日本公衆衛生雑誌
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57 巻 , 11 号
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原著
  • 竹内 倫子, 山本 龍生, 平井 文, 森田 学, 小寺 良成
    2010 年 57 巻 11 号 p. 959-967
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 歯周病は糖尿病や虚血性心疾患等と深く関わりがあるということが明らかになってきた。そこで今回,市町村での歯科保健事業とメタボリックシンドローム関連疾患の医療費との関係を検討した。
    方法 平成 9 年度 5 月分および平成19年度 5 月分の岡山県内市町村別国民健康保険受給対象者(40歳以上)の診療報酬明細書データを用いた。すべての診療報酬明細書について主病名として病名を 1 つのみ割り当て,病名ごとに,受診件数,受診日数,総費用額を算出した。その結果をもとに被保険者数を分母として,市町村ごとの 1 人あたり費用額を算出した。岡山県内全27市町村を歯科保健事業の有無別に 2 群に分け,各群で 1 人当たりメタボリックシンドローム関連医療費を算出した。歯科保健事業は「歯科検診を含む基本健診」等の10項目であった。
    結果 介護予防事業と歯周疾患健康相談を実施した市町村ではメタボリックシンドローム関連疾患の医療費が10年間で減少し,実施しなかった市町村では増加した。また,「歯科医師を講師に迎えての研修会・講演会」,「歯科保健を議題・課題にするような会議」を除く 7 つの歯科保健事業については,それらを実施した市町村,実施しなかった市町村ともに医療費が減少したが,実施した市町村の減少のほうが大きかった。総医療費についても似た傾向であった。歯科保健事業実施数が 3 以上と 2 以下の市町村に分け,メタボリックシンドローム関連疾患医療費の増減を年代別にみると,ほとんどの年代で歯科保健事業実施数が 3 以上の市町村の方が医療費の増加が低く,加齢に伴い差が広がっていた。人口密度の高い地域と低い地域に分けて分析しても歯科保健事業実施数が 3 以上の市町村の方が医療費の増加が抑えられていた。
    考察 歯科保健事業とメタボリックシンドローム関連疾患の医療費との直接の関係はいえないが,歯科保健事業を実施するような市町村ではメタボリックシンドローム関連疾患の医療費が減少する傾向にあった。今後さらに歯科保健に関係する事業を調査し,歯科の分野から医療費削減に貢献する可能性を検討したい。
    結論 歯科保健事業を多く実施している市町村はメタボリックシンドロームに関連する疾患の 1 人当たり医療費がより抑制する傾向にあった。
  • 本田 春彦, 植木 章三, 岡田 徹, 江端 真伍, 河西 敏幸, 高戸 仁郎, 犬塚 剛, 荒山 直子, 芳賀 博
    2010 年 57 巻 11 号 p. 968-976
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 本研究は,集会所での自主活動への参加状況と心理社会的健康および生活機能との関連を明らかにすることを研究目的とした。
    方法 対象は,宮城県の農村部に在住の65歳以上高齢者の中から無作為に 1/3 抽出で得られた413人(2007年12月31日現在)である。初回調査が2008年 2 月に,追跡調査が2009年 2 月に行われた。2 回の調査ともに回答が得られた315人のうち,回答に欠損のない218人を分析に用いた。自主活動の参加が心理社会的健康および生活機能の各指標に及ぼす影響については,自主活動参加状況を独立変数,各健康指標を従属変数とするロジスティック回帰分析を用いて分析した。
    結果 自主活動への参加状況は,1 年間に 6 回以上参加の高頻度参加者が63人(28.9%),6 回未満参加の低頻度参加者が60人(27.5%),1 回も参加しない不参加者が95人(43.6%)であった。
     自主活動の不参加者に比べ,高頻度参加者は抑うつ尺度(OR=0.34, 95%CI: 0.13–0.89),社会参加(OR=0.12, 95%CI: 0.05–0.29),老研式活動能力指標(OR=0.26, 95%CI: 0.08–0.78)の項目において有意にその機能低下を抑えていた。
    結論 高齢者の自主活動への参加は,不参加者に比べ精神的健康度や社会的健康度および高次の生活機能の低下を抑制することが示唆された。
研究ノート
  • 松井 健志, 喜多 義邦
    2010 年 57 巻 11 号 p. 977-987
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 ゲノム疫学研究への参加協力依頼に対して,一般地域住民が研究への参加又は不参加を決める理由を明らかにすることを目的とした。
    方法 本研究は,滋賀県高島町およびマキノ町(現高島市)で住民基本健診に併せて実施された,ゲノム疫学研究(高島研究)2003年度ベースライン調査(対象者2,195人)における参加・不参加の意思確認の場を用いて実施した。匿名自記式調査票(複数選択式)を用いて,高島研究の「基本調査」ならびに「ゲノム解析」への参加・不参加を決めるに至った理由について調査を行った。回答の得られた2,171人の結果について分析した。
    結果 参加または不参加を決めた理由について,「基本調査」と「ゲノム解析」との間で差異はほとんどみられなかった。参加に同意した最大の理由は,参加に伴う自己利益的な期待観であり,次に,研究の社会的価値に対する共感・理解であった。また,医師や医療機関全般に対する基本的な信頼感も重要な参加要因であった。また,不参加の最大の理由は,時間や暇のなさ,および,調査協力の面倒さであった。一方,個人情報やプライバシーの侵害についての懸念や不安を理由とする不参加は 1 割程度であった。
    結論 本研究から,一般地域住民がゲノム疫学研究への参加・不参加を決めるに至った理由が明らかとなった。本研究の結果は,研究参加者のリクルート戦略を今後立てる上で重要な知見を与えるものである。
  • 大渕 修一, 小島 基永, 三木 明子, 伊藤 和彦, 新井 武志, 辻 一郎, 大久保 一郎, 大原 里子, 杉山 みち子, 鈴木 隆雄, ...
    2010 年 57 巻 11 号 p. 988-995
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 介護予防ケアマネジメントでは,対象者の身体機能レベルを把握し目標設定,効果判定などに活用する必要がある。しかし,特定高齢者および要支援者を対象とした身体機能評価に関する大規模な先行研究は乏しく,明確な判断基準がない。本研究では,運動器関連指標の判断基準を作成することを目的とした。
    方法 厚生労働省の介護予防継続的評価支援事業で収集されたデータベースを解析した。このデータベースは沖縄を除く全ての都道府県から83の地域包括支援センターの協力を得て,平成19年 1 月から平成20年12月末までの間に,介護予防ケアプランを作成することとなった者全員を対象に介護予防事業で取り扱われる項目を網羅的に調査したものである。データベースに登録されている9,105人のうち,運動器関連指標の測定が行われている3,852人を対象に,男女別に,特定高齢者と要支援者に分けて求めた 5 分位を用い,機能が低い者がレベル 1,高い者がレベル 5 に分類されるよう基準値を作成した。
    結果 各指標の機能レベルは,男性,女性とも,要支援者に比べて特定高齢者で有意に高かった(P<0.01)。片足立ち時間では,特定高齢者と要支援者との間には,最下レベルの区分値に,男女とも 5 分位で 1 段階以上の差があった。Timed Up & Go 時間では,男性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,男性要支援者のレベル 3 に該当し,女性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,女性要支援者のレベル 3 に該当した。5 m 通常歩行時間もほぼ同様で,男性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,男性要支援者ではレベル 3 に該当し,女性特定高齢者の最下レベル 1 の区分値は,女性要支援者のレベル 4 に該当した。
    結論 男女とも,特定高齢者と要支援者とでは,運動器関連指標の分布が異なり,とくに移動能力において差が大きいことが明らかになった。地域支援事業の運動器の機能向上プログラムの効果判定には,特定高齢者と要支援者とでは,異なる評価基準を用いる必要がある。
  • 藤原 愛子, 武田 文
    2010 年 57 巻 11 号 p. 996-1004
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 小学校 2 年生時における食生活習慣・歯みがき習慣と 3~6 年生時の第一大臼歯齲蝕経験歯有無との関連を明らかにする。
    方法 東海地方の 1 小学校において,平成14年度の 2 年生130人を対象に,記名・自記式質問紙調査(食生活習慣・歯みがき習慣)を行った。また,平成14~18年度の学校歯科健診票を資料にした追跡調査を行った。2 年生時の第一大臼歯に齲蝕経験歯がなかった104人を分析対象とした。
    結果 2 年生時に「クッキー群」を「毎日・2~3 日に 1 回以上」食べていた者は「週に 1 回・食べない」者に比べて,また「1 日の歯みがき回数」が「1 回・時々みがく・みがかない」者は「3 回以上・2 回」の者に比べて,3 年生時の第一大臼歯に齲蝕経験歯がある者の割合が高かった。また,2 年生時に「飴群」を「毎日・2~3 日に 1 回以上」食べていた者は「週に 1 回・食べない」者に比べて 4・5・6 年生各学年時の第一大臼歯に齲蝕経験歯がある者の割合が高かった。
    結論 2 年生時における「クッキー群」の摂取頻度が 3 年生時の第一大臼歯齲蝕経験歯有無と関連し,「飴群」の摂取頻度が 4~6 年生時の第一大臼歯齲蝕経験歯有無と関連していた。また,2 年生時における「1 日の歯みがき回数」は,3 年生時の第一大臼歯齲蝕経験歯有無と関連していた。学童期の永久歯齲蝕予防の上では,低学年時にクッキーや飴などのショ糖含有食品を頻回に摂取しない習慣および歯みがきをする習慣を定着し持続させる対策が重要であることが示された。
資料
  • 小松 紗代子, 斎藤 民, 甲斐 一郎
    2010 年 57 巻 11 号 p. 1005-1014
    発行日: 2010年
    公開日: 2014/06/12
    ジャーナル フリー
    目的 祖父母が孫の育児に参加することは,育児支援という視点からも,高齢期の生きがいづくりという視点からも意義があると思われる。「祖父母」という育児資源を利用し続けていくためには,祖父母の健康への影響を理解することが重要と考え,本研究では,国内外の孫の育児に参加する祖父母の精神的健康に焦点を当てた研究を整理し,今後の研究を進めていく上での課題を明らかにすることを目的とした。
    方法 国内の文献は医中誌 web・メディカルオンライン・CiNii・DiaL を用いて検索し,引用文献を含めた計10件を本研究に活用した。海外の文献は Web of Knowledge・PubMed を用いて検索し,英文文献計10件を本研究に活用した。
    結果 国内の文献では,孫の育児あり/なし群の比較によって健康影響を比較した文献がみられなかった。一方,孫の育児に参加している祖父母の内部比較からは,孫育児参加の精神的健康に影響を与える要因が複数存在する可能性が示された。また,孫育児へ参加している祖父母は精神的に良い影響(主観的幸福感・生きがい)と悪い影響(抑うつ・不安)の両方を受けていることが示された。英文文献では,支援型の孫育児による精神的健康への影響について,良い影響を報告する文献と悪い影響を報告する文献とに分かれ,一貫した結果が得られなかった。また,日本とアメリカの研究を両方整理したことにより,両者の研究方法,特に対照群の選択基準や用いた尺度,解析における調整の有無などに違いがあることが明らかになった。
    結論 国内外の文献から孫の育児参加の有無による精神的健康への影響を結論づけることはできなかった。一方,孫育児に参加している祖父母は精神的に良い影響と悪い影響の両方を受けていること,精神的健康を左右する要因が複数考えられることが示された。今後の研究課題としては孫育児の定義を明確にして研究を進めること,研究のデザインや解析の方法を工夫すること,祖父母の身体的な健康にも焦点を当てた研究を進めることが挙げられる。
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