日本畜産学会報
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87 巻, 2 号
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一般論文(原著)
  • 川上 純平, 花牟禮 武史, 萩谷 功一, 早川 宏之, 馬場 俊見, 鈴木 三義
    2016 年 87 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    多形質アニマルモデルを使用し,雄牛の繁殖性を示す精液性状形質の遺伝的パラメータを推定した.データは,ジェネティクス北海道が所有するホルスタイン種雄牛の採精記録およびそれらの血縁記録である.精液性状形質は,採取された精液量(採取量),精子濃度,精子数,採取直後の精子の活力指標(新鮮活力)および凍結精液の融解後の活力指標(凍結後活力)を含む.分析では,採取年,採取月,採取場所,採精回次,採取方法および凍結精液の種類を母数効果,採取者,個体の育種価,恒久的環境効果を変量効果とした.遺伝率推定値は採取量0.12,精子濃度0.13,精子数0.06,新鮮活力0.11および凍結後活力0.20であった.反復率推定値は,採取量0.25,精子濃度0.39,精子数0.16,新鮮活力0.62および凍結後活力0.72であった.凍結後活力は反復率が高いため,若齢時の記録から成熟時のそれらを予測可能であると推察した.
  • 秋山 清, 坂上 信忠, 中川 浩, 瀬田 剛史, 河合 愛美, 長井 誠, 林 みち子, 的場 理子, 稲葉 泰志, 松田 秀雄, 今井 ...
    2016 年 87 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種泌乳牛に多排卵処理(SOV区)または卵胞発育同調処理(FGT区)を行った後に生体内卵子吸引により卵胞内卵子を採取した.卵子はホルスタイン種の性選別精液で体外受精し,性判別胚の生産効率と子牛生産状況を調査した.採取卵子数は試験区間に有意差は認めなかったが,SOV区は採取卵子の62.1%が体内成熟卵子であり,FGT区はすべて未成熟卵子であった.媒精後7~9日目の胚盤胞期胚率は試験区間に有意差は認めなかったが,供卵牛1頭当たりの胚盤胞期胚数はSOV区が有意に多かった(P<0.05).また,性判別胚の移植後の受胎率,在胎日数および産子の生時体重は試験区間に有意差は認められず,産子の95.0%が雌であった.このことから,多排卵処理後のホルスタイン種泌乳牛から採取した卵子と性選別精液を体外受精することで多数の性判別胚を得ることが可能であり,後継牛の計画的生産に利用できることが示唆される.
  • 野中 最子, 田鎖 直澄, 樋口 浩二, 渡辺 直人, Witthaya SUMAMAL, 永西 修, 栗原 光規, 寺田 文典
    2016 年 87 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種育成雌牛34頭による延べ74例のエネルギー出納成績を基に,適温環境下の育成前期(10ヵ月齢,20℃)および後期(18ヵ月齢,20℃),並びに高温環境下の育成前期(9ヵ月齢,30℃)における維持に要する代謝エネルギー量(MEm)および代謝エネルギーの成長に対する利用効率(kg)を比較解析した.(1)代謝エネルギー摂取量および蓄積エネルギー量による回帰分析を行ったところ,適温環境下育成前期雌牛では,MEmは538kJ/BW0.75,kgは46%,適温環境下育成後期雌牛では,505kJ/BW0.75,52%,高温環境下育成前期雌牛では,529kJ/BW0.75,56%であった.3者間のMEmには差はなく,平均で524kJ/BW0.75であった.一方,高温環境下育成前期雌牛のkg 56%および適温環境下育成後期雌牛の52%は,適温環境下育成前期雌牛の46%と比較して高かった.(2)体タンパク質および体脂肪として蓄積する代謝エネルギー量を推定したところ,適温環境下前期牛と比較して,適温環境下後期牛および高温環境下前期牛のエネルギー蓄積量および体脂肪蓄積量は多かった.
  • 大下 友子, 青木 康浩, 根本 英子, 上田 靖子, 青木 真理
    2016 年 87 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    北海道で生産したトウモロコシ子実主体サイレージの飼料特性を明らかにするため,4回の圃場試験を実施した.完熟期のトウモロコシ子実あるいは芯入り子実を雌穂収穫専用ヘッド装着普通型コンバインで収穫し,粉砕後,それぞれハイモイスチャーシェルドコーン(HMSC)およびコーンコブミックス(CCM)として調製貯蔵した.8ヵ月後に開封し,飼料成分組成,発酵品質および栄養価を調査した.いずれの圃場試験においても,CCMはHMSCよりも乾物(DM),中性デタージェント繊維(aNDFom)など繊維含量が高く,乾物(DM)デンプン含量が低かったが,その差は試験によって異なった.水分含量が24%以下のHMSCを除いて,水分含量が30%前後のHMSCやCCMは,pH4.5以下で乳酸,酢酸,エタノールを含む良質なサイレージであった.HMSCのTDN含量は90.9%でCCMの84.3%に比べ有意に高かった(P<0.05).
  • 齋藤 邦彦, 鈴木 英敏, 金田 修一, 阿部 剛, 齋藤 薫, 佐久間 弘典, 庄司 則章
    2016 年 87 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    膨潤化処理した飼料米(膨潤玄米)の給与が肥育牛の発育性と産肉性に及ぼす影響を検討した.供試牛は黒毛和種去勢牛を用い,濃厚飼料多給肥育による対照区に4頭を,15ヵ月齢から出荷まで濃厚飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与する試験区に4頭をそれぞれ配置した.試験区において稲わら摂取量が有意に多くなった結果,肥育全期間における推定総TDN摂取量も試験区が対照区より多くなったが(P<0.01),試験牛の発育および日増体量は試験区間に差が認められなかった.枝肉格付成績,胸最長筋の水分,粗脂肪,粗タンパク質の各含量および脂肪酸組成については試験区間に差はなかった.以上のことから,黒毛和種去勢牛肥育において配合飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与しても,発育性および産肉性への影響はなく,輸入穀物の代替飼料として利用可能であることが示唆された.
  • 安藤 哲, 渡辺 也恭, 須藤 賢司, 上田 靖子, 朝隈 貞樹, 八木 隆徳
    2016 年 87 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    メドウフェスク草地に全日,定置放牧し,放牧飼養している8頭のホルスタイン種搾乳牛においてライジング・プレート・メーター(RPM)による牧草採食量の推定値と体重差法による牧草採食量の推定値から求めたウシのTDN充足率について,両者の比較を行いそれぞれの特徴を明らかにした.また,グルカゴン,トリヨードサイロニン(T3),サイロキシン(T4)の血中濃度を測定し,TDN充足率に対する変化を調査した.RPMにより求めたTDN充足率は82~251%であった.体重差法により牧草採食量を推定する時は,(夕方の給餌,搾乳前体重)−(朝の給餌,搾乳後体重)−(夕方乳量)とするのが,適切と考えられた.ホルモンについてはT3,T4 の血中濃度は試験期間中有意な変化は認められず,グルカゴンの血中濃度は有意に上昇している期間が認められた.血中グルカゴン濃度の変動が放牧飼養のウシのエネルギーの過不足を反映している可能性が示唆された.
  • 手塚 咲, 片山 寛則, 渡邉 学, 村元 隆行
    2016 年 87 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    異なる品種のイワテヤマナシ果汁に浸漬させた日本短角種牛肉の理化学特性について検討を行った.日本短角種去勢牛の大腿二頭筋をイワテヤマナシ果汁−1,果汁−2,果汁−3および果汁−4に浸漬させて真空包装し,4°Cで冷蔵保存した.浸漬の0,12,96および192時間後に,各サンプルの保水性および加熱前後の色調値の測定,およびテクスチャープロファイル分析を行った.テクスチャープロファイルの各測定項目に有意な差は認められなかった.果汁のpHは果汁−4が他の果汁に比較して有意に高かった.クッキングロスは果汁−2および果汁−3に浸漬させた筋肉が浸漬0時間のものに比較して浸漬192時間で有意に高くなった.加熱前のa*値は果汁−4に浸漬させた筋肉が他の果汁に浸漬させたものに比較して浸漬96時間で有意に高かった.本研究の結果から,イワテヤマナシ果汁への筋肉の浸漬は浸漬前の肉色を維持すること,およびpHの高い品種は筋肉の保水性を維持することが示された.
  • 手塚 咲, 柴 伸弥, 片山 寛則, 渡邉 学, 村元 隆行
    2016 年 87 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2016/05/25
    公開日: 2016/06/18
    ジャーナル フリー
    日本短角種去勢牛の半膜様筋をpHの異なる緩衝液,イワテヤマナシ果汁,およびパイナップル果汁に浸漬させ,4°C下で浸漬の0,24,および48時間後に,保水性,色調値,メトミオグロビン割合,およびコラーゲン含量について検討を行った.トータルロスはpH 6.86緩衝液およびイワテヤマナシ果汁で浸漬させた筋肉と浸漬処理していない対照筋肉との間に有意な差は認められなかった.メトミオグロビン割合はpH 6.86緩衝液以外の浸漬液で浸漬させた筋肉が対照筋肉に比較して有意に高くなった.溶出コラーゲン含量はpH 4.01緩衝液およびイワテヤマナシ果汁で浸漬させた筋肉が浸漬48時間で対照筋肉に比較して有意に高くなった.本研究の結果から,pHの低い緩衝液は筋肉のコラーゲンの溶解性を高めるが保水性を低下させること,イワテヤマナシ果汁はpHが低いにもかかわらず筋肉の保水性を維持すること,およびpHの高い緩衝液は筋肉の保水性を維持し,筋肉の酸化を抑制することが示された.
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