日本公衆衛生雑誌
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61 巻, 4 号
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研究ノート
  • 太田 清美, 二宮 一枝, 坂野 純子
    2014 年 61 巻 4 号 p. 167-175
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 中山間地域在住高齢者におけるウォーキング行動の変容ステージに関連する要因を明らかにし,介入への示唆を得ることを目的とした。
    方法 2012年 7 月,岡山県高梁市川上地域在住の60歳~74歳の高齢者全員(752人)を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票は,川上地域愛育委員により配布し,郵送により回収を行った。調査内容は,基本属性(年齢,性別,家族構成他),ウォーキング行動の変容ステージ(以下,ステージ),ウォーキング行動におけるセルフエフィカシー(以下,エフィカシー),物理的環境認知,社会的環境認知とした。分析方法は,ステージを 3 群(未実施群・準備群・実施群)に分け,χ2 検定および Kruskal-Wallis 検定,下位検定として Mann-Whitney の U 検定を行った。その際,Bonferroni 法による多重比較補正を用い,有意水準を 5%とした。
    結果 回収数325人(回収率43.2%)のうち,すべての項目に欠損のない164人を分析対象とした。平均年齢66.4±4.5歳,女性91人(55.5%),準備群69人(42.1%),未実施群52人(31.7%),実施群43人(26.2%)であった。基本属性では,性別のみ群間に有意な差が認められた。Kruskal-Wallis 検定の結果,群間に有意な差が認められた要因は,エフィカシー,物理的環境認知の「景観」,社会的環境認知の「アドバイス・指導」,「理解・共感」,「激励・応援」,「共同実施」,「賞賛・評価」であった。多重比較の結果,未実施群と準備群との間で有意な差が認められたのは,エフィカシー,「景観」,「アドバイス・指導」であった。また,準備群と実施群との間で有意な差が認められたのは,エフィカシー,「理解・共感」であった。
    結論 ステージには,性別,エフィカシー,物理的環境(景観),社会的環境(全項目)が関係していた。ステージの後期への移行には,景観の整備や情報提供,家族や友人のサポートへの介入が有効である可能性が示された。
  • 芦澤 英一, 片野 佐太郎, 原田 亜紀子, 柳堀 朗子, 小林 八重子, 佐藤 眞一, 江口 弘久
    2014 年 61 巻 4 号 p. 176-185
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 特定健診標準的質問項目のうち生活習慣に関する質問の回答と翌年の特定健診結果によるメタボリック症候群(MetS)罹患との関連性を検証した。
    方法 千葉県内全54市町村国保から匿名化して提供を受けた平成20年度と21年度の特定健診連続受診者278,989人(男性111,524人,女性167,465人)の結果を用いた。標準的質問表のうち生活習慣に関する質問(10項目)は,運動「歩行速度が速い」,「運動習慣あり」,「身体活動あり」,食習慣「早食いである」,「夜食・間食あり」,「夕食後 2 時間以内に就寝」,「朝食抜き」,喫煙「習慣的な喫煙あり」,飲酒「毎日飲酒する」,睡眠「睡眠で休養十分」であり,平成20年度の回答で 2 値化し,「NO」に対する「YES」の年齢調整オッズ比を求めた。横断研究は,平成20年度に MetS 群(MetS 該当または予備群)と MetS 非該当群との間で,縦断研究は,平成20年度 MetS 非該当者で平成21年度 MetS 予備群または該当群になった者を MetS 罹患者と定義し,MetS 罹患者と平成21年度も引き続き MetS 非該当者との間で行った。また,MetS 判定を従属変数として多変量ロジスティック回帰分析を行った。
    結果 横断研究と同様に縦断研究でも,男性は「歩行速度が速い」(OR:0.88, 95%CI:0.83–0.93),「身体活動あり」(0.85, 0.80–0.90)が予防因子,「早食いである」(1.49, 1.40–1.59),「夜食・間食あり」(1.15, 1.05–1.27),「夕食後 2 時間以内に就寝」(1.15, 1.08–1.23),「毎日飲酒する」(1.08, 1.02–1.14)が危険因子となった。女性では「歩行速度が速い」(0.74, 0.70–0.78),「身体活動あり」(0.92, 0.87–0.98),「毎日飲酒する」(0.80, 0.71–0.90)が予防因子,「早食いである」(1.48, 1.39–1.58),「夜食・間食あり」(1.15, 1.05–1.26),「夕食後 2 時間以内に就寝」(1.19, 1.10–1.29),「朝食抜き」(1.21, 1.07–1.36)が危険因子となった。横断研究のみ有意であった項目は,予防因子として,男性の「運動習慣あり」,「習慣的な喫煙あり」,女性の「運動習慣あり」が,危険因子としては,男性の「朝食抜き」,「睡眠で休養十分」,女性の「睡眠で休養十分」が該当した。
    結論 標準的質問項目で把握される不適切な運動習慣や食習慣が MetS の罹患につながることを示した結果であり,本質問表の有用性が示された。
  • 河田 志帆, 畑下 博世, 金城 八津子
    2014 年 61 巻 4 号 p. 186-196
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/29
    ジャーナル フリー
    目的 ヘルスリテラシーの概念分析の結果を基に独自の尺度を作成し,性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度の開発を試みた。20~39歳の女性労働者を対象に項目の選定,信頼性と妥当性を検討した。
    方法 先行研究の概念分析より抽出された要素を基に,内容妥当性および表面妥当性の検討を経て30項目の尺度を作成した。近畿圏および東海圏在住の20~30歳代の女性労働者を対象に,本調査として1,030人,追加調査として424人に自記式質問紙調査を行った。なお,追加調査で実施した再テストは,同意書に署名を得た協力者により実施した。尺度の信頼性の検討は,クロンバック α 係数,再テストにおける相関係数の有意性の検定により行った。一方,妥当性の検討は日本語版健康増進ライフスタイルプロフィール(JLV–HPLPII),成人用ソーシャルスキル評定尺度の下位尺度との相関,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較により行った。
    結果 本調査の対象者は1,030人で,回収数632人(回収率61.4%),有効回答数622人(有効回答率98.4%)であった。追加調査の対象者は424人で,回収数は86人(回収率20.3%)で,有効回答数86人(有効回答数100%)であった。項目分析および主因子法プロマックス回転による因子分析を行った結果,4 因子,21項目が抽出され,累積寄与率は53.7%であった。4 因子は【女性の健康情報の選択と実践】,【月経セルフケア】,【女性の体に関する知識】,【パートナーとの性相談】と命名した。各因子におけるクロンバック α 係数は α=0.72~0.83,全体は α=0.88であり,再テストでの相関係数は尺度全体で r=0.85(P<0.01)であった。また,開発した尺度と JLV–HPLPII,成人用ソーシャルスキル評定尺度は,有意な正の相関(P<0.01)を示し,子宮頸がん検診受診行動別の尺度得点の比較では,子宮頸がん検診受診群の得点が有意に高かった(P<0.001)。
    結論 今回開発したヘルスリテラシー尺度の信頼性および妥当性は概ね確保されていた。子宮頸がん検診受診行動と尺度得点との間に有意な関連がみられたことから,女性特有の疾患の予防および早期発見・治療に向けたヘルスリテラシー教育への実用可能性が示唆された。
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