況で,分析項目を聴取後ニコチンパッチ(商品名:ニコチネル TTS30)7 枚を無償で処方し,1 か月後,6 か月後に電話またははがきで喫煙状況,ニコチンパッチの使用有無を確認した。対象者数39人のうちニコチンパッチ使用状況の判明した者について SPSS11.0J を用い Fisher 正確検定と Mann-Whitney U 検定を行った。
    結果 対象者数は39人で平均年齢16.4歳(14-18歳),平均喫煙期間は2.3年,平均喫煙開始年齢は13.3歳,平均喫煙本数は 1 日あたり12.8本であった。対象者39人のうち 1 か月後25人(64.1%),6 か月後21人(53.8%)について追跡可能で検討対象とした。39人中14人(intention to treat analysis; 35.9%)が 1 か月後に禁煙を継続していた。禁煙継続者14人と禁煙不成功者11人を比較したところ,ニコチンパッチ使用の有無において有意差を認めたが(P<0.05),他の項目で有意差を認めたものはなかった。6か月後は39人中10人(intention to treat analysis; 25.6%)が禁煙を継続しており,喫煙同居者の有無が禁煙継続において有意差を認めた(P<0.05)。ニコチンパッチ使用の有無は有意差を示さなかったが,サンプル数を増やす必要性が示唆された。またニコチンパッチ使用による副作用と思われる訴えは確認されなかった。
    結論 今回の調査で未成年の禁煙支援に際して指導開始後 1 か月における有効性が示唆された。6 か月後では喫煙同居者が禁煙継続の阻害因子であることが推測された。未成年者への NRT を実施する研究において,対象者数の増加が今後の課題であるとともに,効率的に参加者を募集するためにはインフォームドコンセントや追跡方法に検討の余地があると思われた。
  • Masako KAGEYAMA, Iwao OSHIMA
    2007 年 54 巻 5 号 p. 314-323
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    Objective This study was performed to examine effects of an intervention aimed at promoting partnerships between professionals and self-help groups for family members (family groups) of persons with severe mental illness in Japan.
    Methods A group randomization design where the unit of randomization was the family group as a whole was used, with family groups (N=24) randomly assigned to either intervention or control groups. Twelve family groups and 15 professionals made up the intervention group, and 12 family groups and 14 professionals made up the control group. A total of 149 family members were eligible participants in the study; 76 from family groups in the intervention group and 73 from the control group. A semi-structured program was conducted for six months. The effects of the intervention were analyzed at three levels: the family group level, the individual family member level and the individual professional level.
    Results Significant increases were found in the number of family members registered in family groups and program satisfaction for members of the intervention family groups. Professionals involved with family groups in the intervention group felt greater empowerment than those in the control group.
    Conclusion The tested intervention proved effective for both family groups and professionals associated with the groups.
公衆衛生活動報告
  • 高岡 道雄, 浅野 悟郎, 高尾 博幸, 新谷 幸弘, 橋本 利和, 生見 哲男, 鈴 道幸, 田中 慶治, 浅田 智一, 丸山 ありさ, ...
    2007 年 54 巻 5 号 p. 324-337
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 平成17年 4 月25日に発生した JR 福知山線列車事故における公衆衛生の立場からの支援活動を検証することで,今後の災害時の保健所活動の参考とすることを目的とした。
    方法 事故発生からの時系列に沿って保健所の保健医療援護活動を中心に記述し,検証した。またメンタルヘルス対策や救助活動参加者に対する健康診断についても記述し,検証した。
    成績 保健所が関わった医療援護活動は 4 日間の長期にわたった。事故直後の現場でのトリアージへの協力とともに以下の活動を行った。①広域災害・救急医療情報システムへの入力を医療機関に対し要請,②救護班の派遣,③遺体安置所の設置調整,④事故現場での検死トリアージの実施,⑤医療機関へ搬送された負傷者の安否情報の収集,⑥被災マンション住民等の心のケア相談,⑦救助活動従事者への post traumatic stress disorder (PTSD)簡易検査および血液感染の有無のチェック。
    結論 保健所が関わった支援活動からみると今回の事故の特徴は,地域住民の救助活動の参加があったことと救助活動が 4 日間と長期にわたったことである。前者については,特に救助活動参加者の心のケアと血液を介する感染の健康チェックが必要となり,後者については救急トリアージと検死トリアージの適切な実施,遺体安置への配慮,安否情報の把握が重要となった。
資料
  • 藤井 千枝子, 増田 真也
    2007 年 54 巻 5 号 p. 338-347
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,パーキンソン病(以下「PD」とする。)患者の在宅での療養生活上のニーズや,介護サービスの利用の現状が明らかでないため,どのような支援を必要としているかについて調査を実施した。
    方法 2004年に全国パーキンソン病友の会の東京都支部会員に対して,患者の受けた診断や,介護保険制度に関する質問紙調査を行った。また,1995年の同会会員を対象とした参加の場や困っていることの調査との比較を行った。1995年の調査では,等間隔抽出法により無作為に会員の半数に質問紙を単独に郵送し,2004年は全会員に会報に同封し,質問紙を郵送した。どちらも無記名自記式とし,郵送にて回収した。
    結果 1995年の回収率は52.9%,2004年の回収率は21.3%であった。どちらも平均年齢69.0歳であり,診断からの年数や,性別割合は変わらなかった。1995年と比べ2004年の回答者は,主症状と困っていることが「ある」と答えた割合が高かく重症化していた。参加の場としては,仕事場が減り,仕事以外に人に合う目的の場や趣味の場や気持ちの落ち着く場が増えていた。情報源は,保健師が減り,雑誌が増えた。初期診断に気持ちの問題と言われた人が増えていた。
     2004年の回答者のうち,介護保険制度の介護認定を58.2%が受けており,そのうち,37.3%が認定のレベルより重度であると答えた。デイサービスについて,要介護 3 では,19.0%の人が参加時間が希望時間よりも短いと答え,要介護 5 では,26.7%が希望時間よりも長いと答えた。入所して悪くなった経験は7.5%があると回答した。
    結論 1) 1995年の調査と比べ2004年の回収率は低く,さらに対象は友の会会員であり,PD 患者全ての特徴を示しているというには限界があるが,2004年の重症度は高く,困っていることは増え,一方で,趣味の場や,気持ちの落ち着く場は増えていた。
     2) 初期診断で気持ちの問題という印象を受けるように,PD の精神面への影響は多くの要因が絡まっており,PD 患者の精神支援は重要となる。
     3) 患者は,介護度認定されたよりも重度と思う場合や,サービスにより悪化したと感じることがある。PD の特徴を理解し,症状によって適したサービスや,日常生活の中にリハビリテーションをどのように取り入れるかの視点がますます必要になっていると思われる。
     4) 情報源が不特定の情報発信者が見えない状況も考えられ,情報をどのように患者が受け止めたかという情報支援が必要である。
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