日本公衆衛生雑誌
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59 巻 , 4 号
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原著
  • 田中 美加, 久佐賀 眞理, 田ヶ谷 浩邦, 大倉 美鶴, 渡辺 知保
    2012 年 59 巻 4 号 p. 239-250
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 我が国において高齢者の睡眠と抑うつの関連を調べた研究は十分でなく,性差に焦点を当てて解析を行った研究はほとんどない。本研究は,高齢者における睡眠と抑うつとの関連性について,とくに性別による違いに焦点を当てて解析を行った。
    方法 参加者は,熊本県の 1 つの村に居住する65歳以上の高齢者全員(563人)で,2010年 6 月から 7 月にかけて自記式質問票調査を行った。睡眠の評価には Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を,抑うつの評価には Geriatric Depression Scale Short Form(GDS-SF)を用いた。調整要因として性,年齢,受給年金の種類,居住形態,社会的役割,現病歴,既往歴,介護状況,認知機能について調査した。先行研究に従い,PSQI および GDS-SF の合計得点が 6 点以上の場合,それぞれ,睡眠の障害および抑うつが認められると評価した。睡眠と抑うつの関連を調べるために,抑うつの有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を,全体および男女別に行った。独立変数としてモデルに投入する調整要因間には,ある程度の相関関係が存在すると予想されたため,多重共線性による影響の有無やモデルの頑健性を確認する目的で,調整要因を段階的に投入したモデルを構築した。
    結果 男女含めた全体の解析では,すべてのモデルにおいて抑うつと睡眠の障害との間に有意な関連が認められ,すべての変数を調整要因として投入した際のオッズ比は1.92(95%信頼区間:1.11–3.32)であった。男性においては,未調整時には抑うつと睡眠の障害との間に有意な関連が認められたものの,調整後はその関連は有意ではなかった。一方,女性においては,いずれのモデルにおいても有意な関連を認め,すべての変数を調整要因として投入した際のオッズ比は2.28(95%信頼区間:1.11–4.69)であった。
    結論 本研究の結果,高齢者においては,抑うつと睡眠の障害との間に有意な関連があることが示唆された。しかし,その関連には性差があり,女性においては睡眠の障害と抑うつの間には有意な関連が認められるものの,男性では有意な関連は認めなかった。男女間で違いが認められた理由は明確ではないが,神経伝達物質をはじめとする様々な要因が関与している可能性が考えられる。今後の高齢者の抑うつ対策を効果的なものにするためには,性差を考慮しながら研究を進めていくことが重要であると考えられた。
研究ノート
  • 加藤 由希子, 有本 梓, 島村 珠枝, 村嶋 幸代
    2012 年 59 巻 4 号 p. 251-258
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 近年,結核患者数の減少に伴い,患者の早期発見が困難となることが懸念されている。発見の遅れは,個人の重症化のみならず周囲への感染拡大につながるため,対象に合わせた介入が必要である。発見の遅れは,受診の遅れと診断の遅れに大別されるが,発見の遅れには診断の遅れよりも受診の遅れが強く影響していることが明らかになっており,受診の遅れに関する対策は重要である。そこで本研究では,肺結核患者の受診の遅れに関連する要因を症状の種類や症状に対する認識,保健行動の優先性,受診以外の対処行動等の観点から明らかにする。
    方法 平成22年 1 月 1 日から11月30日までに調査協力保健所17か所に新規登録された20歳以上の肺結核患者の内,自覚症状を有し,医療機関受診によって発見された者を対象に構造化面接調査を実施した。面接では患者の人口学的特性に加え,症状の種類や症状出現時の対処行動,結核に関する認識,経験について尋ねた。
    結果 回収60人分の内,外国人や無症状,肺外結核,再治療者のいずれかに該当した 7 人を除く53人分を分析対象とした。対象者の平均年齢は60.2±19.2(mean±SD)歳で,受診の遅れがみられた者は22人(41.5%)であった。「痰」,「血痰」症状を有する者,「喀痰塗沫陽性」者,「保健行動の優先性が低い」者,「かかりつけ医がいない」者,「人に相談しない」者,「市販薬を服用した」,「病院嫌い」の者が有意に遅れやすかった。
    結論 受診が遅れる者は症状が悪化していても,受診せず市販薬の服用をする,周囲の人や医療者への相談をしない,等の特徴があきらかになった。今後は,結核の症状に関する情報や早期受診のメリット,相談相手やかかりつけ医を持つことの必要性を伝えていく必要があることが示された。
  • 蔭山 正子, 代田 由美, 藤賀 美枝子, 川畑 佳奈子, 田口 敦子
    2012 年 59 巻 4 号 p. 259-268
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 統合失調症の本人を治療につなげる際の行政専門職による家族への支援内容を明らかにすることを本研究の目的とした。
    方法 質的記述的研究法を用いた。協力者は,関東近郊の保健所および市町村に所属する精神保健福祉士と保健師で経験年数 5 年以上の者10人である。半構造化面接を行い,統合失調症未治療•治療中断の本人の家族から受診に関する相談を受けて本人と家族を支援した結果,本人が医療保護入院となった支援事例のうち,適切に家族を支援できたと自らが判断した一事例をあげてもらい,その支援内容をとくに家族への支援に着目して質問した。逐語録から家族への支援という視点で意味のまとまり毎にコード化し,コードの類似性•相違性を比較しながら,抽象度を上げてカテゴリ化を行った。
    結果 統合失調症の本人を治療につなげる際の専門職による家族への支援内容として,6 つのカテゴリ【介入の見通しを立てる】,【家族と相談関係を築く】,【家族の決心を待つ】,【家族による説得を見守る】,【入院までの体制を整える】,【入院後も本人と家族を支える】と19のサブカテゴリが抽出された。
    結論 専門職は,統合失調症の本人と家族の長期的な家族関係と本人の予後への肯定的影響を見据えて,家族が本人に受診を説得することおよび家族が本人を入院につなげる決心をすることを支援しており,これらは重要な支援であることが示唆された。本研究の結果は,統合失調症の本人を治療につなげる際の専門職による家族への支援の質を高めることに寄与できる。
  • 曽我 洋二, 黒川 学, 衣川 広美, 内野 栄子, 白井 千香, 河上 靖登
    2012 年 59 巻 4 号 p. 269-276
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 病原体サーベイランスが経口生ポリオワクチン接種後の便中ポリオウイルスの保有状況を知る一指標として有用であるかを検討し,その現状を分析すること。
    方法 神戸市における報告例:2000年 1 月 1 日から2010年 6 月30日の10年 6 か月間に,便検体よりポリオウイルスが検出された例を抽出し,接種からウイルス検出までの期間,年齢,性別について検討する。
      全国における報告例:2000年 1 月 1 日から2010年12月31日の11年間に,全国感染症サーベイランスの病原体検出情報システムに登録された糞便検体からポリオウイルスの検出報告があった例を抽出し,検出されたウイルスの血清型,年齢,性別を分析し,年齢とポリオウイルスの血清型別の関連についてさらに検討する。
    結果 神戸市における報告例:10年 6 か月間に,31症例33件の便からのポリオウイルス検出があった。年齢は 2 歳以下が96.8%を占め,性別では,女性が54.8%を占めていた。ポリオウイルスの検出は,ワクチン集団接種期間中および,接種後 2 か月間に限られていた。
      全国における報告例:11年間に,全国感染症サーベイランスシステムの病原体検出情報システムに,852件の報告があった。年齢は 2 歳以下が97.3%を占め,性別では女性が54.6%を占めていた。ポリオウイルスの血清型の分布を年齢別にみると 0 歳代の群では 1 型,2 型,3 型がそれぞれ33.2%,44.8%,22.0%,1 歳代の群では22.8%,27.6%,49.6%と 1 歳を境に排泄されるポリオウイルスの血清型の分布に違いがみられた。1 歳以上の群では 1 歳未満の群に比べ,便からの 3 型の検出が有意に高かった(オッズ比3.4,95%信頼区間2.5–4.6)。
    結論 神戸市および全国の病原体サーベイランスのデータは,経口生ポリオワクチン接種後の便中ウイルス検出に関する知見と矛盾していなかった。病原体サーベイランスは比較的幅広い対象から集積されていることから,その結果を地域における経口生ポリオワクチン接種後の便中ポリオ保有状況の間接的な指標として捉えることができる。生ワクチン接種者からの二次感染の現状を重く受け止めるべきであるとともに,将来の不活化ワクチン移行に向けサーベイランスの精度の向上等が期待される。
資料
  • 今村 佳代子, 瀬上 綾, 和田 みゆき, 迫田 真貴子, 瀬戸 梢, 原口 美穂, 松木田 恵美, 丸山 千寿子
    2012 年 59 巻 4 号 p. 277-287
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/04/24
    ジャーナル フリー
    目的 母親の食生活に対する行動変容の準備性と子どもの朝食摂取の状況および家族の健康関連行動との関係を明らかにすることを目的とした。
    方法 調査に同意の得られた鹿児島県内の18小学校の児童1,949人と,7 校の保護者881世帯を対象として自記式調査法でアンケートを実施した。児童には,朝食の摂取状況やアンケート記入日の朝食の内容を回答させ,保護者には朝食の摂取状況と,Prochaska らのステージ理論に基づいて食生活に対する行動変容の準備性を 5 段階で回答してもらった。
    結果 回収率は児童が83.3%(1,624人),保護者が83.1%(732世帯)であった。朝食を毎日食べる児童は83.1%であり,15.1%の児童に欠食の習慣がみられた。アンケート記入日の朝食は98.6%の者が食べていたが,ごはんやパンなどの「主食」のみを食べていた者が15.1%おり,「主食」,「主菜」,「野菜•果物」をそろえて食べた児童は34.0%にとどまった。母親の食生活に対する行動変容の準備性は,「維持期」が28.1%,「実行期」が24.0%,「準備期」は6.9%,「関心期」は9.8%,「無関心期」は5.7%であった。そこで,既に食生活に対して何かを実行している「維持期」,「実行期」の者を『実行群』,現在食生活に対して何も実行していない「準備期」,「関心期」,「無関心期」を『非実行群』,質問に対して無回答の者を『無回答群』(25.5%)として 3 群間で比較した。母親が実行群の児童と比べて,無回答群では朝食を欠食する者が多かった(P=0.000)。調査日の朝食内容は,「野菜•果物」を食べた児童が,実行群と比べて非実行群では少なく(P=0.003),無回答群では(P=0.036)少ない傾向にあった。さらに実行群の母親に比べて非実行群と無回答群ではそれぞれ惣菜や市販弁当の利用頻度が高い傾向にあり(P=0.025, P=0.036),家族と食事や食べ物についての話し合いをしておらず(P=0.004, P=0.002),父親の喫煙率も高かった(P=0.000, P=0.000)。
    結論 母親の食生活に対する行動変容の準備性により児童の朝食摂取習慣や内容,および家族の健康関連行動が異なることが示唆された。今後,学童期の子どもと母親を対象とした食育を実施する際,母親の食生活に対する行動変容の準備性を考慮したアプローチをする意義は大きいと考えられた。
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