日本公衆衛生雑誌
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61 巻 , 6 号
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原著
  • 望月 由妃子, 田中 笑子, 篠原 亮次, 杉澤 悠圭, 冨崎 悦子, 渡辺 多恵子, 徳竹 健太郎, 松本 美佐子, 杉田 千尋, 安梅 ...
    2014 年 61 巻 6 号 p. 263-274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 児童虐待件数は毎年増加しており,虐待の予防,早期発見,早期支援に関し,実態に基づく適切かつ具体的な取り組みが求められる。本研究の目的は,保育園の園長および保育士が「虐待疑い」と評価し,市と情報交換しながら見守りをしている子どもの養育者の育児不安および育児環境と虐待との関連を明らかにし,虐待の予防,早期発見・早期支援の一助とすることである。
    方法 A 市の全公立保育園に在園する子どもの全養育者1,801人に育児支援質問紙および育児環境指標(ICCE)への記入を依頼した。育児支援質問紙は養育者の育児困難感や不安・抑うつ傾向を,育児環境指標は子どもと環境とのかかわりの質や頻度などを測定する。専門職が「虐待疑い」と評価した子どもの養育者を「虐待群」,それ以外を「非虐待群」とした。育児困難感,不安・抑うつ傾向および育児環境と虐待との関連を検討するため,両質問紙の回答をリスク群,非リスク群の 2 群に分類し,各リスク項目の有無の独立性について,Fisher の正確検定により検定した。さらに虐待と有意に関連する要因を他の項目の影響を互いに調整した上で検討するため,「虐待」を目的変数,育児不安と養育環境で有意な関連のみられた項目を説明変数,性別と年齢を調整変数とし,多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比を算出した。
    結果 多重ロジスティック回帰分析の結果,「虐待群」は「非虐待群」と比較して,育児不安では,「不安や恐怖感におそわれる」が4.9倍,育児環境では,「保育園以外に子どもの面倒をみてくれる人がいない」が4.7倍であり高い値を示した。調整変数(性別,年齢)では有意な関連はみられなかった。
    結論 育児困難感や不安・抑うつ傾向および育児環境と虐待との関連より,保育園等の専門職が養育者への具体的かつ活用可能な支援の方策が得られ,虐待の予防,早期発見,早期支援の一助となることが示唆された。
  • 鈴木 由里子, 田髙 悦子
    2014 年 61 巻 6 号 p. 275-285
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 複雑化,多様化する地域社会の健康課題を解決するため,行政保健師 1 人 1 人の施策化能力の向上が急務である。しかし,現状では,行政保健師の施策化能力の統一された定義はなく,能力の評価を行うことは困難である。そこで,本研究では,行政保健師における施策化能力評価尺度を開発し,信頼性と妥当性を検証することを目的とした。
    方法 まず,先行文献のレビューならびに A 市の施策化経験が豊富な保健師 5 人への個別インビュー調査により「行政保健師の施策化能力評価尺度」(案)を作成した。次いで,同市の常勤保健師全数(約460人)を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施し,「行政保健師の施策化能力評価尺度」(案)の重要度と自己評価等を基に信頼性と妥当性を検証した。
    結果 2 因子16項目からなる「行政保健師の施策化能力評価尺度(第 1 因子;コミュニティパートナーシップ,第 2 因子:地域診断サイクル)」が開発され,確証的因子分析では,一部修正したモデルで GFI=.889, CFI=.956, RMSEA=.068と良好な適合値が得られた。また,尺度全体の Cronbach α 係数は0.93であり,十分な内的整合性をもつと判断された。また,尺度全体と既存尺度「事業・社会資源の創出に関する保健師のコンピテンシー評価尺度」における Pearson の相関係数は,尺度全体 r=0.52(P<0.01)で有意な正の相関がみられた。
    結論 行政保健師の施策化評価尺度を開発し,信頼性・妥当性が検証された。
  • 清野 諭, 谷口 優, 吉田 裕人, 藤原 佳典, 天野 秀紀, 深谷 太郎, 西 真理子, 村山 洋史, 野藤 悠, 松尾 恵理, 干川 ...
    2014 年 61 巻 6 号 p. 286-298
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 群馬県草津町と東京都健康長寿医療センター研究所は,共同して過去10年間介護予防研究事業を実施し,これにより地域高齢者の健康余命が延伸し介護保険認定率が低下したことを確認した。本研究の目的は,10年間毎年実施された高齢者健診(にっこり健診)の受診者集団における身体,栄養,心理・社会機能の推移を分析し,健康余命の延伸や介護保険認定率の低下に寄与したと考えられる要因を明らかにすることとした。
    方法 介護予防共同研究事業の一環としておこなわれた「にっこり健診」(以下,健診:2002~2012年に毎年実施,70歳以上高齢者人口を分母とした受診率は平均で34.7%)と「いきいきアンケート」(以下,悉皆調査:2003~2011年に隔年実施,70歳以上高齢者全員を対象とした応答率は平均で95.0%)の経年データを用いた。まず,健診受診群の偏りをみるため,受診群の老研式活動能力指標(TMIG–IC)得点の年次推移を悉皆調査群のそれと比較した(解析 1)。次に,健診受診群の身体機能(4 項目),栄養状態(3 項目),心理・社会機能(4 項目)の変化を検討するため,2002年次の数値を基準(平均 0)とした各年次の標準得点を求め,10年間の標準得点の推移にあてはめた線形回帰直線(切片 0)の傾きを比較した(解析 2)。
    結果 解析 1 では,健診受診群の TMIG–IC 得点が悉皆調査群のそれよりも高値を示し,群による有意な主効果がみられた。しかし,有意な交互作用(年次×群)はみられなかった。同一年次の両群間比較では,男女とも70歳台では TMIG–IC 得点が近似していたが,80歳以上ではその差が拡大する傾向にあった。解析 2 では,男女ともに 4 項目すべての身体機能が漸増的かつ有意に向上し,線形回帰直線の傾きは,最大歩行速度(男性:0.050,女性:0.067),通常歩行速度(男性:0.048,女性:0.060)の順に大きな値を示した。加えて,女性では Mini-Mental State Examination 得点 (MMSE: 0.053), Geriatric Depression Scale 短縮版得点(GDS: 0.027), TMIG–IC の下位尺度である社会的役割得点(0.019)が漸増的かつ有意に向上した。
    結論 健診受診群は高次生活機能の高い集団に偏っているが,その偏りの方向性と程度は,調査期間内で同程度と考えられた。健診受診群において,男性では身体機能が,女性では身体機能に加えて MMSE や GDS,社会的役割といった心理・社会的機能が10年間で有意に向上した。同町で健康余命の延伸や介護保険認定率の低下がみとめられた背景には,同町高齢者の機能的健康度の向上があることが示唆された。
  • 月野木 ルミ, 村上 義孝
    2014 年 61 巻 6 号 p. 299-305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/07
    ジャーナル フリー
    目的 本研究では,平成16年度国民生活基礎調査の匿名データに基づき単独世帯と内分泌代謝疾患通院との関連を解析した。
    方法 統計法第36条に基づき申請・入手した国民生活基礎調査匿名データ B を利用した。対象者は20歳以上の者とし,年齢,医療機関への入院・入所者,喫煙習慣,日常生活動作に関する障害(以下,ADL 障害),就業が不詳のものを除外した11,928人とした。内分泌代謝疾患通院のリスクと世帯構造との関連の検討にはロジスティック回帰を用い,結果変数は内分泌代謝疾患の通院有無,説明変数として世帯構造(単独世帯,同居世帯)と年齢層(20–49歳,50–64歳,65歳以上)をそれぞれ投入し,調整因子として就業有無,喫煙状況,ADL 障害有無を加え解析した。年齢と世帯構造の交互作用の有無は尤度比検定を用いて検討した。
    結果 内分泌代謝疾患の通院者数は男性443人,女性529人であった。男性では,世帯構造でみると,単独世帯者では同居世帯者よりオッズ比は高くなった[単独世帯のオッズ比1.62(95%信頼区間:1.03–2.56)]。また,参照群を20–49歳とすると,内分泌代謝疾患通院に関するオッズ比は年齢カテゴリの上昇に伴い増加傾向を示すが,65歳以上ではその増加傾向は鈍化した。年齢,世帯構造と内分泌代謝疾患通院の関連には有意な交互作用が認められなかった。一方,女性では世帯構造,単独世帯者と同居世帯の間では,明確な差異は認められなかった。
    結論 日本人単独世帯男性では,内分泌代謝疾患通院リスクが高く,全年齢にわたる生活習慣病対策を考える必要性が示唆された。
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