日本公衆衛生雑誌
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64 巻 , 11 号
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原著
  • 高橋 恭子, 築島 恵理
    2017 年 64 巻 11 号 p. 655-663
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/16
    ジャーナル フリー

    目的 健康寿命の延伸は地域における保健福祉活動の重要課題であり,地域の実情に合った予防対策が求められている。本研究では,健康寿命短縮の状態となる重度な介護度をもたらす疾病を明らかにすることを目的として主治医意見書に記載された疾患名の分析を行った。

    方法 2013, 2014年度の2年間に新規に要介護状態(要支援を含む)と認定された第1号被保険者4,089人を対象とし,記載された疾患名を国民生活基礎調査の介護票の疾病分類に基づいて分類した。介護度の軽重については,要支援1~要介護1の群(以下「軽度群」とする。)と要介護2~5の群(以下「重度群」とする。)の2群に分け,各原因疾病と介護度との関連について男女別にχ2検定を用いて検討した。その後,単変量解析で有意な関連が見られた疾病を説明変数とし,年代を調整変数とした多重ロジステッィク回帰分析を実施した。

    結果 男性では悪性新生物が介護度にかかわらず最も多く,軽度群では127人(12.1%),重度群112人(22.2%)であったのに対して,女性の軽度群は関節疾患が最も多く452人(23.0%),重度群では認知症が108人(19.0%)で最も多かった。単変量解析で介護度群間に有意差が認められた疾病は,男性では脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),関節疾患(P<0.001),糖尿病(P=0.015),骨折・転倒(P=0.028),その他(P<0.001)であり,女性では,脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),関節疾患(P<0.001),認知症(P<0.001),パーキンソン病(P=0.003),その他(P<0.001)であった。多重ロジステッィク回帰分析の結果,男性では脳血管疾患(P=0.002),悪性新生物(P<0.001),骨折・転倒(P=0.031)が重度の介護度と関連した要因として,関節疾患(P<0.001),高血圧(P<0.001)が軽度の介護度と関連した要因として認められた。女性に関しては,脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),認知症(P<0.001),パーキンソン病(P=0.002)が重度の介護度と関連した要因として,関節疾患(P<0.001),高血圧(P<0.001)が軽度の介護度と関連した要因として認められた。

    結論 新規認定時点で重度の要介護度と関連する要因としては,男女共通に脳血管疾患,悪性新生物であることが明らかとなった。これらの疾患は前期高齢者において多い疾患であり,高齢期になる以前の生活習慣病対策が介護予防の上からも重要であることが示唆された。

  • 山下 優子, 関 奈緒, 梅田 君枝, 田邊 直仁, 篠田 邦彦, 古西 勇, 関谷 昭吉, 関井 愛紀子, 太田 玉紀
    2017 年 64 巻 11 号 p. 664-671
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/16
    ジャーナル フリー

    目的 メディカルフィットネス(以下MF)における個人特性に応じた効果的な運動継続支援方法を検討するため,MF利用経験者における個人の性格特性と運動継続との関連および運動継続と関連を認めた性格特性と運動継続のために重要視するものとの関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 A病院付属のMFで開設以降に会員登録をした全成人283人を対象に,郵送法にて無記名自記式アンケート調査を実施した(回収率61.8%)。性格特性の尺度はBig Fiveの5特性を10項目で測定するTen Item Personality Inventoryの日本語版を使用し「外向性・協調性・勤勉性・神経症傾向・開放性」を評価した。調査時点での運動習慣が「ある」と回答した者を自覚的運動継続「あり」群と定義した。

    結果 自覚的運動継続「なし」群は,男性では「勤勉性」が有意に低く(P=0.003),女性では「神経症傾向」が有意に高かった(P=0.018)。男性の「勤勉性」は運動継続のために重要視するものといずれの項目も関連を認めなかった。女性の「神経症傾向」は「目標を達成できる」と負の相関(r=−0.197, P=0.048)を認めた。

    結論 MFにおける運動継続支援には性差や性格を考慮することが重要と考えられた。勤勉性の低い男性の明らかなニーズは把握できなかったが,神経症傾向の高い女性は「目標を達成できる」を重要視していない傾向が認められたことから,目標達成に固執しない声かけや,指導方法が必要である可能性が示唆された。

  • 濱井 妙子, 永田 文子, 西川 浩昭
    2017 年 64 巻 11 号 p. 672-683
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/16
    ジャーナル フリー

    目的 全国自治体病院を対象に外国人患者の受入実績とリスクマネジメントの観点から,病床規模別に医療通訳者のニーズを明らかにする。

    方法 2016年2月に全国自治体病院894病院を対象に郵送法質問紙調査を実施した。調査項目は,外国人患者の受入実績,医療通訳者ニーズ,言葉の問題によるインシデントとした。インシデント事例は国立大学附属病院医療安全管理協議会のインシデント影響度分類(レベル0~5・その他)を用いた。統計解析は病床規模別ペアワイズ法,2変数の関連はχ2検定などで分析した。本研究では小病院を20~99床,中病院を100~399床,大病院を400床以上とした。

    結果 質問紙の回収率は小病院が30.1%,中病院が32.5%,大病院が32.8%であった。過去1年間に外国人患者を受け入れた病院は84.9%~97.6%の範囲であった。急患・救急,入院,検査,手術の受入は中・大病院が多かった。日本語ができない患者への対応は,患者が連れてきた通訳者を利用している病院が84.3%~86.7%の範囲で多かった。患者が連れてくる通訳者が正確に通訳をしていると考えている病院は小病院が66.7%,中病院は58.5%,大病院は44.7%であった。診療報酬で認められたら医療通訳者を利用すると考えている病院は83病院のうち,小病院が31.6%,中病院は76.5%,大病院は92.3%であった(P<0.001)。外国人患者を受け入れるために専門の訓練を受けた医療通訳者が必要と考えている病院は小病院が75.7%,中病院は84.7%,大病院は94.6%であった(P=0.014)。必要と思う理由は,「医療リスクを低減するため」が81.1%~94.3%の範囲で最も多かった。インシデントは274病院のうち13病院(4.7%),17事例報告された。影響度は,レベル0がMRI中止など3事例,レベル1が無断離院や点滴自己抜去など9事例,レベル2が墜落分娩1事例,レベル5が死亡1事例,その他が3事例あった。小病院から報告はなかったが,外国人患者数が少ない病院からは報告されていた。

    結論 医療通訳者ニーズは,外国人患者数と来院目的の観点からは小病院で顕在化されておらず,中・大病院で多かった。リスクマネジメントの観点からは,小・中・大病院において言葉の問題が患者の安全を脅かすリスクがあり,訓練を受けた医療通訳者のニーズはあることが示唆された。

資料
  • 町田 大輔, 吉田 亨
    2017 年 64 巻 11 号 p. 684-694
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/16
    ジャーナル フリー

    目的 都市近郊部在住中高年男性における,市民農園利用状況と市民農園の利用による健康関連要因の主観的な変化(以下,健康関連要因の変化)との関係,市民農園の利用を含めた野菜・果物栽培活動と健康関連要因との関係を明らかにし,市民農園等での野菜・果物栽培活動が地域住民の健康づくりに利用可能か検討する。

    方法 群馬県A市在住の50~74歳の男性を対象とした横断調査を行った。調査項目は,全体では,基本属性,野菜・果物栽培活動の状況,健康関連要因(BMI,主観的健康観,野菜・果物摂取状況,身体活動状況,居住地域の社会的凝集性の認知)とした。市民農園利用者には,市民農園利用状況,健康関連要因の変化を尋ねた。市民農園利用状況と健康関連要因の変化との関係は相関係数を用いて分析した。市民農園またはその他の場所での野菜・果物栽培活動と健康関連要因との関係は,市民農園群,その他栽培群,栽培未実施群の3群に分け,基本属性を共変量としたロジスティック回帰分析にて検討した。

    結果 相関係数を用いた分析の主な結果として,市民農園利用状況のうち「市民農園利用頻度」,「利用頻度と1回利用時間の積」と健康関連要因の変化のうち「野菜・果物摂取回数の変化」,「野菜・果物摂取量の変化」,「身体活動時間の変化」との間に,それぞれ有意な正の相関がみられた。ロジスティック回帰分析の結果,栽培未実施群と比べて市民農園群で身体活動量が23 METs・時/週以上の者が有意に多いこと,栽培未実施群と比べてその他栽培群で野菜合計摂取回数/日,ジュース以外の野菜合計摂取回数/日,ジュース以外の野菜・果物合計摂取回数/日が5回/日以上の者が有意に多いこと,座位時間が4時間/日以上の者が有意に少ないこと,居住地域の社会的凝集性の認知が中央値以上の者が有意に多いことが明らかとなった。

    結論 市民農園利用頻度が高いほど健康関連要因のうち野菜・果物摂取や身体活動時間が増えること,市民農園での野菜・果物栽培活動が身体活動量増加に寄与すること,その他の場所での野菜・果物栽培活動が野菜・果物摂取回数の増加,座位時間の減少に寄与することが示唆された。今後,正確な評価指標を用いた介入研究等により市民農園利用による健康効果を明らかにする必要がある。

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