日本公衆衛生雑誌
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55 巻 , 7 号
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原著
  • 東口 みづか, 中谷 直樹, 大森 芳, 島津 太一, 曽根 稔雅, 寳澤 篤, 栗山 進一, 辻 一郎
    2008 年 55 巻 7 号 p. 433-439
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 介護保険認定および死亡リスク予測の観点から,血清アルブミン値を特定高齢者の決定基準として用いる場合の基準値の妥当性を検討すること。
    方法 仙台市宮城野区鶴ヶ谷地区の70歳以上住民に対し,高齢者総合機能評価「寝たきり予防健診」を平成15年に行った。受診者のうち,同意が得られ介護保険認定非該当であった者832人を対象とした。血清アルブミンの基準値について,3.5 g/dL から4.0 g/dL までの範囲で0.1 g/dL ごとに基準値を変化させて,各基準値以下群の介護保険認定および死亡リスク(Cox 比例ハザードモデルにより算出),該当率,感度,特異度,陽性反応適中度を算出し,基準値間で比較検討した。
    結果 3 年間の追跡調査で,介護保険認定者111人,死亡者33人を確認した。重複者を除いた合計は130人であった。介護保険認定および死亡リスクは,血清アルブミン値3.5 g/dL から4.0 g/dL の基準値すべてで有意に上昇した。各基準値の該当率は,3.5 g/dL で1.3%, 3.8 g/dL で9.6%, 4.0 g/dL で29.6%であった。感度は3.5 g/dL で5.4%, 3.8 g/dL で18.5%, 4.0 g/dL で45.4%であった。特異度は3.5 g/dL で99.4%, 3.8 g/dL で92.0%, 4.0 g/dL で73.4%であった。陽性反応適中度は3.5 g/dL で63.6%, 3.8 g/dL で30.0%, 4.0 g/dL で24.0%であった。血清アルブミン値3.8 g/dL を基準値とした時の,最大 3 分位群(4.4 g/dL 以上)を reference とした場合の性・年齢補正ハザード比(95% CI)は,基準値以下群(3.8 g/dL 以下)で2.1(1.1-3.9),最小 3 分位群(3.9-4.1 g/dL)で1.5(0.9-2.5),中間 3 分位群(4.2-4.3 g/dL)で1.0(0.6-1.7)であった。
    結論 該当率および感度,特異度の点から,血清アルブミン値3.8 g/dL を基準値とすることの妥当性が示唆された。
  • 内田 博之, 小田切 陽一, 大竹 一男, 小林 順
    2008 年 55 巻 7 号 p. 440-448
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 日本人女性の婚姻動向に及ぼす年齢,時代およびコホートの効果を age-period-cohort (APC) 分析によって明らかにし,出生動向における 3 効果の変化パターンとの比較を行って関連性について明らかにする。
    方法 婚姻動向のコホート分析には1985年から2005年の期間の19歳から38歳の母の年齢別婚姻数と各歳別日本人女子推計人口(人口推計年報)を使用して標準コホート表を作成した。これにベイズ型 APC 分析を適用して,婚姻動向に与えた年齢効果,時代効果,コホート効果を分離して推定した。同期間の同じ対象における出生動向の APC 分析の結果と比較するために,得られた各効果の推定値を正規化することで各効果の変化のパターンを比較した。
    結果 日本人女性の婚姻動向に対する年齢,時代,コホート効果のうち,年齢効果がもっとも大きく,25歳で効果が最大となった。時代効果は1997年以降,増大トレンドを示していたが,他の 2 効果と比べて相対的に小さかった。コホート効果は年齢効果に次いで大きく,1966年生まれを変曲点として,それ以降のコホートでの低減トレンドが,1982年生まれのコホートを変曲点として増大トレンドに転じていた。婚姻と出生に対する 3 効果の変化パターンの比較では,年齢効果が最大となる年齢は婚姻の場合が25歳,出生が28歳であり,婚姻の方が出生よりも若齢で効果が最大となっていた。時代効果は,婚姻,出生ともに1991年まで低減トレンドを示したが,婚姻では1997年から,出生では1992年から増大トレンドに転換していた。コホート効果は,出生の場合には,1961年生まれを変曲点とした低減トレンドへの転換と1977年生まれを変曲点とした増大トレンドへの転換が認められたのに対して,婚姻では,トレンドの転換はそれぞれ1966年生まれを変曲点とした低減トレンドへの転換と1982年生まれを変曲点とした増大トレンドに転じていた。
    結論 婚姻動向に対して,3 効果のうち年齢効果がもっとも大きく,時代効果は1997年以降に増大トレンドに転じていたがその効果は僅少であった。一方,1966年生まれ以降,低減してきたコホート効果は,1982年生まれを変曲点として増大トレンドに転じていた。
     婚姻動向と出生動向の 3 効果の変化パターンの比較からは,年齢効果は婚姻が出生よりも 3 歳若齢で効果が最大を示したが,時代効果では,出生の方が婚姻よりも 5 年先行してトレンドの転換が起きており,コホート効果では,出生の方が婚姻よりも 5 年後年生まれのコホートでトレンドの転換が起きていたことが明らかになった。
資料
  • 道川 武紘, 西脇 祐司, 菊池 有利子, 中野 真規子, 高見澤 愛, 小池 美恵子, 菊池 徳子, 向山 由美, 中澤 あけみ, 西垣 ...
    2008 年 55 巻 7 号 p. 449-455
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 近年,欧米では,尿失禁(尿漏れ)はこれまで考えられてきた以上に有訴率が高く,若い世代から抱えている問題であるという報告がなされ,公衆衛生上看過できない課題と考えられている。しかしながら,わが国においては,尿失禁に関する地域住民を対象とした調査は多くなく,その実態は明らかではない。本研究では,構造化質問票を用いて中高年者における尿失禁の有訴率を明らかにするとともに,その程度(頻度および量)や危険因子としての分娩回数との関連,相談先など,今後の予防施策立案に役立つ資料の提供を目的とした。
    方法 長野県 K 町における住民基本健康診査受診者のうち,質問票に回答した985人(男性350人(平均年齢62.5±標準偏差11.2歳),女性635人(64.3±11.4歳))を対象とした。自記式質問票にて調査した内容は,尿失禁の頻度・量,QOL スコア,病因の自覚的評価(以上は,尿失禁の症状・QOL 質問票 Scored International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form 日本語版を使用)と,相談相手,分娩回数(女性のみ)である。
    結果 尿失禁の有訴率は,男性で11.4%,女性で34.5%であり,年齢が高くなるほど有訴率も上昇した(P for trend<0.01)。女性では,40歳代でも有訴率が高く,30.4%であった。分娩は尿失禁との関連を示し,分娩経験なしに比べて,4 回以上の分娩経験者では,尿失禁のオッズが4.26倍(95%信頼区間:1.13-16.10)であった。また,女性では尿失禁の頻度が増えるほど QOL が低下していた。相談相手としては,男性では医療機関(54.2%)と家族(34.0%)が大部分を占めた。女性は,39.6%が医療機関,22.6%が家族,16.5%が誰にもしない,10.6%が医療機関以外の保健看護職,9.5%が友人だった。
    考察 尿失禁の有訴率は高く,とくに女性では40歳代でもすでに多くが抱えている問題であることが示された。また,QOL を低下させること,複数分娩経験者などのハイリスク集団が存在する事,一方で誰にも相談しない有訴者がいる事,などが明らかになり,今後地域保健の現場で早急に取り組むべき問題である事が示唆された。
  • 中西 三春, 長江 弘子, 永田 智子, 服部 啓子, 新野 由子
    2008 年 55 巻 7 号 p. 456-464
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/07/01
    ジャーナル フリー
    目的 病院における高齢者への退院支援の実施状況を把握し,在宅ケア事業所が病院内で関与しているか否かで退院支援活動の実施割合に差があるか比較検討した。
    方法 分析対象は全国の100床以上を有する一般病院434施設であった。各病院における退院支援の担当者に質問紙調査を行い,在宅ケア事業所が病院内で退院支援に関与しているか否かを把握した。回答に基づき,対象病院を在宅ケア事業所が関与している「関与群」の138病院と,関与していない「非関与群」の296病院とに分類した。二群間で退院支援活動の実施割合を比較し,オッズ比(OR)を算出した。併設施設の有無を制御変数として投入した。
    結果 退院支援として定義した24項目の活動のうち,13項目において二群間のオッズ比は有意であり,いずれも関与群の方が非関与群より実施割合は高かった(OR の範囲:2.430-5.497)。オッズ比が高かった上位 3 項目は「退院前訪問による療養環境調整と療養指導」,[OR=5.497, 95%信頼区間(CI): 2.604-11.602],「患者と家族との関係の調整」(OR=4.871, 95%CI: 1.323-17.930)および「在宅で無理なく実施できるケア方法の調整」(OR=4.740, 95%CI: 1.825-12.311)であった。
    結論 在宅ケア事業所が病院内で退院支援に関与している病院では,「退院前訪問による療養環境調整と療養指導」,「患者と家族との関係の調整」および「在宅で無理なく実施できるケア方法の調整」といった高齢者への退院支援活動の実施割合が関与していない病院よりも高いことが示された。今後は病院の利用者の特徴や病院が地域で担う役割も考慮に入れて,退院支援による在院期間の短縮化や再入院率の減少,利用者や家族の満足度といった効果の検証が必要と考えられた。
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