The Japanese Journal of Antibiotics
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34 巻, 9 号
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  • 葛西 洋一, 中西 昌美, 川本 幸市, 宮川 清彦, 箱崎 博美, 安倍 俊一, 北山 重幸, 西村 昭男, 安田 隆義, 川村 明夫, ...
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1211-1234
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    周知のとおり, 1960年代の中頃以降, 広域スペクトラムの合成ペニシリン剤, セファロスポリン剤の使用量が増加するとともに, これら薬剤に対して自然耐性であるか, もしくは耐性を獲得しやすい性質をもつた菌が生き残つてきた結果として, グラム陰性桿菌感染症が増加し, 広く注目される様になつた。
    一方, 近年に至りR因子の感染によるセファロスポリン耐性菌が見出されるようになり, これら耐性菌の増加が今後, 治療上深刻な問題を投げかけることは予想に難くないものと思われる。
    従つて, 現在有効性を保つているセファロスポリン系薬剤にしてもβ-Lactamase (Cephalosporinase) 産生菌が増加してきたばあいには, 治療上大きな支障をきたす結果となり, セファロスポリン系薬剤にβ-Lactamase抵抗性を示す性質を附与した薬剤の登場が望まれるゆえんである。
    セフメタゾール (商品名: セフメタゾン, CMZ) は, 1972年にStreptomycesから単離されたセファマイシンC系抗生物質であり, セファロスポラン酸の7位にメトキシ基をもつことで従来のセファロスポリンC系とは異なる新規抗生物質であり, β-Lactamaseに対し強い抵抗性をもつていることが明らかとなつている。
    セフメタゾールのもつ特長としては,
    1. β-Lactamaseに対する抵抗性が強く, 耐性大腸菌を含むβ-Lactamase産生菌に対しても強い抗菌力をもつ。
    2. グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して優れた抗菌力をもち, さらに従来のセファロスポリン系およびペニシリン系抗生物質が無効なIndole (+) Proteus, Serratiaなどにも強い抗菌力をもち殺菌的に作用する。
    3. 嫌気性菌, 特にペニシリン系およびセファロスポリン系抗生物質の効力が弱いBacteroides fragilisに有効である。
    4. 筋・静注により高い血中濃度が得られ, 代謝されずに活性型のまま尿中に速やかに排泄される。
    5. 動物実験において一般毒性はきわめて弱く, 腎毒性もセファロリジン, セファゾリン (CEZ) よりはるかに少ない。
    構造式, 化学名は図1のとおりである。
    私たちは, 以上の特長をもつセフメタゾールについて, 術後の感染症を主なテーマとして検討した。
  • 岡山 悟, 塚本 泰司, 西尾 彰, 酒井 茂, 熊本 悦明
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1235-1243
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aminoglycoside系抗生剤は, 従来, 筋肉内投与に用いられている。しかし, 近年, 筋肉内投与のさい, 薬剤による筋組織の障害や痛がClose-upされ, また反復投与の容易性などから筋肉内投与よりもむしろ静脈内投与が選択される傾向にある。そして, 静脈内投与をおこなう時には, その神経毒性や腎毒性のため血中濃度を一定レベル以上に上げないようにすることが必要である。そのため静脈内投与をおこなう時は, 点滴静注により, 投与量, 投与時間を慎重におこなうべきであろう。今回, われわれはTobramycin (以下TOBと略す) を用いて点滴静注投与について検討したので報告する。
  • 平賀 洋明, 菊地 弘毅, 中橋 勝
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1244-1254
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 抗生物質のめざましい進歩にともない, また, 長期投与, 乱用等による感染症の変貌により難治性慢性呼吸器痴患, 特に菌交代現象による緑膿菌を起炎菌とする難治性感染症が増加している。緑膿菌感染症の治療に有効な抗生物質はCabenicillin (CBPC) から始まるPenicillin (PC) 系もあるが, Gentamicin (GM), Tobramycin (TOB), Dibekacin (DKB) 等のAminoglycoside系抗生物質が現在最も有効である。しかし, これらAminoglycoside系抗生物質には耳毒性, 腎毒性の副作用が, 高い血中濃度の時に発現するといわれており投与方法に注意を要する。
    今回, 我々はStreptomyces tenebrariusの培養液から単離により作られるAminoglycoside系抗生物質TOBについて, 緑膿菌による慢性呼吸器感染症を対象として点滴静注投与し臨床効果および安全性を検討したので報告する。
  • 斉藤 玲, 菊入 剛, 富沢 磨須美, 氏家 昭, 木下 与四男
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1255-1262
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年感染症の変貌によりAminoglycoside系抗生剤 (以下AG剤) の使用頻度は高まりつつある。AG剤の投与経路は我国では筋注だけの許可である。しかし, 臨床の場において出血性素因のあるものや, 筋肉が極めて消耗しているものなど, 筋注不能の例があり静注投与が必要なぱあいが多くある。AG剤は副作用との関連で血中濃度を急激に高めることは避けなければならない。そのため投与v法としては点滴静注が望ましい。
    我々はTobramycin (以下TOB) 点滴静注時の体内動態について健常成人男子Volunteerで検討し, 血中濃度は安全域にあり, かつ臨床効果も期待できる投与方法であると報告した。
    今回, 各種感染症患者19名にTOBの点滴静注投与による治療をおこない, 有効性, 安全性の臨床的検討を加えた。また, 治療中におけるTOB血中濃度を初回投与時と最終投与時に測定したので合わせ報告する。
  • 出口 浩一
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1263-1277
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1977年以降我国における抗菌性物質の消費量は, いわゆるβ-Lactam系剤であるペニシリン系 (以下PC系), セファロスポリン系 (以下CEP系) が増加し, 特に経口剤の伸長が著るしく, 耐性菌の増加に注意を向ける必要性が強調されている。著者は, 1978年以降, 各種臨床材料から分離される臨床分離菌株を, 各々の菌種が最も検出されるチャンスの多い由来別に一定の株数をアトランダムに集め, PC系, CEP系を中心とした薬剤抗菌性 (MIC) 分布を追跡していく仕事を開始した。このたび, 1978年~1980年の3ヵ年間に検討した成績と過去の自験例を参考にしながらPC系, CEP系を中心とした各種抗菌性物質に対する主要臨床分離菌株の感受性成績を年次別推移としてまとめたので第1報として報告する。
  • 玉舎 輝彦, 鶴崎 俊秀, 草西 洋, 岡田 弘二, 山本 浩, 阿原 道正, 村上 旭, 高野 登, 小畑 義, 志村 達興, 岩崎 武輝 ...
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1278-1287
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    尿路感染症は, 解剖学的理由や疾患の存在部位による理由により, 産婦人科領域でしばしば遭遇するが, これらの尿路感染症の起炎菌はEscherichia coliが圧倒的に多い。Pivmecillinam (メリシン錠) はE.coliに対する抗菌力がきわめて高く, その臨床的有効性についても種々報告されている1, 2)。そこで著者らは婦人科領域における難治である子宮頸癌術後, 慢性膀胱炎および慢性腎盂腎炎などの産婦人科領域での複雑性尿路感染症について検討した。一般に複雑性尿路感染症では1日300-400mg投与で有効といわれるが, 1週間投与より2週間投与の方が総合臨床効果において優れているとの報告もみられ, 本研究では患者に管理維持療法として必要・十分な期間 (2週間以上) Pivmecillinamを投与したときの有効性と安全性を検討した。以下その成績を報告する。
  • 泉川 欣一, 小森 宗敬, 富田 弘志, 蔡 正夫, 須山 尚史, 岩崎 博圓, 福井 信, 原 耕平
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1288-1291
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    国産のMacrolide系抗生剤 (ML剤) であるJosamycin (JM) はStreptomyces narbonensis Var. josamyceticusの培養炉液から産生され, 開発された薬剤である。一般にグラム陽性菌に対して強い抗菌力を示し, 開発以来内科領域における急性呼吸器感染症をはじめとして, 耳鼻科, 皮膚科などの領域における各種感染症に対し広く応用されている。特に, 呼吸器感染症においては, 原発性異型肺炎の主病原体であるMycoplasma pneumoniaeは, 細胞壁をもたないという細菌学的特徴により, その薬剤感受性は蛋白合成阻害剤としてのErythromycin (EM) をはじめとするML剤は強い抗マイコプラズマ作用をもつている。JMにおいてもM. pneumoniaeに対して十分な抗菌作用をもつことは既に知られ, 臨床面において多くの症例に使用され, かなりの臨床効果が得られ報告されている。私達もM. pneumoniae肺炎にJMを使用し報告した。今回は, JMのM. ptieumoniaeに対する基礎的検討をおこなつたので報告する。
  • 斉藤 英彦, 牧 裕, 祖父江 牟婁人, 中村 滋, 中屋 愛作, 田島 達也
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1292-1298
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    股関節全置換術, 人工骨頭置換術, 大腿骨頸部骨折に対する骨接合術など最近の股関節周辺の手術では金属やHigh densitypoly pothylene, 骨セメントなどの異物を挿入する手術が多くなつているが, これらの手術後の感染予防は手術の成否を左右する重大な問題である。術後感染予防に関与する因子としては, 術野および術者の消毒, 手術器具の完全無菌化, Atrainimaticな手術操作, 手術時間の短縮, Laminar flow systemやExhaust mask air flow systemなどによる無菌手術室, そして抗生剤の予防投与などがあげられる。
    抗生剤の予防投与に関しては本邦ではしごく当然のように受けとめられているが, 米国の論文では最近に至るまでむしろ抗生剤の予防投与は術後感染率を増加するので避けるぺきであるとする主張が多かつた。しかし, 米国でもBOYD, PAVELらが抗生剤の予防投与の有効性をDouble blind studyで実証して以来, その頃から隆盛となつてきた股関節全置換術をはじめ異物を挿入する手術にさいし, 抗生剤が広く投与されるようになつてきた。
    股関節周囲の手術後の感染症の起因菌としてはStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidisの他に陰部が近いせいかグラム陰性桿菌もしばしば検出されるので, 著者は広範囲抗生物質であるCefazolin (CEZ) を予防投与している。しかし, この薬剤の手術創内の血腫や骨組織中への移行については余り臨床的な研究がおこなわれておらず, CUNHA, 大橋, 藤巻らの研究が散見されるにすぎない。
    そこで, この薬剤の投与量, 投与法のちがいによる手術創部の血腫中, 骨組織中濃度の変化や, 血清中濃度と血腫中, 骨組織中濃度との相関関係などを解明し, 股関節周囲の手術後の感染予防に適したCEZの投与量, 投与法を決定しようというのが本研究の目的である。
  • 吉田 真三, 桂田 菊嗣, 松岡 喜美子
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1299-1306
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefoxitin (商品名: マーキシン注射用, 以下CFX) は, Streptomyces lactamduransが産生するCephamycin Cの誘導体であり, いわゆるCephamycin系と称せられる半合成抗生物質である。
    CFXは, 従来のCephalospo血C系と, 構造上, β-Lactam環の7α位に, Methoxy基をもつ点で異なり, このため各種細菌の産生するβ-Lactamase (Cephalosporin, Penicillin系薬剤のβ-Lactam環を開環する加水分解酵素) に対して, 極めて安定であるとされている。
    CFXは, 主としてグラム陰性桿菌, 特にEscherichia coli, Klebsielta, Proteus, Serratiaに対し, 強い抗菌力をもつとされ, 従来のCephalosporin系薬剤に耐性を示す菌に対しても, CFX感受性菌がみとめられることが知られている。また嫌気性菌に対しても強い抗菌力をもち, 特にCephalosporin, Penicillin系薬剤に感受性をもたないBacteroidesに対し, 優れた抗菌力を示すことが注目されている。
    今回, 我々は, 主として敗血症に対するCFXの効果, という観点から検討を加えたので, ここに報告する。なお, CFXの臨床的検討をおこなうに先だち, 大阪府立病院において敗血症を疑われた患者からの分離菌に対する細菌学的検討をおこなつたので, 合わせて報告する。
  • 伊藤 治英, 宇野 英一, 池田 正人, 下地 隆, 東 壮太郎, 山本 信二郎
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1307-1312
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科における抗生物質投与の適応として第1に頭蓋内感染症, すなわち, 脳室炎, 脳炎, 脳膿瘍, 髄膜炎, 硬膜下膿瘍, 静脈洞炎などが挙げられる。起因菌を同定し, 感受性の高い抗生物質の使用が原則であるが, 頭蓋骨に被われているため, 必ずしも菌同定, 感受性試験ができずに抗生物質の選択が強いられる。
    抗生物質投与の第2の適応は術後の創感染の予防である。脳神経外科手術の手術創感染は脳炎, 脊髄炎, 髄膜炎などであり, 万一発生すれば後遺症が非常に大きい点で絶対に避けねばならない。一度感染すれば抜去を余儀なくされ, 手術目的を失ら脳室腹腔短絡術, および, 体外脳室ドレナージでは感染予防が極めて重要である。汚染術野の手術としての開放性頭部外傷の開頭術や髄液鼻漏の修復術では抗生物質の意味は大きい。
    抗生物質の第3の適応は脳疾患に併発した他臓器の感染症の治療と予防である。手術時の気管内挿管, 意識障害患者における不十分な去疾, 嚥下障害に基づく誤嚥, 気管切開に伴なう気道感染の治療と予防である。また, 術中の留置カテーテル, 昏睡や脊髄損傷患者の尿カテーテルの長期留置による尿路感染症の機会が多く, その治療と予防に抗生物質が適応となる。
    一方, 抗生物質の最近のめざましい開発に伴なう耐性菌発生に対し, 抗生物質の選択は重要な問題である。今回, 米国Merck Sharp and Dohme Research Laboratoriesにより開発されたCephamycin系抗生物質Cefoxitin (マーキシン注射用, 以下CFXと略す) を脳神経外科領域の感染症の治療および予防に使用し, その臨床効果, 副作用について検討したので報告する。
  • 山本 和彦, 高宮 収, 秦 利之, 岩成 治, 沢田 康治, 松永 功
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1313-1319
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1972年米国Merck Sharp & Dohnle Research, Laboratoriesにて開発されたCephamycin系抗生物質であるCefoxitinはCephem環7α位にメトキシ蒸をもつため, β-Lactamase産生菌に対して強い抗菌作用があり, 殊にEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus等のグラム陰性桿菌およびBacteroides fragilisに有効であるとされている.
    婦人科領域における手術療法, 殊に子宮頸癌に対する広汎性子宮全摘術と骨盤内リンパ節廓清勧ま, 骨盤死腔形成や膀胱麻痺による尿らつ滞等により術後感染症を併発することが多い. このため, 他剤耐性菌, 嫌気性菌等に有効なCefbxitim (CFX, マーキシン注射用) の登場は, 術後感染症の予防あるいは治療に非常に有効と思われる
    . 今回, 我々はCFX使用の機会を得て, 多少の知見を得たのでここに報告する.
  • 唐木 一守, 片田 雅孝, 川口 英昭, 佐々木 一元, 小林 宏, 井上 勇, 河井 文健, 上原 健一, 佐々木 仁也, 上垣 恵二, ...
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1320-1334
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    従来, 常在菌あるいは弱毒菌と考えられていた細菌が, 種々要因により宿主側の抵抗力が減弱した時に感染を引き起こす, いわゆる丙因性感染が注目されてきている。外科領域においても例外で嫉なく, ことに汚染手術後はその可能性が高い。これら細菌の中でも嫌気性菌は, 検出, 同定の困難さからしばしば見過され, 適切な化学療法がおこなわれずに病態をますます悪化させ, 特に感染末期において嫌気性菌が主体をなしたばあいには治療上困難をきわめることが多い。
    今回, 著者らは, 嫌気性菌を含むGram陽性菌および陰性菌に強い抗菌力をもつCephamycim系抗生物質Cefoxitin (CFX)(Fig. 1) の腹部外科感染症における有用性を検討するために, 当科で取りあつかつた感染症患者からの病巣分離菌の検出状況を調べ, 併せてこれら分離菌に対する最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, さらに血中・滲出液移行を測定するとともに, 臨床応用として少数例ではあるが, 嫌気性菌分離症例について検討をおこなつたので, その結果を報告する。
  • Miloxacinの胆汁中移行とその臨床効果
    谷村 弘, 斎藤 徹, 高橋 裕, 吉田 圭介, 佐藤 友信, 小林 展章, 日笠 頼則, 藤村 昌樹, 肥後 昌五郎, 瀬戸山 元一, 本 ...
    1981 年 34 巻 9 号 p. 1335-1352
    発行日: 1981/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症は食欲不振, 嘔気, 嘔吐など消化器症状をすでに伴なつていることが殆どであり, 治療を目的とした薬剤といえども, 患者は経口摂取を避ける傾向にある。したがつて, 抗生物質も勢い注射剤として投与されることになり, 肝・腎毒性の比較的少ないCephem系薬剤の開発に努力が注がれている。
    しかしながら, 胆石症に伴なう中等度の胆嚢炎や胆管炎症例が胆道疾患の大部分を占める第一線病院においては, 手軽に, かつ安心して投与し得る経口用抗生物質を投与しながら, 検査や鑑別診断をおこなうための経過観察と治療をおこなうのが常である。
    一方, 胆道感染症の起炎菌の過半数は, Escheri chi acoli, Klebsiella, Enterobacterなどのグラム陰性桿菌であり, そのさいに使用される経口用化学療法剤としては, 現在, Cephalexin (CEX), Minocycli Doxycyclime (DOXY), Ampicillin (ABPC), Nalidixicacid (NA), Piromidic acid (PA) などが使用されているが, その抗菌スペクトルの狭さと胆汁中移行率の低さ, さらには副作用としての消化器症状の随伴, 増強など, その効果と制約から, 新らしい経口投与可能な化学療法剤の開発が期待されていた。
    Miloxacin (MLX。フルダジン (R), 250mg, フィルムコート錠) は, 住友化学工業株式会社で合成されたグラム陰性桿菌とグラム陽性菌の一部にも抗菌力をもつ広い抗菌スペクトルの新らしい経口用合成抗菌剤であり, その化学構造式は, NAやPAに類似し, 5, 8-Dihydro-5-methoxy-8-oxo-2H-1, 3-dioxolo [acidである (Fig. 1)。体内にて複雑な代謝経路をもつが, 腸管からの吸収と胆汁排泄に優れ, 同糸のNAやPAにくらべ, その抗菌力は強く, しかも殺菌的であることなどが特徴とされている。その尿路感染症, 呼吸器感染症に関する臨床的評価は, 1977年第24回日本化学療法学会東日本支部総会新薬シンポジウムにてその有用性と安全性が確認されているが, 胆道感染症に対しては, いまだ評価は確立されていない。
    今回, われわれは, 胆道感染症におけるMiloxacinの臨床的意義を明確にするため, CEXやNAとのCross-over法による胆汁中濃度の比較検討, Miloxacinとその代謝体であるM-1, M-2およびそれぞれのグルクロン酸抱合に関する胆汁中動態, さらにMiloxacinによる胆道感染症の臨床的効果を検討した。
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