目的 本研究は,パーキンソン病(以下「PD」とする。)患者の在宅での療養生活上のニーズや,介護サービスの利用の現状が明らかでないため,どのような支援を必要としているかについて調査を実施した。
方法 2004年に全国パーキンソン病友の会の東京都支部会員に対して,患者の受けた診断や,介護保険制度に関する質問紙調査を行った。また,1995年の同会会員を対象とした参加の場や困っていることの調査との比較を行った。1995年の調査では,等間隔抽出法により無作為に会員の半数に質問紙を単独に郵送し,2004年は全会員に会報に同封し,質問紙を郵送した。どちらも無記名自記式とし,郵送にて回収した。
結果 1995年の回収率は52.9%,2004年の回収率は21.3%であった。どちらも平均年齢69.0歳であり,診断からの年数や,性別割合は変わらなかった。1995年と比べ2004年の回答者は,主症状と困っていることが「ある」と答えた割合が高かく重症化していた。参加の場としては,仕事場が減り,仕事以外に人に合う目的の場や趣味の場や気持ちの落ち着く場が増えていた。情報源は,保健師が減り,雑誌が増えた。初期診断に気持ちの問題と言われた人が増えていた。
2004年の回答者のうち,介護保険制度の介護認定を58.2%が受けており,そのうち,37.3%が認定のレベルより重度であると答えた。デイサービスについて,要介護 3 では,19.0%の人が参加時間が希望時間よりも短いと答え,要介護 5 では,26.7%が希望時間よりも長いと答えた。入所して悪くなった経験は7.5%があると回答した。
結論 1) 1995年の調査と比べ2004年の回収率は低く,さらに対象は友の会会員であり,PD 患者全ての特徴を示しているというには限界があるが,2004年の重症度は高く,困っていることは増え,一方で,趣味の場や,気持ちの落ち着く場は増えていた。
2) 初期診断で気持ちの問題という印象を受けるように,PD の精神面への影響は多くの要因が絡まっており,PD 患者の精神支援は重要となる。
3) 患者は,介護度認定されたよりも重度と思う場合や,サービスにより悪化したと感じることがある。PD の特徴を理解し,症状によって適したサービスや,日常生活の中にリハビリテーションをどのように取り入れるかの視点がますます必要になっていると思われる。
4) 情報源が不特定の情報発信者が見えない状況も考えられ,情報をどのように患者が受け止めたかという情報支援が必要である。
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