目的 都市住民の15年間の健康診査の結果をもとに,BMI の変化と血圧の変化との関連についての実態を明らかにすることである。
方法 対象者は,大阪府 A 市における1984年度から1998年度までの各年の基本健康診査受診者のうち,受診時点において40歳から69歳であった男4,760人,女9,318人,総数14,078人である。分析時点における降圧剤服用の高血圧治療中の者は除外した。1984年度から1998年度までの15年間を各 5 年間ごとに前期,中期,後期に 3 区分し,各期間における各人の初回の健診データを用い,Body Mass Index(以下 BMI)区分別に最大血圧および最小血圧の平均値を分析した。正常血圧者における BMI 区分別の10年後の高血圧者の年次別割合を分析した。血圧区分は,最大血圧140 mmHg 以上,あるいは最小血圧90 mmHg 以上を高血圧,それ以外を正常血圧とした。前期各年度の受診者の10年後の受診結果から BMI の変化量区分別に血圧の平均変化量を算出した。
成績 (1)15年間を 3 期間に区分した年齢区分別の BMI の高値群の最大血圧および最小血圧の平均値は,男性の一部の期間の年齢区分を除き,男女とも中値群,低値群の平均値に比して有意に高値であった。
(2)最大血圧および最小血圧に対する BMI の線型回帰係数は,男女とも全ての年齢区分において正の値を示し,女性の一部の年齢区分を除き,有意差が認められた。
(3)観察した受診時点の BMI 区分別にみた10年後の高血圧の発症割合は,その経年的推移から男女とも BMI の高値群では低値群に比べ高い傾向を示し,女性では有意差が認められた。
(4)観察受診時点の非肥満群および肥満群において,男女とも10年後の BMI の減少群および不変群の最大血圧および最小血圧の平均変化量は,増加群に比べ低値の傾向を示した。一部の受診年度においては 3 群間に有意差が認められた。
結論 都市住民の15年間の健診結果を用いた分析結果から,異なる 3 時期においても BMI の高値群の平均血圧値は他群に比べ高値であり,10年後の高血圧発症割合は高値の傾向を示した。10年間の BMI の変化量の経年的推移の分析結果から,BMI の低下は血圧に対して良好な影響を示すことが明らかになった。
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