日本大腸肛門病学会雑誌
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58 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 大幸 和加子, 齋藤 登, 亀岡 信悟
    2005 年 58 巻 7 号 p. 377-382
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    目的:近年悪性腫瘍増殖因子として注目されているTransforming growth factor-β1(TGF-β1)について大腸癌手術症例を対象に免疫組織学的および血清学的に検索を行い,臨床的意義を検討した.
    対象と方法:当教室の大腸癌手術症例72例を対象として,抗TGF-β1抗体を用いた免疫組織学的染色を行い,その発現と臨床病理学的因子との関係を検討した.また対象の72例と非癌症例25例の血清TGF-β1値を測定し,両者を比較した.さらに血清TGF-β1値と免疫組織学的染色による組織内TGF-β1発現との関連を検討した.
    結果:TGF-β1の大腸癌組織内における発現はリンパ節転移例および静脈侵襲高度例において有意に高率であった(各々P=0.006およびP=0.0001).癌症例の血清TGF-β1値は,非癌症例に比べ有意に高値を示した(P=0.0014).また染色陽性群の血清TGF-β1値(213.1±73.2)は,染色陰性群のTGF-β1値(169.7±56.5)より有意に高く(P=0.0196),両者の発現に正の相関を認めた.
    まとめ:TGF-β1免疫染色は大腸癌の悪性度評価因子として有用である可能性が示唆される.
  • 内山 正一, 小熊 将之, 山本 英希, 重光 剛志
    2005 年 58 巻 7 号 p. 383-387
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    軟膏の長期使用が原因と考えられる直腸Oleogranuloma(OG)を経験したので報告する.症例は64歳男性,排便困難を主訴に初診.15年前にWhitehead手術の既往があるが痔の注射療法の既往はない.1年9カ月間,痔核の脱出と排便時出血に対し,強力ポステリザン軟膏を使用.2001年9月頃より,排便困難と軟膏挿入時痛出現.肛門指診で,粘膜の脱出と,下部直腸左前壁に弾性硬の3cm大の粘膜下腫瘍を触知した.痔核切除および腫瘍の組織診施行しOGの診断で経過観察.軟膏中止後2カ月後のCT検査では腫瘍は縮小し,排便困難も軽快していた.さらに術後3年を経過し排便困難は無くなり,腫瘍は1cm以下に縮小していた.坐薬または軟膏が発症原因と考えられるOGの報告は現在までに8例でこれを含め直腸OG25例の発生部位,腫瘍径,自然経過を検討した.
  • 壁島 康郎, 影山 隆久
    2005 年 58 巻 7 号 p. 388-391
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.子宮頸癌のため当院入院となった.術前検査として大腸内視鏡検査が施行され,横行結腸の半月ひだ上に径20mm大の側方発育型腫瘍(LST)を認めた.腺腫と診断しStrip biopsy法による粘膜切除術を試みたが,non-lifting sign陽性かつ半月ひだ上という占居部位形態のためsnaringは困難であり生検のみ施行した.病理診断は高度異型腺腫であり完全摘除が必要と判断し十分な説明と同意のもと,切開剥離法(ESD)による一括切除を施行した.所要時間は32分であった.病理組織診断は高度異型腺腫,切除断端はいずれも陰性との正確な診断が可能であった.治療に関連する合併症は認めなかった.内視鏡的摘除適応病変にかかわらずnon-liftingsign陽性などのために,通常EMRが困難な大腸腫瘍性病変に対しても,ESDは一括完全摘除を可能とする有用な一選択肢と考えられた.
  • 阿部 公紀, 篠原 靖, 植田 健治, 片上 利生, 宮岡 正明, 望月 眞
    2005 年 58 巻 7 号 p. 392-396
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.既往歴は高血圧,胃潰瘍および虫垂炎にて手術.家族歴は特記すべきことなし.2002年11月7日頃より上腹部痛が出現.同年12月3日に当センターを受診.上部消化管造影検査で胃角小弯にニッシェ,注腸検査でS状結腸と直腸にポリープが認められた.大腸内視鏡検査ではS状結腸と下行結腸にポリープ,直腸に直径11mm大の同色調で頂部に陥凹をともなう亜有茎性の隆起性病変が認められた.超音波内視鏡(以下,EUS)では辺縁整で内部にspotty high echo域をともなう低エコー腫瘤が粘膜下層にみられた.生検組織で確定診断が得られなかったため,診断・治療目的に内視鏡摘除術を施行し,直腸カルチノイドの診断を得た.EUSにて内部エコーレベルが高エコー域を示す部位は,組織学的に線維性間質の占める割合が腫瘍細胞より高かった.
  • 成井 一隆, 山崎 安信, 須田 嵩, 池 秀之, 嶋田 紘
    2005 年 58 巻 7 号 p. 397-401
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.2002年10月腹部膨満感のため近医を受診した.12月当院に紹介受診し,横行結腸癌の診断で手術予定とされていた.入院待機中の2003年2月に腹痛,腹部膨満感を主訴に来院し,大腸癌イレウスの診断で緊急手術を施行した.術中所見で横行結腸癌を先進部とする腸重積症を認め,重積を解除しないまま重積領域を含めた結腸右半切除術(D3)を施行した.
    成人の大腸重積症の原因としては癌腫によるものが多く,部位別では回盲部,S状結腸が多く横行結腸例は少ない.大腸癌症例が大腸イレウスを発症した場合,癌腫による狭窄だけでなく腸重積も念頭に置いた診断が必要であり,その鑑別にはCT,超音波検査が有用である.
    腸重積をきたした横行結腸癌の1例を,文献的考察を加えて報告した.
  • 大田 貢由, 山口 茂樹, 森田 浩文, 石井 正之, 長田 俊一
    2005 年 58 巻 7 号 p. 402-406
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:滅菌摂子や消毒剤を使用しない術後創処置の方法とその成績を検討した.対象:2002年9月から2004年3月までに当科で行った,汚染手術を除いた開腹手術411例.その大部分が大腸癌の初発もしくは再発手術であった.方法:術当日から消毒を行わず,滅菌摂子も使用せず,無滅菌のディスポ手袋で滅菌ガーゼ交換のみを行った.また,術後2日目から創は開放した.皮下を吸収糸で縫合するため抜糸は必要としない.術後創感染にかかわる因子として性別,年齢,BMI,糖尿病の有無,術式,手術時間,出血量,輸血の有無,術者,ドレナージの種類を検討した.結果:術後創感染は39例(9.5%)に発生した.多変量解析では術者のみが有意な創感染の危険因子であった.結語:class II以下の手術後創管理は無滅菌のグローブ使用のみで行うことができる.
  • 青井 重善, 下竹 孝志, 津田 知樹, 佐々木 康成, 久保田 良浩, 木村 修, 出口 英一, 岩井 直躬
    2005 年 58 巻 7 号 p. 407-410
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    著者らは,21例の小児遺糞症患児における臨床症状ならびに腹部単純X線像と宿便の除去方法の関係について検討した.これら患児の便塊は巨大で極めて硬く,しばしば肛門より通常に排便することが困難であった.このためi)グリセリン浣腸,ii)頻回の洗腸,iii)高圧浣腸,iv)鉗子等の器械を用いた便破砕からなる段階的便塊排出処置を計画し行った.今回の検討では,小児遺糞症患児の診察時,overflow incontinenceを認め,かつ腹部単純X線写真で結腸内の便塊横径が5.5cm以上ある場合には,入院の上,ii)~iii)の処置が必要であった.さらに9cmを超える例ではiv)の破砕処置が必要であった.小児の遺糞症例に対しては上記指標をもとに宿便除去を的確に施行し,その後に,消化管運動異常を伴う器質的疾患の精査を行うべきと考えられた.
  • 2005 年 58 巻 7 号 p. 411-414
    発行日: 2005年
    公開日: 2009/06/05
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