経営戦略とは何かを明らかにし,それが戦略的経営を必要とする関係をまず解明する.すすんで戦略的経営のシステムと組織は,執行活動の効率的経常のシステムと組織とは異った独自のシステムと組織である点を明らかにする.それは後者がメカニスティックな組織であるのに対して,有機的組織である.そして経営として,両者の複合組織の統合の問題が提示される.
日米企業518社の調査データをもとに日米企業の戦略と組織の比較分析が行なわれる.比較分析を通じて,日米企業間には有機的適応(日本)と機械的適応(アメリカ)とも呼ぶべき環境適応のパターンの違いがあること,日米企業の戦略と組織の差異はこれまでの組織理論の命題から説明できる部分があること,国際的な組織問差異を説明するためには投入側の市場持性の差に注目する必要のあること等が示唆される.
80年代の日本の企業をめぐる環境は厳しい.国の経済成長が予断を許さない時代に企業だけが手放しで繁栄する筈はない.企業が戦略指向の経営を求められるのは今や常識化してきた.戦略経営には夫々企業なりのノーハウ開発が必要であると同時に,その成功の鍵としての仕組み,即ち,戦略的事業組織の裏付けが必要となる.多角化した大規模企業経営の実例を追って実務家の立場からアプローチしてみたが,大方のご批判を得たい.
総合商社組織がもつ戦略的性格を解明するのが本稿の目的である.そのため,総合商社の特質がその組織にいかにビルトインされているか.また,現在の商品本部制と部店別独立採算制の現状と特色を紹介する.その上で総合商社組織がもつ戦略的性格を経営構造の中から摘出する.そして,戦後から今日までの総合商社の戦略が組織の中でいかに展開されてきたかを分析し,併せて今後の課題にも言及する.
従来,組織理論が明らかにしてきたのは,もっぱら組織の活動要素であって,活動間の「関係」という組織構造そのものではなかった.けれども,組織というものがそれ自体,一つの複合体であることを想起するとき,活動間の「関係」こそ大いに議論されてしかるべきである.その場合に「ルース・カップリング」の理論は「タイト・カップリング」の理論に代って,組織理論の新しいパラダイムとなり得る可能性を秘めている.